中国関連

中国が頭を抱えるロシアのインド優遇、防空システム「S-400」納入1年短縮

香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は29日、ロシアがインドの要請に応じて防空システム「S-400」の引渡し時期を約1年前倒したことに関連して「中印国境のリスクを高める」と非難している。

参考:Indian missile system order ‘could raise border risk for China’

インドがS-400を中国との国境沿いに配備すると困ったことになる中国

ロシアが開発した防空システム「S-400トリウームフ」を構成する早期警戒レーダー91H6Eの最大検出範囲は約400km+と言われており、迎撃ミサイル40H6Eを使用すれば最大380km先の目標と交戦することが可能と言われており、西側の代表的な防空システム「パトリオット(交戦範囲約160km)」よりも遥かに高性能だと予想されている。

補足:S-400はパトリオットとは異なり種類の異なる複数のレーダーとミサイルで構成されており、早期警戒レーダー91H6Eの探知距離は航空機や巡航ミサイルなら約400km(RCS 4㎡の場合)、爆撃機などの大型機なら約600km、弾道ミサイルなら230km(RCS 0.4㎡の場合)と言われいる。48N6シリーズのミサイルを使用すればマッハ13程度の速度で落下してくる弾道ミサイルまで対処可能らしい。

この驚異的な性能を誇る防空システム「S-400」をインドが手に入れて中国との国境地帯に配備されると、中国の領空にまでインドの迎撃ミサイルが届くことになるため問題視されていたのだが、新型コロナウイルスの影響で生産に遅れ(2020年末→2021年末引渡し)が生じたため、インドがS-400を手に入れるまでもう暫く時間がかかると見られていた。

しかし中国との軍事的緊張が高まっていることを理由にインド側がロシアに早期引渡しを要請、これに応じたロシアはS-400引渡しを約1年前倒しすること約束したため、中国は「中印国境のリスクが高まる」と警戒しているのだ。

中国もロシアからS-400(2セット)を入手しているのだが、インドとの国境地帯以外にも台湾海峡や南シナ海などで問題を抱えているため、1セットしかない射程の長い48N6を装備したS-400(もう1セットのS-400は射程の短い48N6E2(射程約200km)を装備)をインドとの国境沿いに持っていくのはリスクが高いため、S-400に比べて交戦距離の短い国産の防空システムHQ-9やHQ-16を配備している。

出典:Jian Kang / CC BY 3.0 中国の防空システムHQ-9

逆にインド側は入手したS-400(5セット調達予定)を中国との国境沿いに移動させても問題がないので、中国は「軍事的緊張が高まっているラダックのインド支配領域にS-400を配備されれば、中国の領空を飛行する航空機にとって脅威をもたらす。これは中国軍による国境地帯の管理にとって大きな障害となる可能性が高い」と警告したが、中国はインドよりも先にS-400を入手して運用した経験から「S-400の弱点を知っている」と主張した。

さらにS-400を戦闘可能な状態に持っていくには少なくとも1年から2年の時間が必要になるが、中国と軍事的緊張関係にあるインドのS-400導入が前進しているという知らせは「中国に対するある種のメッセージ」だろうと結論づけている。

もし中国が運用経験からS-400を回避したり無力化できる方法を知ることが出来るのなら、インドも同じように気づくはずなので中国のS-400も影響が出るはずだ。さらに言えばS-400を2年程しか運用していない中国に弱点を見つける事ができるのかが疑問だが、もしかしたら分解したことでS-400の弱点を知ったのだろうか?

 

※アイキャッチの出典:aapsky / stock.adobe.com

印中国境衝突、各国がインドの要請に応えて武器の緊急引渡しに応じる前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    いつもわかりやすい記事を書いてくれてありがとう

    • a
    • 2020年 6月 30日

    ロシア製はカタログスペックの割に・・・、みたいなイメージがあるけど
    中国が嫌がるってことはやっぱり高性能なのか

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    紛争当事国同士に同じ武器を売る、見事なまでの死の商人ですな。
    その節操の無さは「さすがロシア、!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
     そこにシビれる!あこがれるゥ!」

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      日本も景気回復するためには見習いたいものだが、まず世論が許さないだろうな。
      いかに外国の富を日本に還元するかが重要なのだが……

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      最近のロシア製兵器の性能向上の裏にはここまでやるかっていうことなんでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    日本ももっとミサイルの性能向上と増量に力入れたらいいのに
    カネかけずに相手に嫌がらせするにはミサイルが覿面

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    本当はプーチンは支那を嫌ってる説
    放っておけばシベリアまで核心的利益って言い出すから

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      嫌うもなにも、中国は沿海州とシベリアを狙って行動してるから完全に仮想敵国でしょ。
      ロシアも中国が弱れば中国東北部を奪うつもりだろうね
      ただアメリカを牽制する為と兵器の販路として手を組む場合もあるだけのこと

        • 匿名
        • 2020年 6月 30日

        代表的な件はダマンスキー島ですね。
        これは完全にロシアがやられちゃいましたよね。
        ソ連崩壊のどさくさに紛れて中国にとられてしまった。
        最近の軍備増強を考えるとものすごく警戒しているのでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    違法コピー大国・・・ロシアから2セットだけ輸入した兵器・・・何も起こらぬはずもなく

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      今、全力でS400をコピーしています@チャイナ

        • 匿名
        • 2020年 7月 01日

        あー、それ絶対やってるー。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    散々ロシアの兵器をパクった挙句にそのパチモン戦闘機に積むエンジンを寄越せと要求したりする。
    そんな相手に遠慮する道理はありませんからねぇ。

      • 匿名
      • 2020年 7月 01日

      ロシアとは別の意味で中国の面の皮は暑すぎる。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    日本にも長距離地対空ミサイル欲しいねえ。宮古島あたりから尖閣諸島周辺を射程に収められれば、中国の戦闘機は活動を著しく制限されるハズ。現状だと逆に中国の地対空ミサイル(s-400)が尖閣諸島周辺を射程に納めてるっていうね

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      日本は固体(ダクテッド)ロケット技術とAESAレーダー技術を持っているんだから、S-400くらいは簡単に凌駕する地対空ミサイルくらいは作れるだろう。
      03式中SAMおブースターの性能を上げて射程を延ばすのがいいかと。
      03式ならS-400と違って、機動性のいい小型機や巡航ミサイルに対しても有効だし。
      隠蔽された長距離地対空ミサイルって、攻撃側が本物のステルス機を持っていない場合は本当に脅威になる。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    あれ、コロナの影響で1年納入が遅れたけどやっぱり1年前倒しで納入するよってことは結局当初の予定通り納入されるだけでは?

    • 匿名
    • 2020年 7月 01日

    紛争起きたらお互いの手の内というか、双方持ってるロシア兵器の実力がバレる
    西側には美味しい展開

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