今月の12日、フランスとドイツは遅れていた第6世代戦闘機「FCAS」プロジェクトのデモンストレーターフェーズ(技術実証機製造)移行を正式に承認したとFlight Globalが報じている。
参考:France, Germany launch FCAS demonstrator phase
第6世代戦闘機「FCAS」プロジェクトはようやくデモンストレーターフェーズへ
2019年6月に開催されたパリ航空ショーでフランスとドイツは、新たに合流したスペインと第6世代戦闘機「Future Combat Air System(FCAS)」プロジェクトを進めるための法的な枠組みを定めた協定に署名後、直ぐにでも本格的な開発に着手するはずだったが、ドイツとフランスが主導権を巡って揉め始め完全に開発スケジュルールがストップしてしまった。
第6世代戦闘機「FCAS」プロジェクトを立ち上げたフランスとドイツは、1980年代にイギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス(離脱)の5ヶ国で戦闘機を共同開発しようとしたECF(European Collaborative Fighter)プロジェクト(後のユーロファータータイフーン)で犯した主導権争いを失敗を避けるため予め手を打っていたにも関わらずだ。
補足:ラファール失敗は単独開発? フランス、反省を生かした第6世代戦闘機開「FCAS」で共同開発の罠に嵌る
仏独両国はFCAS開発の主導権をフランスに、両国が共同開発する次期主力戦車プロジェクトの「陸上主力戦闘システム(Main Ground Combat System:MGCS)」(レオパルド3とも呼ばれている)」の開発主導権はドイツに譲ることでバランスを確保しながら、平等な主導権が原因でプロジェクト遅延が起こらないように配慮されていた。

出典:Bundeswehr-Fotos / CC BY 2.0 ドイツ軍のレオパルド2戦車
しかし独議会は、FCASに搭載するエンジン開発を仏企業(サフラン)が主導し独企業(MTU)がサポートに回るという枠組みを否定、独議会の議員たちは政府に対しフランスと同等の開発主導権を独企業が持つことを要求し、その人質としてFCASがデモンストレーターフェーズへ進むためにドイツが負担することになる7,500万ユーロ(約90億円)の支出承認を拒否してしまったのだ。
このような動きに機体開発を主導するダッソーは、一向にデモンストレーターフェーズに進めない焦りからパートナーのエアバスと共同で「FCASプログラムの将来を切り開くのは政治的指導者の決定に掛かっており、これ以上は時間を無駄にすべきではない」と悲鳴にも近い声明を発表、両国の政治家による決断で対立解消するよう訴え、仏独両政府も妥協点を見つけるため話し合いを行い、昨年末に合意にこぎ着けた。
合意内容を簡単にまとめると、エンジンの研究と開発の第1フェーズまでは仏企業が主導するが、仏独両企業は2021年末までに50対50の合弁会社を設立し、エンジン開発と生産の全てを合弁会社に移し共同で行うというもので、フランスはエンジン初期開発における主導権を持つが、それ以降は合弁会社で開発や生産を行うことで平等な開発主導権を両国がもつことになるとドイツに譲歩した形になっている。

出典:public domain ラファールB
FCASプロジェクトで開発される機体をラファールの更新用として採用するフランスとしては、艦載機として使用する前提で設計を行う必要があり、艦載機の設計経験がある仏企業が初期開発を主導することでエンジンの仕様を方向づけられば合弁会社の下で開発を続行しても問題ないと考え、ドイツはフランスと同等の開発主導権をもつ合弁会社設立という交渉結果で議会を説得できると考えたのだろう。
この条件を元にドイツは議会を説得し1月中までにデモンストレーターフェーズの開発資金を確保する予定だったが、結局、2月にずれ込んでしまった。
果たして、これを最後に第6世代戦闘機「FCAS」プロジェクトは無益な主導権争いから解放され、2026年に予定されている試験飛行を無事にクリアできるだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:Tiraden / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップと随伴機の無人機
駄目だと思う
開発参加国すべてが自国の独自性を主張する共同プラットフォームなど論理矛盾も甚だしい
自画自賛たらたらだったユーロ輸送機計画だって失敗したようなもの
いや、なかったことにする気かな
FCASに艦載機は無いと思うんですが、、、ドイツが必要ない艦載機計画にお金を出すとはとても思えない。通常型と艦載型を2つ作るなんてないでしょうし、そもそもフランスに次期空母計画はありません。シャルルドゴールは韓国にぼったくり価格で売りつけるのが最善。
2018年に新たな次期空母計画を始めてます
(イギリスのエリザベス級と合同?の空母計画は破棄されました)
まあ、独仏間の“対立の第一ラウンド”が終わったばかりで、その内第二、第三の対立が噴き上がると思いますよ。
共同開発なんて、そんなものですから。
そう考えると、我が日本のNGF(F-3)開発はホントに恵まれていますね(開発が順調かどうかは別問題としても)。
恵まれてるんじゃなくてF-1、F-2の屈辱を糧に関係各位が努力した結果では…?
恵まれてるなぁ…とかのほほんと言ってたら
血涙流した関係者が後ろで振り上げた拳をプルプルさせてる幻影が見えるようだよ
恵まれてるというか、共同開発がこうなるという前例が多数あるからこそそうならないようにしただけでは?
船頭二人にしてFCAS立ち往生。
イギリスはブレグジットで大正解、主導権を一国で握るテンペストのほうがまだ可能性がある、可能性だけだが。
軍事関係でドイツと組んだのが運の尽きだったのだろうなぁ。
フランスももうちょっと金があったらドイツ何かと組む必要もなかっただろうに。
> 艦載機の設計経験がある仏企業が初期開発を主導することでエンジンの仕様を方向づけられば合弁会社の下で開発を続行しても問題ない
鑑載機用のエンジンの違いなんて塩害対策だけだと思ってました。出力特性やストール耐性なんかも違うのかな
単に一つ目の泥沼をクリアーしただけ
後いくつあるんだろう?
エンジン開発もこれからだよねえ?
フランスは卓袱台返しするから戦車の時に共同開発離脱するよ
卓袱台返ししたくもなるわ
これはドイツ側が全面的に悪いからなぁ。
ドイツ議会がやたら強気だが、ドイツは戦闘機のノウハウないよね?
フランスは恐らくまた独自開発する事になるだろうが、その時ドイツはどうするつもりなんだろう?
韓国さんと組む。
って、イギリスに先を越されたかな?
ユーロファイターの、空力性を無視したデザインは、ドイツが研究してた成果を昇華させたもの。
そういう前例を見るに、ドイツ自身は自分達で開発可能と(大変楽観的に)考えてるのでは?
EUがうまく行っているというフレームの基に成り立っている、ありとあらゆる共同作業は優れている理論で物事を進める限り欧州に成功はないと考える。