欧州関連

電子攻撃能力はF-35級? Captor-E MK.2に換装予定の英空軍タイフーン

ドイツとスペインは先月、運用中の戦闘機ユーロファイター・タイフーンに搭載されたレーダーをAESAレーダー「Captor-E」に換装することを発表したが、開発国の英国が自国のタイフーンに「Captor-E」に採用するのかに注目が集まっている。

参考:Eurofighter’s New Radar Is Nearly Ready But Royal Air Force Wants An Even Better One

タイフーン向けに開発されたAESAレーダー基本型の他に、ドイツと英国が別々にCaptor-Eの派生型を開発中

タイフーン向けに開発されたAESAレーダー「Captor-E」は10億ユーロもの費用を投じて開発したのだが、最初にCaptor-Eを採用したのはクウェートとカタール向けに製造されたタイフーン(トランシェ3B)で、先月になってようやく開発国のドイツとスペインがCaptor-E採用を発表したが、依然としてタイフーン最大の運用国である英国はCaptor-Eの採用を拒んでいる。

この不可思議な状況について米メディアは、英国は自国のタイフーンに現行の「Captor-E」を採用するつもりはなく、現在開発が進められている新型の「Captor-E」を採用するつもりだと指摘した。

出典:Bin im Garten / CC BY-SA 3.0 CAPTOR-Eを搭載した展示機

AESAレーダー「Captor-E」には現在3つのバージョンがあり、クウェートとカタール向けに製造されたタイフーンに採用されたのは輸出向け仕様の「MK.0(以前はレーダー1+と呼ばれていた)」で、ドイツとスペインが発注したCaptor-EもMK.0仕様だが、ドイツに拠点を置く防衛産業企業「ヘンゾルト(Hensoldt)」がMK.0のアップグレード版を開発中で後日、新しい各​送受信​モジュール​(TRM)​やマルチチャンネル・デジタル受信機等が供給され「MK.1」仕様にアップグレードされるらしい。

補足:Captor-Eの基本型であるMK.0開発を主導したのはイタリアのレオナルドだが、MK.1開発のためドイツに拠点を置く防衛産業企業「ヘンゾルト」に技術移転を行ったらしい。恐らく英国にも同じように技術移転を行ったのだろう。

しかし英国はドイツとスペインが採用を決めた「MK.1」ではなく独自に英国で開発中の「MK.2」を採用する予定で、このMK.2開発は「Bright Adder Project」と呼ばれ極秘裏に開発されているため詳細な仕様については不明だが、米メディアは「Captor-E MK.2」に換装したタイフーンはF-35と同じように高度な電子攻撃能力と安全なデータリンクモードを備えることになると説明した。

現在、Captor-E MK.2の開発は運用評価段階で開発が完了すれば英空軍が保有する40機のタイフーン トランシェ3Aに搭載される見込みだ。

これは管理人の予想だが、英国の防衛産業企業BAEシステムズはF-35が搭載するAESAレーダー「APG-81」と組わせて使用する電子戦/妨害システム「AN/ASQ-239」を供給しているので、英国はタイフーンに「Captor-E MK.2」と「AN/ASQ-239もしくは派生型」を搭載してF-35並の電子攻撃能力を付与するつもりなのかもしれない。

ただエアバスも昨年、ドイツのトーネードの後継機需要を見越して電子攻撃/防空網制圧任務に対応した「タイフーンECR」のコンセプトを発表したばかりで、管理人の予測が正しければ英国のトランシェ3Aアップグレード計画と重複してしまっている。

出典:エアバス

エアバスが発表した「タイフーンECR」は英国が開発している「Captor-E MK.2」をベースに開発されるのかは不明だが、共同開発とは本来このような重複を避けるための仕組みであるはずなのに、各国がそれぞれの思惑でバラバラにタイフーンのアップグレードを開発しているため共同開発の意義が失われてしまっているように見えてしまう。

因みにタイフーン開発国のイタリアは、今のところCaptor-E採用を正式には表明していない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Robert Sullivan / Public domain

好みの角度で鑑賞可能、英空軍が第6世代戦闘機「テンペスト」の3Dモデル公開前のページ

中国、英国に空母「クイーン・エリザベス」の極東派遣中止を要請次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    レーダー照射問題、NATO調査を乗り切ったトルコがフランスに謝罪を要求

    何とかNATOの調査を「お咎めなし」で切り抜けたトルコは虚偽の報告を行…

  2. 欧州関連

    イタリア海軍の苦難!F-35Bが調達ストップで空母「カヴール」が存続の危機

    2019年5月、イタリア海軍の強襲揚陸艦「トリエステ」が進水したが、奇…

  3. 欧州関連

    受けた損傷は修復不可能か、仏リュビ級原潜の火災は14時間後に鎮火

    フランス海軍の原子力潜水艦ペルルで発生した火災は出火から14時間後に鎮…

  4. 欧州関連

    経済的に無理、英国と欧州の次世代戦闘機プログラム統合を訴えるエアバス

    エアバス防衛部門のトップは、新型コロナウイルスによって発生した経済的シ…

  5. 欧州関連

    搭載するF-35Bの調達は? イタリア海軍の軽空母「カブール」でF-35B受け入れ準備完了

    イタリア海軍は今月6日、近代改修が無事完了した軽空母「カブール (C5…

  6. 欧州関連

    米海軍、ギリシャとトルコの衝突防止のため帰国途中の空母打撃群を派遣

    米海軍は中東での任務を終了して帰国途中だった空母「ドワイト・D・アイゼ…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    >>電子攻撃能力はF-35級? Captor-E MK.2

    既に20年以上前からうAESA運用してる米軍の電子戦能力と同じわけがない、さすがに森杉。

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      ふぁ?
      その米軍機が搭載している電子戦装置はBAEシステムズの製品なんですが
      記事をちゃんと読みましょうか

        • 匿名
        • 2020年 7月 18日

        だったらなぜイギリスがCaptor-E装備にこれほど時間をかけて苦労したのかな?
        そこんとこを疑問に思わないの?

          • 匿名
          • 2020年 7月 18日

          ユーロファイター・タイフーン採用時の契約内容もう3回くらい読み直してこい!
          何でわざわざタダで最新技術くれてやらなきゃならんの?

          つーか前提条件に疑問もたなかったのか?

          • 匿名
          • 2020年 7月 18日

          防衛装備の開発ってのはね技術的な事だけじゃ無いのよ
          政治や軍事支出全体の兼ね合い、果てはマーケットの動向にも影響を受ける
          特にユーロファイターは開発中に主敵であるソ連が崩壊して冷戦が終結した影響で軍事費自体が大幅に削減されたり、調達国が調達数絞ったりしてほとんど計画が止まってた時期もあるのよ
          その間にも基礎研究自体はしたりしてるから、開発に時間がかかったのは単に技術力が低かったとは言えないわけよ
          なんでも疑問に思うことは良いとしても、変にうがった見方をして粗野を狭めるような考え方は本末転倒、見識の低さを露呈しちゃってるよ?

          • 匿名
          • 2020年 7月 18日

          「AESAレーダーの開発遅延」と「電子戦能力」に何の関係が?

            • 匿名
            • 2020年 7月 19日

            どちらも電気を食うから古いエンジンの発電能力じゃ間に合わないのでは。
            新しい酒は新しい酒袋に。

            • 匿名
            • 2020年 7月 19日

            >既に20年以上前からうAESA運用してる米軍の電子戦能力と同じわけがない
            の根拠が「どちらも電気を食うから」だったら、もはや病院行った方が良い案件では?

          • 匿名
          • 2020年 7月 18日

          Captorシリーズの開発はユーロレーダーで、電子戦装備のAN/ASQ-239はBAEシステムズのはずなんだけど、あなたの言うCaptor-E装備に時間がかかるのと電子戦システムの開発力に何の関係があるんですか?

          そもそも現時点で西側戦闘機に装備できる最高の電子戦システムAN/ASQ-239をイギリスのBAEが作ったのになぜ電子戦装備の開発力が劣ると?

            • 匿名
            • 2020年 7月 18日

            >20年以上前からAESA運用してる米軍の電子戦能力

            この時点で何か途方もない勘違いの匂いがします。

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      本文読んでる?
      >英国の防衛産業企業BAEシステムズはF-35が搭載する〜電子戦/妨害システム「AN/ASQ-239」を供給している

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      因みに〜F-22Aの電子戦システムもBAE.S社製だから!笑

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    これ裏を返すと、やっとできたCaptor-E MK.0や現在開発中のCaptor-E MK.1ではイギリスの要求を満たせないってことですよね

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      >Captor-E MK.0

      量産試作機扱いな感じですね。

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      なるほど、そういうことなのでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    たった40機の為に新型レーダーをかいはつしているのか。
    ぜいたくだな。

      • 匿名
      • 2020年 7月 18日

      一応テンペストも視野に入れてるのかも?

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    ラファールのパイロットからエンジン以外を散々馬鹿にされてたタイフーンもやっとまともな性能になるのかな?

    清○が今度はF-3の開発を中止してテンペスト完成までの繋でタイフーン買えとか言い出しそう

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    清○が本邦の戦闘機開発を中止して第6世代機の完成までタイフーン使えとか言い出すな

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    テンペストに搭載する機器のテストヘッド的な意味あいはあるのかもね?
    つまり、ほとんどはトランシェー3A(パルスド・ドップラー・レーダー)のままで、一部をAESAに換装する
    (勿論、基本性能、耐久試験は地上での試験、輸送機で試験するだろうけど)

    • 匿名
    • 2020年 7月 18日

    なんやかんやイカもすげー所はすげーからな…
    なんとかF-2よりは先進的になったな

    このままテンペストまで繋げて行けるか?

      • 匿名
      • 2020年 7月 19日

      欠陥のため機体寿命が設計寿命を大幅に下回るというニュースを見た記憶があるんだが・・・・

        • 匿名
        • 2020年 7月 19日

        修正に修正を重ねているうちに機体寿命を迎えてしまうのは十分にあり得る話ですね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 19日

    キャプターEみたいな首振りAESAって、レドームとの干渉は大丈夫なのか?

      • 匿名
      • 2020年 7月 19日

      アンテナの角度とレドームの角度/厚みでビームの直進性とか変わってきそうだよね
      稼働部分増えてMTBFも短くなりそうだし、AESAのいいとこ潰してる感

    • 匿名
    • 2020年 7月 19日

    Captor-E MK.2がテンペスト用レーダーか
    Captor-E MK.1がFCAS用レーダーか
    はたまたまったく別のレーダーが湧いてくるのか
    日本は次期戦闘機のレーダーはもう公開してたな

      • 匿名
      • 2020年 7月 19日

      F-3はレーダーに関しては余裕のよっちゃん。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的報道

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
  2. 軍事的雑学

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
  3. 軍事的雑学

    ようやく本領発揮、世界最強の戦闘機F-22Aが「神の視点」を味方に提供
  4. 軍事的雑学

    打つ手なし? ドイツ軍兵士は一般的な乗用車を「プーマ歩兵戦闘車」と思い込まされ訓…
  5. 軍事的雑学

    空飛ぶスナイパー? ロシアの戦闘機「Su-57」は米軍の航空支配を効果的に破壊す…
PAGE TOP