米国の核兵器や艦艇向けの原子炉の開発を主導する国家核安全保障局(エネルギー省傘下)は開発を進めている戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外、ドイツのショルツ政権は約束したニュークリア・シェアリング体制の維持に頭を悩ませることになるかもしれない。
参考:NNSA Removes F/A-18F Super Hornet From Nuclear Bomb Fact Sheet
果たして米国は「F/A-18E/FのMod12統合除外」にどのようなメッセージを込めているのだろうか?
NATO加盟国のドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコは米国と核兵器を共有する協定(ニュークリア・シェアリング)を締結しており、米国は戦術核兵器「B61」を供給する代わりに締結国はB61を運搬可能な航空戦力を維持しなければならず、ベルギー、オランダ、トルコはB61の運用能力を備えたF-16をドイツとイタリアはトーネードにB61を統合することで協定の義務を果たしていたが、両機の後継機問題が浮上してイタリア、ベルギー、オランダ、トルコの4ヶ国はB61統合が約束されていたF-35Aを選択(トルコのF-35A導入はS-400問題に関連してブロックされた)して協定の義務を引き続き維持することになっている。
問題は欧州や国内の防衛産業基盤に配慮するためF-35A導入を蹴ったドイツで、タイフーンをトーネードの後継機として導入するため米国にB61の運用能力統合を打診したものの「B61統合作業(米軍機ですら4年~5年もかかる)には時間がかかるためトーネードの退役までに到底間に合わない」と回答、そのため当時のメルケル政権はB61/Mod12統合に含まれていたF/A-18E/Fを30機、トーネードECRが担っていた電子作戦任務を引き継ぐためEA-18Gを15機、残りのトーネードを更新するためタイフーンを90機導入すること決断。
ただこの決断は連立政権のパートナーだった社会民主党に相談なく発表されたことや、トーネード後継機にタイフーンのみの導入を主張していたドイツ最大の労働組合「IG Metall」から反発を受けるなど紆余曲折を経て2022年に改めて決定を下すことになっていたのだが、昨年9月の総選挙でキリスト教民主同盟が与党第1党の地位から転落→ニュークリア・シェアリング体制からの離脱や国内に保管されていた核兵器撤去を主張していた社会民主党主導の新連立政権が成立したためF/A-18E/FやEA-18Gの導入がひっくり返る可能性が噂されていた。
しかしショルツ政権は「ドイツがニュークリア・シェアリング体制の一部でありつづけることで連立政権を構成する3党が合意した」と発表したため前政権の方針(B61の運用能力を統合したタイフーンではなくF/A-18E/FやEA-18Gの導入)を引き継ぐのではないかと見られていたが、米国の核兵器や艦艇向けの原子炉の開発を主導する国家核安全保障局(エネルギー省傘下)は開発を進めている戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外していることが判明、これが事実ならドイツは時間的な問題でニュークリア・シェアリング体制の義務を維持するのが不可能になる。
なぜ米国はMod12を統合する機種(F-15E、F-16C/D、B-2、トーネード、F-35、B-21)からF/A-18E/Fを除外してしまったのかは謎だが、態度がハッキリしないドイツのためにF/A-18E/FへMod12を統合するのを保留(F-35CがMod12に対応するため米海軍的に問題ない)してしまったのかもしれない。
ドイツがF/A-18E/F導入を再度決断してMod12統合が復活すれば大事に至らないが、もし米国がF/A-18E/FへのMod12統合を完全にキャンセルしてしまうとドイツはタイフーンへのB61統合作業を米国に依頼する必要があり、核兵器の運用能力が統合されたトーネードに再び資金を投資して寿命延長を行わなければならなくなる。
どちらにしてもココまで来るとドイツのトーネード後継機問題は完全にコメディで、結論を先延ばしにし続けたため財政的な傷口(トーネードの運用寿命延長に約88.6億ユーロ/機体維持に56.4億ユーロ+旧式化した部品交換に16.2億ユーロ+新たな保守部品調達に15.8億ユーロなど)を広げてしまい最終的に米国からも梯子を外されたドイツは八方塞がりになってしまったという訳だ。
果たして米国は「F/A-18E/FのMod12統合除外」にどのようなメッセージを込めているのだろうか?
関連記事:トーネード後継機問題は来年に持ち越し、ドイツ新政権に参加する3党は「核兵器共有協定」維持で合意
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Burt Traynor
もう好きにしろってことでおK?
トーネードの延命一択。
B-52に勝てるか?
トーネードって結構古いと思って調べたら、初飛行が1974年でF-16と同期、F-15の2年後だった。48年前。
F35買えよって圧
嫌なら統合費用負担に泣けよと
むしろここのところのアメリカの様子を見るとただ単純にアメリカ側がこの問題があったことを忘れちゃって事務的に削除してしまったんじゃなかとすら思える
今のアメリカ政権がこういうクレーバーの動きができるとは思えんな
別にアメリカとしても維持しなくても困らないし(ピンチになれば打ち込む)NATOの防衛力が下がって困るのは欧州側だからいいんじゃない?
むしろロシア寄りのドイツを他の加盟国に叩かせる事出来るしいい手だと思うよ
ドイツ国内のこの政治的なゴタゴタは、今は四方が味方で対ロシアにはポーランドって緩衝地帯もあるし
NATOの一員でありながら、かつての様に自身が最前線にいるって危機感が薄れてしまったからだろうか
同時にアメリカにしろ他のNATO国にしろドイツの重要性が薄れた(当てにされてない?)って感じか
国防政策については今はポーランドの方が意気盛んって感じだよね
ここでも以前にこんな記事あったし
「戦争を回避するには戦争の準備が必要、ポーランドが軍を14万人→30万人以上に増強すると発表」
ドイツは米国の安全保障にタダ乗りし続けてるって散々から言われ続けてきたものね
事実、防衛費はずっと低迷をし続けて、抜本的な解決にも消極的なのは変わらんし
NATO内でも、ドイツに対してはざまあみろっていう本音を持つ国が大半ではないかな
一般的に、欧州人は日本人と違って過去を忘れないからドイツの軍事大国化のほうがいろいろ難しい感情が生まれる。ロシアという問題が無ければむしろ弱いドイツこそ望まれてるんですよ、
しかし風向きが冷戦時代に戻ったということ
アメリカだけでなく、NATOからも長年「ドイツは安全保障にタダ乗りし続けてる、もっと軍拡してNATO加盟国として国力相応の軍事力を提供するようにしろ」という圧力がかけられ続けていますよ
なにせ去年ドイツが軍事予算を大幅に増額したという話がありましたが、あれでも全然足りないほど軍事費と戦力を削っていましたから(仮に数年前ドイツ軍と北朝鮮軍が同盟国なしで戦闘した場合、間違いなくドイツ軍が負けていたと思えるほど)
ホントに、集めてみてもドイツ軍ネタはろくな記事がないです
2019.05.20
戦車から下着まで何もかも不足!ドイツ軍が抱える3つの問題
リンク
2019.11.28
平均稼働率は20%? ドイツ軍、戦闘機「トーネード」や歩兵戦闘車「プーマ」等の稼働率
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2020.01.29
ドイツ軍に予算を与えても無駄にするだけ? 政府が軍の現状に関する報告書を発表
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2020.02.25
打つ手なし? ドイツ軍兵士は一般的な乗用車を「プーマ歩兵戦闘車」と思い込まされ訓練中
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ほら、ポーランドさんはドイツとロシアに挟み撃ちされて東プロイセンを奪還される可能性があるからね。
一番危うい立場だ。
「欧州情勢は複雑怪奇」
この言葉はいつまで立っても色褪せない
ドイツはこれまで欧州の経済的盟主でありながら欧州危機にあっても大規模な財政出動せず軍事費にも予算を割かずNATOにフリーライドし続けたケチが国是のような国だから残当。
中露の情勢が危うくなっているから慌てているけど傍から見ればザマァとしか言いようがない。
ドイツはEUの経済を支えて欧州への難民も一手に引き受けて来たってのが免罪符
にもなってたが、今はもうそれも言えなくなって来ている
国防予算をケチり続け、民間委託に走ったり、場当たり的な対応で装備の稼働率を
下げ続けて戦力維持体制をグダグダにしてしまって、それを立て直すのが先進国と
言えどどれだけ大変かの見本市が今のドイツ国防軍って感じ。
もっとも、本来、自己完結的組織だった軍の業務をアウトソーシングで業務効率化と
コスト最適化を図る・・・な冷戦後の流行病みたいなこれやって失敗したのはドイツ
だけじゃないけどね
我が国でも政権交代時に普天間基地移設問題をひっくり返してくれた総理がいた事を思い出してドイツを笑えなかったよ…
EUはいずれフランスの核兵器を基盤として共有していく安全保障体制になりアメリカからの独立度合いを高めた方がいいと思っていたけれど、今の状況はそれを実行するチャンスでもあるのではと思った。
フランスがドイツの核共有を実行できる戦術核を持っているかとか、運用できる攻撃機をドイツに融通できる余裕があるかとか、その辺はアメリカ頼りより更にもっと問題だらけだろうけれど。
メルケルの宿題か。
連立政権は辛いね。
中古のF-16c/dでもいれればー(投げやり)
スパホにこだわらずに、導入機種をF-15かF-16にすればよいだけでは。
メルケルの宿題だけどそのメルケルより核に厳しい政党が躍進したわけでね。
与党になって現実路線へ行くのかまたもめ続けるのか。F35再導入論もあり得るだろう。
労組が恐らく自国産業保護の観点から反対している場合、米国製かつドイツ企業の入る余地が全くないから反発も大きいだろうが