ウクライナが要求する砲弾ニーズに対応するためエストニアは「EUによる155mm砲弾の共同購入=40億ユーロ分/100万発相当」を提案しているのだが、この取り組みにEU域外の国を参加させるかどうかで揉めているらしい。
参考:EU woos outside countries for joint ammo-buying scheme
資金だけ出して「砲弾の共同購入」に関わる利権に口は挟まない国があれば可能
レズニコフ国防相はEU加盟国に宛てた書簡の中で「利用可能な砲弾の数に制限がなければウクライナ軍の砲兵部隊は1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できる。我々の計算では戦闘任務を成功させるのに最低でも月36.6万発の砲弾を必要としているが、供給不足のため砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分しか使用しておらず、これはロシア軍が使用する量の1/4だ」と訴えており、EUに対して月25万発の砲弾を要求している。
1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できるという言及は「ウクライナ軍が保有する各種榴弾砲・自走砲の発射可能なキャパシティ(1ヶ月間)」を示唆しており、レズニコフ国防相は「月平均で11万発の155mm砲弾をウクライナ軍は消耗している」とも明かしているため、砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分=11万2,800発分しか使用していないという言及は「155mm砲弾」のことを指している可能性が高く、ロシア軍は月平均45万発もの152mm砲弾を撃っているという意味だ。
このニーズを満たすためエストニアは「EUによる155mm砲弾の共同購入=40億ユーロ分/100万発相当」を提案しているのだが、これは各国が欧州平和ファシリティ(EPF)に拠出した資金で購入契約を締結することを想定しており、この取り組みに「EU域外の国を参加させたい」と主張する国と「混乱を招くだけだ」と主張する国の間で揉めているらしい。
米POLITICOは「より多くの購入資金を確保するため『EU域外の国を参加させる』というアイデアは先週に突然登場した。入手した文書には『志を同じくするパートナーが自発的な資金提供を通じて共同購入の取り組みを支援するよう呼びかけることができる』という可能性が言及されている」と報じており、EUの関係者は「このアイデアについてノルウェーと協議しておりカナダも関心を示しているようだ」と述べている。
志を同じくするパートナーが共同購入の取り組みに資金を拠出するというアイデアは表向き「美しい話」に話に聞こえるが、このアイデアに反対する国は「仮にノルウェーやカナダの参加を認めるとEPFの資金がEU域外に流出する恐れがあり、特にカナダの参加を認めると米国が参加する道を開く可能性がある」と主張しており、要するに砲弾製造が可能なEU域外の国の参加を認めると「逆にEPFの資金がEUの外に流出して加盟国に落ちる額が減る」と懸念しているのだ。
EUには加盟国が拠出する複数の基金が存在し、基本的に基金の資金を活用するプロジェクトは欧州企業との契約に限定されており、当時のトランプ大統領が「不公平だ」と噛みついた事がある。
トランプ大統領は欧州の安全保障に対する米国負担を軽減するためNATO加盟国にGDP比2.0%以上の国防支出を要求、これをNATOが受け入れたため「各国の増額分が装備調達に向かい米防衛産業に落ちる」と踏んでいたのだが、欧州のNATO加盟国は増額した資金が米防衛産業に掠め取られるのを懸念して米国の手が届かないEU内に兵器開発を支援する防衛基金を設立、この資金を活用する兵器開発プロジェクトは欧州企業に限定することで米国の関与を排除。
つまり欧州のNATO加盟国が増額した国防予算はEUという別組織の資金になり、この資金を活用したプロジェクトから米防衛産業が排除されたためトランプ大統領は「不公平だ」と噛みついたのだが、EPFにカナダの参加を認めると「米国も参加する」と言い出した時に拒否する建前を失い、資金を出したのだから砲弾購入の契約に米企業を含めろと言い出すのは目に見えている。
このアイデアを成立させるためには、資金だけ出して「砲弾の共同購入」に関わる利権に口は挟まない国が必要で「(善意の資金は国際社会に存在しないため)混乱を招くだけだ」と反対する国があるのだ。
関連記事:ロシア軍の火力投射量はウクライナ軍の4倍、レズニコフ国防相はEUに月25万発の砲弾を要求
関連記事:狡猾な欧州が仕掛けた罠? NATO加盟国が引き上げた「国防予算」を巡って欧米激突
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command
このケチ臭さ、これでこそヨーロッパだ!というのは冗談にしても、防衛投資を欧州域内で還流させるという構造を重視している(利益を得ている)のは西・南欧諸国が中心で、東欧諸国はどう考えても安全保障>国内雇用なので、これは意見が割れるんじゃないかなあ…
岸田出番だぞ。
異次元の砲弾購入を見せつけてやれ。
あと、息子お前は前線だ。
ん?土産が欲しいだと、、?
冥土の土産を買いに行ってこい。
最近こう言う差別的なコメントもよく書かれるようになりましたね。
息子うんすんは賛成できないが、岸田内閣にはこの提案を検討してほしい
カルタですか?
部隊の車盗んで観光しに行こうとするかもしれないのでダメです
現場の迷惑考えてね???
内容が幼稚なんだよなぁ…
いい年したおっさんがこれを書いてるのかと思うとがっかりする。
>資金だけ出して「砲弾の共同購入」に関わる利権に口は挟まない国
どう考えても、こっち見てるな案件なのではw
まあ、「ダイキンにも割り当てを」なんて口が裂けても言いそうにないですし、武器の輸出が出来ない分、こういう所では貢献した方がいいと思います。
資金提供を受けて行われる武器製造輸出自体は単なる商行為であって貢献でも何でもないし、生産拡大のための製造ライン増強に「投資する」だけでも(回収されないリスクを負っている分)十分な貢献とは思いますがね。それすら「利権に口を出す」ととられるなら手を引いた方がいいでしょう。
韓国同様に155mm弾の製造でアメリカ陸軍と海兵隊で良い気がしてくる。
駐日欧州連合代表部のHPより
『1950年5月9日、当時のフランス外相のロベール・シューマンは、石炭と鉄鋼という、当時、あらゆる軍事力の基礎となっていた産業部門を共同管理する、超国家的な欧州の機構の創設を提唱した。この演説は後に「シューマン宣言」として知られるようになり、現在の欧州統合の出発点となった』
原点を維持するか否かも問われてる。
・制空権を取るだけの軍事力が無いため、陸上戦力だけで戦わなければならない
・豊富な物資と人材があり、それをいくらでも使い捨てにしても構わない
・独裁者は狂った大義のためなら、自国が破たんしても構わないと思っている
この三つの条件が揃えば、今のロシア軍が取っている戦術が一番合理的だ。こういう戦術をロシア軍が取り、それにウクライナ軍が苦戦していることは、セベロドネツクでの戦いの辺りから言われ続けてきた。
おそらくプーチンは、自分の頭の中にある理想の地図を完成させるためなら、合理的な損得を度外視している。戦力を磨り潰してロシア軍が壊滅しても、経済制裁でロシアが破たんしても、一向に構わないと思っている。
制空権無しで軍事侵攻を強行し、第一次世界大戦に逆戻りしたような戦場が発生することを予想していた軍事関係者は、おそらく一人もいないと思う。実際に、この戦いは物凄くイレギュラーな出来事だし。
だから砲弾不足に陥るのは当然だし、対応が後手後手なのも止むを得ない。イレギュラーな出来事なのだから仕方ない。
またプーチンが、自分の正義と理想を達成するためなら合理的な損得を度外視する狂人だと気付いていた政治家も、物凄く少ないと思う。だからこそ、ほとんどの人間はプーチンは適当なところで引き上げると思ったのだから。
ただプーチンに対する認識は、政治家ごとに温度差がある。バイデンは未だに、プーチンが話しの通じる相手だと思っている節がある。
対応遅れは止むを得ない面があるけど、ロシアが勝った場合に世界秩序に与える悪影響を、もっと真剣に考えるべきだ。
ウクライナが負けて脅かされる程度の「世界秩序」なんてとっくに壊れてると思いますよ。
本当に世界秩序の危機が迫ってるなら西側以外の国々もみんなロシア制裁に加わるでしょうから。
そこいらじゅうで紛争が勃発する事態になるとは思わないけど、今よりも確実に不安定な世の中になるよ。経済的な悪影響が長期間に渡って続くことは、避けられないはず。
後、確実に紛争は、今よりも多くなるだろうね。平和の維持には見せしめが重要なのに、その見せしめが機能しなくなったのだから。
>平和の維持には見せしめが重要
これなら、恐怖政治で統治する独裁国家と変わらんな。
冷戦以降の平和は、米ロの相互確証破壊と中距離核戦力全廃条約(INF条約)によって成り立っていたのでは。
東ヨーロッパのミサイル配備競争とキューバ危機を経て、互いに距離感を保ってきたはず。
そのバランスが崩れ始めたのは、中国の台頭です。
INF条約非加盟の中国との戦力差を恐れたアメリカが、2019年にINF条約を破棄しました。
そのため、INF条約で禁止していた中距離ミサイルが、モスクワ近辺のNATO加盟国に配備されることになる。
ウクライナ戦争前に、ロシアはこのことも安全保障上、問題視していた。
要するに、平和が脅かされているのは、敵対する勢力が、互いの間合いに入ったから殴り合いが始まったのですよ。
その原因を作ったのは、NATOの東方拡大とINF条約の破棄。どちらもアメリカ起因でしょう。
それらの経緯を無視して、なぜ平和の実現にはロシアを見せしめにすればよいという結論になるのですか。
そのような西側に都合の良い解釈をするから、第三世界から支持されなくなっているのでは。
>これなら、恐怖政治で統治する独裁国家と変わらんな。
独裁国家とは全く違うよ。見せしめの対象を恣意的に選ぶ訳じゃないのだから。
日本の治安は、司法が見せしめとして機能しているから保たれている。国際秩序も、それと全く同じだと思うけどね。
日本は見せしめとして犯罪者を罰しているけど、独裁国家ではないはず。
>NATOの東方拡大
これはアメリカが強制した訳じゃなく、東ヨーロッパの国々がNATO入りを望んだから。そういう独立国の決定にイチャモンをつけるロシアが、完全に間違っている。
>INF条約の破棄
これはトランプの失策だった。ただ民主国家では、こういうメチャクチャな人間が退場してしまう。これが独裁国家とは違う。
後、ロシアは2010年代から、巡航ミサイルの開発を開始していた。それがINF条約違反だと、アメリカは前から避難していた。
>それらの経緯を無視して、なぜ平和の実現にはロシアを見せしめにすればよいという結論になるのですか。
物事の背景は、所詮は背景でしかないよ。主権国家の国境を無視したのはプーチンだ。
例えば中国はウイグルで非道の限りを行なっているけど、国境の内側で好き勝手やっている限りは他国は黙認すると予測している。つまり国境という概念を理解するだけの理性は、習近平は持ち合わせている。
国境を無視するプーチンは、あまりに危険すぎる。
どうやって平和が成り立っているのかを、経緯を踏まえて説明したかったので、平和は力の均衡で保たれていることだけ、抑えていただければ。
あと、事実誤認と思われるところを指摘しておきます。
>中国はウイグルで非道の限りを行なっているけど、国境の内側で好き勝手やっている限りは他国は黙認すると予測している。つまり国境という概念を理解するだけの理性は、習近平は持ち合わせている。
チベットは独立国家ですよ。
そのチベットを武力統一しているのが、中国共産党です。
そういうこと言うなら今回のウクライナ戦争もアフガンやイラクやリビアやシリアがあったから起こったのでは
露ウ双方の動員規模なんてちょっと調べただけでも出てくるのにロシアの方が人的資源が豊富なんて事実誤認はさっさと捨ててもらいたいもんだが
国内に弾薬を製造する工場を有しない小国なら加わる価値が大きいでしょう
逆に、日本のような独自に製造する工場を有する国にとってメリットは少ないのでは?
せいぜい国内の製造能力で対応できないときの保険でしょうか
その際もEUが誠実に域外の国にも供給するという信用があっての事ですが
いや、逆に国内に完結する製造基盤があっても、有事の際に供給できる量が不十分な国には十分メリットがあるのでは?
平時に十分な量を備蓄しておけば問題ない、という発想が現実的ではないことが分かったのがこの戦争だと思いますよ。
まあ、少数もしくは特定の国の反対やサボタージュで機能不全に陥らないように、サプライチェーンを多重化冗長化しておく工夫は必要と思いますが。
日本のような高温多湿の国土では、いかに弾薬の製造能力があったとしても貯蔵施設には限度があります。
平時に大量に製造したとしても、いざという時には不足する事は目に見えています。
有事の際に弾薬を確保できるかどうかは、どれだけ多くの国と平時から軍事的な協力体制にあるかどうかにかかっていると思います。
弾薬倉庫を増やすと言ってますが、気候的な不安が残りますよね。
「ウ・ロ戦争の戦訓から、今年から弾薬備蓄量を10倍にしまーす。」
「作ったけど保存する場所が間に合わなかったわ。期限もあるし、総火演くらいじゃ使い切れないなー。」
「ただ捨てするのもったいあないなー。チラッ」
とか粋な事しないかねえ。
エストニアの提案はウクライナ支援のための砲弾調達の話で、「EUによる155mm砲弾の共同購入=40億ユーロ分/100万発相当」を「EU諸国の欧州平和ファシリティ(EPF)拠出金」で賄おうというものです。
あくまで臨時の措置で、EU諸国やEU域外の賛同資金提供国家にも必要に応じて弾薬を供給するという恒久的枠組みでは無さそうです。
記事を読む限り、EPFプール資金をウクライナ支援に使うことに表立った反対は無いようですが、同資金はEU加盟国内の企業発注限定というのが原則です。
議論になっているのは、EU域外同志国家へ資金提供を働きかければこの原則が毀損されかねい、ということかと。
スイスの会社からイタリア製Leopard1A2をラインメタル社が購入してウクライナに送ろうとしているが、スイス政府が反対しているらしい。
ここは、EU圏内へ発注でよいのではないでしょうか。
この機会にEU圏内で複数の生産拠点を整備しておくのは良いことでは。
生産設備増大への投資は、設備を有する国の公金を使用する形で。
今回の砲弾の代金は市価(米国同等)で。多少損はしても、将来への投資で。
いざという時に米国の巨大な潜在生産能力には頼りたいものですが、
緒戦では自国の生産力に頼らなければならないですから、
日本だと第一次大戦みたいな例って日露戦争かな、それだと大阪工廠に溜め込んでた砲弾の在庫を2日で使いきったという話をうろ覚えで…実際はどうだっだろう?