欧州関連

チェコ、資金を募って1万機のFPVドローンをウクライナに送る予定

チェコのiROZHLASは18日「国内のNGOが1億チェコ・コルナを集めて1万機のFPVドローンをウクライナに送る予定だ」と報じており、この支援は「ウクライナでの教訓に基づいて開発したドローンを実戦でテストする」という側面も併せ持つらしい。

参考:Český spolek chce poslat na Ukrajinu deset tisíc dronů. Jeho patronem je šéf armády Řehka
参考:High-tech trench warfare: 5 hard-won lessons-learned for the US from Ukraine

Breaking Defenseは「商用ドローンやFPVドローンは消耗品として扱うべきだ」と訴えている

チェコのiROZHLASは18日「数日以内に非政府組織のSkupina D(グループD)が1億チェコ・コルナを募る公募を開始する。この資金で1万機のFPVドローンをウクライナに送る予定だ」と報じ、この組織の名誉会長を務めるチェコ軍参謀総長のカレル・シェフカ中将も「これは軍が主導しているのではなく現役の予備役が参加する市民的な取り組みだ」と明かし、この支援は「ウクライナでの教訓に基づいて開発したドローンを実戦でテストする」という側面も併せ持つらしい。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

さらに参謀総長は「あらゆる経験をウクライナのパートナーは我々と共有してくれる。専門的なセミナーを企画して非常に貴重な情報を提供してくれる。彼らに数千機のドローンを与えれば新しいインパクトを残せるだろう」と述べ、ただ支援するのではなく「経験のフィードバック」や「実戦でのテスト」を通じてチェコに利益をもたらすと言いたいのだろう。

因みに米国のBreaking Defenseは19日「2023年の戦いはスローモーションの肉弾戦に加え、新しいテクノロジーが地雷原や塹壕を巡る過酷な消耗戦と融合する結果となった。ここから得られる5つの教訓に米国は耳を傾けた方がいい」と指摘し、その教訓の中には「小型無人機は質より量を優先すべき」という項目がある。

出典:United24

ウクライナ軍はロシア軍の電子妨害によって月1万機のドローンを失うこともあるが、5人の専門家は「小型ドーロンに電子妨害対策を施すよりも、依然として安価なドローンを大量に購入して使い捨てる方が費用対効果が高い」という見解で一致し、Breaking Defenseは「商用ドローンやFPVドローンは消耗品として扱うべきだ」と訴えているのが興味深い。

米陸軍は分隊レベルの「状況認識」と「偵察能力」を改善するため「RQ-28A」を調達中で、これはSkydio製クワッドコプター「X2」をミリタリー仕様に改造したものだが、低率初期生産分の調達コストは1機あたり322万ドル(30機分の契約額は9,980万ドル)もし、仮に量産段階に進んで1/10に値下がりしても30万ドル=4,000万円台、1/20に値下がりしても15万ドル=2,000万円台だ。

出典:U.S. Army photo by Spc. Casey Brumbach 手榴弾を搭載して空中投下するためのキットを取り付けたRQ-28A

どのような改造を施されているのか不明だが、小型ドローンは消耗品であると定義するならRQ-28Aは大規模戦争に不向きなのだろう。

関連記事:ウクライナで実証されたドローンと手榴弾の組み合わせ、米陸軍も演習でテスト中
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関連記事:砲兵の優位性を揺るがすFPVの大量投入、兵士1人であっても攻撃対象に
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関連記事:ウクライナ軍の自爆型ドローン、ロシア軍設置のネットを回避して攻撃
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関連記事:UAVがもたらす戦場認識力の拡張、ウクライナのオペレーター養成は2万人台に

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • ras
    • 2023年 12月 21日

    ドローンどうぶつえんに

      • ras
      • 2023年 12月 21日

      途中送信失礼しました。
      ドローン動物園に新参が。まあ無いよりはまとまった量来るのはかなりありがたいでしょうね。

      米国のドローンの値段は論外ですが、帯域を変える装置などはWi-Fiなどの民生で使われる既存の技術だと聞きました。
      それくらいは前提かもしれませんが、電子戦対策何も乗せなければ、今後普及するであろう前線の安価な対抗装置でドローンの影響力も弱まると思いますね。
      或いは米軍はそれが困難な技術と踏んでいるのでしょうか?

      5
    • もく
    • 2023年 12月 21日

    「小型無人機は質より量を優先すべき」
    「小型ドーロンに電子妨害対策を施すよりも、依然として安価なドローンを大量に購入して使い捨てる方が費用対効果が高い」「商用ドローンやFPVドローンは消耗品として扱うべきだ」

    貴重な教訓ですね。

    17
      • Easy
      • 2023年 12月 21日

      所詮、電波ですから。
      敵の電波妨害発生源に近づけば使えなくなりますが,逆に言えば離れれば依然としてドローンは利用可能です。
      分隊戦術としては、100メートル先の建物に敵がいるかどうか、を調べるのに安いドローンは非常に有効ですからね。飛ばして安全を確認出来ればヨシ、もし飛ばしたドローンが突如通信不能になってロストしたら,そこには何かリスクがあると分かります。
      今やドローンは歩兵の基本装備扱いですね。そしてロシアウクライナと他の国との温度差は広がる一方です。

      18
      • 名無し
      • 2023年 12月 21日

      ロシアのドローン運用教本で、市販FPVのファームウェアをカスタム版に入れ替える作業がイニシャライズ手順として入ってるの、ほんと好き。
      さらに、エラーが出てファームウェアを入れ替えられなかったときの暫定運用手順も入ってるの、もっと好きw

      1
    • 猫猫猫
    • 2023年 12月 21日

    >>この組織の名誉会長を務めるチェコ軍参謀総長のカレル・シェフカ中将も「これは軍が主導しているのではなく現役の予備役が参加する市民的な取り組みだ」

    我が軍は参戦していない。
    義勇兵に参加してるのは休暇を取って自発的に参加している軍人たちだと同じくらいの意味かな

    25
    • たむごん
    • 2023年 12月 21日

    軍事分野のコストパフォーマンスが、兵士1人・装甲車戦車1両・大砲1門破壊するのに、お金がいくらかかるのかですからね。
    そこに、時間・ロジスティクスへの負担を考える必要がでてきます。

    FPVドローンは、小さい・軽い・安い・一定の破壊力があるとなれば、極めて優れた武器と言えます。
    砲兵が物理・数学などに習熟するような必要性もなく、スマホ・FPSゲームなどに習熟している、練度の低い若い兵士を訓練しやすいという特性もあるでしょう。

    ウクライナ戦争、ナゴルノ・カラバフ戦争、ガザ戦争で、ドローン活用が目に見えて大きく変わりましたね。

    6
      • kitty
      • 2023年 12月 21日

      いいえ、どこかで記事になっていましたが少なくとも選抜射手になれるくらいの兵隊としての基礎が必要です。
      最前線の数百いや数十mのところでプロポを操作して高価目標を決めて突っ込ませるには相当の胆力が必要です。
      米軍の使ってる衛星回線で操作する様な高価なUAVならゲーマーでもいいでしょうけど。

      3
        • たむごん
        • 2023年 12月 21日

        静止目標は、初心者でも攻撃しているようです。
        最前線の移動目標は、仰る通り胆力が必要になるでしょうね。

        下記、少し長くなりましたが、置いておきます。

        >…ドローン操縦の初心者は動かない監視塔や置き去りにされた戦車、塹壕など不動の標的を攻撃している。ウクライナ軍では多くの兵士がドローン操縦の訓練を受けている。ロシア軍に侵攻されるまではドローンを触ったことがなかった人がほとんどだが、訓練すれば誰でもすぐに実戦で活用できるので、すぐに上達する。また最前線の塹壕などから攻撃しないで基地や部屋の中からもドローンを操縦して攻撃を行うことができることから、高齢者や負傷兵で最前線に行けない人でもドローン操縦でロシア軍を攻撃してウクライナ軍に貢献している人は多い。

        (11月18日 ウクライナ軍、FPV神風ドローンで走って逃げるロシア軍の輸送車を挑発したり迎撃を回避しながら攻撃 佐藤人)

        3
          • kitty
          • 2023年 12月 22日

          まあそりゃ、ちゃんとゼロインしてあるスコープ付きライフルを新兵に持たせればそれなりに当てられるみたいな話かと。
          まあ今の戦況では死ななければ新兵もあっという間にベテランでしょうけど。

          UnrealEngine5という最新ゲームエンジンでSWATのボディカム動画風ゲームを作ったら、リアルすぎて実写取り込みだろうと物議を醸しだしたことがちょっと前にありました。
          これだけ素材がネットに上がっていると、ドローンオペレーターのゲームとか作る不謹慎者は出てくるでしょうね。
          CoD MWなんかで既にドローンを操作して、ジャベリンミサイルのターゲッティングをするステージがありました。あれはAC-130のステージも衝撃的でしたっけ。
          ゲームエンジンを使ったドローン訓練用ソフトは、マジでどこかが作りそうです。

          1
            • たむごん
            • 2023年 12月 22日

            情報ありがとうございます、UnrealEngineは凄いですよね…。
            CoD MWのターゲティング動画、後ほど拝見します。unitiyもそうですが、ゲーム制作エンジンの進化は見ていても驚きます。

            BF2042というゲームがあるのですが、FPVのドローン攻撃が取り入れられているんですよね。
            コントローラー、キーボード・マウス、ゲームによっては、スマホで操作するゲームの3D性能も向上しています。

            ドローンのUIを、使いやすいものに替えていけば馴染みやすく、一定の訓練後も効果が高いでしょうね。

        • たむごん
        • 2023年 12月 21日

        上記の追記です。
        移動目標に対する、ドローン攻撃について。

        >動いている戦車や逃げようとしているトラックなどはドローン操縦のスキルがそれなりに必要なので、ドローン操縦に慣れている兵士が行っている。

        2
    • もり
    • 2023年 12月 21日

    1万機とか下手したら1ヶ月分だろね

    6
    • panda
    • 2023年 12月 21日

    ウクライナ軍もロシア軍も妨害装置を用い出してますからね
    今回の戦争はともかく将来的には妨害に対抗する手段を持たない安価なドローンが空から駆逐される事も考えられる

    1
    • ヤギ
    • 2023年 12月 21日

    こういった小規模の支援が続けば続くほど長引いて戦死者が増え、戦後復興が遠のいていくんだな。このくらいの支援では到底ロシアに対してウクライナ有利の終戦は迎えられない。

    11
      • 歴史と貧困
      • 2023年 12月 21日

      チェコなど中欧の国々に取ってみればウクライナは、兵器の実験場&ロシアへの肉壁、くらいの価値なのではと。

      9
      • タチコマァ
      • 2023年 12月 21日

      支援を増やせって意味かな?
      逆だとすればウクライナからすればありがた迷惑では?

      2
      • paxai
      • 2023年 12月 21日

      金額にしたら6.4億円程度ですから。数にしちゃ多いが効力は低いでしょう。
      (こうしてみると日本の45億ドルって強力な支援だったりする?これで物資やら武器やら色々調達するだろうし。)

      3
        • 765
        • 2023年 12月 22日

        戦争前のウクライナの国家予算が280億ドルほどなのでその16%
        日本で例えるなら17兆円ぽんとくれるようなもんだし強力でしょうなぁ

        1
    • nachteule
    • 2023年 12月 21日

     現状のFPVドローンは攻撃だけに限れば既存の携行ロケット弾と携行対戦車誘導ミサイルの中間位の価格にならないと装備としては微妙な感じかな。
     将来的に電子妨害対策でINS+GPS+TERCOMみたいなAI画像マッチング(地形とターゲット判別)みたいな全部盛りがあって高くなるにしても高額な部分をモジュール化してハイローみたいな切り替えも有るかもね。

      • ras
      • 2023年 12月 21日

      ハイテクモデルの難点は鹵獲されたらそれが漏れるという点もあります。まあ自爆装置でもつけるのかもしれませんが、だとしても電子線でやられたら一発でミサイル以上の金額が飛ぶなら本末転倒ですね。

      2
      • kitty
      • 2023年 12月 22日

      ふと国産ドローンになるとお値段いくらかなと調べてみたんですが、ヤマハの農薬散布用のがペイロード10kgで150万円でした。
      国産と言ってもどれだけ部品を中国に依存しているかわかりませんが…。
      高度な自動操縦機能とか自爆ドローンには不要な機能が付いているのでもっと安くなりそうなものですが、いざ自衛隊が買おうとするとなぜか値段が上がりそう。

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