米陸軍は戦力構造の大胆な改革=伝統的な武器システムからドローンとAIへの移行に着手したが、まもなく英国でも国防戦略の見直しが発表する予定で、Timesも「20-40-40と呼ばれる新しい戦闘教義が提示される」「敵と交戦する能力の80%を無人戦力が提供する」と報じている。
参考:20-40-40: behind the British Army’s new military strategy
米英が具体的な戦力構造の変更に動き出したということは「将来戦場に対応するための要件が固まった」という意味
ヘグセス国防長官は今月1日「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ハンヴィー、JLTV、M10 Booker、ストライカーの調達中止、AMPVの調達削減、AH-64DとGray Eagleなどの旧式機材廃止、無人戦闘車輌=RCV計画の中止、新型自走砲を巡る競争の一時停止などを発表、ドリスコル陸軍長官は「改革に適応出来ず主要企業が防衛分野から撤退しても構わない」「トランプ政権は改革のための痛みを容認している」「変化を始めなければ死が待っている」と述べた。

出典:Oklahoma National Guard photo by Sgt. Elliott Kim
ミンガス副参謀総長も陸軍航空協会の講演で「我々は有人システムから無人システムに、プラットホーム中心からセンサーとネットワークへの接続型に世代交代を進めている最中だ」「我々は決断を下しているところで、必要な戦力構築に今直ぐ取り掛かるのか、次世代のパイロットを装備不足、訓練不足、多くのリスクに晒したままにするかだ」「結局のところ資金が少ないため競合する優先順位のどちらかを選ばなければならない」「そのプレッシャーの中でも我々は近代化を選択している」「これは無料ではなくレガシーな構造を犠牲にすることで手に入れている」と指摘。
生まれ変わる米陸軍の戦力構造がどうなるのかは今のところ不明だが、断片的な手がかりをまとめると「改革の期限は2027年」「伝統的な武器システムからドローンとAIへの移行」「1個旅団戦闘団に必要なドローンの数は約1,000機」「FPVドローンで兵士1人の交戦距離をmからkmへ拡張」「ドローンで拡張された認識力に対抗するためカモフラージュ技術と分散の重要視」「徘徊型弾薬や自爆型無人機など低コストな長距離攻撃能力を優遇」「小型無人機を如何に遠距離へ投射するか、各戦場に独立したローカルネットワークを如何に構築するが課題」といったところだが、英国も陸軍の大改革を示唆している。

出典:Ministry of Defence UK
まもなくスターマー政権は国防戦略の見直しを発表する予定で、Timesは「国防戦略の見直しでは『20-40-40』と呼ばれる新しい戦闘教義が提示され、これは兵士の死傷者を減らすことを目的にしている」と報じている。
“無人化技術を取り入れた新しい概念の下で戦車など重装備が提供する能力は全体の20%に過ぎず、この能力は戦闘の後半まで最前線から離れた場所に配置される。精密誘導兵器、自爆型無人機、徘徊型弾薬、ドローン、砲弾など使い捨てシステムが提供する能力が40%、残りの40%はMQ-9など使い捨てシステムよりも高価だが消耗も可能=再利用可能な偵察もしくは攻撃可能な無人機が提供する能力だ。チャレンジ3に乗り込む兵士も自爆型無人機を運用する”

出典:British Army
“この大胆な改革はウクライナとロシアの戦いから得られた教訓に基づいており、国防省によればロシア軍はウクライナ軍がドローン攻撃で効率的に装備を破壊するため、戦場で重装備ではなくバイクを使用するようになったと言う。さらにウクライナのザゴロドニュク元国防相はNew York Timesの取材に「最近の前線は10km~30kmの深さを双方がドローンによって制御している」「この深さの霧は完全に晴れている」と語っており、国防戦略の見直しはドローン、自律性、AIに焦点を当てて従来の戦力を強化することが目的だ”
Timesが言及した内容は国防戦略の見直しの一部に過ぎないものの、陸軍の改革は米陸軍と同じ方向を向いており、特に興味深いのは「敵と交戦する能力の80%を無人戦力が提供する」という具体的な戦力構造で、4年前に陸上戦の主体が無人戦力になると、その大部分が自爆型無人機、徘徊型弾薬、ドローンになると誰が想像出来ただろうか?
屋根付きの10式戦車と90式戦車
まだ試作&評価中とのことで、これから更に形状が変わる可能性が高いとの事です。 pic.twitter.com/aYs3TNUa11— Hound @C105 30日(月)東5 ポ-60b (@Hound_7) May 25, 2025
因みに米英が具体的な戦力構造の変更に動き出したということは「将来戦場に対応するための要件が固まった」と強く示唆しており、日本はどんな戦場を予測しているのだろうか?
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※アイキャッチ画像の出典:British Army
記事の趣旨からは外れますがジョンソン首相→スナク首相→スターマー首相と首相が変わるたびに国防戦略の見直しと策定してる印象なんですがそんなコロコロ変わって大丈夫なんだろうか
我が国も外から見るとそう見えてしまう可能性大。
自公政権である限り、あんまり変わらんだろうという日本人の感覚とはずれがありそう。
共和国時代の古代ローマ重装歩兵が前列に若者、中列に働き盛り、後列に年長者の三層構造だったのと似てる
ウクライナ欧州平和維持軍にて、英陸軍の稼働戦車が50両以内、数万人でもローテーションを考えれば全軍派遣という話しもありましたからね…
イギリスは海洋国家なわけですが、欧州大陸覇権を見据える(陸軍増強)ならば歩兵から増やす必要もあるわけで、どの程度本気なのかは気になっています。