ダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は5日、未だにドイツとの主導権争いが結着せず次期戦闘機の開発に取りかかれていないと明かした。
参考:FCAS warplane program stalls, as Dassault and Airbus fail to reach key industry deal
1,000億ユーロの投資を宣言したドイツがFCASに投資するのか、F-35Aに投資するのかフランスは注目している
フランス、ドイツ、スペインの3ヶ国が共同開発するFCASプログラムは有人戦闘機、エア・チーミング可能な無人戦闘機、同機が搭載する新しい兵器類で構成されたファミリーシステムの開発を目指しており、各国の予算承認を得るためワークシェア比率や権利関係の問題を乗り越え開発フェーズ1Bへの移行で合意したことになっているのだが、実際には主要元請け企業=仏ダッソー、独エアバス、西インドラの内、ダッソーとエアバスが有人戦闘機開発の主導的地位を巡って合意に達していない。
ダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏も5日「我々は合意するため可能な限りを尽くしてエアバスの署名を待っている=ボールはドイツの手の中にある」と明かしたため、依然としてFCASプログラムは主導権争いから抜け出せずにいることを改めて浮き彫りにした格好だ。
トラピエ氏の説明によるとFCASプログラムには7つの技術的柱があり、それぞれの柱は主導的企業とそれをサポートする企業で構成され有人戦闘機の開発はダッソー、無人戦闘機の開発はエアバス、センサーの開発はインドラ、エンジンの開発はサフランが主導して行くことになっているらしい。
しかし有人戦闘機の開発についてドイツがダッソー主導ではなく「ダッソーとエアバスが対等に主導することを要求、これについてダッソーは「FCASを開発するための知識はフランスにしかなくドイツはこの事実を受け入れなければならない。プログラムを主導する資格があるのは明らかにダッソーだ」と主張、この状況を的確に表現すると「ドイツにはフランス人がドイツの金でフランス好みの戦闘機を作ろうとしていると考える人間がいて、フランスにはドイツ人が自分たちの企業秘密を盗んでドイツ好みを武器を作ろうとしていると考える人間がいる」という意味だ。
この状況についてトラピエ氏は「このまま争いが長引けば有人戦闘機開発のためダッソーが確保している技術者を一旦他のプログラムに配置転換する必要があり、有人戦闘機の完成時期が大幅に遅れるかもしれない」と警告、さらに「ドイツはBuy Europeanを語る一方で米国からF-35Aを購入するよう圧力を受けている。1,000億ユーロの投資(ウクライナ侵攻を受けてショルツ首相が国防予算の大幅増額を発表)を宣言した我々のパートナーはFCASに投資するのか、F-35Aに投資するのか注目している」とも述べており中々興味深い。
本来FCASプログラムは昨年夏に開発フェーズ1Bに移行してなければならないのに主導権争いのせいで半年以上も計画が遅れ、ドイツが1,000億ユーロの投資先として最初にFCASを選ぶのか、それともF-35Aを選ぶのかでフランス側は「FCASプログラムに対するドイツの本気度を推し量る」という意味かもしれない。
因みにショルツ首相は国防予算に対する1,000億ユーロの投資を発表した際、最も優先される防衛プログラムの筆頭にFCASプログラムを挙げていたが、果たしてダッソーとエアバスの主導権争いは決着するのだろうか?
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※アイキャッチ画像の出典:AIRBUS
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エアバスってフランス企業かと思ってた…
フランス企業であってるのでは?けどダッソーは確実にフランスだよな・・・。あれ?
本社はフランスにあるけど仏独英西の共同出資会社じゃなかったかな。
エアバス自体が分裂状態なのかな?
エアバスは、単一会社ではなく、複数の会社の共同体みたいな特殊な組織だそうです。
ドイツ側のエアバス社に主導権を取らせたいらしいです。
解説、ありがとうございます。
— 複数のシステム開発会社を使った結果、うまくいっていない日本の銀行があると聞いていますから、なかなか大変なのではないかと思います。
— もちろん問題は「複数のシステム開発会社を使ったこと」ではなく「プロジェクトの成功を最優先にするための開発体制について決断できなかった発注側」にもあると思うのですが、こちらのプロジェクトではそれに外交問題が加わるわけで、悩ましいと思いました。
すでにドイツはF35A導入を決めたとか語る人もいるが、どうなのかね
それは核プラットフォームとしてだから競合しないと思う
日本もF-35を運用してるけどF-3作ろうとしてるし
諦めて素直にF-35Aにしておけば良いものを。
タイフーンも中途半端だし。
ウクライナの件で目を覚まして、真面目に取り組んで欲しい。
い つ も の
ウクライナの件でドイツが軍拡へ舵を切ったとなると、ドイツ側の主張はますます強くなりそうでフランス的には頭が痛いですねぇ
急ぐから、F-35Aとタイフーンの最新型の両方を買え。
第6世代は、テンペストにしとけ。
もう別々に作った方が、結果的には早くて安くて軍ヲタ的に楽しい…とかいかんのかしら…?
全ては貧乏が悪いのです
エアバスだと今はしれーっとユーロファイターを作ってなかったけ?
そうなると最終的にはイギリスが噛んでくるし、場合によっては日本も噛んでくるから、フランス政府が乗ってくるかな?
結局ダッソー製になるのでは。
ユーロファイター作ってる会社がエアバスグループってだけじゃない?そもそもエアバスはフランス企業な気が・・・。
これはアレでしょ、なんとか渋々と決着を付けたとしても、
あとでまた何度も蒸し返されてその度に開発が遅れるやつでしょ。
もうプロジェクトが墜落する未来しか見えない・・・。
もう既にその「何度」か目なんですよ…
A400Mも大分迷走してたからねぇ
ドイツは政府が主導した他国との合意を国内の議会がひっくり返そうとするのが問題
今回の件だって有人/無人の棲み分けもそうだけど、次期戦闘機は仏で次期戦車は独が主導するっていう合意があったはずなんだけどね
良くも悪くも、何が何でも主導権を取ろうと努力の積み重ねで外交力も付くのだろうとは思う
結局フランスが離脱して単独開発&ドイツがF-35で我慢orテンペストに合流になるという、ユーロファイターとラファールの二の舞になる気しかしない…。
テンペスト「こっち見んな」
結局共同開発はこうなるんだあ・・・。最初はイギリスが単独でよく分からんプログラム作るから、また英国面発揮したかと思ったら、まさかあっちの方が上手くいくとは( ゚Д゚)
>また英国面発揮したかと思ったら
イメージ図とか見た際に、自分もそう思いました。
そして、F-3もテンペストに!
大型制空戦闘機たるF-3と、OCAシステムの前線司令塔/中型戦闘爆撃機たるテンペストでは機体特性が異なるから、テンペストに合流することはまずないと思います。
F-3にはテンペストよりも高い制空性能や対ステルス機対処能力、長大な航続能力や重武装できる搭載能力などが求められています。
ただし、ミサイル・エンジン・レーダー等々と、主要装置で日英共同開発の計画があがって来ているから、
共通テクノロジーを使用した姉妹機的なモノになる可能性はあるかと。
そしてテンペストはそもそもそうした機体サイズやサブシステムを独自に選択出来る計画ですからね。
おそらくスウェーデンはイギリスの物とは似ても似つかない「単発小型のグリペン後継テンペスト」を開発するつもりでしょうし。
機体特性が違うからテンペストへの合流はない、という欄には説得力を感じませんね。
個人的にはテンペストの掲げる「フルオープン」が日本にはむしろハードルになると思っていて、それ故に日本のテンペストへの完全な参加はないと考えますけどね。
今やってるサブシステム単位の技術実証までの共同研究でお互い出せる範囲の技術を出し合う、くらいでちょうど良いんじゃないかなぁ。それ以上を求めると結局は主導権争いで揉めるハメになる。
という欄→論、ですorz
テンペスト計画の理念は必ずしも参加国でハードウェアを共通化する必要はなく、共同研究で得られた技術を自国向けに改修するといった形も認めるというものですから、結局日本が開発する必要があるので日本のテンペストへの完全な参加はないでしょう。
テンペストに合流しようと思っても、F-3とテンペストにそれぞれ要求される性能はかなり異なるのでテンペストとは似ても似つかない全く別物の戦闘機が必要となり新規設計が必要となるし、F-3が実戦配備予定の2035年には間に合わないでしょう。
よって、日本がテンペストに合流することはないでしょう。
あと一部部品はともかく、主要構成品(レーダ/エンジン等)を丸ごと共通化する可能性は小さいと思います。
主要構成品の要求性能はシステム-基本設計で定めますが、共通化する場合は日英で要求をすり合わせる必要があります。しかし、F-3(大型制空戦闘機)とテンペスト(中型戦闘爆撃機)は要求性能が相当に異なるものと予想されます。
機体規模はエンジン推力/燃費に直結し、撃破目標/戦闘環境の差はセンサや火器管制能力にも影響を与え、異なる仕様のすり合わせは開発期間やコスト増大を招きます。
テンペスト計画の理念や、日本単独でシステム設計に着手していることからも、日英F-Xの無理な共通化は考えにくいと思われます。
違う視点では両計画とも自国主導を掲げており、開発経験や改修自由度からも、主要構成品は自国企業に任せたい意向はあると考えます。また空自/英空軍も自国技術に基づく要求見積りをしていると考えられ、過度な共通化は要求達成からも望ましくないと思われます。
>テンペスト計画の理念は必ずしも参加国でハードウェアを共通化する必要はなく、共同研究で得られた技術を自国向けに改修するといった形も認めるというものですから、
そう言えば、現行の日英共同開発と、テンペスト計画に参加した時の違いって何だろう?
JNAAM(ミサイル)はともかく、エンジンとJAGUAR(レーダー)はあくまでも技術の共同開発ですよ。
テンペストに搭載されるエンジンとF-3に搭載されるエンジンは別物です。
F-3の方が高出力などのエンジンになると推定されます。
また、JAGUAR(次世代RFセンサ)はあくまでもレーダ技術の共同開発であり、搭載レーダの共通化はまた別個の案件となります。
JAGUARは日英の知見を集約し、両国で1台ずつ計2台のレーダ技術実証機を作成する手筈になっています。搭載レーダ含むサブシステムの共通化の程度は、今年度からの共同分析の結果を待つことになります。
そこら辺の事は判っているので、「共通ユニット」ではなく「共通テクノロジーを使用した」と記しました。
でもイギリスがなんか新しいこと始めたら上手いこといって新時代のトレンドになるってパターンは結構あったと思う。
一般的な文化に関することならね
軍事に関してもかなり多いよ。
戦車とかね…
やってる場合かって感じだが、まあそうなるか。
主導権争いもそうだけど、要件の擦り合わせ出来てるのかな?
F35やユーロファイターもそれで苦労してたけど
結局ドイツの金が無いと進められないから技術のあるフランスも強行には出られないのよね
それにしても単年度13兆円の軍事費とかドイツは極端過ぎんだよないつもいつも
ものすごく雑にわかりやすくいうと
ダッソーとエアバス内の旧ダイムラークライスラー・エアロスペース社との争いだろう。
まあ旧アエロスパシアルも多少は関わってるだろうけど
もうフランスは単独で作っちゃいなよ!
そして完成した艦載機型を日本も買って次期DDHに載せるという皮算用
普通にF-35Cでよくね?
フランスが作るなら、ラファールみたいに格好いい姿を期待できる。
F35は、まあ、うん、カッコイイネ?
F-35はアングルによって「うわ、ずんぐりむっくりしとるな…」となる時と「スタイリッシュ!未来の戦闘機みたい!」ってなるときの差が激しい
戦闘機界の多部未華子なんだ……