F/A-18E/Fが戦術核兵器B61/Mod12の統合機種から除外されたことを受け、ドイツのショルツ政権はトーネードの後継機としてF-35A導入の検討を開始したと報じらている。
参考:Christine Lambrecht bereitet Kauf von Kampfjets vor
参考:Germany reconsiders the F-35 to replace the Tornado
どうしようもない理由とは言え米国に利するF-35A導入へ回帰したドイツをフランスは複雑な想いで眺めているに違いない
NATO加盟国のドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコは米国と核兵器を共有する協定(ニュークリア・シェアリング/NS)を締結しており、米国は戦術核兵器「B61」を供給する代わりに締結国はB61を運搬可能な航空戦力を維持しなければならず、ベルギー、オランダ、トルコはB61の運用能力を備えたF-16をドイツとイタリアはトーネードにB61を統合することで協定の義務を果たしていたが、両機の後継機問題が浮上してイタリア、ベルギー、オランダ、トルコの4ヶ国はB61統合が約束されていたF-35Aを選択(トルコのF-35A導入はS-400問題に関連してブロックされた)して協定の義務を引き続き維持することになっている。
問題は欧州や国内の防衛産業基盤に配慮するためF-35A導入を蹴ったドイツで、タイフーンをトーネードの後継機として導入するため米国にB61の運用能力統合を打診したものの「B61統合作業(米軍機ですら4年~5年もかかる)には時間がかかるためトーネードの退役までに到底間に合わない」と回答、そのためメルケル政権はB61/Mod12統合に含まれていたF/A-18E/Fを30機、トーネードECRが担っていた電子作戦任務を引き継ぐためEA-18Gを15機、残りのトーネードを更新するためタイフーンを90機導入すること決断したが国内の強い反発に遭い最終決定を2022年に先送りした。
さらに昨年9月の総選挙でキリスト教民主同盟が与党第1党の地位から転落→NS体制からの離脱や核兵器撤去を主張する社会民主党主導の新連立政権が成立してしまいトーネード後継機問題が危ぶまれたもののショルツ新政権は「NS体制維持で連立政権を構成する3党が合意した」と発表、前政権の方針(B61の運用能力を統合したタイフーンではなくF/A-18E/FやEA-18Gの導入)を引き継ぐ公算が高いと見られていたが米国家核安全保障局(エネルギー省傘下)が戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外したため状況が一変してしまう。
幾つかの海外メディアはB61/Mod12のファクトシートからF/A-18E/Fの記載が漏れたのは手違いではないかと予想していたが、国防総省は米国科学者連盟の指摘に対して「F/A-18E/FにB61/Mod12を統合する必要はなくなった=1991年以降の米海軍は核兵器運用の運用をSSBN限定しており、再び空母で核兵器の運用が再開されてもB61/Mod12が統合されたF-35Cがあるという意味」と答えたためF/A-18E/FへのB61/Mod12統合の可能性は完全に消滅してしまった。
このような状況を踏まえショルツ首相とランブレヒト国防相はトーネード後継機について協議を行い「最終的にF-35AとタイフーンECR/SEADの導入検討に入った」とドイツ通信社が報じており、この決定はF-35Aが核兵器運搬用に調達を予定していた/A-18E/Fの代案になりえるか、タイフーンECR/SEADが電子作戦任務用に調達を予定していたEA-18Gの代案になりえるかを明らかにするものだと説明している。
NS体制を対外的に維持すると宣言してしまったドイツは核兵器の運搬能力に空白期間が生じるタイフーンへのB61統合を今更選択する訳にはいかず、再びF-35A導入に回帰するという手段は最も現実的な選択肢といえるもののスイスやフィンランドにF-35Aではなくタイフーン採用を強力に提案していたドイツ自身が結果的にF-35A導入すれば今後「欧州の国はF-35Aではなくタイフーンを採用すべきだ」と言えなくなり、レガシーホーネットやAV-8Sの後継機にタイフーンではなくF-35を導入したいスペインにとってもドイツのF-35A導入は免罪符としての効果があるためエアバスにとって最も好ましくない決定だ。
さらに欧州諸国のF-35A導入を事あるごとに批判(欧州の国は欧州製の戦闘機を採用すべきという考え方)するフランスにとっても「欧州製の次期戦闘機を共同開発するドイツが少量でもF-35Aを導入する」という事実は好ましくないが、F/A-18E/FがB61統合から除外されてしまった以上F-35Aの導入へ回帰するというドイツの決定に正面から反対するのは難しいだろう。
ドイツはP-3C後継機問題で仏提案(新型海上哨戒機/MAWSの繋ぎとしてアトランティックIIのリース)を蹴ってP-8A導入を決定し、合意していたPAH-2/ティーガーのアップグレード(Mk3仕様)開発もAH-64Eへ乗り換える動きを見せているためマクロン大統領はメルケル政権を相当恨んでいたが、どうしようもない理由とは言え米国に利するF-35A導入へ回帰したドイツをフランスは複雑な想いで眺めているに違いない。
関連記事:先延ばしにし続けたドイツのトーネード後継機問題、米国にも梯子を外され八方塞がり
関連記事:仏独の新型哨戒機開発の行方、フランス人はP-8Aを導入したドイツを誰も信じていない
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
日本と違ってドイツは核を運用する権利すら行使できると、
これは傍目には優位に見えるようで、この状況もまたアメリカによるドイツを同盟国として縛る政策の一環でもあるんだな
こうやって自主的な政策や開発は自ずと制限されたり潰されて、アメリカの都合が優先となる
トルコみたいに唯我独尊を目指せる国ばかりではないもんな
核兵器を運用できると言っても、起動と管理はアメリカ軍だし
起動されても自由に使えるのは自国領土内だけなんで、日本と比べて優位とかいう話ではないかと
戦車の群れが押し寄せてくるのが割と現実的なドイツ(というかヨーロッパ諸国)がロシアに
「刺し違える覚悟があるんだろうな?」って脅しを掛けてるにすぎないというか
あと、トルコって唯我独尊っていうかエルドアンの逆張り気質なだけではって個人的に思う最近
まだS-400導入云々のあたりはリスクと利益を天秤にかけた大胆なツッパリかなと思ってたけど、トルコリラ暴落のくだりとかは
言い方は悪いけど、フェイクニュースに引っかかって”真実を発見”した人の言動とそっくりだなと
で、なにが言いたいのか説明を
経済的に発展した国が次に国際的な自由を指向するのは単なる歴史の法則に過ぎないし、エルドアンでなくとも自然とトルコがそうなるのに何の不思議があるのやら
書いてある通りだけど
発展に伴う自主独立じゃなくて、ポピュリズムと陰謀論が悪魔合体して進んでるのが今のトルコなんじゃないのっていう
少なくとも、どの新興国も「インフレも自国通貨安も欧米の陰謀で、金利を下げれば解決する。反対するやつはクビな」とは言い出さなかった
それは多分にトルコへの偏見だね
エルドアンは国際的にはキワモノに見えるが、アタチュルク以降の近代トルコの流れからすれば生まれるべくして生まれたんだよ
もともとトルコの立ち位置は西側価値観とは異なる、
やがてエルドアンが去ってもトルコの外交政策はゆっくりと自立を目指すと読むべき
トルコってもとから数年単位で安定してはクーデターが繰り返されてたからなぁ…
世俗派とイスラム至上主義でずーっと行ったり来たり
いやぁ、陰謀論への傾倒は歴史的経緯で説明できないししていいもんでもないんじゃ…
それで説明して良いのはS-400導入のゴタゴタやらドローン周りのゴタゴタくらいなもんで
政治でもなんでもない「インフレを抑えるためには政策金利を上げろ」と言う単なる事実を
「僕のすごいアイディア!」
で逆方向に突っ走ろうとした上に、それを渋った中央銀行の副総裁を更迭したりは明らかにエルドアン個人のヤバさ
目先しか考えない君だね
キワモノを大統領に選ぶ民意の根底に何が潜んでいるのかを察する知性が足りない
「キワモノを大統領に選ぶ民意の根底に何が潜んでいるのか」っていう表現で相手に対して察する知性が足りないとかうのはどうかと思うわ
たとえドイツ国内においても核の使用には米軍とNATOの許可が必要ですよ
(起爆コードは一貫して米軍が管理しているため、ドイツのみの自由意志ではいかなる状況でも使用不可能。また核兵器そのものもドイツ国内で保管され、有事の際はドイツ軍が輸送するとはいえ、あくまでNATO全体の安全保障を目的としたものであって、ドイツ一国の安全保障を目的としたものではない)
この程度の話のどこから陰謀論だの発見だの妄想がわいてくるのか、
君の想像力こそわかんないよ(笑)
ドイツには核の運用権利はありません、ドイツに配備されている核を誤解しないで下さい。
あれはNATOの核シェアリング政策の一環としてドイツの空軍基地内に貯蔵して前方展開させて
いるだけで、ドイツは場所貸しをしているだけでドイツ独自の核抑止力として使う事は出来ません。
このあたり理解してないと、なんで日本と同じWW2敗戦国のドイツが(ついでに言えばイタリアも)
核を持てるんだ?ってなるんですが、非核保有国として核の傘に入りたければ配備や貯蔵ぐらいは
協力しろってだけです。
しかも使われるのは自国内に雪崩れ込んで来たワルシャワ条約軍の撃退用でしたから、核を持てて
良い事なんてこれっぽちも無いです。
でもって、日本は非核三原則で「持ち込ませず」を謳ってしまって、核の傘に依存しながらドイツや
イタリアの様な義務を果たして無いってあたりに不満持たれてるわけです。
(現実は「持ち込ませず」の部分は有名無実化してますけどね)
何回目だ、ボーイングへの死体蹴りは……
まあ…。
そりゃF-35つかうよね。
おとなしく他国の中古F-16買えばーとはおもった>ドイツ
おそらく米国がドイツにF-16を「販売させない」
F-16は中小国以下の国や政治的に上位機種を売れない機種にもうなっているので…
ドイツの採用を当て込んでただろうから、F/A-18EFのライン維持は喫緊の課題だろうね
クウェートの採用しか今の所アテにならないから、
インドやマレーシアへの採用を今以上に本気でねらってくるだろうな
なんで武器の統合にここまでかかるんだろう?
投下試験と安全距離での投下のプログラム以外に何が必要なんだろうか
ソフトウェアが進化しすぎていて統合するにもコードが膨大で機密にアクセス出来る人材のリソースが足らず簡単なものではないから
なんとなくですが、米国の返答はお断り納期と言うか、要はドイツだけの為に
そんな面倒な事はやりたくない
既存の適用された機体を買えよって米国の意思を感じますが。
元々F-35が欲しかったところに横槍でタイフーンになったんじゃなかったっけ?
グダグダとはいえ結果オーライかな?(エアバスとボーイングは知らない)
少なくとも、スペインにとってF-35Bは必須だよね。
F-35Aも入れたいだろうけど、どうかな?
ボーイングは、益々レガシーホーネットの延命サービスをしないと。
日本で製造しているF-35AにもB61投下能力はあるの?
昨年10月にB61の統合設計認証プロセス終了したところですから、現在製造中の機体にはないでしょうね。
今後導入する機体には運用装備を追加すれば可能でしょう。
統合アニオニクスになると、わざわざその部分だけシステム上から削除したり
切り離す事は面倒なので、制御ソフトは内蔵されたままでも、コックピットに
その類いの操作パネルがあればそれを撤去して盲蓋するぐらいではないでしょうか。
参考に
リンク
F-35導入を主張しメルケル政権から更迭された元空軍参謀総長も草葉の陰で喜んでいるでしょね。
勝手に殺すなw
性能的にも開発時期(=退役時期)的にも1世代違うTyhoonとF-35を対等な比較対象かのように言うのは最初から無理だったんですよね。日本が第4次FXで採用機体を検討していた時も、エアバスは性能的には周回遅れのTyhoonをF-35と同水準と言って日本のオタクから失笑を買っていましたが…。
一時期運用状況がボロクソに叩かれていたドイツ軍ですが、空軍力は依然として欧州防衛の中核と言って差し支えない規模を維持している(期待されている)訳で、ドイツ空軍の機体選びはこの先の10年20年で重要な要素になってくると思います。Tyhoonを中心とした配備を続ける場合、最初期ロットのTyhoonが減り始めFACSの数が揃うまでの間が戦力的な空白になることは容易に想像できます。そうでなくともロシアの航空戦力は順次第五世代で置き換えが進む中で、Tyhoonからなる航空部隊では質的劣勢が募るのは避けがたいでしょう。日本がF-2と次期戦闘機の隙間をF-35で埋めようとしているように、ドイツ空軍も一定数(少なくともTornadoIDSが担っている任務を代替できる分は)配備する事を考えるべきだと思うんですよね。
そんなにアメリカ製ステルス機が嫌なら、もうNS協定破棄してフランスからラファールとASMPミサイル買えよ