ダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は26日、将来戦闘航空システム(Future Combat Air System/FCAS)のワークシェアに関するドイツとの協議が泥沼化するとプログラム自体が危うくなる可能性に言及して注目を集めている。
参考:Franco-German Dispute Stalls New European Fighter-Jet Plans
参考:Europe’s Sixth-Gen Fighter Program ‘Hangs In Balance’ As French Dassault, German Airbus Squabble Over ‘Lead Role’
フランスは自分たちに任せろというのが本音で、ドイツは金を出した範囲で口をだすというのが本音なのだろう
フランス、ドイツ、スペインの3ヶ国が共同開発するFCAS=有人戦闘機、エア・チーミング可能な無人戦闘機、同機が搭載する新しい兵器類で構成されたファミリーシステムはワークシェア比率や権利関係の問題を乗り越え開発フェーズ1Bへの移行を果たしたが、平等なワークシェアの構造が主導的な立場の存在を否定しているためフランスとダッソーとドイツのエアバスの間で主導権争いを発生させており、ダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は「ドイツとの協議が泥沼化するとプログラム自体が危うくなる」と26日に言及して注目を集めている。
つまりフランスとしてはFCASを開発するための基盤技術は殆ど我々が保有している(ラファール開発経験や技術を持っているという意味)ので「当然計画を主導するのはフランス/ダッソーだ」と自負しているが、ドイツは戦闘機の設計経験やノウハウを得るため「各構成技術の開発だけでなく戦闘機の設計自体に参加させろ」と要求しており、過去にドイツは戦闘機のプロトタイプをダッソー案と別にエアバス案も作らせて欲しいと言い出し問題になったことがあるが、この戦いがフェーズ1Bへの移行を果たした現在も続いているとトラピエ氏は言いたいのだ。
エアバス広報担当を務めるアントワーヌ・ブービエ氏は昨年「ドイツにはフランス側がドイツの金でフランス好みの戦闘機を作ろうとしていると考える人間がいて、フランスにはドイツ人が我々の企業秘密を盗んで自分好みを武器を作ろうとしていると考える人間がいて、この様な考えをメディアは面白おかしく取り上げる。このような罵詈雑言と極論がFCASプログラムの議論を汚染している」と警告して注目を集めたことがあるが、結局のところフランスは自分たちに任せろというのが本音で、ドイツは金を出した範囲で口をだすというのが本音なのだろう。
トラピエ氏も会見で「FCASを開発するための知識はフランスにしかなくドイツはこの事実を受け入れなければならない。プログラムを主導する資格があるのは明らかにダッソーだ」と述べており、ドイツとの交渉が決裂するようなことになればFCASの枠組みは崩壊するしかない。
因みにショルツ首相が率いるドイツ新政権(社会民主党、緑の党、自由民主党の3党による連立政権)は取り組むべき基本的な政策の一つに「拘束力のある武器輸出政策のEU導入」と挙げており、独自の政策や基準に基づく武器輸出の権利を主張して武器輸出に積極的なフランスと早速衝突しており、トラピエ氏は「ドイツがNATOの核協定維持のためドイツが米国製戦闘機を導入するというのもプログラムに悪影響を与えている」と述べているので、現時点でFCASの未来を占うなら「暗そうだ」という一言に尽きる。
関連記事:詐欺師だと批判を受けるドイツのショルツ政権、都合よく人権と武器輸出を使い分け
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関連記事:第6世代戦闘機開発FCASに振り回されるフランス、ダッソーが単独開発に言及
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※アイキャッチ画像の出典:JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0
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もうフランス単独開発にしろ。
このままタイフーンの二の舞になってしまうのか…
ドイツ側は素直に本来任されてる随伴無人機開発に全力投球すればいいのに。
共同開発のいつものやつ。
片足突っ込む先テンペスト計画にしてよかったわ
いつものやつ、戦車もほぼ間違いなく大揉めして計画が瓦解する。
半世紀以上前から何回も同じことを繰り返しているし、いい加減学べよ…
ドイツとフランスの中の悪さを知っていれば、特段驚くことじゃない。彼らの確執は、300年くらい続いていているしね。
「日韓は、仲のいいお友達」といえるくらい彼らは仲が悪いのだよ。
だから、いい加減に学ぶわけがない。
そのくせ懲りずに共同開発したがるんだよなぁ…。
素直にEU内で派閥率いて争った方がなんぼかマシだと思うんだが。
てかコメ先も「仲良くしろ(≒喧嘩は不毛だと学べ)」と言ってるんじゃなくて「そのメンツで共同開発なんか無理だと学べ」と言ってるのでは。
(こうなるのは)知ってた。
主導権争いして勝手に空中分解するのはいいけど、ドイツがテンペストに入りたいと駄々をこねないか心配。
こっちにまで迷惑かかるのは、マジで勘弁してほしい。
ドイツがテンペストに入れてくれと言い出しても、イギリスは放置プレイにしてしばらく様子を観察するでしょうね。
ドイツが弱って、テンペスト側のルールにいちゃもんつけなくなってから初めて迎え入れる。
平成の大合併のときにわがままこねて対等合併から取り残された自治体が、最終的に追いつめられて不利に吸収合併されちゃうのに似たり
テンペストプログラムは開発の主導権が一義的に英国にあり、他国独自の要求には聞く耳持たない前提なんでこういう問題は起きない。つまり開発主導権が欲しいなら参加できないので心配無い。
日本に提案したように、それを承知で開発に参加し、テンペストをベースに独自開発(技術共有)するのは自由というスタンス。
その前提が守られるならいいけど、それを崩す様な両プロジェクト統合を主張してるイタリアが参加できてるのが怖いんだよなぁ。
イタリアはテンペストに参加することでイギリスの協力を得て、独自にイタリア仕様テンペスト又は次世代戦闘機開発を行える可能性と権利を得ることになります。
その際問題なのは仏独FCASとのインターオペラビリティで、イタリア国防省が両プログラムの統合を主張しているのはそこが理由のようです。
ご自分が下の方で指摘されてる通り、仏独FCASがテンペストに統合されるべきという、独仏には正面から言い難い主張表現ではと私は解釈してますが。
仰る様にインターオペラビリティ面での「協調」なら大きな問題はないと思うんですけどね。
ここの過去記事
>テンペストとFCASは統合されるべき、伊空軍ゴレッティ参謀長の発言に関心が集まる
にもあった様に、資金や開発リソース面からの「統合」だとすると、
、欧州戦闘機開発のゴタゴタは元を正せばほぼ予算と開発主導権のパイの奪い合いなので、「統合して節約する」ってのは合理的に見えて絶望的に無理筋なんだよなぁ。特にドイツが混ざってると。
暗雲どころか雷雲でした
そして独は大嵐(テンペスト)へっていうのはやめてほしい
英仏・英独・独仏それぞれが関わった共同開発で、成功した兵器って何かあるのかな?
ジャギュアとかトーネードとかは?
英仏だけなら割と成功するよね。
英独伊だけどFH-70
独仏だとアルファジェットぐらい?
ありがとうございます。
こうして見ると、結構あるのですね。
上下関係がはっきりしてるぶん割合上手くいくかなと思ってたけどダメそうなのか
>ショルツ首相が率いるドイツ新政権(社会民主党、緑の党、自由民主党の3党による連立政権)は取り組むべき基本的な政策の一つに「拘束力のある武器輸出政策のEU導入」と挙げており、独自の政策や基準に基づく武器輸出の権利を主張して武器輸出に積極的なフランスと早速衝突しており
自分の主義主張をはっきり持つのはいいことだけど我が強いのも困るな
ダッソーから脱走とな
ドイツ政府(?)としては将来的にエアバスに国産次世代戦闘機を作らせるか、それができるだけの技術を保有させる願望があるってのが意外ですね。ドイツの将来軍事戦略は分かりませんが、欧州各国へF-35のネガキャンして回ってたくらいなので純粋に雇用維持(外国製品排除)のために最新技術追っかけてるって感じなんですかね。
独仏FCASの今後次第では日本の戦闘機開発も影響を受けますし、豪(あるいは韓)といった次世代期プログラムへの姿勢をまだ保留している大国の出方にも影響して来そうですよね。もっとも、プログラムが空中分解した場合の代替案がない以上は相互不信を抱えつつもとりあえず形にはなるのかなと思いますが。
フランスはいざとなれば単独開発に移るのでは。売上が好調なラファールの利益を開発に回せるし、単独で開発する気なら資金協力に対してリターンを自由に設定できる。
スペインにはテンペストに参加する選択肢があるよね。変なワガママ言わなけりゃテンペスト側は断らんだろう。
ドイツはロシアか中国と共同開発すれば?
独仏こそがサブシステムや要素技術単位でできる範囲で共通化or共同開発して各々が作りたい姉妹機作るテンペスト的なさ方式を取ればいいのに。
まあ結局あらゆる部分で揉めて結局全面的に完全な別物になるかも知らんが、それでも前に進むだけマシだろう。
まだ成功するとは限らないけど
イギリスと日本みたいに欧州とそれ以外の国と組んだほうがまだ感情的な衝突みたいなのは少なくて済んだ気がする
一抜けたイギリスの勝ちなのか…