欧州で開発が進められている2つの第6世代戦闘機プロジェクト「テンペスト」と「FCAS」は、タイフーンがもつ共通性を破壊し、異なるアップグレードを施したタイフーンが登場するかもしれない。
テンペストに統合される次世代レーダー警報受信機のデモ結果を公表
本題に入る前に、小ネタをひとつ。
イタリアに拠点を置く防衛産業企業のレオナルドは18日、英国が主導する第6世代戦闘機「テンペスト」プログラムの一環として、次世代レーダー警報受信機のパフォーマンスのついてデモを行い、能力の高さを実証することに成功した。
参考:Tempest drives forward as Leonardo unveils new radar sensing technology
英国が主導する第6世代戦闘機「テンペスト」プログラムは、実質「チームテンペスト(Team Tempest)」と呼ばれる企業グループによって開発が進められている。
イタリアに拠点を置く防衛産業企業のレオナルドは、チームテンペストの一員であり、英国に拠点を置くBAEシステムズやロールス・ロイス、MBDAもチームに名を連ねており、この4社が英国防省と協力しながら第6世代戦闘機「テンペスト」の開発を行っており、スウェーデンやイタリアも今年、このプログラムに合流を果たした。
今回、レオナルドがデモを行ったのは第6世代戦闘機「テンペスト」に適用することになる次世代のレーダー警報受信技術で、これは敵機やミサイルに搭載されたレーダーが発する電波を感知し、発信元の方向や種別を警告する装置で、視界外戦闘が主流になった今日では必須の装備と言える。
補足:もっと分かりやすく言えば、敵機が自機を「ロックオン」する試みを探知し、パイロットに対し警告する装置
レオナルドは次世代のレーダー警報受信機の性能について、サイズは従来のものに比べ約1/10まで小型化しながら、精度は約4倍に向上していることをデモで実証したと明らかにした。
さらに同社は、敵機やミサイルに搭載されたレーダーが発する電波は将来、あらゆるテクノロジーやソフトウェア技術を使用し信号の識別を難しくさせてくるため、テンペストに統合されるレーダー警報受信機は、新しい脅威に対応したアップデートを簡単に行えるだけの「柔軟性」を備える必要があると語った。
欧州の第6世代戦闘機開発は、タイフーンの共通性を破壊する?
英空軍は第6世代戦闘機「テンペスト」の開発期間を短縮のため、ユーロファイター・タイフーンを活用することを提案している。
参考:RAF Typhoons to be testbed for new sixth generation Tempest
テンペストは2035年までに運用が開始される予定で開発が進められているが、新しいテクノロジーを開発するために長い時間を欠けることは受け入れられないし、時間が掛かれば掛かるほど新しいテクノロジーは効果を失っていくと説明し、ユーロファイター・タイフーンを活用することで新しいテクノロジーの先行開発を行い、開発期間を短縮する必要性を主張している。
テンペストに統合されるセンサーや電子機器、搭載兵器などをタイフーンに適用させテストヘッドに仕立てれば、テンペストの試作機完成を待つ必要がなく、このテストヘッドは事実上、タイフーンのアップグレードにも繋がり、これは2040年代まで活躍するための担保になるという意味だ。
これはドイツとフランスが主導する第6世代戦闘機「FCAS」にも言えることで、FCASプログラム参加国は新しく開発されるテクノロジーをラファール(ラファール)やタイフーン(ドイツ・スペイン)のアップグレードに役立てようとしているが、このまま行けばテンペスト陣営のタイフーンと、FCAS陣営のタイフーンのアップグレードには、それぞれ別のテクノロジーが使用され共通性が失われてしまう。
より問題を複雑化させるのは、タイフーンの開発や製造・アップグレードを管理しているユーロファイター社が、FCASプログラムに参加しているエアバス(ドイツ・スペイン)と、テンペストプログラムに参加しているBAEシステムズ(英国)、レオナルド(イタリア)の合弁企業だという点だ。
一番シンプルなのは、FCAS陣営とテンペスト陣営が技術を持ち寄り、タイフーンのアップグレードに共通性をもたせることだが、そうなるとFCASプログラムを主導しているフランスとって利益がなく、テンペスト陣営の技術をラファールのアップグレードにも使用できれば丸く収まるのだが、そうなるとテンペストに使用される技術がフランスに流出することになり、テンペスト陣営がいい顔をしない。
結局この問題の根源は、ラファール=フランス単独、タイフーン=英国・ドイツ・イタリア・スペインという構図が、FCAS=フランス・ドイツ・スペイン、テンペスト=英国・イタリアという構図=利害関係に変わってしまい、技術の流用が複雑化してしまったという意味で、中々、一筋縄ではいかないだろう。
恐らくタイフーンは今後、テンペストの技術を採用したタイプと、FCASの技術を採用したタイプに分かれて発展する可能性が高く、そうなると搭載される電子装置やアビオニクスの共通性が失われ、ユーロファイター社の意味が無くなってしまい、海外に輸出したタイフーンのアップグレード事業の受注に火種を生むことに繋がるかもしれない。
だからこそ欧州では、テンペストとFCASの統合が叫ばれているのだが、フランスがラファールの後継機=空母で使用するという要求を破棄しない限り、両者が一つになるのは難しいだろう。
※アイキャッチ画像の出典:Jason Wells / stock.adobe.com
傍からでも、(ユーロファイターの出来の悪さを考えると)フランスが単独でラファール造ったのは寧ろ正解だった気がするくらいだから、フランスもそう簡単に折れないだろうなぁ。
カナード一つを見ても、ラファールの処理は上手いよね
あと、FCASのモックアップってどう見てもドンガラだけで、テンペストの方が具体化された案が有るみたい
というか2035年運用開始ってそんなに早く? 我が国の次期戦闘機と同時期やん
個人的に色々な種類の戦闘機が見てみたいから、fcasとテンペストで別れてるのは嬉しい
それにこれ以上纏まったら絶対内部で混乱起こして計画がバラバラになるゾ
完成して大成功する前提で話を進めても……とKFXが嗤ってますた
ほとんど同じ形でCTOL、STOVL、CATOBARを揃えたF-35は何を言っても圧倒的大出力エンジンを積んでいるからそんな無茶苦茶ができたのであり、FCAS内部ですらエンジンがどじゃこじゃで揉めている時点で統合は無理の一言だよね
要素研究をユーロファイターでやろうっていうのは分かるんだが
拡張性がない機体でテストして拡張性のある機体を作ろうってのが既にヤバい気がしてしょうがない
機体規模があんまり大きくないから新開発機器を詰め込むために予算が必要になって
完成後に今度はテンペストに積むために拡大したら不具合発生で予算がかかって…とかいう炎上にならんのだろうか?
たった十数センチの差とスネクマ社の経営立て直しでフランスが脱退した事
また同じような事起きるな