欧州は米国やイスラエルに依存してきた無人航空機の供給から脱却するため71億ユーロ/9,220億円(内1億ユーロはEU防衛基金からの助成)の投資を行うこと正式に決定、ついにエアバスが開発した怪鳥「MALE RPAS」が量産されることになった。
参考:Eurodrone effort gets $118M funding boost, updated production timeline
欧州が米国やイスラエルに依存してきた無人航空機の供給から脱却? フランス、ドイツ、イタリア、スペイン以外は残留する可能性が高い
欧州はMQ-9やヘロン・シリーズのような無人航空機(武装可能で中高度を長時間飛行できるUAV)の開発で遅れをとったため米国やイスラエルからの供給に頼っており、この状況を打破するためフランス、ドイツ、イタリアの3ヶ国(後にスペインが合流)は共同で独自のUAV開発計画「ユーロドローン・プログラム」を2015年に立ち上げ、エアバスを主契約者(ダッソーとレオナルドが開発支援)に据えて「MALE RPAS」の開発を始めたのだが完成した機体はMQ-9と比較して約3倍も巨大化(高高度偵察機RQ-4とほぼ同サイズ)してまう。
なぜここまで巨大化しまったのかは本当に謎だが原因の一つには「単発機の場合エンジンが停止すると最悪都市部に墜落する可能性があるので双発機として開発してほしい」とドイツが要求したことが挙げられており、完成したMALE RPASを見たフランスの議員は巨大するぎる機体サイズに驚いたと言われている。
補足:MALE RPASは米国のITAR規制に引っかからない=つまり同機は全ての技術や部品を欧州域内で開発したり調達可能なもので構成されているためコスト高騰の要因になっているのかもしれない
要するに最大離陸重量が約12トンのRQ-4と同クラスのMALE RPASは武装可能で中高度を長時間飛行できるUAVとして大きすぎ、調達コストも高騰して到底MQ-9、ヘロン・シリーズ、さらに新たな競合に浮上しているバイラクタルTB2に太刀打ちできないため海外輸出が絶望視されているのだがフランス、ドイツ、イタリア、スペインの4ヶ国はEU防衛基金からの助成を受けてMALE RPASの量産を行うことで合意した。
因みに4ヶ国は計60機のMALE RPASを調達するため71億ユーロ/9,220億円を支出する予定で、1機あたりの調達コストは高価だと批判される事が多いMQ-9(調達単価は約5,000万ドルだがFMS経由で関連費用込みになると1億ドルオーバー)も真っ青の約153億円/約1.38億ドルだ。
勿論、大型のMALE RPASはMQ-9やTB2と比べ物にならいほどの長時間飛行能力と兵器搭載量を備えていると思うのだが、これだけバカでかい機体が中高度(1万メール付近)を飛行すれば敵の防空システムに捕捉される可能性が高く、1機153億円もするMALE RPASを損耗覚悟の任務にほいほいと投入することは不可能だろう。
何とかMALE RPASの存在意義を擁護するとすれば同機に小型の使い捨てドローンを搭載して運用する方法ぐらいしか思いつかないが、小型ドローンを運搬するUAVがF-35Aよりも高価というのは流石に無理があるだろうし、そもそも武装可能で中高度を長時間飛行できるUAVで最も人気が集中しているTB2の機体単価は500万ドル前後=MALE RPASを1機調達する費用でTB2を27.6機も調達できるため開発国以外は関心を示さない可能性が高い。
つまり米国やイスラエルに依存してきた無人航空機の供給から脱却するのは欧州ではなくフランス、ドイツ、イタリア、スペインの4ヶ国だけという意味だ。
MALE RPASの調達コストは「高騰している」と散々言われてきたが、ここまで高価だとは思っていなかったので正直びっくりしている。
関連記事:ドイツのUAV武装解禁失敗、ユーロドローンや第6世代戦闘機開発にも影響が?
※アイキャッチ画像の出典:AIRBUS
兵器でユーロと付くと
なんとなく完成までながーく掛かるイメージ
そして、必ず仲違いして最初の構成メンバーの半分が居なくなるイメージ。
>「単発機の場合エンジンが停止すると最悪都市部に墜落する可能性があるので双発機として開発してほしい」とドイツが要求した
これが最大の問題点な気がする
大型センサーや光学機器、ミサイルなどの重量物をつんで高高度でエンジン一機でもバランス崩さず飛行するには翼をでかくする必要があるし、当然胴体も相応の長さと大きさになる
そして大きくなったらその分さらにエンジン出力を上げる必要が出てくる(重くなる)
の悪循環を繰り返してなんとかなったのがこのサイズだったんだろうな
滞空型の無人機なんて基本的に揚/抗比高めの
そこそこな性能のグライダーみたいなもんで、
滑空比30やそこらは余裕で出るはずで、
そんだけありゃ1万mから300キロ動けるから
都市部に墜落なんてあり得んと思うんだけどね。
ほんまドイツお前…
ついでにいうとエンジン2発にしたのと大型化に伴い燃費は悪くなり、必要燃料量は増え、燃料タンクは大型化して機体のさらなる大型化につながり、また搭載燃料が増えたことにより離陸時のエンジンパワーと滑走距離も必要になるという
ただでさえ単発機がエンジン一基で飛ぶのと双発機が片肺で飛ぶのとではバランス問題があるというのに、空気の薄い高高度でプロペラでも片肺飛行可能なことを要求されたらさすがのエアバスでも相当苦労しただろうな
安全確保のための双発化だから、片肺が停止したら適切な高度で安全に帰還ないし安全な場所に不時着するというシーケンスじゃないですかね。
適切な高度に降下するためにはまず作戦行動中の高度で突如片肺になってもバランスを崩さない性能が最低限必要だよ
UAVは滞空性はもとめられても機動性はあまり求められていないから、大きくバランスを崩しても姿勢立て直せるだけの冗長性あるとは思いにくいし
>作戦行動中の高度で突如片肺になってもバランスを崩さない性能
それが実現できないなら敢えて双発にする意味が無いかと。
普通ならできないそれを無理やり実現化した結果がこの大きさと値段なのでは
巡航中の航空機はエンジン止まっても
バランスなんて大して崩さないよ。
単発なら尚更。
機動性がない代わりに安定性は極端に高い形状なので、この程度の高度で問題になるとは思えないな。
U-2並の高高度飛ぶならともかく。
上にも書いたけど、エンジン止まったって
そのまま真下に落っこちる訳じゃなくて、
条件キツめの高度5000mから滑空比20で
計算しても滑空で100km移動できるんだよ。
ベルリンやフランクフルトのど真ん中で
エンジン止まっても郊外まで移動は十分可能。
その場合、大事なのは不時着先の確保で、
重い≒着陸距離の長い双発機は
むしろ厳しいと思うんだよね。
ドイツって、人がばらけてて全土が都市部だ!って、UAVアレルギーがズゴイんじゃなかったか。
ほんとかどうかは知らないけど。グローバルホークからのトライトンはそれが理由だったと思うけど。
今度はドイツ抜きでやろうな!
割とマジで・・・
ドイツの金と技術抜きって結構キツい
イスラエルやトルコの経済規模で良いの作れるなら可能じゃね?
レオナルド、タレス、ダッソー、BAEあたりがいれば技術的に充分なのでは。
ヘタリアでなくドイツ抜きを語る日が来るとは
ドイツの恐ろしさは軍縮、軍拡どっちに傾いても厄災になりかねないところだと思う
軍縮で周辺に脅威を与えるって、意味が解らない事態だよね。
それ自体は普遍的に生じうる現象だよ。
日本の軽武装も極東情勢にとってはマイナス(米軍いるから顕在化してないだけ)。
これが平和って…コト!?
長時間飛べるなら対潜哨戒任務に向いてそうだけど1機153億円ってねーわ
EUがUAV時代に足並みを揃えるためのテストベッドだから、最初はこんなものか
これを量産すんのかよ…
双発の無人機って諸コスト的に良いアイディアじゃない気がするけどどうなんだろ
欧州特有の規制や配慮しなきゃいけない事の多さもどうかと思うけど、都市と都市の間に広大な無人地帯や農地が広がってる米国や中近東、民家に無人機どころか宇宙ロケットのブースターが落ちても気にしない中国と同じ基準で航空機開発できないのは仕方ない。双発エンジンへの固執は日本もそうだしな。
日本の双発信仰は有人機の話でしょ。
運用・試作・研究中の無人機に双発機あったっけ?
20トン超のF2やF35、民間でも単発で5トン級のpc12やSF50が多数飛んでるのに双発固執とか、ちょっと何のこと言ってるか分からんな。
過去の空自のトラウマですね。
その前のF-104で墜落多発していまして、
特に1969年2月8日の金沢市での墜落事故は、民家に墜ちて住民4名が死亡、周辺の民家17戸が全焼しています。
上記事故は、落雷によるエンジン停止なので、双発でも恐らく大差無かったと思いますが、
F-104は、導入230機中現役時代に21機以上墜落していますので、普段の行いが悪過ぎたのでしょうね。
ちなみにF-2の功績の一つが、単発アレルギーの解消の様です。
>双発固執とか、ちょっと何のこと言ってるか分からんな。
日本で、この感覚を形成してくれた程ですから。
ついでに、当時の空自は度重なる事故に関して
>西ドイツのF-104Gの事故率は航空自衛隊に比べ2-3倍高い
と弁明しています。
事故多発は、機体が悪いとの思いがあったのでしょうね。
>西ドイツのF-104Gの事故率は航空自衛隊に比べ2-3倍高い
単発アレルギーはドイツが日本より上てことじゃないですかね。
そう言えばドイツ(西ドイツ)はF-104G以降、単発戦闘機を採用していないですね。
3発4発機が生産終了するまで777を注文せず747やA340を運用し続けたルフトハンザドイツ等と違い、MD11とA340の注文をキャンセルして777のローンチカスタマーになって3発4発機を早々に退役させたのはJALとANAなのですが、多発機に固執してる日本というのは何処の誰の事なのですか。
F15やFA18という選択肢を蹴ってF2やF35を導入した日本政府のことですか。
横からだが「双発固執」への反論として
3発4発機から双発に切り替えた話を
持ち出すのは無理があるだろう。
「単発アレルギー」と「双発固執」は
似て非なる物だ。
早期警戒管制機を廃止して、こんな高価なUAVを作るのか。
高高度を飛行できるならまだしも
複雑な国境線と管制空域が入り乱れる地域なのに
高高度飛行能力がなく旅客機で混雑してる中高度域を飛行するUAVという開発計画なわけだから
単発機のリスクや都市部への墜落をドイツが危惧するのは仕方ない
つまりNATO領域で運用する中~大型UAVとしての要求仕様が根本的に間違っていると
>単発機のリスクや都市部への墜落をドイツが危惧するのは仕方ない
でっかい双発機と小さい軽い単発機、
よっぽど低空を飛ぶんでなきゃリスクは同等か、
むしろ双発機の方が大型かつ着陸距離が長い分
不時着可能な場所が限定されるし、
高価だから海への特攻も選択しにくいし、
民家とかに落ちちゃった時の被害もデカい分
トータルではリスキーな気さえするけどなぁ。
6tって割とデカいダンプが空飛んでる様なもんよ?
MQ-9がセダンで、ヘロンがコンパクトカー、
バイラクタルTB2なんか軽トラより軽い。
それぞれ自宅に上から降って来た事を想像してみ?
それは落ちた場合のリスクの話であって
ドイツの要求は、そもそも一切落ちてくるな!なんだよ
リスクってのは絶対に0にはならないから、
起きてしまった場合の被害の大きさ抜きでは
評価できないよ。
仰る通りなのだけど、ゼロリスク信仰は日本だけの弊害では無さそうですね。
一般人にそーゆーアホがいるのは仕方ないし
それに便乗する政治家がいるのも当然だけど
本人までそれを本気で信奉してる政治家が
いると大迷惑ですね。
近年のドイツって兵器開発についてはお荷物じゃないかと思えて来たよ
>「MALE RPAS」の開発を始めたのだが完成した機体はMQ-9と比較して約3倍も巨大化(高高度偵察機RQ-4とほぼ同サイズ)してまう。
MQ-9:全長11m、全幅20m
RQ-4A:全長13.5m、全幅35.4m
MALE RPAS:全長16m、全幅26m
RQ-4と同サイズもだけど、
MQ-9の3倍って何処から来ているのか解らない
多分重量。
滞空型の航空機は性能向上のために
極端な高アスペクトになる事が多いから、
全長・全幅があまり参考にならない。
ありがとうございます。
記事では「サイズ」としていたから、寸法に目がいってました。
空虚重量7t足らず、最大離陸重量12tのRQ-4の翼幅が35.4mでP-1と同じ、
同じく2.2t/4.7tのMQ-9の翼幅が20mでF-15やF-22の1.5倍、翼広げたF-14やF-111よりわずかに長いくらいだからね。
外径寸法(特に翼幅)見ると滞空型UAVって軒並み「超大型」になっちゃって訳分からん事になるのよ。
後ろ姿の旅客機感すごいw
無人機特有の禍々しルックスが薄めで好感はもてるかも
頑張って褒めてみました..が
兵器としては、皆さんのおっしゃる通りアレゲですな、
まあとってEUらしいっスね。
OK,ドイツでは単発セスナは飛行禁止な
そっか、F-35導入が拒絶されるのも、それが原因だったのか
それにしてもターボブロップにするのは何かこだわりあるのかね、ターボファンとかの方がメンテとかマシだと思うんだが。
>双発エンジンへの固執は日本もそうだしな。
何年前の話してんだろうなとは思う。そもそもF-2の時に単発機の事故率提示され納得した上で単発機にしてるのにな。双発機マンセーならF-35なんて導入しようとも思わないだろうし、次期主力が双発なのはそもそも単発機でF-135を大きく超える性能のエンジン作る事が現実的なのかって考えの方が大きいと思うが。
きっと60代以上の人の感覚で話しているんだろうね。
第二次世界大戦以降のF-86やF-104を含めて「現用機」と言っちゃう類いの人。
F-2採用時点では半信半疑の人間が多かっただろうしF-2の実績を見ても全員が納得した訳じゃ無いと思うよ。
まあそんなの日本に限った話ではないと思うので、「双発固執は日本も」と言われると違和感あるが。
「単発機を危険視する意見があるのは(日本を含めて)万国共通」くらいなら納得できるかな。
そんな事はないだろう単発機が危険というなら1万機を越えるかそれに近いF-86やMig-21、5000機を目指せそうなF-16、3千機台のMig-23、2千機台のF-104を何故作ったのかって話になる。そこまで気にする程の危険性がなくてコストが安いからでしょ。
そのF-104こそが日本の単発アレルギーの主原因だろ。
導入230機中24機が大事故起こして20機が墜落してる。
しかも西ドイツ空軍での事故率は更に2倍以上高くWitwenmacher(≒ウィドウメーカー)呼ばわりされてた。
そんなどうでも良いデータ出して何を納得させようとしているの?今だすべきは機体の性能は別としてシングルエンジンが原因で墜落したデータでしょ?自衛隊の20機墜した落機体がツインエンジンだったら助かったって話なの?調べられる限りの資料から自己判断だと確実にツインエンジンなら助かったかもしれないケースは2件、おまけして1件プラス。後は原因不明がかなり多いし、接触事故も多くてエンジン2基あってもどれ位生存率に寄与するのかって話。
ドイツの場合はパイロットの練度不足/本来の使い方とは違う低空での攻撃訓練/整備不足/本来の設計とは違う製造のされ方/機体が野ざらしの期間が多い(機体全ての劣化)とかで、これをしてシングルエンジンの問題とか流石に極論過ぎないか?せめてドイツの事故内容見た上でシングルエンジンじゃなければ助かったって根拠出すべきだろ。