フランスのNavalGroupは12日、超大型水中無人機(XLUUV)のデモンストレーター「Oceanic Underwater drone demonstrator/OUDD」を公開して注目を集めている。
参考:Naval Group Unveils XLUUV Demonstrator
フランスが存在を明かした超大型水中無人機「OUDD」、開発が順調なら2025年頃に実用化予定
一般的に水中で活動する無人機は「UUV=Unmanned Undersea Vehicle(防衛省はUUVもUSVも一括に無人航走体と呼んでいる)」と呼ばれているが、米海軍は数ヶ月の長期任務に耐えられる大型な水中無人機「Orca/オルカ(全長最大26m/航続距離約10,400km)」を開発中で既存のUUVとはサイズが余りに異なるため「XLUUV=超大型水中無人機」と呼称しており、Naval Newsも仏NavalGroupがXLUUVのデモンストレーター(技術検証機)を公開したと報じている。
NavalGroupの説明によれば公開されたXLUUVは「Oceanic Underwater drone demonstrator/OUDD」と呼ばれており、情報収集・監視・偵察(ISR)任務に用いる想定で設計されているものの船体下部にはF21重魚雷(米海軍のMk48や海自の89式魚雷に相当)を収納できるサイズのミッションベイを備えているため、関係者は「将来的にOUDDは対機雷戦(MCM)や対潜戦(ASW)などの任務にも対応する可能性がある」と話しているらしい。
補足:NavalGroupのXLUUV開発は2016年に開始され、2018年にデモンストレーターの建造開始、2020年11月に南フランスで完成したOUDDが極秘裏に進水したと説明している。
さらに公開されたOUDDの全長は10mだが米海軍のOrcaと同じモジュール構造を採用しているため「全長を最大25mまで延長することが出来る」とNavalGroupは主張しており、恐らく追加のミッション機器やバッテリーもしくはAIP機関を追加してOUDDの任務期間を延長することが可能なのだろう。
因みにNavalGroupは「OUDDの検証作業が順調に進めば実用モデルのXLUUVが2025年までにフランス海軍で就役するかもしれない」と語っている。
米国、英国、ロシア、中国、韓国が開発に取り組むXLUUVの概要
NavalGroupのOUDD公開に合わせて潜水艦分野の専門家であるサットン氏は各国のXLUUV(米国のOrca、英国のManta、フランスのOUDD、ロシアのKlavesin-2M-2P、中国のHSU-001、韓国のASWUUV)を比較するグラフィックを発表しているので、便乗して各国が開発を進めているXLUUVの情報をまとめておく。
#SubSunday new article France’s XLUUV -> https://t.co/6tD9C0cLlI
In this viz, the Russian and Chinese are ‘large displacement’ UUVs, the rest XLUUVs.
This new French one is designed to be scaled up to 20m length. #Submarines #Navy pic.twitter.com/V1pCrCCehG
— H I Sutton (@CovertShores) October 10, 2021
米国:Orca
ボーイングが開発を進めている水中無人機「Orca」の全長は任務に合わせて26m(8トンまでのコンポーネントを追加可能)まで延長することが可能で、Orcaの基本的な動力源はリチウムイオン電池だがディーゼル発電による再充電にも対応しているため同艦の最大航続距離は6,500マイル(約10,400km)=つまり数ヶ月の長期任務に耐えることができ、主な運用用途は情報収集・監視・偵察(ISR)と掃海任務だと言われている。
既に米海軍は5隻のOrcaを発注済み(契約総額は2億7,440万ドルなので1隻あたりの調達コストは約5,480万ドル/約62億円)で1番艦は2022年に引き渡される予定だ。
英国:Manta
英海軍がテストを繰り返しているデモンストレーターの水中無人機「Manta」は小型潜水艇S201(全長8.9m)をベースに開発されてものだが、最終的な実用タイプのMantaが完成すると全長は30mに達する超大型水中無人機(最大速度12ノット/最大潜航深度350m/最大航続距離約5,550km)になる予定で主な運用用途は情報収集・監視・偵察(ISR)と対潜戦と言われている。
但しMantaの実用モデルがいつ完成するのかは今のところ不明。
ロシア:Klavesin-2M-2P
ロシアのXLUUV「Klavesin-2M-PM(2016年に運用開始)」は原潜の通信用ブイを収納していたスペースに搭載するため全長が6.5mと小さく、欧米のXLUUVと比べ作動範囲が50kmと非常に狭い代わりに最大潜航深度が2,000m以上と非常に変わったスペックを備えているのだが、2018年にロシア国防省は2M-PMを改良した2M-2PのCG画像を発表して注目を集めている。
ロシアは2M-PMについて「全原潜の標準装備となり報収集・監視・偵察(ISR)能力を向上させる」と言っているが改良モデルの2M-2Pについては情報がなく、非常に独特なスペックを生かす運用方法については謎が多い。
中国:HSU-001
2019年の建国70周年記念パレードで初めて存在が公開された中国のXLUUV「HSU-001」については殆ど情報がなく「情報収集・監視・偵察(ISR)任務に使用されるのではないか?」と位しか言及することがない。
しかし2021年7月に突然1990年代に研究・開発が始まった無人潜水艦プログラムの機密を解除、2010年12月に台湾海峡で実施されたテストでUUVが自律的に水中の模擬潜水艦を検出して追尾、UUVに搭載された魚雷で攻撃することに成功したと明かした。
このテストと存在を明かしたHSU-001に関連があるのかは不明だが、米メディアは「自律的に目標を検出して攻撃できるタイプのUUV実用化や実戦配備に米国は至っていないため、10年前のテスト結果が真実なら中国のUUV研究は米国の先を進んでいることになる」と警戒感を示してしたのが印象的だ。
韓国:ASWUUV
2019年に開催された防衛装備品の見本市「MADEX 2019」で発表されたASWUUVは対潜戦を目的にした世界初のXLUUVだとサットン氏は主張しており、燃料電池方式のAIP機関で作動するため優れた作動範囲と耐久性を備え敵潜水艦を検出を行うための各種センサーを搭載していると言及されているが、ASWUUV自体に攻撃手段をもたせるのかについては明かされていない。
発表されたモックアップは非常に小さいがフルバージョンのASWUUVは全長が10mになるとハンファシステムが明かしている。
因みに2022年までにASWUUVの開発を終える予定だが実用化時期については不明。
日本のUUV「OZZ-5(全長4m)」がサットン氏のグラフィックに含まれないのかについては不明だが、恐らくUUVを超えるサイズ(各国によってXLUUVとLDUUVか表現は異なる)を主張してないからだと思われる。
関連記事:中国が無人潜水艦プログラムの機密を解除、UUVによる模擬潜水艦への魚雷攻撃に成功
※アイキャッチ画像の出典:@actulemarsouin
哨戒任務ぐらいの間はいいが、武装タイプが出てきたら
有人艦は最前線に展開出来なくなる。
台湾有事になれば、アメリカは空母どころか、潜水艦も出さなくなる。こう言う無人タイプ一隻駆逐するのに
どれだけのミサイル、魚雷を使うのか費用対効果も気になるところ。
そりゃ無人艦と有人艦のチーミングで対応するだろ
チーミングは、双方の連携が重要だけど、海中でどうやって友人艦と無人艦が意思疎通を図るんだい?
電波はムリだから音波になるけど、相手にもバレるよね。直近なら可能かもしれないけど、それじゃぁ、広域を支配できない。
誰かいい方法を教えて。
可視光通信(震え声)
ぶっちゃけ水の中だと相互通信滅茶苦茶難しいからねえ。片方向なら地上から長波で簡単な指令を送れないことはないけど。
その都度浮上させて通信するか、キラーマシンとして完全自律無差別に暴れてもらうか。
ぶっちゃけ可視光マジで重要っぽいよね>水中の通信
島津製作所が距離10mまでの近距離用のを作ったって話は去年あたりニュースになってたけど
確か50~200mの中長距離用の可視光通信装置が計画されてて、それが出来たら水中戦の様相が変わってきそうだなぁって思ったのを思い出した
技研で数年前に短距離水中音波通信技術を研究していたと見ましたが
ソース失念しておりますどなたか資料ご存知ないでしょうか
防衛装備庁の実施する「安全保障技術推進制度」による研究補助事業で、海洋開発機構の「光電子増倍管を用いた適応型水中光無線通信の研究」(平成27~29実施)ですね。
リンク
120mで20Mbps、190mで32kbpsの通信が可能。水中ロボット間で光無線LANを構築し、距離100mでリモートデスクトップ接続、距離40mでハイビジョン動画の伝送に成功したとのこと。
「当初は想定されていなかった非常に素晴らしい成果をあげた」と外部評価委員会の高い評価を受けています。
失礼しました。「水中音波通信」ですね。
ならばこちらかのことですかね?
「USV を経由してUUV からソーナー画像をリアルタイムデータ伝送する試験 — 並列航走による水中リアルタイムデータ伝送システム ( URCS ) の開発 — IHI 技報Vol.56 No.1 ( 2016 )」
リンク
むしろ見つかっても構わない/有人潜水艦との連携なんて糞くらえってスタンスで音波出しまくり、その反響音を水上艦で拾い対処するという方法もとれそう
水深の浅い沿岸部や諸島近海をこういう小型無人艦に担当させて、大洋と深海を遠距離ソナー搭載の原潜に任せる構図が見えてくる
原潜原潜と保有論を唱えるのは簡単だが、これから安価な無人艦が普及するほどに有人潜水艦の必要性は限定されてくるから造船所や戦力維持のバックアップ体制にほころびをきたす可能性、でなく確実な未来まで考えないとな
どうしても日本では米中ロシアのような大規模軍備は無理だって
フランスやイギリスみたいにアンバランスな姿に近づくだろうな
自民党の公約に防衛費をGDP比率2%を念頭に増額を目指すって記されてたしこれから大型UUV含む各種無人機の研究開発も他国並みに進むと期待したい
潜水艦大国の日本の名が何故かありませんねぇ
公表していないだけで、開発はしていると信じたいですがw
研究・開発項目は公表されているなかで、XLUUVクラスの開発となれば多額の費用が掛かるわけで、それだけの費用がかかる案件が公表されている中に無いということは開発はしてないでしょう。
海洋国家である日本にふさわしい装備だと思うんだけど、そこまで予算が無いんでしょうね。
記事中にあるように4mのUUVは開発してますし、大型のものはそれが実用化されてからになるのでわ?
防衛省自衛隊は装備の開発研究は失敗しないよう、かなり慎重にやる傾向がありますから。
大型のモノは実用に耐えうる小型のモノが完成してから、それを踏み台にして…となるのではないでしょうか?
他国と違い失敗してももう一回チャレンジ!ということがやりにくそうですし
日本のOZZ-5はUSVと連携する機雷探知UUVで既に装備化済。
もがみ型に搭載する予定の対機雷戦装備のことですよ。
日本が研究開発中のものでは「長期運用型UUV技術の研究」が相当するかと。
2024年までの事業では、試作試験体は陸上水槽と沿岸での試験を予定してるので、恐らくサイズはさほど大きくない。
その後に開発される実用型は燃料電池による「長期運用/長距離進出能力」を持ち、任務に応じたモジュールブロックを本体途中に結合付加する構造を備えるので、それなりに大型化すると思われるが詳細は不明。所謂XLUUV定義に当てはまるかサイズになるか否かまだ分からない。
リンク
これだな
運用構想のポンチ絵的に敵地で機雷を撒く気まんまんの奴
一体、いつになるのやら。
そもそも、形になるのかい。
現行防衛大綱及び中期防に積極的な研究開発が明記されてるんで関連予算は保証されるし、改定される次期防衛大綱で方針変更されない限り、少なくとも形にはなりますね。
>(略)・・・無人水上航走体(USV)及び無人水中航走体(UUV)の研究開発等の無人化の取組を積極的に推進するとともに、・・・(略)
「将来無人装備に関する研究開発ビジョン」を参照すると長期運用型UUVに必要とされる自律化・知能化技術レベルはACL6と見られ、ロードマップによれば2030年前後には達成可能と見込まれる。
開発の中核になるのは自律化・知能化技術なんで、予測以上の進展があれば開発は早まるし逆なら遅れる。
岩国に水中無人機評価施設ができたから、これからスピードアップすると思いたい
記事は最後まで読んだ方が良いし、詰まらない煽りしかしないのはねえ。
現実から目をそらして白日夢を語るよりまともじゃないの?
どちらも等しく意味はないし、できればヤフコメあたりでやってもらったらみんな幸せ。
記事を最後まで読むことが現実から目をそらす白昼夢なのかよ…
自分に都合よくしか読めない輩には同じ事
ロシアと中国はUSVに原子炉積んで「人間の制約から解放された真の潜水艦を開発したぞ」とか言い出しそうで怖いな
その可能性は高いよ
人間の乗らない原潜は高性能なのに小型化と低価格化が容易だから、放射線からの乗組員保護も心配ないし
すでに存在するというロシアの原子力魚雷の延長線にある
現状では無人艦の方が遥かに鹵獲しやすいでしょうから、機密の塊みたいなものはそう簡単には出せないと思います。
人間が乗ってても間抜けじゃあ滷獲されるから同じだよ
というか、歴史的に潜水艦が滷獲されたケースってどんなのだい(笑)
漫画じゃないんだからね
リンク
ほい
捕まりそうになったら自爆する!!
放射線物質をばらまくぐらいだけど、かなり迷惑だな。
ロシアならやりそうだけど。
人工衛星ですが、旧ソ連はコスモス954にコスモス1402と原子炉搭載の軍事衛星を大気圏に落下させて大騒ぎになった実績がありますからね…
やらかさないとは絶対に言い切れませんわ
シーウルフ級攻撃型原潜2番艦「コネチカット」が衝突したのって、ひょっとしてどこかの国の無人航走体じゃないの?
えひめ丸にぶつかったロサンゼルス級潜水艦が塗装が剥げるぐらいでほとんど無傷だったのに
小さいUUVがぶつかって船首が激しく壊れるのはちょっと考えづらい
もしそれが原因だとしたらなんで衝突直前まで気づかなかったの?っていうコネチカット無能すぎる案件になっちゃうからさすがにないんじゃねぇかな…
結局クジラか岩か…
10年でもがみ型が20隻、それぞれにOZZ-5が1隻装備されるとして、20隻のUUV配備するのかな
掃海艦にも積むだろうし、20隻以上は確実なのか
このペースが遅いのか早いのかは解らないが
攻撃型UUVといってもサイズの関係で魚雷は積めないから自爆型になる。
攻撃のためには全ての艦船のスクリュー音を採取していなければ味方国の船に対して攻撃する可能性がある、そんな事態になったらその国は一瞬で敵に回る可能性がある。
そんな不確かなものを使う国は無いだろう。
UAVと違ってハードルは高い。
スマート機雷ってのが既にありまして・・・
逆にスマート機雷で攻撃型UUVに求められる能力の大半は満たされるんだから要らなくね?
場合によっては危険な海域をぐるっと回って情報収集するような役目はUUV向きだと思うけど
攻撃型については特定のシナリオでなら使える可能性はある、くらいなもんだよなぁ
少なくとも、ここのコメント欄で懸念されてるような脅威については潜水艦そのものや自走機雷という形で元から存在したものだし
それこそUAV同様、攻撃型はインパクトたっぷりで注目されるけど役に立つ分野も当面の方向性も情報収集役だと思うけどね
記事読めよ、魚雷積めるサイズになるって
宇宙と深海みたいな帯域が限られる極限環境は自律型無人機への置き換えがどんどん進むだろうね。
20年前なら考えられなかったけど、技術の進歩は早いね
何より、JetsonNXみたいな高性能な開発基盤が民間でも数万円で手に入るのが凄いよ。
みんなも電子工作して、ドローン作ろうよ。
老眼で細かい作業が出来なくなってねえ
まあデジタル顕微鏡を使えばいいんですが
訓練されたイルカやシャチの脳を使う無人機や、
複数の人間の脳をネットワークにつないで戦闘用AIを組ませるSFとか40年前に読んでたけど
現実になってきたと思うと感慨深いですな。
まだまだ黎明期ですが
リンク
こういったものが実用化されれば、SFにおける作戦提案AI等も現実化出来そうですね
航空宇宙軍懐かしいですね。これと言い雪風と言い、どんどん現実がキャッチアップしてきてるのを見るにつけ、当時にこれらを書いた才能の凄さを再確認してしまいます。
群れで遭遇したら艦隊全滅
原子力潜水艦は遠洋で使うものであって、近海ではこっちの方がヤバイと政治家の人に気づいてほしい・・
偉い人には危険な水中ドローン、水中UAVなんだって理解して貰わないと、もはや原潜保有で終わるレベルで軍事は動いてない
これに攻撃能力を持たせたら、浮遊機雷と同種になって国際法上は違法になりませんか?
電波の届かない水中では、飛翔型や陸上型の徘徊型UAVと違って、最終攻撃判断で人間が
介在するなんて事が出来ないでしょう
国際法順守しない国が一方的に使いまくるのは流石にNGなので許して
海面近くまで通信ブイ上げれば普通に通信できるだろ
隠密性が命の水中兵器が、攻撃許可を得るために、わざわざ被探知されに浮上してどうするのさ
ロシアの大深度対応の無人艦を見ると、航空機における高高度偵察機のような追跡不能・反撃不能の深度からの偵察を想定してるようですね。
どうなったか知らんけどフランスと共同開発するって話が昔あったなぁ
深海探査船の浦島あたり流用すれば結構すぐできそうだし
うちの国でもちゃちゃっと造って導入、ついでに輸出もしたらいいのさ
無人機の類は操縦する人の命が掛かってないんだから
慎重に時間かけて造ろうとせず、まずは造って使いながら適宜改良していけばいいのよ
世界でも指折りに領海広いんだから、遅かれ早かれ無人化・自律化しないと物理的にむりがある
どうせやるなら少しでも他人より早くやらないとアドバンテージにならないし金にもならない
それに将来AIの判定による自律警告・攻撃まで行き着けば、引き金引けない悪い癖も補えるんだ
本来日本が最先端の1角に居るべきジャンル
>フランスと共同開発
防衛省と仏国国防省との間の次世代機雷探知技術に係る共同研究に関する取決めの締結について
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を受けて
令和元年度 政策評価書(事前の事業評価)次世代機雷探知技術の研究
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ですね。日仏共同研究で2020~2025年の予定で進行中。
フランスってなぜか、昔から海洋関係に熱心だよね