欧州関連

英国防省、タイフーン近代改修計画「P4E」の契約を約3,800億円で締結

英国防省は15日、タイフーンのアップグレードプログラム「Phased 4 Enhancement(P4E)」について産業界と23億ポンドの契約を締結した。

参考:Britain’s Typhoon jets to get radar, anti-jamming upgrades in nearly $3 billion deal

英国はMK.2の開発に投資することでテンペストのレーダー開発に不可欠なエンジニア雇用約1,300人分を維持できる

英空軍のタイフーン向けアップグレードプログラム「Phased 4 Enhancement(P4E)」には開発を進めているCaptor-E/MK.2への換装、新型のミッション・マネージメントやコックピット・インターフェイスの採用、電子妨害やGPS妨害に対する耐性強化、航法精度の向上などが含まれており、2025年に退役するTranche1以外の機体(Tranche2×67機とTranche3×40機)に提供される予定だが、Captor-E/MK.2だけはTranche3のみにしか提供されないらしい。

出典:Swadim/CC BY-SA 4.0 Captor-E MK.0

レオナルドがタイフーン向けに開発したCaptor-Eを素直に採用したのはクウェート空軍とカタール空軍の機体のみで、ドイツ、スペイン、英国は独自要求を取り入れた派生型を開発して採用することを選択、そのためCaptor-EのラインナップはオリジナルのMK.0、ドイツとスペインが採用するMK.1、英国が採用するMK.2の3つに分裂している。

2020年に開発が始まったMK.2は米国がF-35向けに開発した「AN/APG-81」と同じMulti-Functional Array(MFA:多機能アレイ)方式で、空対空モードや空対地モードを行使するレーダーとしてのパワーや精度を維持しつつ、広帯域での電子戦能力を同時に運用するため「従来のAESAレーダーよりも多くの送受信​モジュールを搭載している」と主張しており、英国防省は「MK.2への換装を含むP4Eを適用したタイフーンはテンペスト向けに開発されている技術の統合が可能になる」と説明。

出典:Royal Air Force Captor-E MK.2

さらにP4Eを適用したタイフーンには「2040年以降に登場する新たな脅威に対抗する機能や武器を統合可能になる」とも説明しており、初期運用能力の獲得は2030年に設定されている。

因みにMK.2の開発はテンペスト向けのレーダーの開発を担当するBAEとレオナルドUKが担当しているため「MK.2はテンペストのための技術的なテストヘッド」と見なされており、英国はMK.2の開発に投資することでテンペストのレーダー開発に不可欠なエンジニア雇用約1,300人分を維持できる見込みだ。

関連記事:狙いはF-35超え? 英国、世界で最も優秀な​AESAレーダー開発に着手
関連記事:ドイツ、2023年迄に戦闘機タイフーンのレーダーを「Captor-E」に換装
関連記事:各国が別々に進めるタイフーン用レーダー開発、最終的な勝者はイタリアか

 

※アイキャッチ画像の出典:Royal Air Force Captor-E MK.2

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コメント

    • しぎ
    • 2022年 7月 17日

    普通ならだった40機の為に新型レーダー開発は無駄な失費だが
    テンペスト計画テストヘッドの為の開発とならば先行量産&
    技術取得的な感じで意味がある計画ですね!

    14
    • 匿名希望
    • 2022年 7月 17日

    日本の統合センサ・システムの前、多機能RFセンサシステムみたいな感じか。
    F-2のアップデートとか無いかな?

    1
      • 原点にして頂点
      • 2022年 7月 17日

      日本が開発した「先進統合センサ・システム」は、ロッキードの2倍以上の探知能力を誇っていますからね。

      「先進統合センサ・システム」の中のレーダー単独に限定した探知距離性能でも、海外第5世代機の約1.5倍の探知距離性能を誇っています。

      先進統合センサ・システムが搭載されたF-2の機首は小さいので、アンテナ面積なども小さくせざるを得ないため探知距離などの面で不利になり、おまけにF-2では冷却能力の限界から搭載してるレーダーの素子数を減らして試験しているという大きな不利になる点なども抱えながらも、上記のような高性能を叩き出しています。

      F-2のレーダーアップデートに関しては、J/APG-2の改善案に関する検討はされているようですね。

      15
        • 匿名希望
        • 2022年 7月 17日

        タイフーンの機首ってF-2よりもさらに小さかった記憶があるんだが・・・。

        1
          • バーナーキング
          • 2022年 7月 17日

          「国産新開発のセンサ・システムは小さいのに探知距離性能は海外第5世代機の約1.5倍」に対して
          「タイフーンの機首はもっと小さいぞ」って何を言いたいんでしょう?

          4
          • 匿名希望
          • 2022年 7月 18日

          名前が被ってややこしい…
              by 元コメ主

      • もり
      • 2022年 7月 17日

      スナイパーポッド&AAM5の搭載すら遅々として進まないのにそれは望み薄でしょう

      5
        • 匿さん
        • 2022年 7月 17日

        スナイパーポッドがなんの関係があるの?

        4
        • 匿名
        • 2022年 7月 17日

        量産機への展開不十分については、予算とともに、ミッションコンピュータの能力限界の問題があったと思っています。
        そして、F-2近代化の計画にミッションコンピュータ換装が入っていること、および、防衛費予算の拡充が取り沙汰されている事から、
        今後は改善される可能性も多少はあるかな?、とも。

        F-2が5世代機に対抗出来ないのは仕方ないとしても、
        せめて中華の4.x世代機(中国は西側の2世代相当と3世代相当を区別していないので、中国風だと3.x世代になるかな)に対抗出来る様アップデートして欲しいものです。

        2
          • 匿名希望
          • 2022年 7月 20日

          アメリカ企業が納品してくれたらっていう問題もね。

    • もり
    • 2022年 7月 17日

    しかし一時期は叩かれまくったタイフーンも未来のある戦闘機になっちまいましたね

    4
    • tarota
    • 2022年 7月 17日

    兵器の開発競争は血を吐くマラソンだなぁ
    一度止まると先頭集団からおいてかれるしチームも解散するしで再チャレンジが難しい

    3
      • 匿名
      • 2022年 7月 17日

      >兵器の開発競争は血を吐くマラソンだなぁ

      ダン風のその台詞は正鵠だとは思うけど、
      一方で、兵器開発に限らず世の中そんなものだろう、とも。

      現状維持ですら、下りのエスカレーターを全力で逆走するようなもの、などと言ったのはさだまさしだったかな?
      他者も努力している中での現状維持ですから。
      怠れば、あっという間に置いて行かれる。
      分野は違っても、色々通じる台詞だと思っています。

      3
    • Formula750
    • 2022年 7月 17日

    レーダー開発に関連するエンジニアの新規雇用約1300人というのは、雇用面についてはよく知らない分野なだけにすごい人数なのでしょうね。
    兵器開発終了後の雇用の話もかかわる人数を考えると納得。
    ダッソー社も以前ラファールの新規採用がないと雇用が-という記事もありましたね。

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