欧州関連

不毛な議論、日本のF-4EJを彷彿とさせるドイツの無人機武装化問題

ドイツで非常に興味深い武装可能な無人機(UAV)導入議論に火がついている。もしかすると今後日本も同じ状況に陥るかもしれない。

参考:Entscheidung über Kampf-Drohnen noch dieses Jahr

ドイツで議論に火がついた無人機(UAV)の武装化

1995年に米空軍がRQ-1プレデターの運用を正式に開始したことで無人機(UAV)はただの監視者から攻撃可能な兵器へとジョブチェンジを果たし、ボスニアやイラクなどで有効性が確認されると米国以外の国がこぞって武装可能な無人機(UAV)を導入して運用するようなったのだがドイツは頑なに監視・偵察用途に限定した無人機しか保有を許さなかった。

しかし、ここに来て武装可能な無人機(UAV)導入議論に火がついている。

ドイツ軍はアフガニスタンの治安維持を目的とする国際治安支援部隊(ISAF)に初めて参加した際、イスラエル製の無人機「ヘロン」を運用して駐屯地周辺を警戒中にタリバンの兵士が迫撃砲やロケット弾で駐屯地を狙っているのを発見、直ぐに駐屯地内の兵士に対し身を隠すよう警告を発したため駐屯地内に着弾した攻撃で死者や負傷者を出さずに済んだのだが問題が残った。

無人機によって間近にタリバンの兵士が自分たちを攻撃しているにも関わらず、武器を何も搭載していないので画面越しに眺めることしかできないのだ。

出典:Deutsches ZentrumfürLuft und Raumfahrt / CC BY 3.0 DE イスラエル製の無人機「ヘロン」

その後、紆余曲折を経てドイツ軍は武装可能なイスラエル製無人機「ヘロンTP」導入を決定、2021年にもドイツ軍で運用が開始される予定なのだが与党キリスト教民主同盟(CDU)が連立を組むドイツ社会民主党(SPD)がヘロンTP導入の際、同機が搭載する武器や弾薬の購入をしないことを条件に導入を認めたためキリスト教民主同盟を中心に武装解禁を求める声が挙がっている。

キリスト教民主同盟は時間をかけてでも無人機武装化について議論すべきだと主張しており、メディアも無人機武装化について様々な意見が報じるなど注目が集まっている。

これは日本の社会党(現社民党)が空中給油装置を備えた戦闘機F-4EJ導入は専守防衛に反すると批判し、結局日本はF-4EJから空中給油装置や爆撃コンピュターを外して導入することになったのとよく似ている。さらに日本も武装可能な無人機は保有しておらず、今後必要になった際にドイツと同じような議論へ発展する可能性も秘めているので決して他人事ではない。

日本も次期戦闘機「NGF(仮称F-3)」と連携して使用する無人機を幾つか開発する予定で、その中には武装可能な戦闘用用途の無人機も含まれているのだが、RQ-1プレデターやヘロンTPのように低空を飛行して対地攻撃を行う無人機を導入しようとすれば野党が反発する可能性がある。

次期戦闘機の無人機と対地攻撃を行う無人機は本質的に何も変わらないのだが、非戦闘員を巻き込む可能性の高い対地攻撃を無人機で行うことへの抵抗感によるものだろう。

果たしてドイツは、ドイツ社会民主党を説得することが出来るのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain RQ-1プレデター

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    東北の震災から10年で日本国内の安全保障に関する意識が驚くほど変わった事を考慮すれば、中ロ朝韓との衝突がますます激しくなると予想される今後10年でさらに国内の認識が大きく変化することは十分にありうると思います。F3の実戦配備は早くとも2035年です。F3のウィングマンを議論するのは2035年より後になると思われますので、その頃には日本国民の意識や野党議員の質がかなり変わってていると思います。実際、昔の社会党や自社対決を見てきた私の世代からすると今の立憲民主党は口ではリベラルですが中身は随分右寄りになったと思います。隣国との軍事的緊張が高まれば野党も自衛官の命を守るための無人攻撃機の保有や離島防衛のための対地攻撃能力の保有に反対はしないと思います。

    2
      • 匿名
      • 2020年 5月 17日

      東日本大震災からではなく、尖閣事件からではありませんか?

      ズバリ!輸送鑑おおすみ作戦で!

      艦艇を見れば戦艦!装甲車両を見れば戦車! リニアを論ずるに陸蒸気の認識で反対してくる左翼に、正直に諭しても理解不能です。

      全通甲板おおすみ級で目を慣らし、日向伊勢~出雲加賀に至ったように、先ずは無人偵察型から始める。愚直な開示は不毛の論争です。

      3
    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    ドイツは日本とは2週ほど周回遅れだなあ・・・。
    日本みたいに未だ反独教育を続けていて、日本のそれよりもっとひどいんだろうな。。。
    言論統制は未だ敷かれているし。

    2
      • 匿名
      • 2020年 5月 19日

      無人機運用の先駆者である米軍が、専用の無人機って撃墜リスクの割に高すぎる・・・っと結論だしグローバルホークやリーパーの早期退役を言い出したので無人機武装化の議論がすでに周回遅れと言う。
      一応、民生品を改造して補填する計画みたいですが。

    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    日本で一番問題なのは国民にとって本当に価値のある議論が与野党間で為されていないことでしょう。倒閣しか見えていないかのような近視眼の野党や、それをあしらうのに慣れきって弛む与党では心許なく、政治に緊張感をもたらすだけの投票率が有権者には求められます。

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 18日

      同意します。本格的な対案を示せる/国民に提示できる野党の出現を望みます。
      ヨーロッパのような現実的な左翼野党が出現すればもっと良し(国民民主に期待)

      2
    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    今の日本国民の安保意識は空母化を容認する程度には改善されてるけど、それは中国という日本にとってはソ連以上の現実的脅威が現れたからであって、喜ぶべきことなのか微妙な気持ちになる。
    ドイツの無人機云々ってのも結局は遠征先の中東での運用が主体であって、ロシア軍が復活してきているとはいえドイツ本国に現実的脅威はない。そう考えると未だに以前の日本みたいな状態なのは仕方ないし、ある意味羨ましいかもね

      • 匿名
      • 2020年 5月 17日

      東西冷戦のおかけで軍が再建されたまではよかったが、統一してEUで欧州を牛耳ってしまってからのドイツの緩み具合はひどいね
      あのドイツ軍で戦車がまともに100台動かないとか聞いたときは呆れかえったわ

    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    大変失礼な疑問なのですが
    維持できますか

    1
    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    10~20年先のNGFよりもF35の随伴無人機で近い将来の議論があるかも。制空寄り(?)のNGFよりかはF35にこそ対地戦闘のイメージがある。
    将来的には対空兵器も無人機に載せるかもですが。

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 19日

      随伴無人機は親機と同じ仕事する必要はないのでは?
      「F-3の制空権下で対地対艦攻撃を行う無人機」という組み合わせはありかと。

      3
        • 匿名
        • 2020年 5月 24日

        近い将来に限っては、無人機ってせいぜいが僚機レベルかと。
        僚機レベルでも凄いっちゃ凄いんだけど。

    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    無人機に対して攻撃された際、憲法上反撃は許されるのか?
    また攻撃者が有人だった場合と無人だった場合で対応は変えるべきなのか?
    そのあたりの議論から始まらないといけないような

    2
    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    EU拡大の恩恵で、ロシア正面の前線から遠のいた心理的な影響も多分にありそう。
    一方の我が国は、肥大化する中国軍と新冷戦の最前線。言葉遊びの余裕はないわいな。

    • 匿名
    • 2020年 5月 17日

    C-1の航続距離なんかも社会党その他の圧力で短くされたわけだけど
    C-2は海外展開も視野に入れて開発したのに全く問題にならなかったよね
    正直80~90年代あたりとはもう国民の質が違うんで
    無人攻撃機導入決定してもマスコミと野党が騒いでお終いだと思う
     
    むしろ憲法9条で先制攻撃出来ないなら最初に撃ち落とされるのは無人機の方がいいじゃんて事になりそう

    3
      • 匿名
      • 2020年 5月 18日

      >むしろ憲法9条で先制攻撃出来ないなら最初に撃ち落とされるのは無人機の方がいいじゃんて事になりそう

      それ良いね。
      国是に縛られて、無駄に隊員を危険にさらす状態を、少しでも緩和出来たら良いですね。

      2
        • 匿名
        • 2020年 5月 18日

        平時のスクランブルだと、戦時との狭間のグレーゾーン事態ではカナリア役を務めることになりますからね
        撃たれるのが役目なら、可能な限り無人化したい
        ロイヤルウイングマンの類いに、可視光含むセンサー類とガンポッドに短AAM、レーダーリフレクターを付ければ、平時のスクランブルは代替できるだろうか?(通信回線の維持は必須ですが)

    • 名無し
    • 2020年 5月 18日

    小規模の無人攻撃機ならば外国を侵略する目的には不向きなので日本の専守防衛に合致するという考え方ができると思う。
    たとえば、攻撃型のヘロンで爆撃しても戦略上、ほとんど意味がないはずで、違憲にはあたらない。
    島しょ防衛や小規模なテロ対策などでも無人攻撃機は有効で、自衛隊員や警察官の生命を守る意味でも導入を急ぐべきだ。

    • 匿名
    • 2020年 5月 18日

    更に費用を掛けてダウングレードするというのは真に愚かしいと思います。

    つーても、排ガス規制なんかで自動車やバイクも性能を落とされてたっけね。

    • 匿名
    • 2020年 5月 18日

    >野党が反発する可能性がある。
    反発するだろうが、現在の勢力を見れば国会の場で言えばどうでも良い
    リンクして活動してるメディアの影響力は要注意だけどね

    • 匿名
    • 2020年 5月 18日

    >空中給油装置や爆撃コンピュターを外して導入することになった

    …あったなぁ、そんな事も。
    でも、その後の近代化改修時に爆撃コンピュターは復活しているし、同じ轍は踏まないものと信じたい。

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