ドイツはウクライナが要請した小銃、無線機器、装甲車両等の支援を「問題の解消には役に立たない」として拒否したと報じられている。
参考:Germany rejects Ukrainian request for arms deliveries
ロシアはノルド・ストリーム2が完成してウクライナ経由の天然ガス供給契約が切れれば軍事行動を行う可能性が高い
ウクライナはロシアによるドンバス地方やクリミア方面からの軍事的圧力に対処するためドイツに小銃、無線機器、装甲車両等の支援を要請したがハイコ・マース外相は1日「ウクライナ東部での問題は政治的手段によってのみ解決可能でウクライナへの武器供与は役に立たない」と語り、このアイデアを実行に移すことを拒否したと報じられている。
但しウクライナへの武器供与はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と最近会談したドイツの政党「緑の党」党首のロベルト・ハーベック氏がウクライナ側に申し出た提案で、ゼレンスキー大統領は独メディアの取材に対して「私の方から彼に武器供与をお願いしたことはないが彼が我々を支援するため武器供与を主張してくれたことに感謝している」と述べているので、実際にマース外相が拒否したのはウクライナの要請ではなく緑の党の提案という方が正しい。
ただゼレンスキー大統領は独メディアの取材に対して非常に興味深いことを主張(ウクライナ大統領府が独メディアによるインタビー内容の全文を公開している)しておりロシアが何を狙っているのか、NATOが何を恐れているのかを赤裸々に語っている。
参考:Interview of the President of Ukraine to Frankfurter Allgemeine Zeitung
ゼレンスキー大統領によればロシアは占領したドンバス地方とクリミア半島を陸続きで繋げることを狙っており、ドイツとロシアが建設中の海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」が完成してウクライナを通過するパイプラインが用済みになってフランスやドイツと締結しているウクライナ経由による天然ガス供給契約が切れる3年後に事態が動く可能性が高いと説明して「ウクライナ経由による天然ガス供給契約の更新が行なわれないようロシアは妨害してくるはずだ」と睨んでいる。
要するにウクライナ経由による欧州への天然ガス供給はノルド・ストリーム2で迂回供給することができるため、ロシアはパイプラインの損傷や遮断を恐れることなくウクライナ東部で軍事行動を行うことが出来るようになるという意味で、欧米がウクライナのパイプラインに共同所有者という形で参加してくれればロシアの暴走を防ぐための抑止力になると主張しており非常に興味深い。
あとウクライナのNATO加盟問題にもかなり踏み込んだ発言をおこなっている。
ウクライナはロシアの脅威に対抗するためNATO加盟を望んでいるのだが、逆にNATOはウクライナを加盟国として迎え入れると防衛義務が発生するためロシアとの軍事衝突に発展するリスクを抱えることになり、特に加盟国の中にはロシアとの結びつきが強い国(特にエネルギー供給的な側面で)も存在するのでロシアを怒らせることに繋がるウクライナのNATO加盟に否定的な国も少なくない。
この問題に対してゼレンスキー大統領は「NATO加盟国が加盟国への攻撃を恐れ防衛義務が発生するのではないかと恐れているのであればNATOの存在意義には疑問が生じる、もしウクライナのNATO加盟を容認する国としない国があるのならNATOの構造にも疑問が生じる」と指摘、要するにウクライナのNATO加盟を拒絶する=ロシアとの対立や衝突を避ければNATOの集団防衛体制は建前のみでもはや崩壊した構造だと主張してるのだが、これに対して独メディアはNATOに変わる対抗策はあるのかと質問してゼレンスキー大統領は「プランB」が必要だと答えている。
つまりウクライナ問題を現在議論しているノルマンディーフォーマット(フランス、ドイツ、ロシア、ウクライナ)ではなく、旧ソ連の核兵器放棄と引き換えに署名国(米英露+仏中)が安全保障を提供することを約束した「ブダペスト覚書」をテコに米国を直接動かす=ウクライナの安全保障問題に関与させることが最も手っ取り早い解決手段(プランB)と言っているのだが、欧州の安全保障問題に米国が2ヶ国関係で応じてしまうとNATOの存在意義が霞むためバイデン政権がウクライナの要請に応じるのかは謎だ。
そもそも米国は数十兆円をつぎ込んだアフガニスタンからの完全撤退を進めており、さらに中東における軍事的プレゼンスも米軍主体ではなくNATO主体に変更して戦力をインド太平洋に集中させることを狙っているのでウクライナ問題にはNATO主体で対応したいというのが本音だろう。
恐らくゼレンスキー大統領も米国の本音は理解した上でブダペスト覚書を持ち出した可能性が高く、安全保障の提供を約束した署名国(米英+仏)が十分な約束を果たさない場合どうなるのかを遠回しに匂わせようとしているのかもしれない。
因みにウクライナの駐ドイツ大使は今年4月「NATOに加盟できない場合に備えて核武装を検討している、ウクライナは他に祖国を防衛する手段がない」と主張して注目を集めたことがあるので、プランBに言及したゼレンスキー大統領の本音は「欧州がロシアとの衝突を恐れてウクライナを見捨てるなら核武装も厭わない」と言いたいのではないだろうか?
関連記事:ウクライナはNATOに支援を要請、ロシアは支援に応じれば追加措置を取ると恫喝
関連記事:米欧州軍の予想とは真逆、ウクライナ国境沿いに集結したロシア軍が15万人を突破
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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain ウクライナ陸軍
アメリカに圧力かけられてるとは言え結局ノルドストリーム2進めてるわけでロシア相手をドイツあてにすんのが間違いだよなあ。
ドイツは原発をくだらないイデオロギーで廃止したせいで電力の確保が破綻しているからね、この問題を加速させている元凶の一つと言ってもいい
そんなのがEUの盟主気取りでいる訳だから安全保障が揺らいでしまうのは必然
ウクライナが核武装に踏み切っても何も驚かないかな
日本だって日米同盟がなければとっくに核武装していたと思うよ
この記事を読むまで、ノルドストリーム2がロシアによる対ウクライナ兵器とは、気づけなかった。
プーチンはミンスク・ドンバス・クリミアの防衛線は「レッドライン」でそれを米が越えれば開戦辞さずと覚悟を決めて議会演説で明言してる。オバマ時代にネオナチを使ったカラー革命でウクライナをひっくり返したのは、ウクライナがルーツの東欧系ユダヤ人ブリンケンとヌーランドら民主党ネオコンのリベラルホークの連中。バイデン政権で再び国務省に復帰して、最近はベラルーシでクーデター狙って失敗、ウクライナにNATO軍を展開、どちらもプーチンが強硬対応して膠着状態に持ち込んだ。ハイブリッド戦の謀略仕掛けて東進してロシアを挑発してるのは米民主党ユダヤネオコンとNATOであって、ロシアが西進して勢力拡大してるわけではない。「レッドライン」で防戦してるだけ。2014年のウクライナ問題に引き摺りこまれて一番嫌がったのは二度と東部戦線やりたくないドイツ。当時からメルケルはヌーランドの汚い手口に激怒し対立してた。統一後一貫して対ロシア協調が国策の独を米が妨害してる。独はウクライナ、ノルドストリーム2、スパイ問題、ドイツ銀行懲罰と徹底して嫌がらせしてくる米に対し、非米陣営への転換をもう公然とやるようになった。今や加盟国にとって罠でしかないNATOは既に機能不全で終わってる。EUは反露中を強要される属米をやめ、このまま離れてく。トランプ派共和党が巻き返して、ポグロムやられた復讐にロシア人を本気で殺したがってるイカれた東欧系ユダヤ人を政権中枢から追い出さない限りこの流れは止まらない。
>オバマ時代にネオナチを使ったカラー革命でウクライナをひっくり返したのは
こういうロシア発の陰謀論を未だに信じてるのか…
アメリカの民主化支援団体がウクライナの団体に資金を拠出したのは事実だがごく僅か
そのウクライナの団体は当初は、家を無くしたサッカーファンの互助組織でしかなく、のちに大きくなったが極右ではないな
ロシアの方がオリガルヒを使ってよほど悪辣な事をやってウクライナ政権に工作をしていたから、民衆の反発を買ってオレンジ革命が起きたんだよ
オレンジ革命起きたはいいが、欧米は口先だけでろくに支援しなかった
だからこそまたロシアの工作を許して革命騒ぎになる流れ
ロシア発の陰謀論と断定するのは只のレッテル貼りだぞ。 注意すべきはネオナチが何を指すのか国によって異なる点。オレンジ革命で誕生した政権は初期に親欧米どころか欧米閥関係者が含まれていた点がある。
そもそもカラー革命はジョージ・ソロス氏が援助した学生団体やメディア組織が先導していたのは事実。ウクライナだけでなく東欧諸国で順番に発生したカラー革命の遍歴をしらべれば、ロシアから見たナチズムに似た現状が発生していた。
そしてオルガルヒとはソ連崩壊後に誕生した新興財閥の事で、軒並みプーチンに潰され(粛○)て形骸化してる。あの当時の東欧諸国(旧ソ連圏)はソ連崩壊と欧米の支援不足の影響で経済が安定せず、票の買収や暴動扇動等でまともな選挙が期待できなかった。
コメ主や返信者・参考をクリックした奴も不勉強なのが滲み出てるが、かくいう自分もカラー革命以降の騒動を詳しく知ったのはここ数年の事。何でもかんでも陰謀論の所為にするのはどうかと。
ちなみに
「ウクライナの団体は当初は、家を無くしたサッカーファンの互助組織でしかなく、のちに大きくなったが極右ではないな」
と言うことは民主党?からの資金援助で規模が拡大した組織は、左翼系(先鋭革新)か中道(進歩派)組織として抗議運動に参加していたのか?それだと
「オバマ時代にネオナチを使ったカラー革命でウクライナをひっくり返したのは」
と言う曖昧な言説も間違いとは言えなくなるのだが。 最低限の情報はwikiに掲載されてるので経緯を知るだけでも十分。オレンジ革命で誕生した世間がどの様な末路を迎えたのかも知っておくべき。
やはり核・・・核兵器は全てを解決する・・・!!
リアルでベルカ式国防術が見れるかも
ドンバスとクリミア地図から消すのか……。
狂気に見えながら、ニュークリアシェアリングの目的ってまさにこれなんだよなぁ
自国領土内に侵略してきた敵軍の撃退を目的としての戦術核の使用
それはあかんぜよ
本気の戦争になっちゃうだろ!
本気じゃないと守れないということではありませんかね?
食料の飢餓輸出とかやらされた上、ロケットと原発で国土を汚染され放題で、
確信的利益なんて言い続ける相手なのですから。
鶏を保温装置に組み込まなきゃ
持ってても先制使用した場合は核報復の口実を与えるから、局所戦に対してはどれだけ抑止力として機能するかちょっと疑問
国土全ての占領が目的の全面戦争は仕掛けにくくはなるとは思うけど
今の欧州人の考える欧州の範囲って、ロシア革命以後に区分された地域なのかな。
ロシアは欧州にあらずと公言する西側の学者もいるし、ウクライナは立場を選べないのかも
ちなみにアエロフロートの機内誌に載ってたCEO挨拶には、アエロフロートは欧州の航空会社ですって書かれて笑ったが、この両者の認識の違いを埋めるには溝が深すぎると思う
歴史的にロシアは欧州文化圏と認められてきたてことでしょ。
ナポレオン1世と戦争おっ始めるまでロシア貴族はフランス語を話していましたからね。
元々欧州の一員の意識がとても強いです。
それこそロシア人とヨーロッパ人の意識のズレだと思うよ。
我らからするとロシアは白人ヨーロッパ文化圏に見えるんだが、そうでもないらしい、ヒトラーに与するわけじゃないけど。
ピョートル大帝が内陸から海に面したペテルブルグに遷都したのは、ロシアもヨーロッパ人になりたかったから、つまりロシアはヨーロッパでは無いんだとロシア人自身が距離を感じてた証拠では。
ちなみにトルコとか中東域の人々にもアジア圏意識はあったりするんだが、我々からすると遠すぎて一体感が薄い、それと同じ現象があるようで
ロシア(モスクワ)に駐在していたことがあるけど
付き合いのあった複数の欧州外交官たちは
ロシアのことを『白いアフリカ』と呼んでいた
なにをかをいわんや
>「NATO加盟国が加盟国への攻撃を恐れ防衛義務が発生するのではないかと恐れているのであればNATOの存在意義には疑問が生じる
戦前ドイツのズデーテン併合を連想しました。
欧州の平和のためにドイツのズデーテン併合を英仏が認めちゃって。平和のための捨て石。
ソ連崩壊後に自分らからウクライナに手を出して、ロシアを挑発しておきながら。
管理人さんのおっしゃるように、集団的自衛権が得られないなら核武装、合理的な発想だと思います。
まあ、自国の安全保障は自国で考える、ということですな。
北朝鮮「な?アメリカの口車に乗って核兵器破棄したら駄目だってわかるだろ」
イラク・リビア・シリアのにウクライナの現状みてるとそらね
特にブダペスト覚書で核を手放したウクライナの今は影響大きいと思う
歴代金王朝はそう考えてるだろうから
絶対に核は手放さないだろうね
日本とウクライナは対ロシアでは対になる地理関係だから日本のほうが協力可能ではないか
ウクライナは中国に武器と技術を売ってんだよなあ
ゼレンスキー大統領は、今年のウクライナ戦技競技会に日本を招待しているが
自衛隊は参加するだろうか
トルコさん出番ですよ。
合意なんて紙切れでいざとなったら役にたたないってこと教えてくれるいい事例だね
ここで武器を供給すればドイツ人の評価はほんの少しだけど確実に上昇するのに・・・
ドイツ人は常に負け組というか美味しい立ち位置を逃す人達だ
フレデリック大王以来、ドイツと組んで幸せになった国はないけど、今のNATO加盟国はどうなってしまうのか