ロシア関連

ロシア、信頼性の高いエンジンとステルスは単発戦闘機に十分な生存性を担保する

ロシアの国営メディアがシングルエンジンの第5世代戦闘機をスホーイ設計局が開発していると先週明かして注目を集めたが、この新しい戦闘機についてイタルタス通信は「シングルエンジンを選択したのは経済的な理由とステルス技術による生存率向上の影響が大きい」と報じている。

参考:“Су-57 для другого”: зачем Россия строит новый истребитель

米国人が単発機のF-35に乗ることを恐れないのはエンジンの信頼性に加えてステルスに自信を持っているため

イタルタス通信によればロステック傘下のスホーイ設計局はロシア初となるシングルエンジンの第5世代戦闘機(仮称:Su-X/管理人が勝手に命名)を開発中で、このSu-Xには実用化済みのSu-57に採用されているステルス技術、エンジン(Izdeliye30/推定最大推力176kN)、電子装置、搭載兵器がなどが流用され、最大離陸重量18トン/推力重量比1以上/最高速度マッハ2.0+を目標に設計されているらしい。

ただSu-XのプロトタイプにはIzdeliye30ではなくAl-31FN(最大推力147.1kN)が使用されると説明しているので、Su-XのプロトタイプはIzdeliye30の実用化よりも先に完成すると解釈できる。

出典:ズヴィズダーが公開した動画のスクリーンショット

なかなかAl-31FNを搭載するという情報も興味深いが、軍事評論家のアレクセイ・レオンコフ氏が説明した伝統的な双発ではなく単発を選択した理由も中々面白い。

レオンコフ氏によれば双発の戦闘機は片方のエンジンが停止しても生き残れる可能性があるものの多くの国は戦闘機1機に1億ドルも支払えないと語り、中国とパキスタンが共同開発した単発戦闘機JF-17や南アフリカの単発戦闘機チーター(RD-33の派生型SMR-95が提供され試験機のスーパーチーターに搭載されテストが行なわれ高い評価を受けたが予算削減とSMR-95換装時の重心問題がネックとなりSMR-95採用は見送られた)に搭載されたロシア製エンジンの実績を挙げて「十分な信頼性があると」と説明。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Mary Begy

特に米国人が単発機のF-35に乗ることを恐れないのはエンジンの信頼性だけでなく「ロシアや中国などが保有するS-400以外に見つからない自信があるためで、信頼性の高いエンジンとステルスの組み合わせは単発機に十分な生存性を担保する」と主張、さらにロシアの戦闘機価格の半分以上はエンジンと燃料システムが占めているので単発機すれば戦闘機の価格が大幅に安くなるらしい。

因みに電子装置の小型化で単発機のレーダー性能や機動性は大型の双発機に劣らないとレオンコフ氏は語っており、単発機と双発機の戦闘能力差は20%もないと主張している。

レオンコフ氏の主張を要約すると「1億ドルの双発機を単発機に変更すると調達コストは25%以上削減が可能だが戦闘能力の低下は20%以内に留まる」という意味なのだが、これをロシア空軍が採用するのかについては触れていないため、やはり輸出専用機という位置づけに変わりはないのだろう。

出典:Public domain パキスタン空軍のJF-17

どちらにしても西側製戦闘機が政治的に導入できない国にとって単発戦闘機の選択肢は中国のJF-17しかなく、その中国は将来の戦闘機市場に備えるため輸出用の第5世代戦闘機(FC-31)開発も進めているので輸出価格が1.3億ドルのSu-57だけでは流石に危ないとロシアも感じているのかもしれない。

関連記事:ロシア、シングルエンジンの第5世代戦闘機開発はスホーイ設計局が担当か

告知:軍事関係や安全保障に関するニュースが急増して記事化できないものはTwitterの方で情報を発信します。興味のある方は@grandfleet_infoをフォローしてチェックしてみてください。

 

※アイキャッチ画像の出典:Dmitry Terekhov / CC BY-SA 2.0

人間対AIの戦い、トルコ製ドローンが初めて自律的に敵兵士を攻撃したと国連が報告前のページ

ドイツ、ウクライナが要請した武器供与について「役に立たない」と拒否次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    ロシア軍の無人航空機「オリオン」が量産化、露UAVの脅威が北海道に届くのも時間の問題

    ロシアは欠けていた武装可能で中高度を長時間飛行可能なUAVの量産化準備…

  2. ロシア関連

    ロシアも戦闘機に小型無人航空機を統合、Su-57のウェポンベイにライトニングUAVを搭載か

    ロシアの第5世代戦闘機Su-57はウェポンベイに複数の小型無人航空機を…

  3. ロシア関連

    今月3件目の不祥事、ロシア空軍「Su-35S」が味方の「Su-30SM」を撃墜か

    ロシア空軍の戦闘機Su-30SMが定期訓練中に墜落したと報じられている…

  4. ロシア関連

    ロシア、大型輸送機によるライトニングUAVの大量投入で敵防空システムの飽和を狙う

    ロシアの無人航空機開発の一翼を担っているクロンシュタットのセルゲイ・ボ…

  5. ロシア関連

    ロシアの新型戦闘機「LTS」はステルスと安価な運用コストを両立したマルチロール機

    ロシアのプーチン大統領はMAKS国際航空ショーの会場を訪れ、スホーイ設…

  6. ロシア関連

    露メディア曰く、第5.5世代戦闘機相当の新型戦闘機「Su-57M」開発完了

    露メディアは26日、戦闘機Su-57ベースに開発していた第5.5世代戦…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    記事中のJF-17の写真がDCSのに見える
    実機かな?

    5
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    エンジンが二基あると高推力と燃料・兵装の搭載量増加が見込める反面、製造費用もメンテの手間とコストも増え燃費も悪くなるからなぁ
    F35もハイローミックスのロー担当予定だったから、エンジンの信頼性上昇もあってコスパ優先でエンジン一基で設計されたらしいし

    18
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    ロシアの単発5世代機と中国のFC-31だと流石にロシアの方が売れそうな気がするが…さて

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 01日

      あれ双発だからな、ロシアの言い分なら十分な能力さえ確保すればSu-X(仮)の方が有利だけど実際作らないとよく分からんね
      値段もどのくらいに落ち着くか想像できないし

      15
      • 匿名
      • 2021年 6月 02日

      F-35が単発である最大の理由は、垂直離着陸型であるB型の存在が大前提の統合開発計画だからだ
      垂直離着陸する以上、ハリアーと同じく単発にするのが一番安全性と信頼性が高い
      ソビエトの垂直離着陸ジェット機も、メインエンジンは単発だったしね

      7
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    SU-57って輸出価格そんなに高くなってたのか~
    西側と同じくらいになってるとは思わなかったぞ

    26
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    いやー楽しみですね

    3
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    もうF-35のそっくりさんはいらんぞ

    ロシア機だから期待している

    17
      • 匿名
      • 2021年 6月 01日

      前に撮影されたオフィスのX-32みたいに機首のすぐ下にエアインテークがくるようなデザインだったぞ、最終的なデザインでも継承するかわからんけど

      5
        • 匿名
        • 2021年 6月 01日

        機首はX-32で、胴体後半はSu-57を単発化した感じかな?
        胴体中央部分は、上記から外れそうだけど。

        リンク

        1
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    かっこいい機体になることを期待。

    12
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    性能なんてどうでもいいから格好いい機体を頼む

    17
    • 匿名
    • 2021年 6月 01日

    パクリ元のF-22が早期退役でハシゴを外された形だな

    1
    •    
    • 2021年 6月 02日

    ロシア機ってエンジンに耐久性が無くて3、4回エンジン換装するしかないから結局安くはならないって話
    輸出型はアビオニクスもモンキーやしな
    イスラエルあたりからキット買って改造した方がよさげ

    3
      • 匿名
      • 2021年 6月 02日

      エンジンを国内で量産できる国の場合、
      「エンジンの寿命半分・製造単価半分」には一定の利点がある。

      いざドンパチ始まったら、30年間長持ちするエンジンなど無駄の極みでしかない。

      一方、輸出される国家にとっては、常にロシアに首根っこつかまれた状態になるし運用コストは上がるしあまり良いことは無いな。

      5
        • 匿名
        • 2021年 6月 02日

        > いざドンパチ始まったら、30年間長持ちするエンジンなど無駄の極みでしかない。

        数週間で片付く戦闘ならそうかもしらんけど、
        長期化する場合、整備レベルが低下して消耗が加速するから
        元々寿命の短いエンジンは時限爆弾化すると思う。
        中露ならそれも折り込み済みで運用できるかもしらんが
        まともな人権意識のある国でそれは難しいだろう。

        4
          • 匿名
          • 2021年 6月 02日

          現代戦で数週間で片付かない航空戦って何よ
          それこそ生産国でもないと耐えられない

          2
            • 匿名
            • 2021年 6月 02日

            色々あるでしょ。
            停戦と停戦破りの繰り返しとか。

            4
    • 匿名
    • 2021年 6月 02日

    単発だと、推力偏向双発機に比べて高空でのロール性能が悪くなるけど、地平線の下に隠れる対レーダー戦術を鑑みれば現実の戦闘機がそこまでの高度に上がることは無いってことなのかな……
    制御されたフラットスピンもできない(機体の真横から当たる風に対して効果のある舵面が存在しない)けど、こっちは流石に必要ないよね、雪風じゃあるまいし。

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 02日

      戦車でやってる反応装甲や迎撃防御システムを応用して機体後方に積むのがスマートですかな?
      チキンブロスにされちゃうのは流石にねえ。

      1
    • ゆう
    • 2021年 6月 02日

    双発だと片方止まっても飛んでいられる、という理屈がよく分からない。
    戦闘機の大抵のエンジンは、並んで、胴体にくっついている。
    これで、片方止まった(壊れた)ら、壊れた部品の破片が、胴体や反対のエンジンを破壊するような気がする。
    旅客機やA-10みたいならわかるが、戦闘機のような配置でも、現実的に有効なの?

      • 匿名
      • 2021年 6月 02日

      そんなエンジンが爆発するような大きな故障じゃなくて整備不良や部品のいくつかが壊れてエンジンがストップした(せざるおえない)状況でも片方生きてると帰れるって話

      8
        • 匿名
        • 2021年 6月 02日

        補足すると整備不良や故障じゃなくても外的要因や操作ミスなんかでもジェットエンジンは止まる。FADEC化されてない古いエンジンは特に。
        初期のF-15ではパイロットの年間飛行時間当たり1回程度はあったらしい。
        映画「トップガン」でも先行機のジェット後流吸って片肺止まる描写が出て来るよね(実際F-14は双発機なのに片肺停止でとっ散らかる(フラットスピンに陥り易い)ダメな例なのでこのツリーには不適切かもしれない)。

        2
          • 匿名
          • 2021年 6月 02日

          >操作ミスなんかでもジェットエンジンは止まる。

          そう言えば、FADEC化以前だと急激な操作でも止まったのだっけ?

          1
            • 匿名
            • 2021年 6月 03日

            リンク空自でも未だにF100-PW-100搭載のF-15に搭乗する際は急激なスロットル操作すんな、との技術指示が出てるみたいですな。
            特に急なA/B全開で起き易いとか。

            1
          • 匿名
          • 2021年 6月 04日

          F-14AのTF30エンジンとF-15初期のF100エンジンはストール問題で苦しんでましたよね。
          同じF100を積むF-16ではストール問題が大きくなかったので、F-15の可動インテーク起因では、と言われてますが、よくわかってないです

    • A
    • 2021年 6月 02日

    >仮称:Su-X/管理人が勝手に命名…。
    いいネーミングですね。
    ロシアも参考にしたりして。

    • 匿名
    • 2021年 6月 03日

    ロシア機が単発化されたら、双発機に生えているあの尻尾はどうなるの?
    そもそも、あの尻尾は何のためにあるの?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
  2. 軍事的雑学

    空飛ぶスナイパー? ロシアの戦闘機「Su-57」は米軍の航空支配を効果的に破壊す…
  3. 米国関連

    本当に笑えない、米空母ジェラルド・R・フォードを苦しめるエレベーターの呪い
  4. インド太平洋関連

    日米からのオファーがない? 韓国空軍、日本のF-35整備拠点利用を否定
  5. 軍事的雑学

    打つ手なし? ドイツ軍兵士は一般的な乗用車を「プーマ歩兵戦闘車」と思い込まされ訓…
PAGE TOP