ウクライナ戦況

独KMW、ウクライナへPzH2000×100輌提供をドイツ政府に提案

独クラウス・マッファイ・ヴェクマンは9日、ドイツ陸軍が保有するPzH2000×100輌をウクライナに提供して新規製造分でギャップを埋めるというアイデアを政府に提出した。

参考:Ukraine liegt milliardenschweres Angebot für deutsche Panzerhaubitzen vor
参考:Украина хочет купить немецкие БМП Marder непосредственно у производителя – Bild

ギャップが解消されるまで5年もかかるという提案はドイツ陸軍にとって受け入れがたいだろう

独クラウス・マッファイ・ヴェクマン(KMW)が開発したPzH2000は30km先の目標を攻撃できる自走榴弾砲で計8ヶ国(ドイツ、クロアチア、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、リトアニア、オランダ、カタール)が導入したが、最近は韓国のK9に押されて新規受注の獲得に苦しんでいる。

出典:Public Domain オランダ陸軍のPzH2000

そのPzH2000をウクライナに提供してはどうかとKMWが政府に提案したらしい。

KMWの提案内容はドイツ陸軍が保有するPzH2000×100輌を早急にウクライナへ提供、新規に製造したPzH2000を2024年~2027年までに引き渡すという内容で、これにかかる費用についてKMWは「17億ユーロ/約2,200億円(関連費用込み)」と見積もっており、ボクサーの車体を利用した装輪式の自走砲なら「12億ユーロ/約1,620億円で収まる」とも提案していると報じられている。

飽くまでもKMWが政府に提案しただけなので何とも言えないが、ドイツはPzH2000を100輌前後しか保有していないためKMWの提案を実行に移せば陸軍は自走砲を取り上げられることになり、このギャップが解消されるまで5年もかかるというのは受け入れがたいだろう。

出典:Sonaz / CC BY-SA 2.0 DE

因みにマルダー歩兵戦闘車×100輌をウクライナに提供するというラインメタルの提案についてはドイツ政府が拒否、そのためウクライナはラインメタルと直接取引を行い「年末までにマルダー歩兵戦闘車(保管分をオーバーホールしたもの)×35輌の引き渡しを受ける」と報じられている。

追記:英国が提供したスターストリークでウクライナ軍兵士がロシア軍のOrlan-10(推定)を撃墜するシーン

関連記事:ショルツ独首相、ウクライナが要請したマルダー歩兵戦闘車の提供に難色

 

※アイキャッチ画像の出典:7th Army Training Command from Grafenwoehr, Germany / CC BY 2.0

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コメント

    • 匿名
    • 2022年 4月 10日

    ラインメタルとKMWさん相当な危機感をお持ちなの心中お察しいたします
    しかし市場評価は米国製一辺倒に傾きつつあり(独政府のお陰で)厳しいかと

    29
      • ザコ
      • 2022年 4月 10日

      ちょっと商売っ気出し過ぎな気もしますね…。あんまり無理な提案しても断ったドイツの立場が悪くなるだけな気がするのです。

      24
      • 伊怜
      • 2022年 4月 11日

      危機感(売上か足りない)
      ドイツ軍があんまり発注してくれないから、この機会に稼ぎたいだけにしか見えない

      4
    • K(大文字)
    • 2022年 4月 10日

    まさか民間企業から先にこの手の提案が出されるとはね…
    で、ドイツ政府はお決まりの「防衛力の低下を懸念」という事だが、この言い草はサッパリ分からない。
    いったい、NATO構成国としてロシア以外にどのような“安全保障上の脅威”を想定しているのやら。
    ウクライナがそのロシアと戦ってんだから、ピシピシ送ってやりゃあいいのに。
    直接軍事介入でもなし、今さらエスカレーションを心配する事もあるまいに。

    53
      • 四凶
      • 2022年 4月 11日

      そのウクライナで貴重な榴弾砲をただすり潰されただけの結果になるならなんのための供与なのか。

      こんな兵器、即席で戦力になりますなら日常的な訓練なんて全く無駄って話だぞ。こんな兵器は平時の積み重ねで初めてまともな戦力足り得る。

      2
        • K(大文字)
        • 2022年 4月 11日

        訓練無しで前線に送り込めとは書いてませんし、ウクライナ軍もそんな事は考えていないと思いますよ。
        当然習熟訓練は重要です。
        その訓練の前提が供与の合意ではないのですか。
        それを早く進めるべきだという事です。

        1
    • perorin
    • 2022年 4月 10日

    商売ワロタw

    ドケチのドイツが出す訳ないんだろうけど
    仮想敵のロシアを攻撃するんだからある意味、当初の計画通りの使い方だし
    貸与にしたら半分くらい返してもらえるんじゃないだろうか

    26
    • STIH
    • 2022年 4月 10日

    ドイツは日本と一緒で、邪魔さえしなければなんでも良いんじゃない?実際軍事的な余力がないんだから、民生品の車両なり食糧なり医療品なりを買い上げて提供するだけでも十分貢献できると思うけど。

    9
    • ブルーピーコック
    • 2022年 4月 10日

    ラインメタル
    「(ホコリ被ってて邪魔な)マルダーを再整備してウクライナに送ろうぜ!」

    クラウスマッファイ
    「PzH2000を100輌、ウクライナに送ろう!(そして新規受注しろ!)」

    俺にはこうにしか見えない

    44
      • えっくす
      • 2022年 4月 10日

      訓練の手間もあるから西側の主力装備品はまだウクライナに行ってないので、いち早く送り込んでロシア軍をボコボコにしてもらってジャベリンやTB2みたいに名を売りたいという思惑もあるかも…。
      対空ミサイル支援する!って威勢よく言ったは良いが倉庫で朽ちかけてたモノだったときもあったし、思いつきだけで思慮なく行動するのも迷惑だよなあ。

      21
      • 匿名
      • 2022年 4月 10日

      記事にもあるけど、特にPzH2000は最近K9に押されている感があるから、余計にそんな雰囲気ありますね。

      16
      • けい2020
      • 2022年 4月 10日

      そもそもドイツ軍のPzH2000が完全整備しないで使い物になるのかどうか、、
      稼働率がやばそうな気配しかしないんだがな

      ドイツ軍は一人当たり予算は自衛隊と変わらないのに、維持整備率があまりにも低いという
      表沙汰になったロシア軍よりひどいのがね

      7
    • Ange
    • 2022年 4月 10日

    自国の防衛体制に大穴あけるような案はそりゃ却下だろ…

    16
      • 白髪鬼
      • 2022年 4月 10日

      自分で既にボロボロにしてしまっておいて、今更かーい!
      と、突っ込んでみる。

      18
    • POP
    • 2022年 4月 10日

    他のNATO諸国が続々と供与し始めてから、仕方なくマルダーを供与をし始めるのでしょうね

    7
    • 猫鉈
    • 2022年 4月 10日

    ウクライナが墜ちたら明日は我が身の西欧の国にとって現役バリバリの自走砲はさすがに送れないでしょう
    前に記事になっていたマルダーのように予備保管のものがあるとか、代替の目処がついた退役予定の兵器でもなければさすがに厳しいでしょう

    6
      • tofu
      • 2022年 4月 10日

      つまり、各国のレオ2A4とかならワンチャン……?

      5
      • perorin
      • 2022年 4月 10日

      でも今般の損害でロシアは10年くらい戦闘不能だろうから
      ドイツの装備に穴が開いても時間軸では丁度いいような気もする

      9
        • 匿名希望
        • 2022年 4月 10日

        訓練基板すら消失するからね>手持ち全部渡す

        6
        • tarota
        • 2022年 4月 10日

        どうせポーランドが盾になるんだから現有兵器送ってもいいだろうに
        今のロシアにポーランドぶち抜いてドイツ国境まで押し寄せる陸軍力はない

        10
      • 匿名希望
      • 2022年 4月 10日

      日本のPRE-MSIPならワンチャン?
      近代化改修してからおくれ?
      せやな

      1
    • や、やめろー
    • 2022年 4月 10日

    スターストリークの映像だけど、撃墜されたものが見えないんだが。誰かわかった人いたら教えてください

    4
      • けい2020
      • 2022年 4月 11日

      薄曇りの空だとまったくわからないですね、音で命中してるような感じですが
      スターストリークの弾頭もあの空だとまず見えないかも

      後半の発射機アップでスターストリークってのは分かるんですが

      2
    • tofu
    • 2022年 4月 10日

    まあ、もし供与されてしっかり運用できるなら強力だよね
    最新の自走砲に求められる「秒で展開して、秒で大量の砲弾を、同じ目標に叩き込んで、秒で撤収」する能力を持ってるし
    そういう面で言えば、この戦争で使われてるどの自走砲より遥かに先進的というか

    まあ、簡単な話ではないだろうけど、ここから先の東部戦線においてこういう全体的な流れは歓迎すべきかと

    8
    • ダヴー
    • 2022年 4月 10日

    実際問題、冷戦終結以降30年に及ぶ軍縮の流れの中で西欧諸国に装備品の余剰はそれ程多くないだろうし、重装備の支援ってこれからどうやっていくんだろう?

    4
    • ダヴー
    • 2022年 4月 10日

    最後の動画ですが、スターストリークではなくマートレットだという指摘があります

    リンク

    7
    • makumaku
    • 2022年 4月 10日

    昨日ドイツのWELTは、ドイツ国防省は開戦初期にドイツがウクライナに提供可能な
    ドイツ連邦軍では”もう使われていない”兵器ーレオパルト1A5やゲパルトーが
    あることを知っていたが、ウクライナにオファーリストが渡されたのは3月30日
    になってからだった、と暴露した。
    リンク

    2
    • 2022年 4月 10日

    ただ現実的には弾の口径の問題があるから最前線に持って行っても弾の提供がなければ張子の虎になりかねないわな。
    ポーランドやチェコとか東欧に提供して、玉突きで弾薬ごとウクライナに旧兵器ソ連、ロシア製兵器を提供するのが良いような…。
    クラウス・マッファイ・ヴェクマンはモノだけで弾薬は作ってないだろう。

    6
    • たまねぎ
    • 2022年 4月 10日

    日本でも三菱重工や川崎重工あたりが兵器提供を働きかける…なんて展開は流石に無理か。

    同じ敗戦国で軍需産業が内需のみで細々とやってきた本邦と、輸出実績で世界有数のドイツとの差は何から来ているのだろうか。

    平和ボケという観点だとそう大差ないはずなのだが…
    非核三原則ほど武器輸出三原則が世論の注目を集めることもなく、そもそも共産圏に流れないための縛りだったはずなのに。

    2
      • 匿名
      • 2022年 4月 10日

      >平和ボケという観点だとそう大差ないはずなのだが…

      冷戦当初の西側の防御プランは、
      押し寄せ西ドイツの地を蹂躙する東側に対して、
      西ドイツで核を使用して打撃を与え、しかる後に反抗奪還だったとか。
      それだと焦土確定、復興はWW2後より困難なので、
      戦線を東側にずらすのが戦後西ドイツの命題だった様です。

      地続きで前線だったので、平和ボケする暇など無かったのが、冷戦期の西ドイツだったと思います。
      日本も冷戦からの前線ではありますが、海や空での事なので、国民は実感が乏しく平和ボケしたのでしょうね。

      冷戦後のドイツは、前線がポーランドとかに移って、日本以上に平和ボケした風ですが。

      13
    • くらうん
    • 2022年 4月 11日

    >ウクライナ軍兵士がロシア軍のOrlan-10(推定)を撃墜
    サッカーでPK決めたみたいな盛り上がり方だなw

    1
    • 折口
    • 2022年 4月 11日

    更新時期でもなく予備車両がある訳でもないドイツ軍が、それも世界一高価な自走砲をわざわざ供与させるというのも無理筋ですよね。

    むしろこういう時こそ予備兵器の在庫を多数抱えていて生産力も高い韓国に出てきてほしいところですが、政権移譲が終わるまでは難しそうですね。ほんとに文政権は絵に書いたような左翼対応を貫きましたよね

    1
      • 通りすがり
      • 2022年 4月 11日

      日本が出来ないことを韓国がやってやれよと言うのも筋違いだけどね。日本以外の国が武器供与でどんな対応をとっても日本だけは批判する資格はないと個人的に思っている。

      6
      • 匿名
      • 2022年 4月 11日

      戦後再軍備だけど西側ナイズされるの確実でポでは韓国AFVが内製化され隣国で共有化ってのありがちに思えるが戦中段階で米国勢が政治力強めるから戦後再軍備の競争入札でも戦中対応を理由に弾かれるんだろうな思う
      殺傷武器の支援は不可能と断言して戦後再軍備に参入は虫が良すぎる

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