スロバキアのヤロスラフ・ナド国防相は10日、NATO標準規格155mm榴弾砲を搭載した自走砲「Zuzana/ズザナ」の売却についてウクライナと交渉中だと明かした。
参考:Slovakia could sell howitzers to Ukraine, defense minister says
スロバキア陸軍が16輌保有する「ズザナ」をウクライナに提供するための交渉が進行中
ウクライナやNATOは和平交渉によって停戦が実現しない場合に備えて「重装備の供給=ウクライナから武力でロシア軍を追い出す」を進めており、遠距離で敵を制圧できる火力が特に必要とされている。
英国のウォレス国防相は1日、35ヶ国以上の国防相と電話会談後に「殺傷能力の高い援助を行うことが決まった。ロシア軍は都市を大砲で攻撃しているためウクライナはより長い射程の大砲が必要で、そのための長距離砲と弾薬をウクライナは手に入れることになる」と明かしており、独クラウス・マッファイ・ヴェクマン(KMW)も政府に「陸軍が保有するPzH2000×100輌をウクライナに提供してギャップを新規製造でカバーすればどうか?」と提案している最中だ。
問題はスティンガーやジャベリンのように大量供与できるほど自走砲の在庫がNATO加盟国(米陸軍はM109を大量に保有しているが陸軍の規模を考えると余裕があるかは不明)にない点だろう。
ロシアによるウクライナ侵攻で欧州の安全保障環境は何が起こっても不思議ではなく、仮にKMWの提案を実行すればドイツ陸軍は保有する殆どのPzH2000をウクライナに提供することになるため火力ギャップ(新規製造でPzH2000の在庫が埋まるのは2027年)が生じることになり、特にドイツはNATO即応部隊やリトアニアに駐留するNATO部隊に戦力を提供しているためPzH2000を全て吐き出すなど不可能に近い。
つまり各国が保有する自走砲を「許容できる範囲で融通しあう」というのが最も現実的なアプローチであり、スロバキアのヤロスラフ・ナド国防相は10日、NATO標準規格155mm榴弾砲を搭載した自走砲「Zuzana/ズザナ」の売却についてウクライナと交渉中だと明かした。
スロバキア陸軍が16輌保有する「ズザナ」は152mm榴弾砲を採用した「ダナ/DANA」の後継バージョンでNATO標準規格の155mm榴弾砲(45口径)を採用、しかしダナで可能だった砲塔の全周旋回は左右60度に制限されており、この問題を解決して新型の52口径榴弾砲を採用した「ズザナ2」への更新が2022年までに完了する予定だ。
つまり16輌のズザナはスロバキアの国防力を損なうことなく提供が可能で、これを取得するためウクライナとスロバキアは交渉を行っているという意味だろう。
因みにNATO加盟国のチェコも装備を旧ソ連製→西側製に変更するため保有するダナをカエサル8×8で更新することが確定しており、侵攻前にウクライナはチェコ陸軍が保有する26輌のダナを取得することで合意している。
関連記事:独KMW、ウクライナへPzH2000×100輌提供をドイツ政府に提案
関連記事:英国防相、ロシア軍を追い出すためウクライナ軍に長距離砲供給を決定
関連記事:チェコが特例扱いでウクライナを支援、4,000発の152mm砲弾を無償寄付
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。 |
お金のない国が追い詰められているとは言えここまでバラバラな装備揃えるってのは戦力化としてどうなんだろうか。
無いよりは確実にマシですし、効率化を考えなければ部隊単位で運用すればできますからね
戦後は売却するのもありですし
時間がなくて書けなかったけど、あくまでも戦力化を中心に考えるなら休戦中でもそこまでホットな状態でもない韓国にK9吐き出させたほうがいいと思うんだよね。
1000両以上持っているならまともな100両位を抽出しても北が勢い付くこともないだろうし。何よりNATO加盟国での使用予定や使用中の割合が高い。韓国の戦力うんぬん言うなら世界中のK9インフラ活用して早々に新造したものを渡せばいい。
韓国ゴネるなら、アメリカはKF21のアムラーム統合とか欧州なら各種パーツ等で韓国兵器産業にプラスになるようなエサでもチラつかせればいいし。
そのとおりだね。
ついでに、T-80とBMP-3も提供させればいい。
ところで、Mig-29はどうなった?
韓国にやれと言うなら日本にも同じ事をやってからから筋じゃない?
自分たちは憲法がー、制約がー、世論がー、と言い訳して他国には上から目線でやらせろってどうなんだろうか?
自走砲大国な韓国と西側ベストセラーなK9。
韓国だけで1100門超ですよね。
その数の力を期待しているのでは?
日本は、ドイツと同様に配備数が少ないから、期待出来ないでしょう。
なんで喧嘩腰なんですか
おかしくない?
>韓国のT-80とBMP-3
5年くらい前に部品供給の改善無ければ稼働率ひどくて戦力外にしたいけど代替戦力が無いから無理に使いますレベルだから部品取り出来るかもやぞ。ドイツの車両は自国でなんとかなるけど韓国はウクライナに渡してからがスタートでしか無いと思うし困ると思うが。
>日本にも同じ事をやってからから筋じゃない?
ウクライナ側だって全く期待していないし過去のPKO時より明らかに人殺しに使われるの分かった上での弾薬提供なんて日本の政権がいくつ倒れても小田原評定で終わりそうだし。
日本製の兵器なんてもらっても困るだろ、01式軽対戦車誘導弾なんて非冷却センサー感度も射程もジャベリンに劣る(CLUがネックで変更すれば4kmは)しあまりにもガラパゴスでアップデートもされないのがどうしようもない。唯一、出来るとしたら現地で実績はある豊和M1500を本当にこっそり渡す位が限界。
ダナに引き続き、いかにもって感じの自走砲だな
そうダナ
あくまでも、貸与ではなく売却なんですね。費用は戦後ロシアから…
日本を含め資金援助国による金の使い道でもありますね
うちもFH70を持ってけドロボーとかできんかね
防衛装備移転三原則によれば可能ですね。
まぁでも無理でしょう。岸田首相の票田は広島という反戦(武力放棄)のメッカですから。
何よりも、平和は武力で保たれているという現実を直視しない国民がまだ大勢いますし。
不要な武器弾薬の譲渡となると防衛装備移転三原則よりも自衛隊法116の3に抵触しますね。武器弾薬は譲渡できないと規定されています
すみません。おっしゃる通りです。
そういう牽引式の榴弾砲ならたくさんあると思いますが、やはり自走砲がいいんですかね。
相手の砲兵を叩こうとしているのだから、撃ったらすぐ移動しないと危険すぎるのかな。
UAVで発見した砲兵陣地を逆に砲撃して殲滅という映像がありますから、牽引式だと撤収に時間がかかる分だけ危険なのでしょうね。
チェコは開戦直前に在庫の152mm砲弾4000発を供与していますが、このとき後日ダナを送る事も考えていたんでしょうか。
スロバキアは手持ちの長距離SAMも戦闘機もウクライナに供与して、防空はほぼ全てNATOに委ねるつもりですかね。
チェコもそうですが、もはやウクライナと一蓮托生の覚悟をきめたのかも。
対砲兵レーダーによって弾道からも位置がバレるそうで、砲兵との打ち合いとなれば移動しないと反撃が来るのでしょう。そのためにFH70は多少自走できますが。
152mm砲弾のウクライナ軍の貯蔵量、或いは、今後入手見込みの同砲弾の数量(NATO各国の余剰ストック)はどのくらいなのだろう。
以前も書いたけれど、規格の変更はウクライナ軍が勝利することに問題なければ、ウクライナ軍の都合に合わせた方が良いと思う。
155mm砲だけれども、今時点で問題なく渡せるものは、おそらく39口径砲ではないだろうか。
2000年前後に英・独のFH70が退役しており(聞いて見ないと判らないが)保管状態にあるのではないだろうか。
39口径砲は、M107通常弾で24km、米国製のBB弾で45kmの射程がある(wiki)。当面これで充分な気がする。
前の記事で、52口径砲を提案していたけれども、素人は、既存の2S3アカツィアの改造キットを作ればどうかと思う。
スロヴァキアの内相と国防相が、空軍にある11機のMiG-29をウクライナへ供与可能と、
テレビ局V Politikeとのインタビューで表明したとのこと。
リンク
スロヴァキアのへガー首相がPoliticoのインタビュー(4/10)の中で、MiG-29とズザナ
自走砲をウクライナへ送るためにNATOと協議中であることを明らかにしました。
リンク
発言要旨は以下の通り;
・ウクライナは、東部地域でのロシア軍の攻勢の前に、さらなる武器や装備を米欧に
懇請してきている
・スロヴァキア軍の装備をロシア依存から脱却させる
・S-300防空システムをウクライナに送り、それと引き換えに米国からパトリオット
を受け取る
・ウクライナのEU加盟を支援している
・ウクライナが勝つまでウクライナを支援しなければならない
・ロシア産の原油・ガス依存から脱却するべく各国と協議中
・経済制裁は我々に害を与えるよりも、プーチンに害を与えなければならない
スロヴァキアはウクライナと国境を接する隣国なので、ポーランド並みの危機意識を
もっていますね。
正直ここまで来ると最早NATOはロシアと戦争状態にあるといっても過言ではないと思うんですが、ロシアはそれでいいんでしょうか。
突然核とか打ち込みそうで怖い
すでにフィンランドやスウェーデンのNATO加盟報道に反応して恫喝を始めてるが、それこそ逆効果だと気がつかないのが民意を無視してきたロシアの哀れさ
現実問題としてロシアにはウクライナ以外の地域に対応するにも核戦力以外の余裕はないから危ないように見えるが、じゃあ核を使用して、勝ってロシアだけ無事に終わると思っているのか。
そんなとぼけた国ならば西側の総攻撃で滅亡したほうがいい
後年、もうこの時点でロシア対欧米の第三次世界大戦は始まっていたと解釈される状況なのかもしれない
ただ個人的にはそれでもロシアとプーチンはいきなり戦略核を落とす様な事はしないと思たい…
箱は旧ソでも中身は西側15榴で対装甲の誘導砲弾撃てるやつどんどん送って露軍砲兵を対砲カウンターで潰しまくるとドンバスでさえ多分勝てると思う
誘導弾と砲弾では同じ精密誘導でも納期違うしどっかに在庫眠ってるの幾らもある上にメーカーも急いで作ってかつ大量に用意できるからMLRより適当
現状西側個人ミサイルで対装甲と対AHと対FBはなされてるが遠距離火力戦闘のギャップは如何とし難く露軍も東部再攻勢でココ突いてくるの明らか
それにしても榴弾砲が100門しかないというのもなんだかな。火力も射程も誘導性も上位互換のロケット砲があるから立ち位置が微妙になって先進国では削減方針なのはわかるが、ここまで削減して大丈夫なのだろうか。
当たらない弾なんていくら撃っても兵站に負荷をかけるだけというのは分かるが。