ウクライナのマリャル国防次官は「過去2週間の間にクピャンスク~リマン方面の戦闘が激化したものの敵は何も成功を収めていない」と明かし、特にクピャンスクでの前進を裏付ける視覚的証拠は「0」に近いため、成功していないという主張は正しいかもしれない。
参考:Враг зализывает раны. Как ВСУ отстояли Купянск и где готовится прорыв: обзор фронта
約8ヶ月間の推移を振り返ると「ロシア人はウクライナ東部の状況を大げさに報告する傾向が高い」という結論に辿り着く
ウクライナ東部戦線(クピャンスク方面、スバトボ方面、リマン方面)の状況は視覚的証拠が少なすぎて良く分かっておらず、ウクライナ軍も戦況を大雑把にしか提供しないため、観測者の大半は主にロシア人の報告に基づいて同方面の戦況を推測しているが、ウクライナのマリャル国防次官は「過去2週間の間にクピャンスク~リマン方面の戦闘が激化したものの敵は何も成功を収めていない」と明かした。
ロシア人の報告に基づくクピャンスク方面の戦況は上記の通りで、ロシア軍はライマン・パーシイとヴィルシャナからシンキフカを制圧するため南下しており「シンキフカ集落内の大半はグレーゾーンになっているものの集落の南エリアはウクライナ軍が保持している」と言うのが大方の評価だが、マリャル国防次官はクピャンスク方面について「ロシア軍がシンキフカやペトロパブロフカの東に前進を試みたが、ここでの戦闘は全て敵の敗北で終わって前進できなかった」と説明。
ただ戦闘の内容は近距離の接近戦だけでなくクピャンスクに対する砲撃も激化しており、20日にクピャンスク市内は一日中砲撃に晒され「家屋や自動車が破損、10人以上が負傷し、パイプラインが損傷したため数千人の市民がガス供給を断たれた」と述べている。
この戦況図は2023年1月1日から8月23日までに位置が確認できた視覚的証拠を表示したもので、他の戦線と比べて圧倒的に数が少なく、正確に数を数えた訳ではないものの感覚的に言えばバフムート方面の1/100、リマン方面の1/10しかなく、戦闘が激化したという8月に登場した視覚的証拠(黄色円)もたったの19しかない。
更に言えばロシア人の主張を裏付ける視覚的証拠は「0」で、本当にグレーゾーンがシンキフカ集落内やペトロパブロフカ郊外に広がっているのかも怪しく、過去の経験から言えば「何らかの前進には必ず視覚的証拠が登場する=成功を収めてる方が必ず流出させる」ため、ロシア軍は前進できていないという主張にも一定の信ぴょう性がある。
ロシア人の報告には嘘(正確に言えば情報空間での戦い有利するための偽情報)が含まれており、シンキフカに関しては2月にも「ロシア軍が制圧した」という情報が拡散したものの結局はフェイクで、最近もロシア人軍事特派員が「クピャンスク近郊のシンキフカを解放した」と報告して「シンキフカの集落全体をロシア軍が走行している」と主張する映像を公開したが、この映像はシンキフカではなくセベロドネツクの南にあるヴォロノヴェのものだった。
ロシア軍が仕掛けたスバトボ方面の突破もロシア人は当初「ゼレベツ川を渡河したロシア軍はハルキウ州の州境に迫っている」と大々的に報告していたが、結局は報告されていたほど大規模な突破ではなく、ウクライナ軍の反撃で押し戻され、この攻勢でロシア軍が確保できたのはライホロトカの対岸にあるセルヒフカ(同拠点をロシア軍が確保している視覚的証拠は確認されていないものの、周辺の視覚的証拠を加味するとロシア軍が確保していると考えるが妥当)だけで、マリャル国防次官も「ロシア軍はペルショットラヴネーブの南=オスキル川沿いのボロヴァ方向に進もうとしたが失敗した」と指摘している。
ロシア軍がこの方面で成功を収めたと視覚的に確認されているのはノボセリブケのみで、約8ヶ月間の推移を振り返ると「ロシア人はウクライナ東部の状況を大げさに報告する傾向が高い」という結論に辿り着くが、これも情報戦の一種であり、ウクライナ南部やバフムート方面の状況を知る上でロシア人が提供する情報や視覚的証拠は本当に貴重なため、どれが真実でどれが嘘なのかを見極めながら付き合って行くしか無い。
リマン方面についてはクレミンナ周辺の森林地帯や広大な農地を巡る戦いが続いているものの、ロシア軍によるトルスケ方向への突破は失敗し、7月末に仕掛けたスピルネ方面への突破も多数の戦車や装甲車両を失う結果で終わり、相変わらず決定的な動きがないまま戦いが続いている格好だ。
結局、両軍とも東部戦線に10万以上(シルスキー陸軍司令官が“初めて東部戦線の兵力が同数になった”と7月に言及)の兵力を貼り付けて局地的な戦闘を続けているものの決定的な動きはなく、クピャンスク方面でロシア軍の攻勢を強化しているのは事実だと思うが、我々が想像するような大規模な機械化部隊による突破は発生しておらず、クレミンナ周辺の森林地帯で発生している戦いと似たような展開なのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:47 ОМБр
ロシア軍は学んだ?
結局何も学んでいないように見えるのだが
地雷でも砲でも兵隊でも結局のところ数しか頼れない
そうやって侮らせるのが向こうの作戦かもね
ここの記事でもロシアの戦術の変化でウクライナの防空に負荷がかかっているとか、昨年のような電撃的な反撃は望めないとか、慎重論が多い
過小評価はダメだが過大評価もダメ
ウクライナに余りあるリソースがあるのなら備えれば良いけど、今は限りがある
正しい評価をして適切なリソースの割り振りをすることが勝利につながる
ロシアの目的は南部から戦力を剥がすことであるのは間違いないので過大評価は思うつぼ
ロシア軍が常に予想を下回ってくるのでいい加減呆れてる
しかしこの夏は、もともとウクライナ軍が西側から供与されたレオパルト2戦車、チャレンジャー2戦車、ブラッドレー戦闘装甲車などを使って、一気に戦局を逆転させるようなことが、政治的に期待されていたわけです。
一方でロシア軍の方は、特にザポロジェ州の方面で龍の歯や、地雷を大量に使った、対戦車縦深陣地を数重に気づき、西側兵器を使ったウクライナ軍の反攻作戦を阻止することに作戦の重点を置いていたのは明らかです。
スバトボや、クレミンナの方も、もともとはウクライナ軍の方が攻勢を仕掛けていましたが、それらは全て失敗に終わり、今はウクライナ軍の方が守勢に回っているという図式です。
リマンや、クピヤンスクの方は、今のロシア軍が絶対に占領しないと困る、補給が苦しくなる、というような場所ではなく、兵力や弾薬に余裕があれば攻勢でもしとくか、くらいの程度の場所です。
ウクライナ軍が、それに反応して、ザポロジェやバフムトから兵力や弾薬を移動させれば、縦深陣地を使ったロシア軍の防御作戦はますます楽になります。牽制陽動作戦になるわけです。
期待通りの戦果でなくても、ウクライナ軍は着実に戦果を挙げ、一方ロシア軍は全く戦果を挙げられていないっていうのが現実なのでは?
この書き方だと、攻勢失敗したけど、よ、陽動作戦だからっ!とか言い訳にしかみえませんね…
相変わらず口癖の「~なわけです」と知った風な言い方ばかりだけど、最大限ロシア軍を擁護している様にしか見えないな
現実としては膠着状態でいいはずのバフムト・クリシェイフカで相当数の機甲戦力を無謀に突撃させて溶かしたばかりなのに、それは見えていないらしい
その戦力をクピャンスク方面に投入して脅かしてロボティネが奪えてなければまだわかるが、どこが牽制陽動になってるんだか
せっかく
続き
入念に準備した防衛ラインの前で兵士溶かしたらダメでしょ
装全うな訴えをしたポポフ少将始め解任された優秀な司令官が残した遺産の浪費
正直、ロシア側のミリブロガーでさえあなたほど太鼓持ち的な見解は中々無い
まだロシア人の方が現実直視してる
クピャンスク方面の攻勢は戦力誘引を目的にしているという向きもありますが
露軍による東部一帯の攻勢は戦場の主導権を奪取するための重要な攻勢です
過小評価すべきではありません
肝心のロシア側が何も視覚的な証拠を示していないので、過小評価をすることも出来ないんですけどね。
実際に戦果は上がっているが、軍事的機密を保持するために視覚的証拠は示さないと言うのなら、大々的に戦果をアピールするのは逆行してますよね。ウクライナがやっているように、リアルタイムの情報を把握されないように、1か月以上経ってから視覚的情報を開示するのが確実です。
管理人さんの視覚情報をマッピングした戦況図と見立てすごいですね(小並感
虚実入り乱れるロシア側発信をより分けるのも相当な根気が要りそうです(小並感
この地域の状況について適当な断言は言えません。
ここにコメントする他の人もそうではないでしょうか。
俺の育毛作戦は成功するかもしれないのに、ロシア軍はダメダメだなぁ
希望的観測は禁物ですよ
育毛兄貴オッスオッス!
まーたプロパガンダを垂れ流してる…頭部戦線は後退してばっかりじゃないか
ハゲがフサになるわけ無いだろいい加減にしろ!
BREAKING:
米国政府、ウクライナに脱毛剤供与発表 焦土作戦に移行か
おはプリゴジン
彡⌒ミ
(´・ω・`)また髪の話してる
残念だが、君の頭皮への支援はすべての国から断たれた
国家間の大規模戦争になると、初動の対空ミサイル部隊の破壊、制空戦闘と地上爆撃がなければ、一進一退の攻防が続きますね。
米軍が、航空戦力・作戦計画は突出していますが、その米軍ですら弾薬備蓄が危険な水準になっています。
国家間の全面戦争は、正面からぶつかるのであれば、本当に割に合わないものになっていますね。
ウクライナ戦争は、世界が単純な東西二元対立論ではなく、多極化して国益を追求した事が大きく影響しているように見えます。
ウクライナ国内のパイプライン、ウクライナ政府が破壊していない事(パイプライン通過収入やヨーロッパ諸国の要請でしょうか?)、ロシアとの資源貿易をヨーロッパ諸国が継続した事も不思議な戦争に感じています。
情報の氾濫ってそれそのものが武器になりますからね。。
例えば、ロシア軍が北海道のどこどこに秘密部隊を上陸させたって発表したら、そんなアホな話あるかいなと思いつつも警察あたりが確認しに行く必要があるでしょうし
それに数台の警察車両を使う=無駄にリソースを使うことになるという
ロシア軍が情報を氾濫させ本当の状況への対応を遅くさせるために、意図的にネット空間のロシア応援勢を利用して欺瞞情報をばら撒くことはあり得ると思います。
管理人様
記事のカテゴリが『インド太平洋関連』
になっていますが、『ウクライナ戦況』の誤りではないでしょうか。
私ゃ悲観が大得意なんで、ロシア側がクピャンスク市内を1日中砲撃できるって事なら割とウクライナ側危ない気がしますねー
要はカウンターで砲潰せないって事態なんで、ウクライナ側には偵察能力か攻撃能力そのものかが足りていない
ロシア側の侵攻が遅いのは不気味ですね
単にウクライナがしっかり地雷撒いてたとかで撤去に時間掛けてるだけかな?
それとも何かやっているのか
航空劣勢下で数も劣っているからある程度はしゃーない、とは思う。
ロシア側のミルブロガーが書いているような戦況図だとシンキフカは市街戦真っ最中で半包囲みたいな感じですが(ロボティネのような)
あまりに情報が上がってこないのを見るに現実とはちょっと距離が有るんじゃないかと思わずにいられませんね
ロシア最大の強みである砲兵火力に陰りが見えるのが成果をあげれない原因ですかね。
航空戦力が以前に比べて活発に動いているようですが、火力投射の持続力に圧倒的な差があるようですね。
向こうの強みである砲兵火力を抑えられるだけで割と進みやすくなるとはな。
着実に進んで、けど露軍のカウンターに動じず粛々と事を成していって欲しいものですな。
宇露戦争で学ぶ事は多いなぁ。
プーの字相手に「何の成果も得られませんでした!」と報告しなきゃならない立場の人間は大変だな。
自分なら胃がネジ切れる自信があるわ。
スロヴィキンとかはクビになって逆に清々してるんじゃないかとすら思う。
ロシアはあくまで通常砲弾だけで攻める感じなのか。ここまで来ると陣地攻略用に152mmのクラスター砲弾とか長距離飛翔するサーモバリック弾とかガンガン使って攻めるとか出来ないのかな。
ロシア軍は戦争初期からクラスター弾やサーモバリック、テルミットをガシガシ使っていて、特にバフムート攻略戦では大量投入していた。この種の特殊弾頭は通常のHE弾頭よりも製造コストや時間がかかるので今回のロシアのカウンター攻勢で姿を見せないのは、素直に在庫切れだと解釈するのが妥当ではないかと思う