欧州関連

トーネード後継機問題は来年に持ち越し、ドイツ新政権に参加する3党は「核兵器共有協定」維持で合意

ニュークリア・シェアリング体制からの離脱を主張していたドイツ社会民主党主導の新連立政権は24日、ドイツが同体制の一部でありつづけることで合意したと発表して注目を集めている。

参考:Germany to remain part of NATO’s nuclear sharing under new government

F/A-18E/FとEA-18Gの導入は2022年に決断、ニュークリア・シェアリング体制維持を打ち出したように対米関係重視に方針を転換するかどうか

ドイツでは9月の総選挙の結果、第1党の社会民主党を中心に緑の党(第3党)、自由民主党(第4党)による連立政権(メルケル政権時代に財務相だったショルツ氏が首相)誕生で3党は合意しており、残る問題は社会民主党がニュークリア・シェアリング体制(米国と結んでいる核兵器共有協定でドイツは有事の際に米軍が提供する戦術核兵器B61の運搬能力を維持する義務がある)からの離脱+国内の核兵器撤去を主張していた点だ。

この問題について4党は24日「ドイツがニュークリア・シェアリング体制の一部でありつづけることで合意した」と発表、これによりドイツはNATOの一員として有事の際に戦術核兵器B61の運搬する能力=つまりトーネードの後継機にB61の運用能力をもたせなければならない。

出典:public domain ドイツ空軍の戦闘機トーネード

トーネード後継機問題は前政権時代に一部のトルネードIDSが担当していたB61運搬任務をF/A-18E/F、電子作戦機トーネードECRの任務をEA-18G、残りのトルネードIDSが担っていた任務をタイフーンで更新することで決着したかに見えたが、当時のカレンバウアー国防相は連立政権のパートナーだった社会民主党に了承を得ることなく米国にF/A-18E/FとEA-18Gの調達を伝達したため白紙撤回を要求され、結局この決定は一旦保留扱いになり2022年に改めて決定を下すことになった。

ただトーネードを更新するためのタイフーン・トランシェ4の正式発注(一先ず38機/残り55機は総選挙に発注される予定)は2020年末に実行されており、社会民主党は「米国製戦闘ではなくタイフーンの電子作戦機バージョンやB61の運用能力を付与したタイフーンを導入するべきだ」と主張していたことがあるため、従来の主張を維持するならF/A-18E/FとEA-18Gの導入は無かったことになるかもしれない。

出典:public domain F/A-18E/F

しかし与党第1党の立場になった社会民主党はニュークリア・シェアリング体制からの離脱を引っ込めたため、対米関係を重視してF/A-18E/FとEA-18Gの導入を維持したとしても不思議ではなく、ショルツ首相が率いる新政権が今後どのように前政権との整合性を維持していくのか注目しなければならないだろう。

因みにニュークリア・シェアリング体制問題やトーネード後継機問題以外にも無人航空機(UAV)の武装を認めるか認めないかでキリスト教民主同盟と社会民主党は対立しており、今回から連立に参加した緑の党はUAV武装支持をかかげているため無人戦闘機(UCAV)「ユーロドローン」にも何らかの影響を与えるかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:ドイツ連邦政府 現政権最後の閣議後に花束と拍手を送られるメルケル首相

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 25日

    結局CDUも連立に加わってたんだ、第一党から第四党までの連立政権ってすごいな

    7
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      ドイツ政界が、これだけ大政翼賛会的にまとまっていれば、大抵のことはすんなり通る
      かもしれないが、CDUが連立に残ったのは、長年のCDU路線を否定されないよう防線を
      張るためだろうね。議会での論戦が減って、政府内の内輪もめが激しくなるということかな。

      5
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      あれ?今朝のSankeiBizや朝日新聞DIGITALで(Yahoo!ニュースでも見た気が)、第1党になった中道左派の社会民主党(SPD)、第3党の緑の党、第4党の自由民主党(FDP)の3党で連立政権を樹立するってニュース見たと思ったんだが、誤報だったのか?
      もしくは無断転載対策でわざとなのか。

    • 匿名
    • 2021年 11月 25日

    コメントが少な過ぎて草w

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      無理してコメントしなくていいよ。

      19
    • 匿名
    • 2021年 11月 25日

    冷戦期に日本にも核シェアの話有ったのにな
    核アレルギーのアホな国民と、それにおもねった政府が断っちゃった
    お陰で我々後の世代が大損だ
    冷戦が終わった今となっては実現困難

    9
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      核シェアとはいってもドイツ政府やドイツ軍が核兵器に関わる権限はなく、所持・管理・発射権限すべてアメリカ軍管轄だよ
      現代の核兵器の性能的に、日本国内にあろうがアメリカ本土や弾道ミサイル原潜から発射されるものであろうが大きな差はないからあえて日本国内においておく必要はないかと

      8
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      ドイツの核は自国内で起爆させるってのを念頭に置かないと。
      ドイツ国内に侵攻してきたソ連の陸上戦力をアメリカでなくドイツ自身が核で叩く算段なのよ。
      自衛隊が北海道や沖縄に核打ち込むなんて出来ないでしょ。

      7
        • 匿名
        • 2021年 11月 25日

        ドイツ自身には核の使用(要請)権原はなかったはず

          • 匿名
          • 2021年 11月 25日

          いや、自国領内に侵攻されればその国(この場合はドイツ)の政府が独断で使用出来るはず。

          6
            • 匿名
            • 2021年 11月 25日

            自国領内に侵攻された場合でも独断では使えないよ、というのも起爆コードはアメリカ軍が持っていて核の傘に加盟している国(核兵器共有国)には教えられていないから
            まとめると

            ・平時:保持・管理・使用権原はアメリカ軍
            ・有事:保持は核兵器共有国、管理・使用権限はアメリカ軍

            核兵器使用権原はあくまでアメリカ軍にあり、核兵器共有国に敵が侵攻して侵攻されている国に使用意思がある場合、NATOがアメリカに要請し、許可が下りればアメリカ軍が使用コードを伝えて使用可能状態にするという流れ

            だたしNATO国内で使用する場合は逆にアメリカ軍に使用意志があってもNATOの許可が必要

            2
              • 匿名
              • 2021年 11月 25日

              ニュークリアシェアリングは突き詰めて言えば
              自分の防衛戦略のための同盟国の領土内での核兵器使用の責任をその同盟国におっ被せるための協定だからな
              決して核兵器の使用権限を他国に与えるためのものじゃない

              3
              • 匿名
              • 2021年 11月 25日

              ニュークリアシェアリングっていうのは突き詰めて言えば
              自分の防衛戦略のための同盟国の領土内での核兵器の使用の責任を
              その同盟国におっ被せるための協定だからな
              決して核兵器の使用権限を他国に与えるためのものじゃない

      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      2発も落とされた国民が、核アレルギー持ってなかったら、その方がおかしいよ。

      8
        • 匿名
        • 2021年 11月 25日

        福島の件もおまけしておきますね

          • 匿名
          • 2021年 11月 25日

          福島原発のは原子炉の爆発じゃなくて建屋での水素爆発だよ

          6
            • 匿名
            • 2021年 11月 25日

            それは我々日本側からの見解で、メルトダウン起こしたら一緒さ…少なくとも世界はそう見てるよ。

            3
              • 匿名
              • 2021年 11月 26日

              さすがに原子炉の爆発と被覆管の化学反応によって発生した水素による水素爆発は別物すぎるぞ
              でも詳しいことを知らなかったら同じには見えるのかもしれない

          • 匿名
          • 2021年 11月 26日

          第五福竜丸も忘れないで。

        • 匿名
        • 2021年 11月 25日

        また撃たれるかもしれないという恐怖は、保有するアレルギーを超越するかもしれない

        4
        • 匿名
        • 2021年 11月 25日

        水爆打線なんて言葉があったことから分かるように、戦後直後の日本人には核アレルギーなんて無かったと思う。
        日本人の核への忌避感は戦後教育によって獲得したものだよ。

        8
          • 匿名
          • 2021年 11月 25日

          昭和のプロレスではわりと技名に使われてた気がする。

          アトミック・ドロップ(尾骶骨割り)
          原爆固め(ジャーマン・スープレックス)
          水爆固め(ショルダー・バスター)
          飛龍原爆固め(ドラゴン・スープレックス)
          猛虎原爆固め(タイガー・スープレックス)

          すみません脱線しました、以後気をつけます。
          ただ、言葉として使うのと兵器として使うのではかなりハードルの高さが違ったと思いますよ。
          陸自の対戦車ミサイルをわざわざATM→MATに言い換えてたぐらいですから。

          3
      • 匿名
      • 2021年 11月 25日

      核シェアを推し進めてた時期に、想定する脅威(ドイツなら国境に迫るソ連機甲師団、日本ならソ連太平洋艦隊や沿海州都市)に対して有効な投射能力を自衛隊が持ってなかったから話が来なかっただけだぞ。関係者にとっては当時から公然の秘密だったらしいが在日米軍は日本国内に核兵器を持ち込んでたし。原子力空母の母港になってる横須賀は当然として、ベトナム戦争中は主な後方補給拠点だった沖縄に核貯蔵していた話が00年代に開示されて話題になったっけ。

      3
    • 匿名
    • 2021年 11月 25日

    新政権は来月発足直後の来年1月に開かれるNPT核禁条約の締約国会議にオブザーバーとして参加意向のようで、ここでの態度如何によってはニュークリア・シェアリング体制へ何らかの影響があるかも。

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