米国が2月28日に開始した対イラン作戦は出口が見えないまま4月に突入し、スペインとフランスは本作戦に関与する米軍機に対して領空を閉鎖、イタリアも中東に向かう米軍機のシチリア島基地着陸を拒否、ポーランドではパトリオットシステムやLTAMDSの納期について懸念している。
参考:Italy turns away Middle East-bound US military aircraft from Sicily stopover
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参考:Israel halts all defence purchases from ‘anti-Semitic’ France
参考:Trump insta a Europa a “tomar” el estrecho de Ormuz y amenaza a Reino Unido, Francia y España: “Id a por vuestro petróleo”
イラン戦争は米国・イスラエルと欧州の分断に大きな影響を及ぼしており、ポーランドを取り巻く状況も不確定要素が増えて先行きが見通せなくなっている
米国とイスラエルが2月28日に開始した対イラン作戦は出口が見えないまま4月に突入し、欧州のNATO加盟国との関係もどんどん悪化し、スペインとフランスはエピック・フューリー作戦に関与する米軍機に対して領空を閉鎖、これまで米国の忠実な同盟者の立場を守ってきたイタリアのメローニ首相も対イラン作戦を批判してきたが、Defense Newsは31日「イタリア政府筋が中東に向かうP-8Aのシチリア島基地立ち寄りが拒否された」と報じた。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Joey Rolfe
イタリア国内の米軍基地・施設全体の使用を定める基本法は1954年10月に締結した二国間インフラ協定=Bilateral Infrastructure Agreement(BIA)で、シチリア島シゴネラ海軍基地もBIAの枠組みに基づいて運用されているが、この協定で認められている基地使用は兵站もしくは非軍事作戦に限定されており、エピック・フューリー作戦のような軍事作戦に関与する艦艇や航空機の基地使用はイタリア議会の承認が必要になる。
Corriere della Seraも31日「ルチアーノ・ポルトラーノ参謀総長は空軍参謀本部から『複数の米爆撃機がシゴネラ海軍基地に着陸後、中東へ向かう予定だ』と知らされたが、米国から着陸許可の要請は一切なく、イタリア軍と米軍の間でも事前協議が行われていなかった。このことは爆撃機が米本土を離陸してからイタリア側に伝えられ、米軍が提出した飛行計画にも『運用上の制限事項=緊急事態以外でイタリア領内の基地に着陸してはならない』が明記されていたため『協定で認められた航空機ではない』と判明し、ポルトラーノ参謀総長は米軍司令部に着陸拒否を通達した」と報じた。

出典:The White House
メローニ首相は「これまで通りあらゆる要請は注意深く審査される。国際的なパートナーとの間に危機や摩擦は一切存在しない。特に米国との関係は極めて堅固であり、全面的かつ忠実な協力関係によって成り立っている」と表明したが、Defense Newsは「今回の拒否決定はイタリア政府内でイラン戦争に対する不安が広がる中で下されたものだ」「これまでメローニ首相は欧州におけるトランプ大統領の忠実な同盟者として振る舞ってきたが、イラン戦争に反対する多くの有権者を敵に回したくないという意向から慎重なバランス外交を展開している」と指摘し、着陸許可は議会次第だと述べてイラン戦争に巻き込まれないよう距離を取っている。
ポーランドでも「米国が非公式にポーランド軍のパトリオット部隊を中東に配備し、既に納入済みPAC-3 MSEをエピック・フューリー作戦のために移転できないか問い合わせてきた」という報道が登場し、カミシュ副首相兼国防相は「我々のパトリオットシステムと迎撃ミサイルはポーランドの空とNATOの東部国境を守るために使用されている」「これをどこかに移転する計画はない」と否定したが、ポーランドのディフェンスメディア=Defence24は「これはポーランドのパトリオットシステムが中東に配備されないことを意味するだけで、ポーランドへの要請は米国のパトリオットシステムと迎撃ミサイルの不足を示唆している」と指摘した。
Nasze baterie Patriot i ich uzbrojenie służą do ochrony polskiego nieba i wschodniej flanki NATO. Nic w tej kwestii się nie zmienia i nigdzie nie planujemy ich przemieszczać! Nasi sojusznicy dobrze wiedzą i rozumieją jak ważne mamy tu zadania. Bezpieczeństwo Polski jest…
— Władysław Kosiniak-Kamysz (@KosiniakKamysz) March 31, 2026
“ポーランドは発注したパトリオットシステムの一部(計8セット中2セット)しか受け取っておらず、発注した次世代レーダー(LTAMDS×12基)の納入スケジュールにも影響を及ぼすかもしれない。米国は自国の安全保障に影響を及ぼす事情があれば対外有償軍事援助=FMS契約で発注された装備品の納入先や納期を変更する権利を有しており、実際にスイスは発注したパトリオットシステムをウクライナもしくはウクライナを支援している国に供給に振り替えられた。そのため米国は十分なパトリオットシステムや迎撃ミサイルを確保するまでポーランドへの納入を遅らせるかもしれない”
“さらに米国はクウェートに対する緊急の対外有償軍事援助(LTAMDSを8基)を承認し、これもポーランドが発注した次世代レーダーの納入スケジュールにも影響を及ぼすかもしれない。この問題はイラン戦争を巡った米国と欧州の関係悪化の中で発生しているため容易な解決策がない。弾道ミサイルの迎撃に対応した『別の防空システム』をIBCS=米国製の統合防空向け指揮統制システムに統合すれば『米国の問題』を幾つか緩和できるかもしれないが、それは別の記事で取り上げるテーマだ”

出典: U.S. Army
要するに「米国のパトリオットシステムや迎撃ミサイルの不足は現実問題として同盟国の納入に影響を及ぼす可能性がある」「米国と欧州の関係悪化を理由にクウェートへのLTAMDS納入を優先させてくるかもしれない」「弾道ミサイルの迎撃に対応した『別の防空システム=SAMP/TやCheongung-II』をIBCSに統合すれば問題を緩和できても政治的なしこりが残る」という意味だろう。
ちなみに、米国のルビオ国務長官はスペインの領空閉鎖を受けて「もしNATOが欧州を守るためだけに存在し、我々が必要な時にアクセスを拒むなら良い取引ではない」「米国はイラン戦争終結後に欧州への関与を見直す可能性がある」と述べ、イスラエルはフランスの領空閉鎖に対して「フランスと締結している防衛装備契約を解除してイスラエル製もしくは友好国からの調達に切り替えるよう指示した」と表明し、イラン戦争は米国・イスラエルと欧州の分断に大きな影響を及ぼしており、ポーランドを取り巻く状況も不確定要素が増えて先行きが見通せなくなっている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Chief Naval Air Crewman Austin Varney



















カトリック圏はプロテスタント圏とは異なる情報ネットワークがあるのでしょう。今回の戦争が、決定的な世界秩序の転換点になる可能性を感じ取っているのかな?
もはやアメリカは欧州の同盟国ではなく、半ば仮想敵国になりつつあります。グリーンランドにおける軍事演習の一件を見てもそうです。米軍のグリーンランドへの侵攻を警戒して部隊の展開を実際に行ったわけです。
そもそも各国の主権、条約、協定を一切無視するような国は物理的に同盟国にはなりえません。許容や妥協の限界を超えたということでしょう。経済的にもすでに脅威でしかありません。
今回のアメリカとイスラエルは「建前だけでも国際社会の同意を取り付ける」という工程すっ飛ばしましたからねぇ
ナイラ証言のようにデッチ上げであろうが、同意取り付けて参加させてしまえば有耶無耶になったりするもんですが
これでは政治家も意義を有権者に説明できません
欧米の関係は、さらに厳しくなりそうですね。
アメリカの同盟国は、アメリカのリソースが限られているため、同盟国お互いが競合しているという指摘があります。
日本目線で見れば、『極東は欧州のように余裕がない』ですから、アメリカの要求を上手に交わしつつ上手くやっていきたいものです(日本外交は狡猾にやりましたね)。
追記です。
アメリカは、極東・中東・欧州の三正面作戦は厳しいと言われてきました。
欧州からの撤退が言われてきましたが、今回の件で加速したり、日本にどういった影響がでるのか見守りたいと思います。
日本は、佐世保基地の強襲揚陸艦トリポリ・沖縄の海兵隊が出撃拠点なうえに、空母タスクフォースの艦船も出撃してるはずなんですよね。
日本のアメリカ海軍基地こそ存在意義を喪失した。日本から出航しても補給港はシンガポール辺りが最後。インド洋ではディアゴガルシアかジプチ、どちらも燃料を産出しないので、ここへの補給が必要。
リンカーンもトリポリも開戦以後、どこにも入港できていない。ディアゴガルシアの備蓄が尽きたらどうする?