ドイツ政府は米国からF/A-18E/Fを30機、電子戦闘機EA-18Gを15機購入する意思を明らかにしたためトーネード後継機問題は分割調達案で決着がついたと思われたが、どうやらこれは「決着」ではなく第二ラウンド開始を告げる鐘が鳴っただけだった。
参考:Kramp-Karrenbauer soll vor Ausschuss Stellung beziehen
参考:Kampfjets für die Bundeswehr, Truppentransporter für Olaf Scholz
独トーネード後継機問題はF/A-18E/F調達で決着? いいえ、手順無視で白紙化も十分あり得る
ドイツのクランプ・カレンバウアー国防相は16日、米国のマーク・エスパー国防長官に戦闘機トーネードの更新用としてボーイング製の戦闘機F/A-18E/Fを30機購入する旨を電子メールで伝え、さらに電子戦闘機EA-18Gも15機購入したいと考えを明らかにしたため、以前から噂に挙がっていた「F/A-18E/F・EA-18G・タイフーン」3機種による分割調達案でトーネード後継機問題は決着したかに見えた。
しかし、キリスト教民主同盟(CDU)の党首でもあるカレンバウアー国防相が米国政府に伝えたF/A-18E/F購入の意思は、CDUと一緒に連立政権を構成するドイツ社会民主党(SPD)の事前協議や了承を取り付けないまま実行されたものでSPD側が激怒しているという。さらに議会の国防委員会に対しても何も報告していなかったため国防委員会議長が委員会にカレンバウアー国防相を召喚して説明を求めると言い出している。
国防委員会の議長は今回の件について「国防相がとった行動は長年トーネードの後継機調達を妨害し続けてきたドイツ社会民主党と同じぐらい無責任な行動」と批判し、カレンバウアー国防相は米国のマーク・エスパー国防長官に送ったとされるメールを議会に提出して内容を精査しなければならないと述べた。
野党である同盟90/緑の党は、もしカレンバウアー国防相が勝手に米国政府に対しF/A-18E/F購入を約束していれば、これが重大なスキャンダルになると語り議会で追及する構えを見せている。
このようにドイツ国内では「F/A-18E/F購入はカレンバウアー国防相=キリスト教民主同盟が勝手に言ってるだけ」という見方が強く、事態が悪化すればキリスト教民主同盟とドイツ社会民主党の連立政権に亀裂が入る=連立政権解消につながるかもしれない。しかし、これを食い止めているのがドイツ社会民主党の元党首でもあるオーラフ・ショルツ財務相だ。
彼はカレンバウアー国防相の行動に理解を示して激怒しているドイツ社会民主党所属の議員をなだめているのだが、ある会談の内容がメディアに漏れ窮地に立たされている。
カレンバウアー国防相はF/A-18E/F購入の意思を表明する1週間前にショルツ財務相に対してF/A-18E/F購入を通知しており、ショルツ財務相は党にF/A-18E/F購入を伝えると約束したのだがドイツ社会民主党は何の反応も示さなかったため国防相は独断で米国に意思を伝達したという内容だ。
補足:そもそもドイツ社会民主党はニュークリア・シェアリング体制(米国と結んでいる核兵器共有協定)からの脱却を主張しているため、体制維持を掲げるキリスト教民主同盟とは根本的に相容れない存在で、これがトーネード後継機問題を長引かせている最大の原因でもある。
要するに、キリスト教民主同盟側は事前にドイツ社会民主党に対してF/A-18E/F購入を通知しており、党への報告を行わなかったのはショルツ財務相の責任だと言いたいのだろう。
ドイツメディアは政府が強引にF/A-18E/F購入を強行したのは、ボーイングと契約が成立するまでに約2年ほど時間がかかるため直ぐに戦闘機購入予算の議会承認を得る必要がない=当面は議会を無視しても問題ないという意図があるのだろうと報じているが、逆を言えばあと2年で国内の反対勢力を説得する必要があり、これに失敗すればトーネード後継機問題は再び振り出しに戻ることになるという意味だ。
因みに、ドイツ国内の軍事アナリスト達はF/A-18E/F購入を撤回してF-35を選択肢に戻して再検討する必要があると言い出している。
どうやらトーネード後継機問題は決着したのではなく、今まさに第二ラウンドが始まったばかりだ。
関連記事:ドイツのトーネード後継機問題が決着、戦闘機F/A-18E/F購入を米国政府に伝達
※アイキャッチ画像の出典:public domain F/A-18E/F
思った以上にドイツ議会はグッチャグチャ、よくこれで第6世代機開発しようなんて言ってのが不思議。
マクロンが提唱する欧州統合軍を設立して、ドイツは金ダケ出してた方が良いかもしれん。
ドイツはグダグダだな。
NATOを骨抜きにしたいのかね?
相変わらず駄々っ子ばっかり議会。
だから軍隊がグダグダになるんじゃないか?
ドイツはいつからこんなになった?
>ドイツはいつからこんなになった?
昔からです。
ビスマルクが居た時代も議会の抵抗は激しく、ワイマール時代は「ワイマールの金切り声」と言われていました。
NATO加盟国やウクライナは大迷惑でしょうね。
三国同盟の批准審議が枢密院にかけられた時に、石井菊次郎が絶叫した通り
「フレデリック大王以来、ドイツと組んで幸せになった国はない」
この法則はまだ生きている、ということです。
平和なんだね。
非武装国家になればいいのに。
次世代機開発もドイツ議会がもう決まった枠組みに文句つけて止まってるんじゃなかったか?
ドイツ空軍の調達も止めるし開発も止めるし部品調達も止めるし
来年のドイツ議会ではドイツ空軍の存続をやめるかどうかの話し合いしてそう
政治の季節なんですね。。。
経済も(最良ではないけど)悪くなく、安全保障も安泰。政治で遊べるいい状態。バブル前後の日本とおんなじですね。
なおコロナ
差し迫った軍事的脅威が少ない情勢だと
性能より優先すべきものが幅を利かせてくる、って事だね。
EUに拘ってる時点でロクでもない連中だってのは分かる
ドイツ軍に同情する
あまりにドイツ軍が可哀そうで流石に笑えない。
日本もこうはならないようにって願わざるを得ない。
冷戦時は東ドイツが対東側の最前線だったから緊張感が凄かったろうに、冷戦崩壊して四半世紀も過ぎたらドイツはゆるゆるになった。
ドイツが戦場になる可能性はゼロに近いから緊張感なんて無くなるよね。
ニュークリアシェアリングをポーランドinドイツoutでってなったらどういう顔するんだろ
その可能性はあるのでしょうか。
もし可能性があるのなら当然ドイツ政府や議会は検討していると思います。
出来ていないからこの体たらくといえばその通りなのですけれど。
ポーランドはタナボタかな。
ヤベえ……ほんとに何も決められないんだな
連立政権とかほんとクソだなってのがよく分かる
うっわぁ
ドイツがこれでは、ポーランドが国土防衛に必死になるのが良く分かるわ
ドイツは元々海軍力がヨワイところに、いま現在は潜水艦隊が無期限休業状態と記憶している。
で、次は空かと。相当な平和ボケにハマり込んでいるのでは?知らんけど。
ドイツ国防軍をボロボロにしたのがメルケル長期政権なので、米国に嫌われるのも納得。