バウアーNATO軍事委員長は昨年10月「155mm砲弾の価格は侵攻前の2,000ユーロから8,000ユーロに上昇している」と言及したものの、ラインメタルは9万4,200発の155mm砲弾を2億800万ユーロで受注しているため砲弾価格は侵攻前とほぼ変わっていない。
参考:Artillery ammunition for Spanish army: Rheinmetall wins €208 million order
参考:Vedle nákupu 300.000 ks munice pro Ukrajinu je příslib na dalších 200.000
参考:The launch of a new line for filling (not only) artillery shells is the beginning of a new era for STV GROUP
バウアー委員長が言及した数字は間違っている可能性が高い
バウアーNATO軍事委員長は2023年10月「155mm砲弾の価格は侵攻前の2,000ユーロから8,000ユーロに上昇している」と言及して注目を集めたが、ラインメタルは13日「スペインから9万4,200発の155mm砲弾契約を受注した」「契約金額は2億800万ユーロで2025年末までにスペイン軍に引き渡す」と発表、この契約金額を発注数で割ると1発あたりの砲弾価格は2,208ユーロになるため、バウアー委員長が言及した数字は誇張されたものだった可能性が高い。
ラインメタルが受注した契約に9万4,200発分の砲弾、装薬、信管が含まれているのかは不明だが、米陸軍の報道官は「砲弾の購入に3,000ドル(砲弾、装薬、信管を含む)を支払っている」と述べているため、欧州と米国の砲弾価格に「大きな差は生じていない」と解釈するのが妥当だろう。
さらにチェコのフィアラ首相は12日「過去2年間で100万発以上の大口径砲弾をウクライナに届けた」と発言、チェコ企業のSTVも昨年12月「ポリチカ工場ではウクライナ向けの122mm砲弾を生産している」「2024年2月まで155mm砲弾の生産ラインが立ち上がる予定だ」「生産される155mm砲弾は需要が大きいウクライナを中心に供給していく」と明かしており、同社は152mm砲弾や122mmロケット弾も生産しているため旧ソ連規格の弾薬がウクライナに相当量提供されているはずだ。
因みにウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長が「ロシアは2024年に砲弾を270万発生産するつもりだ」と言及した際、この数字は「122mm砲弾と152mm砲弾を合わせたもの」と付け加えているため、CNNが言及した「年間300万発」も122mm砲弾と152mm砲弾を合わせた数字だと思われ、これと比較するなら欧米が製造する105mm砲弾と155mm砲弾、東欧諸国が生産する122mm砲弾と152mm砲弾を合わせた数字で見なければならないかもしれない。
但し、欧米が製造する105mm砲弾、東欧諸国が生産する122mm砲弾、152mm砲弾の生産量に関して具体的な言及を見たことがなく、比較するための数字を提示できないのが難点だ。
関連記事:ロシアの砲弾生産量は月25万発、2024年後半の攻勢に優位性をもたらす
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関連記事:欧州委員長、この異常な時代に年100万発の砲弾生産量では足りない
※アイキャッチ画像の出典:Rheinmetall AG
砲弾は、ウクライナ戦争を左右する一つなので、地味な記事ですが注目しました。
今後の欧州で生産する砲弾の価格が高騰している?ことについては、そうではないだろうことが分かりました。
ただ、最後に管理人さんが言われているように、
欧米の生産量が言及されてなかったのは残念です。
やはり生産量が肝ですよね。いつまでに、いくらの量を生産するのかが。
「昔なじみの上得意様」が旧価格で買えているからといって、一見さんが買い付けに行って同じ値段で売ってもらえるとは全く期待できませんよ。
うちの地元の酒蔵も、昔馴染みの特約店には一本3000円で卸してますが。東京の業者が催事用に買い付けに来ると6000円に跳ね上がりますね。まあ、そういうもんですよ。
NATO関係者が加盟国ではない国が購入する価格について言及してるって事?
何が言いたいのかさっぱりわからん。
スペイン政府が3000ドルで買えるから、ウクライナ向け砲弾も3000ドルで仕入れられるって短絡的に考えるのは大きな間違いですよ、という話ですね。
防衛産業のラインメタル社からすれば、NATO諸国の政府には長期にわたって自社の製品ファミリーを採用して中長期に渡ってサプライ品や後継品を買ってもらわねばなりませんから、一過性の相場の変動で納入価格を大幅値上げしたら信頼を失い、次の調達選定で不利になります。なので、今後の付き合いのことを考えればこれまでの通常価格を大きく変えることはできないでしょう。
が、スポット売りの値段は別ですよ、という話ですね。
商取引においてはよく見られる光景ですよ。
バウアー委員長はウクライナ向けに購入する砲弾価格が8000ユーロだなんて一言も言ってないだろ。
そもそもウクライナ向け砲弾はウクライナじゃなくて欧州各国が購入したものを提供してんのに、何言ってんの?
解釈が恣意的過ぎるわ
なんでそんなに喧嘩腰なんでしょう?その発言の方向性もある意味恣意的ですね。
仰る通りです。
スポット価格は高め、長期取引は安くするというのは、石油・天然ガスなどもそうですが商慣行としてよくある話ですよね。
格付けの低い企業・国であれば、スポット価格・現金取引しかしないというのもセットかと。
ウクライナは国家破綻していますから、単体の与信では、信用での取引が厳しいですからね。
日本が、ウクライナ向け融資に連帯保証を行いましたが、NATO諸国のどこかが信用保証するのであれば話は変わるかもしませんがどうなんでしょうね…。
ひょっとすると、NATO側が問題にしているのは更に上乗せ増産する場合の一発当たりのコストなんじゃないかな?
その場合は新しい工場などの設備投資込みでの割り増し価格を突き付けられている可能性もある。
旧ライン+同設備内の増設ラインについてはそこまで乖離はないのかも知れないが、これに年数十万から百万発上乗せする話となるとまた変わってくるし、現時点で我々が伺い知れる数字も存在しない筈だ。従って、彼らがどの資料を見て語っているのかは不明瞭だね。
ただの間違いなのか、まったく別の計算に基づいた話をしているのか。
ウクライナ戦場での迅速で客観的な戦況分析をありがたく拝見していたのですが、最近は西側兵器関連の記述に偏より少々残念です。
いや、元からのカラーから言えばウクライナネタの方がイレギュラーなんスけど。
ガソリンの仕入れ価格と同じで、自国利用分の在来契約の単価は契約通りの単価で変わらないが、
余ったり二次流通とかで流れている業転玉の弾薬のスポット価格が超激高騰してるんだろ。
いつものお客様への通常価格と、スポット価格の違いでは?
追加分は人を新たに雇って深夜料金で動かして生産するわけだからそりゃ高くなる
去年の報道探してみたけど「価格が急騰している」はともかく「8,000ユーロに上昇している」ってのはスプートニクしか見つからんかったんですが…。
失礼。前の記事のロイターのリンク見逃してました。
まあスプートニクよりは100倍マシだけどロイターかぁ…。
「2000から8000に上昇〜」の部分には(その前の発言部分と違って)“”ついてない辺りとか穿った見方をしてしまいますが。
155mm shell 8000 euro
で検索すると英語記事がそれなりに出る。
でも情報源はバウアーかな。
バウアー氏発言の元ネタがロイター通信だけに見えるんですよね。探すのが下手なだけかもしれませんが、元の発言全文とかどこかにないのかな。
ロイターのやつだと、8000ユーロがどんな契約のものなのかさっぱり。
軽く見たなかで1番高かったのは、ドイツがフランスの防衛企業に頼んだウクライナ向けの155mm弾6万8000発、単価4088ユーロ。
「バウアー氏の推定した金額より著しく低いが、10月の独-ラインメタルの契約(3300ユーロ)よりは若干高い」
Defence Express 12/16
「Germany buys 155mm Ammunition for Ukraina EUR 4000 apiece」
お二方ともありがとうございます。
具体的に何と言ったのかさっぱり分からないんですよね。
下手すりゃ「侵攻前より砲弾の『需要が』4倍にかった」と「侵攻前2000ユーロだった」の魔合体まであり得ると思ってます。
ラインを増設したのであれば、減価償却分を企業が上乗せする事は、よくある話ですからね。
ウクライナ戦争の砲弾需要は、いつまで続くのか分からない訳ですから、初期ロットは高めの代金を要求して早めに回収するというのは有り得ると考えています(個人的な意見です)。
バウアーNATO軍事委員長の言及した数字が、何ベースの話なのかは気になりますね。
ウクライナの兵器体系は、旧ソ連系統ですから、122mm砲・152mm砲は依然として主力ではないでしょうか。
ウクライナは、戦車の残弾数も不足していることが報道されており、旧ソ連規格の弾薬提供は非常に有難いでしょうね。
西側製の戦車砲弾を東側125mm滑腔砲で撃つ話は聞いたことがないですね。
素人がテキトーを言うと、サボの径を5mm増やせば出来そうに思うのですが。
弾本体は変更なしで。弾道は変わるでしょうけど。
どうなのでしょう。誰か作ったりはしないのでしょうか。
ただし、出来たとして、新規生産でしょうから、間に合わない?でしょうが。
仰る点、重要ですね。
フランケンSAMが、まさにそれで、砲弾でやらない理由があるのかもしれません。
もしくは、大砲の砲弾生産を優先して、戦車砲弾を後回しにしている可能性もあるのかと。
ロジスティクスが複雑になりすぎて、砲弾残量に余裕がない中で、さらに難しくなっているのかもしれませんね(部隊ごとの弾種、残量が把握しきれないなど)。
ウクライナ軍は旧ソ連とNATOの兵器が混在してるため砲整備、弾薬製造、兵站に2倍の労力
が必要なうえに地上の製造整備工場、倉庫は破壊目標だから既にウクライナは詰んでいる
仰る通りです。
ウクライナの基礎的な工業力は高いですから、ロジスティクスが複雑な事の悪い影響が出ている気がします。
F16などでも(弾ではないですが)、ゼロから地上整備員を育成しなければならないですからね。
需要が分かりきってるんだから2,000€で売る必要は全く無い!!!
自由経済圏なんだから原価関係なく価格は吊り上げるのがあるべき姿です。一発10000€いきましょう。
たかだか40万円で20km先の半径40mを吹き飛ばせるんだから、そりゃ現代でも砲兵は戦場の神様扱いになるよなぁ
神に仕える神官は大変ですがね
何せ神は体重も尊いので玉座に載せるだけで大変な重労働なんです
なので40万のお布施の他に筋肉ムキムキの若い神官を派遣して貰わないと神は沈黙してしまいます
1発8000ユーロの代金にGPS+レーザー誘導装置と近接新館が含まれているなら別に高くは無いですな
NATOご自慢の高精度射撃用弾薬は砲弾の本体価格よりもそれ以外の部品の方が遥かに高価なんでね
近接信管でさえそのコストは砲弾本体価格ひ匹敵するレベルです
時々このブログでロシアの優位性を主張する根拠でロシア製砲弾が安価であることを使う人はいますが
ロシアが戦時量産している砲弾はコスト的にどう考えてもGPS誘導装置なんてついていないでしょう
時限信管がギリギリでしょうね。下手すれば触発信管レベルだと思います
エクスカリバーは1発1万ドル以上の高級砲弾ですよ。とても8000ユーロでは買えませんし、1日何千発も撃つような物じゃ無いです。これは通常の榴弾の話なんですよ。
失礼、1万ドルでは無く、10万ドルの間違いです。
1発8000ユーロの代金にGPS+レーザー誘導装置と近接新館が含まれているなら別に高くは無いですな
NATOご自慢の高精度射撃用弾薬は砲弾の本体価格よりもそれ以外の部品の方が遥かに高価なんでね
近接信管でさえそのコストは砲弾本体価格ひ匹敵するレベルです
1発8000ユーロの代金にGPS+レーザー誘導装置と近接新館が含まれているなら別に高くは無いですな
近接信管でさえそのコストは砲弾本体価格ひ匹敵するレベルです
> スペインから9万4,200発の155mm砲弾契約を受注した
> 2025年末までにスペイン軍に引き渡す
2025年ね
そりゃあ通常価格ってわけか
スペインはドイツ兵器産業にとっては貴重な大口顧客&植民地ですから、砲弾も有利な条件で優先供給されるんでしょう。
同じく兵器的に植民地なのに高値で買わされる日本と何故こんなに差があるのか・・・
慢心、環境の違い・・・
日本が米国に法外な高値で兵器を売りつけられているという言説になにか定量的な論拠があるのでしょうか?
FMSと米軍調達価格を並べて搾取だと騒ぐ頭の悪い人はよく見かけますけど。
聞いた話なので定量的に示すことはできませんが、海外製兵器は完成品の価格はそこまででも、予備部品のぼったくりがとんでもないらしいです。
米国メーカーのライセンスやら認証やらで海外から調達せざるを得ない部品は国産では考えられないような値段が付いているそうです。そして値段が高い割に不具合品の割合も高いそうで。
折角防衛予算が増えても輸入やFMS等でお金が無駄に海外に流れていくのはやるせないですね。この話を聞いてから私は国産兵器至上主義になりました。
先物取引ってことですかね?2025年末には需給は逼迫してないと生産側は見ていると
いや自分達が当の供給者なんだから、リードタイムを長く取れるまとまった注文があれば生産計画立てやすいでしょう。
何なら生産ライン拡充なり人員追加なりしたって間に合う納期なんだし。
まあ、正しいにせよ誤解があるにせよ、どちらにせよ生産計画と予算計画をしっかりさせて、増産分の弾薬のコスト対策に取り組むべきだって話ではあるのかも。その面ではもっと予算の根拠と具体的な提供の道筋をしっかりして貰いたい&企業の監督もしっかりとやってって面には同意するかな。