欧州関連

ドイツ、ナゴルノ・カラバフ紛争でのUAV活躍を受けて防空体制を再検討か

ドイツのクランプカレンバウアー国防相は14日、アゼルバイジャン軍が無人航空機(UAV)を効果的に使用して勝利を収めたナゴルノ・カラバフ紛争を取り上げドイツ軍の防空能力を見直さなければならないと訴えた。

参考:Kramp-Karrenbauer will Verteidigung gegen Drohnen ausbauen

冷戦終結に伴う軍備縮小やコスト削減で廃止した近距離防空部隊の再建を主張するクランプカレンバウアー国防相

クランプカレンバウアー国防相は「ナゴルノ・カラバフでは戦闘を有利に進めるため複数のUAVが使用されたが、このような兵器は通常の戦争以外=反政府組織やテログループも使用しているため非対称の脅威をもたらす可能性が高い」と指摘して、だからそこドイツ軍の防空能力を一から見直す必要があると訴えた。

現地メディアによればクランプカレンバウアー国防相が防空能力の見直しに言及したのは、前線で活動する地上部隊に随伴して頭上を守ってきた陸軍の近距離防空部隊を廃止したことが原因だと報じている。

出典:Derwatz / CC BY-SA 3.0

ドイツ陸軍は短距離防空システム「ローランド」や35mm機関砲×2門で武装した自走式対空砲「ゲパルト」を保有していたが冷戦終結に伴う軍備縮小やコスト削減の影響を受けて2005年にローランを廃止、2012年にパルトを廃止してしまったので陸軍に残された近距離防空兵器は空挺部隊向けに開発された小型装甲車両にスティンガーを搭載した「ヴィーゼル2 オセロット」のみという脆弱な状況に置かれており、とてもUAVの攻撃から兵士や装甲車両を守れる体制とは言えない。

要するにナゴルノ・カラバフ紛争でアゼルバイジャン軍がUAVを使用してアルメニア軍の戦車や装甲車両を次々と破壊した事実を受けてドイツ軍の防空能力見直し=つまり「近距離防空部隊」の再建が必要だと言っているのだ。

特にドイツ陸軍の部隊はアフガニスタンやマリといった紛争地帯に派遣されているため、クランプカレンバウアー国防相が言及した反政府組織やテログループによるUAV攻撃=非対称の脅威に晒される可能性が非常に高いため国防軍のトップとして当然の主張と言える。

余談だがドイツでは武装可能な無人航空機の保有についても議論になっている。

出典:Deutsches ZentrumfürLuft und Raumfahrt / CC BY 3.0 DE イスラエル製の無人機「ヘロン」

簡単に説明するとドイツ軍はアフガニスタンの治安維持を目的とする国際治安支援部隊(ISAF)に初めて参加した際、イスラエル製の無人航空機「ヘロン」を運用して駐屯地周辺を警戒中にタリバンの兵士が迫撃砲やロケット弾で駐屯地を狙っているのを発見、直ぐに駐屯地内の兵士に対し身を隠すよう警告を発したため駐屯地内に着弾した攻撃で死者や負傷者を出さずに済んだのだが、UAVのカメラを通してタリバンの兵士が自分たちを攻撃しようと準備しているのを察知しても武器を搭載していないため画面越しに眺めることしかできないという問題が浮上。

その後、紆余曲折を経てドイツ軍は武装可能なイスラエル製無人航空機「ヘロンTP」導入を決定したのが、与党キリスト教民主同盟(CDU)が連立を組むドイツ社会民主党(SPD)が無人航空機の武装化について反対しているためヘロンTPに兵器を搭載して運用することが出来ない=アフガニスタンで表面化した問題解消に至っていない。

恐らく近距離防空部隊の再建に国内で大きな反対は無いと思うが、ドイツが新たに自走式の近接防空システムを開発しようとすればフランス辺りが動き出すかもしれない。もしそうなれば陸軍が新たな近接防空システムを手にするまで非常に長い時間がかかることが予想される。

関連記事:ドイツのUAV武装解禁失敗、ユーロドローンや第6世代戦闘機開発にも影響が?

 

※アイキャッチ画像の出典:Hans-Hermann Bühling / CC BY-SA 3.0

無人航空機に関する実戦データ入手が狙い? 日本がアゼルバイジャンとの軍事協力を推進前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    携行式対空兵器だと補足出来ないし、対空ミサイル車両はコスパ悪いし、ゲパルトが最適解よね~
    自衛隊のガンタンクが戦車より安く量産出来てたら、日本は慌てずにすんだのにね

    2
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      レーザーやマイクロ波を使った対空兵器を開発するみたいなので、そっちに期待ですね・・・。

      4
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    ロランはともかく、ゲパルトを切ったのは痛過ぎる。

    4
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      かと言って余りにも古過ぎる。
      維持が出来なかったのでは?
      この場合は、後継機を用意していないのが問題。
      日本だと社会党と自民党が組んでるようなもんだもの。

      16
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        ごめん、素で比喩が分からないw

        8
          • 匿名
          • 2021年 1月 16日

          保守政党と革新政党の野合と言いたいのだろう。

          3
            • 野嘗
            • 2021年 1月 16日

            自民党はバリバリの左派政党 (社民党は売国政党)

            3
          • 匿名
          • 2021年 1月 16日

          申し訳ない。
          ちょっとわかりづらかったね。
          昔、カンボジアPKOで社会党が機関銃を持っていくな!
          と国会で大騒ぎしてね。
          結果、警察官が1人襲撃で殉職してね。
          現場判断で自衛隊PKOが警備するとなったんだ。
          だから、アフガニスタンのドイツ兵士が同じ状況なんだなと。
          メルケルの政党だけの政権なら、まだ違ってたんだろうが。
          新機種導入に制限が多すぎる。

          7
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      対空戦車はコスパが微妙だから予算削減では真っ先に切られる

      4
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    とりあえずは平和維持軍用の個数があれば事足りるから、輸入したらいい。どうせ国際共同開発になればちんたら時間かかるし
    どこかお薦めはないかい

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      K30対空自走砲

      4
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        リンク
        同じサイトから引用
        >ラインメタルが2006年に発表した自走式の防空システム「スカイレンジャー」は固定拠点の近距離防空システムとして開発した「スカイシールド」を車載化したもので、このスカイシールドはエリコンコ製の35mm機関砲を備えた砲塔、スティンガー相当の地対空ミサイルを8発装填したランチャー、Xバンドを使用したレーダーユニットで構成され、ドイツ軍が派兵されたアフガニスタンの基地に採用
        つまり有ります、ドイツは国産でないと手を出さないのが基本になっております。

        3
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      K30の砲塔とシステムをレオパルド2の車体に合体だと軍湯産業に仕事は回せるね
      砲塔リングの調整などの開発時間は費用はよく分からないけど

      1
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        対空自走砲や部隊随伴用の対空ミサイルなんてそんなに仕様でもめることあるのかね。それこそ得意の欧州共同開発しておけばいいのに。(要素研究だけでもいいが)

        2
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    ドイツは防空能力以前に、装備そのものを一から構築し直さんとヤバいだろ。
    予算なくて陸海空全てボロボロやんw

    13
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      だって口先で何言おうが、戦争は傭兵のポーランドがドンパチやってくれるんだから、ドイツ人はビール飲みながら観戦してりゃいいって思想なんだから、わざわざ大金払って軍を整備する動機なんてないじゃない。
      (もちろん、いつか足元を掬われることを期待しながら。)

      15
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        導入を決定でなく、ようやくこれから検討というぬるさw
        東西に分かれてソ連駐留軍と直接対峙していた緊張感はどこいったのやら
        ドイツにとっての緩衝国として利用されるポーランドに同情だね

        13
          • 匿名
          • 2021年 1月 16日

          まあ、ドイツからしたら、EUに加盟する口利きしてやった対価なので、当然の権利と思ってるんじゃないですかね。
          しっかし、改めてEUの地図眺めてみても、ドイツは肉布団に包まれているようにしか見えん。
          いつか、しっかり肥えて動けなくなった頃に、フランスとポーランドとで…おっと、DHLが荷物を届けに来たようだ。

          12
            • 匿名
            • 2021年 1月 16日

            歴史的に見ると、ポーランドはドイツとロシア双方に含むところがありすぎ、今も忍耐を強いられてるから同情だよ
            友を選ぶなら仕方なくロシアよりドイツ、これが本音でしょう

            6
          • 滅共統一
          • 2021年 1月 16日

          冷戦の緊張が無くなって安心して寝ちゃったんだな。

          3
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    昨今のUAVの活躍を見て思ったことは、UAVを撃墜するなら、
    むしろアナログな近接弾頭信管のほうが有効なのではないか、と。

    4
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      今は中口径以上の対空砲ってのがないから、近接信管ってのがないのよ。

      2
        • 匿名
        • 2021年 1月 16日

        ズムウォルトに搭載されているボフォースの57mm砲では?
        昔、イタリアで76mm砲を積んだ対空戦車も試作されていたし。
        とにかく、35mmでは射程が足りないでしょう。

        3
          • 匿名
          • 2021年 1月 16日

          おお57㎜があったね。
          でも、あれ艦砲だから陸上でUAVに使うにはデカすぎるでしょう。

          まあ、もしかしたら、万が一気の向いたところが開発するかも。

          35㎜じゃあ射程短いってのは同意しますね。

          2
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    スカイレンジャー「出番だな!!」

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    必要な装備ではあるだろうけど、敵のUAVが活躍できるのは航空優勢取られた時だけでしょ?
    まともに飛べる戦闘機を増やす方が先だと思う

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    ナゴルノカラバフで防空拠点が射程外にいる高高度のUAVから一方的にボコられたから
    従来の対空戦車がどの程度の効果をもたらすのか疑問

    2
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      ドイツが問題にしてるのは反政府軍やテロリストによる攻撃のようだから高高度飛行可能なUAVは気にしなくていいんじゃない?
      飛行場と大がかりなシステムが必要なUAVをその手の組織が運用できるとは思えんし

      4
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    ゲパルドねえけど海外派遣時はMANTIS Air Defence System持ってくだろ
    そしてそれをボクサーAPCのモジュール車載化してるのをテスト中
    スティンガーだけってのはウソ

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 16日

      ほほうそうなのか!と思って “mantis boxer” で検索したら、蟷螂拳について詳しくなってしまった

      1
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    機関銃を持っていくかいかないかで、揉めた自衛隊の派遣を思い出す。
    文民統制の誇大解釈は今でもあるんだな。
    日本でもまたありそう。
    革命大好き党が、何故か自衛隊の内部文書手に入れて、国会では国籍不明の議員が喚くやつ。

    10
      • 794えだのん
      • 2021年 1月 16日

      軍事関係無いけど、あの「革命大好き党」が暴れ回っていた昭和20年代に破防法を適用しなかったのは痛恨の極み。

      6
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    まあ、国防相として当然の話をしてると。

    でも、一番簡単なのはヘロンの武装化じゃあなくて、ヘロンの代替に小型ドローンを偵察に使うことだと思うけどねぇ。
    数はそろうし小型のキャンプで運用できる。ヘロンだと後方の航空基地からしか運用できないから不便だろうに。
    テロリストや民兵の前線部隊相手なら、迎撃されても小型ドローンはそう簡単に攻撃は当たらない。数も出せる。
    反攻は駐屯地から迫なり榴なり打ち込んでやればいいw

    こっちが撃ち落したいときにはテクニカルで十分でしょう。射程は欲しいから4連奏30㎜機関銃でw

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 16日

    ロシア曰くRCSが低くて気が付いたときには懐に入られてるって話だけど最近の巡航ミサイルはステルスがデフォなわけだし自衛隊はどうやって迎撃するつもりなんだろうか。

    4
    • 匿名
    • 2021年 1月 19日

    ゲパルト対空戦車の水平射撃は男のロマン

    1
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