EUのフォンデアライエン欧州委員長は30日「ウクライナに48万発の砲弾を納入もしくは納入に向けて準備中で、来年には年100万発の砲弾が生産できるようになる」と明かしたが、この異常な時代において「年100万発の生産量」は十分だとは言えないと付け加えた。
日本も次期戦闘機開発で欧州と付き合っていく必要があり、今以上に欧州の動向や考え方に注意を払うべきだろう
EUのフォンデアライエン欧州委員長は30日、欧州防衛庁の年次総会で「我々は現在(ウクライナに)48万発の砲弾を納入もしくは納入に向けて準備中だ。さらに来年には年100万発の砲弾が生産できるようになる。これは2年前に想像もできなかったことで平時なら並外れた生産力だろう。しかしこの異常な時代においては十分だとは言えない。ウクライナでの戦争は『我々にもっと多くの生産が必要である』と示しており、これはウクライナのニーズを満たし、我々自身の抑止力と安全を確保するために必要なことだ」と述べ、以下のように続けている。

出典:Mil.ru/CC BY 4.0
“ウクライナでの戦争は最近のどの戦争よりも多くの物資を消耗している。ロシアは1年間で1,000万発の砲弾を発射し、ウクライナも月1万機のドローンを消耗している。だからこそ欧州の防衛産業も力を合わせなければならない。我々は十分な武器や弾薬を持っていなかった。大量の備蓄も存在しない。予備戦力も不足している。このようなものは「平時に必要ない」と考えていたからで変える必要がある。産業界のボトルネックが安全保障の妨げになってはらない”
“我々が自由に使用できる欧州製の装備に不足はない。例えば長距離無人偵察機(恐らくMALE RPASのこと)や黒海で重要な役割りを果たすかもしれない掃海システム(恐らく英仏が共同開発中の無人掃海システムのこと)まで興味深いプロジェクトが幾つもある。しかし我々の協力は全体的に力不足だ”

出典:AIRBUS ユーロドローン・プログラムで開発されたMALE RPAS
“しかし良いニュースもある。多くの国が国防支出を増やしたため『投資の余力』が大きくなっている点だが問題は資金をどう使うかだ。今のところ増加した国防予算の大半は域外に流出しており、その原因は単独での海外調達にある。これはウクライナに対する武器・弾薬の供給や自国の備蓄を補充する緊急性から起きている現象だが、この短期的な海外調達の波は長期的な調達にも影響を及ぼすだろう”
“第一に加盟国がバラバラに調達すればコストが上昇する恐れがある。第二に域外で調達する資金は欧州でのイノベーションと規模の経済を促進する可能性を秘めている。第三に欧州には異なる兵器システムがあまりに多く存在してコストの増大と相互運用性の欠如に繋がっている”

出典:Ministerie van Defensie
“例えばドイツとオランダの旅団(恐らく第1ドイツ・オランダ軍団に所属する部隊のこと)は同じタイプの榴弾砲を使用しているが、双方とも異なる種類の特定弾薬があり、これを互いに共有することができないできる。この様な相互運用性を阻害する問題は氷山の一角でしかなく、ここに集まった皆さんなら他の事例もご存知のはずだ”
“最後に単独での購入や海外調達は安全保障上のコスト増大を招く可能性もある。国防調達において常に国際市場(ここでは域外市場のこと)に頼れると考えるべきではない。軍事作戦上のリスクを回避するためには戦略的依存関係をよく検討する必要がある。目まぐるしく変化する安全保障環境において軍事的即応性と同じぐらい産業界の即応性も必要になる”

出典:Copyright Eurofighter
“これは国防戦略の中で非常に重要な要素であり、調達の軸足を緊急対応の理論から長期的な安全保障を見据えた理論に移行しなければならない。我々は数十年にも渡る投資不足と防衛産業界の断片化を補う必要があり、これを克服するためには国防支出を増やし、支出をより良いものにし、共同で支出する必要がある”
フォンデアライエン欧州委員長は演説の中で他の話題にも触れているが、上記が「ウクライナ支援」と「今後の調達方針」に関する部分で、EU加盟国は長期的な視点で「域内での共同調達を増やすべき」と訴えている。

出典:16 Dywizja Zmechanizowana
もっと分かりやすく表現すると“欧州の防衛産業界にとって2022年2月まで競合相手と言えば「米防衛産業界」だったが、二度と欧州で発生しないと信じてきた大規模戦争が勃発したため、需要が旺盛な欧州市場には「納期」「現地生産」「技術移転」「産業協力」「共同輸出」といった条件で韓国、トルコ、イスラエル、ブラジルなどが食い込み始めており、この状況が続けば増額した国防支出の資金が域外=競合相手に流出し続け「相互運用性を阻害する武器システムが増える」と欧州の利益に繋がらない”と言いたいのだ。
欧州の立場から言えばもっともな意見だが、仮にトランプ大統領がホワイトハウスに戻ってくると「EUの兵器開発基金の問題」が再燃する可能性があり、欧州の主要国に比べて防衛産業が脆弱な中東欧諸国にとって「域内での協力」よりも「魅力的な条件を提示してくる新規プレイヤーの方が自国に利益をもたらす」と判断するかもしれないので、加盟国に「長期的な視点で域内での共同調達を増やすべき」という訴えがどこまで響くかは怪しいものがある。

出典:防衛省 次期戦闘機のイメージ
日本も次期戦闘機開発で欧州(英国はEU加盟国ではないものの欧州産業界との結び付きは深い)と付き合っていく必要があり、今以上に欧州の動向や考え方に注意を払うべきだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:European Defence Agency
結局自動車やらと同じで欧州内から他国企業を追い出したいっていういつもの欧州では
ほんとダブルスタンダードで他国には市場開放を迫りつつ平然と非関税障壁持ち出してくるよなこいつら
色々と納得はいかないだろうけど残念ながら友好国だろうと他国を踏み台にして場合によっては国際法を破り捨ててまで自国の利益を追求するのは世界の真の常識だよ。
まさしく仰る通りです。
日本も、自動車産業・鉄鋼産業・電力会社を中心に、酷い目に合いましたからね(現在進行形ですが)。
そのダブスタ攻撃が中露韓に刺さるなら問題ないのでは…
自動車みたいに日本と競合しませんから先にやらせればいいのでは
できれば、口ではなく、手を動かして欲しい物です。
少なくも、歩兵支援火器と砲弾、長射程ASM/SSMは必要でしょう。
戦闘機もその次に。
FPVドローンは当面ウクライナに任せて。
自分にだけが都合がいいルールを勝手に作るアメリカ
都合が悪くなるとルールを勝手に変える欧州
都合が悪いルールを守らないロシア
どれが一番悪いのやら、
ロシアしか得をしない誰も守りたくないルールを押し付けようとするロシアじゃないかな。
リサイタルショーに強制参加させるジャイアンみたいな。
アメリカの門戸開放は他の先進国にも居心地が良かったりする。
中国も先進国に仲間入りしそうな段階の前の胡錦涛時代までは居心地が良かった。
その門戸開放のおかげで小国の国内の企業は欧米の大企業と「公平な競争」を強いられて潰されて富の流出につながり、仕事がなくなり経済難民になったりするんですけどね。
そして米国は自分所が不利な分野の市場は開放せずに他国から守り、逆に外国に不正だとかいって制裁やるわけですよ
かならずしも関税撤廃でもないと思います。
たとうば、中国が自国はまだ後進国だといいわけして、国営企業と組まないと中国市場にアクセスさせないとか、企業秘密を政府に報告しないといけないとかしてました。
世界第二位の経済大国になってからも、1人頭では自国は後進国といいだして、それにトランプが切れたのも、そんな昔ではなかったと思います。
帝国主義時代とちがって、あからさまな発展途上国の関税を撤廃させるほど、アメリカは鬼でないとおもうんですが。
イギリス、スペインはとんでもなく酷かったですよ。
上二者もそこそこルール破ってダブスタやりますからねえ…
んー、自前の兵器でまともに戦争できてたのって第二次世界大戦時ですらドイツだけでは?
あとは当時もアメリカ頼みだったでしょ。
ロシア側は北朝鮮という反則級に砲弾生産に特化した特殊社会を味方につけており。
実際問題、ロシアは低付加価値の砲弾生産より、より効果のある徘徊型弾薬の生産で勝負できてしまうことになります。
これ、この分野で勝負にしたら勝ち目あるように見えませんが。。。
普通に経済勝負で圧勝出来てたんですから、平和と経済で勝負するのが正しいように見えますね。
EU欧州委員長は良いこと言うね。
まぁ、ぶっちゃけ韓国やトルコを儲けさせない、って言ってるわけね。
これは日本が散々アメリカや欧州にやられてきた繊維、自動車、半導体と一緒だな。
自由主義って言っても、結局は経済的には敵を見つけてその市場をむさぼる「経済的帝国主義」なんだよなぁ。
ルールもすぐに自分たちに都合のいいように変えるしね。
ただ、ロシア、中国などのガチの帝国主義(専制主義)よりはいくらかマシだけどね。
とっとと日本らしい、新しい資本主義作れ、岸田!
岸田は税金を上げる事しか出来ない単機能の人形なので…
だよね~
EUについて一言。
フォンデアライエン委員長は、選挙で選ばれているのかな。
EU誕生には理想がありました。
しかし、歴史のパラドックスか?
EUは経済ブロックになり、選挙で選ばれてない官僚らが、国や人々に色々なことを指示するものになっています。このウクライナ戦争に対する対応もその一つです。
(個々の政策の善悪のことでなく、EUが国民の上の影の政府になっている面もあるということです)
>このようなものは「平時に必要ない」と考えていたからで変える必要がある
今はいいけどウクライナ戦争がどこかで終わり、再び欧州から戦火が遠ざかって30~40年もしたら再び「このようなものは平時に必要ない」って話になりそうなんだよな
製造費用もそうだが保管関連がバカにならないはずだし、いったいどれだけ作れば気が済むんだ的な批判は出てくるわけで…結局製造は縮小し保管する弾数も減っていき…と
そして再び同じ議論が発生する
以下無限ループ
軍事以外の用途を見出して平時はそっちに使うとか?
何に使うのか思いつかんけど。
あるいは外殻だけ共通部品にして中身差し替えて別の用途に使うとか
EVの充電池を砲弾型にして…武器密輸と間違われそう
PCを観ていたら。
BAM鉄道(シベリア鉄道の軍事/貨物用迂回線)で問題が起こり、運行停止しているとのこと。
バイカル湖北側のトンネル内で爆発があったとのこと。
平時なら困ったことだけど、今は戦時でしょう。
中共と北鮮からの品物が一時的に滞りそうな様子ですね。
本線は無事な様ですから、すぐにまた輸送を始めるでしょうけど。
EUは、ブロック経済圏をやりたいんですよね。
デジュリスタンダード・ルール作り・コンセプト(無駄な温室効果ガス取引所など)、企業競争力がなくデファクトスタンダードとれないため、EUのやってる事はやりたい放題なんですよね。
トランプが言っていたのは、安全保障をアメリカに丸投げするなら、市場開放をしろということですね。
GAFAMなどにも何千億円もの罰金や追徴課税をEUが課しましたが、オランダ・アイルランド(ダブルアイリッシュダッチサンドウィッチ)など、EU圏の国が利益を得て完結しているのに変な話ですよ。
「EU域内で」「バラバラではなく共通の」とか言い続けてもしょせん「お金と産業の話」
スウェーデンがグリペン型にこだわるように各国はそんなこと「調達」面で誰も望んでいない
いやお金と産業のレベルですら自国内ファーストを脱出出来はしない今までをどう変えられると?
欧州ってずっと衰退していく未来しかなさそうですけど
将来は貧困イスラーム内戦国家になるのではないでしょうか
砲弾工場で働きたい人っていますかね また移民?
移民でなく、もっとあくどく日本みたいに技能実習生制度を導入するかも。
永住権は認めません年取ったらお国に帰ってねかな。
極右はイスラム原理主義は2世も含めて国外退去とか言ってる。
義勇兵のgangsta兄貴が2025年にEUが覚醒すると言ってたのはこの件のようですね
まあ米選挙等含めて来年持ち堪えられるかが勝負ですね
平時と戦時で国の様相はガラッと変わる。その2つは同じ秤では量れない。
長き平和を謳歌してきた欧州各国もようやくケツに火が付いて戦時体制になるということですね。
残るは米国か……
開戦当初たしかヨーロッパに戦争が戻ってきたって報道でよく言われてましたからね