将来の方針が定まらないまま陸上装備や弾薬をウクライナに提供している英国では自国の安全保障リスクが懸念されており、米軍も「英陸軍の作戦能力や即応性はトップグループのTier1から脱落して独伊並のTier2だ」と英国側に伝えたらしい。
参考:US general warns British Army no longer top-level fighting force, defence sources reveal
現政府は国の安全保障を重要な任務と信じているのか、口先だけのスローガンにすぎないのか
英国は2021年発表の国防政策見直しに基づき陸軍の定数や装備を削減、浮いた予算を海空や新領域の戦力整備に投資する計画だったのだが、国防費をGDP比2.5%に増額すると約束したジョンソン首相が倒れ、GDP比3.0%に増額すると約束(首相選時)したトラス首相も大型減税計画が市場に大混乱を招き退陣、この後を引き継いだスナク首相は「指示した国防政策の見直し(ウクライナ侵攻後に環境に対応するもので3月7日に発表)が終わるまで国防費増額を約束できない」と表明。
この間にドイツのショルツ首相は1,000億ユーロ=約14兆円の軍再生基金(GDP1.4%の国防予算は別枠)を創設、フランスのマクロン大統領も2024年から2030年までの国防予算に総額4,000億ユーロ=約57兆円を要求して新しい安全保障環境への対応やウクライナ支援に回した装備・弾薬の補充に取り組んでおり、将来の方針が定まらないまま陸上装備や弾薬をウクライナに提供している英国では「陸軍の弱体化」や「即応性の低下」が懸念されている。
ウクライナ侵攻を通して浮き彫りになった英国軍の問題には「数日の戦いで使い果たす弾薬備蓄の不足」「ウクライナが直面しているミサイル・ドローン攻撃に対応した防空能力の欠如」「3万人規模の諸兵科連合部隊を編成するのに5年~10年かかる即応性の低さ」「即応部隊の約30%がNATOの初動基準を満たさない予備兵力で構成されている慢性的な戦力不足」「30年前~60年前に製造された陸上装備に依存した陸軍戦力の構造的な脆弱性」などが挙げられ、ウクライナに提供した大量の装備・弾薬を埋め戻す具体的な予算措置も計画も未定のままだ。
つまり多くの国は計画の詳細を後回しにして「国防予算を増額する」という明確なシグナルを出したため防衛産業界が増産や拡張に動き出しているのに、スナク首相は国防政策の見直しが終わるまで「増額を約束できない」と述べたため英産業界は出遅れており、国防当局者は「スナク首相は戦時のリーダーではなく(ウクライナ侵攻が引き起こした安全保障の問題が)消えてなくなることを望んでいるだけだ」と述べているのが興味深い。
2021年発表の国防政策見直しに基づいた陸軍の近代化計画はウクライナ侵攻前のもので国防当局者は「現在のリスクに対応するには計画のスケジュールが遅すぎる」と指摘、米軍も英国側の関係者に「英陸軍の作戦能力や即応性はトップグループのTier1(米仏露中)から脱落して独伊並のTier2だ」と伝えたと現地メディアが報じている。
因みに英陸軍の問題は「冷戦終結後に繰り返された国防予算の削減」と「過去20年間で何十億ポンドも投資した装備更新の失敗」に起因しており、ここにウクライナに提供した大量の装備・弾薬が陸軍の弱体化に拍車をかけ、国防当局者は「慢性的な人員不足を解消するのに必要な新兵の訓練も装備も資金不足に直面し、軍の在庫には弾薬やスペアパーツのない旧式の武器や装備が積まれているだけだ。軍を再建するための資金は医療や福祉など他分野の支出と比べれば僅かな額で、これは財源の問題ではなく政府の選択の問題だ」と言及。
さらに「歴史は今後数週間のあいだに起こるであろう選択を振り返り、現政府が国の安全保障を重要な任務と信じているのか、口先だけのスローガンにすぎないのか判断するだろう」と付け加えている。
関連記事:英国の国防費増額は白紙化、国防戦略の見直しでF-35Bが犠牲になる可能性が高い
※アイキャッチ画像の出典:British Army
ロシアとウクライナ双方の支配空域で互いに航空優勢を取れない状況であり、空の上はミサイルと無人機による消耗戦であるならば、現役のF35も撃墜鹵獲を避けるため戦闘に投入できないのではないでしょうか。
有人機を投入できない環境条件が成立したのであるならば、今、新規有人機開発をする優先順位は極端に下がったのでは?
長距離ミサイルと長距離無人機の必要性が有人機を上回った状況ですね。
ウクライナでは地上から強力な防空網が張り巡らされているので有人機の居場所は少ないですが、日本周辺のように広大な海が広がるなど防空網が十分でない場合では有人戦闘機で制空権を確保する必要があると思います。
また、保有機が旧式で数も少ないウクライナ空軍では高度で大規模な航空作戦を実行できず、結果として有人機の居場所が少ないという面もあるかと。
しかし、制空権という概念さえ破壊してくる昨今のUAVの進化は驚異的ですね。
自衛隊も大丈夫かな?
ちな日本の自衛隊はどこのグループに入るんだ?
tier3以下なのは確実。。。
呉や佐世保に置いてあるアメリカ弾薬がおんぶに抱っこ状態。
その上国産化、国産化と馬鹿みたいなことを言っているから救いようもない状態。
イギリス軍がティア1だったなら、ティア1でしょうね
というかイギリス軍がティア1だった事に驚きがあります
イギリス軍の内情を少しみるだけで、陸軍とか本土防衛すら不可能だし、海軍も自衛隊と比較にもならないてどの小規模
空軍がなんとかかんとか
アメリカ・NATOと核兵器が無かったら国防が成り立たないぐらい
本邦も他所の国のことは言えないが、英国陸軍も相当ボロボロね…
とはいえ英国はドイツ以上に即座に攻撃を受ける状況じゃないから安心できるってのはあるけども
こう言っちゃなんだが、東アジアでの事態が起きる前にロシアが世界各国に軍備再生する口実ときっかけを作ってくれたことだけは結果的に有り難い
逆に言えば今後西側の軍備生産能力が向上するとなると中国は余計に時間の余裕がなくなるから、台湾侵攻が早まるまであるか?
戦車とか安いからといって旧型の近代化で済ませていたりするのも拍車をかけている気はしますね。>陸軍
国防だけならドローンミサイル問題については、基本潜水艦の索敵かドーバー海峡からの二つに絞れるだけマシでは?>イギリス
あとはトンネルは極論コンクリあたりで閉鎖すれば考えないですむしね。
そして潜水艦なら哨戒機をマシマシ、ドーバーの向こう側なら爆撃ですしね(占領とかだと地対空ミサイルとかがいるとして)
>戦車とか安いからといって旧型の近代化で済ませていたりするのも拍車をかけている気はしますね。
戦車にかんしては戦闘機と事情が大きく異なり、近代化で済ませることが普通、というかイギリスについては、その近代化を数十年後サボっていたことが問題。
この一連のツイートが参考になるけれども、アメリカは膨大な予算をかけて平均8年に一回のペースでオーバーホール+近代化を実施し、その都度寿命がリセットされている。
リンク
戦車の場合、もう筐体の大きさも重さも経済的に運用できる限界に達していて、第3世代の戦車は装甲がモジュール化されているので後から換装できることからも、筐体+エンジンだけ使いまわして中身を入れ替え続けている。
空母の護衛駆逐艦すら他国に融通してもらい、戦車は(最終目標では)外征用の70両まで減らし、それでもGDP比2%超えの防衛支出をし続けているイギリスはかつての財政赤字時代を思わせますね。まぁこの場合の原因の半分は原潜艦隊の維持費ですが。過去の首相が防衛力再建で即防衛費大幅増を志向してきたのも、削るところはもう無いからなんですよね…。
あるいは英国のためだけに英国単独で維持されている戦略抑止(ヴァンガード級)について、別の枠組みを作って英仏あたりで共用化して削減を目指すとかもあるのかな…いやかえって揉めるだけかな
揉めるだけですな。
英仏はNATOの枠組みがあるから一緒にやってるだけで、2か国だけにしてたら、反目して口も利かなくなるよ。
やっぱ核戦力の維持って大変なんやな(小並感
まぁ核兵器を維持、管理、さらに研究して、拠点を防衛する人員も含めればGDP比1%ぐらいはかかるけどな。
スナクがトラスの失敗を見て、金融タカ派として「振る舞おう」としてるのが行き過ぎてる感じするよね。
ドイツみたいに別口に基金立てて起債して対応できんもんやろうか?予算の枠内だとどーしても無理が出る…
国債?みたいなのを発行したとして誰に購入して貰うか?がイギリスの難点やね。
なんたって債券の大口引き受け先である英年金基金をトラスちゃんが爆破しちゃったからなww
仮想敵国が精々ロシアなのに今までの規模が米軍に追従しすぎていたという見方もできる
本邦?聞かないでくれ
NATO加盟国で、自衛隊よりまともな軍事力を維持してる所ないんやで
岸田首相もそうだけど、やっぱ財務省の言いなりのトップはアカンわねぇ
財政規律とか言ってたら防衛産業も他の産業も死んじゃうよ〜