欧州関連

ウクライナ与党、偽造書類で出国した人間の身柄引き渡し要求を示唆

ゼレンスキー大統領は動員を回避するため「偽装書類で海外逃亡した者」や「これを手助けした者」の処罰を約束、この問題について与党党首は「偽造書類で不正に出国した人間も滞在国に身柄の引き渡しを要求して国に連れ戻すことができる」と述べた。

参考:Имена уклонистов и врачей ВЛК, которые помогали им, будут обнародованы, – Данилов
参考:Арахамия не исключил экстрадицию тех украинцев, которые незаконно покинули страну

もし不正に関わっている医師が見つかれば不正を持ちかけた側の人間と一緒に名前を公表

ゼレンスキー大統領は動員回避の温床になっていた軍事委員会の刷新を8月12日に発表、動員対象者に合法的なホワイトチケット=動員免除・延期書類を作成することができる軍事医療委員会についても「正常に機能していない」と言及し「この問題についても2週間以内に何らかの決定を下す」と述べていたが、8月末に昨年の2月24日以降に軍事医療委員会が下した決定を全てチェックするよう指示そて「決定改ざんに関わった人物と偽装書類で海外に出国した者は処罰される」と発表した。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

この問題について与党(国民の奉仕者)党首のデビッド・アラカミア氏は「動員免除・延期書類の作成に関わった軍事医療委員会の人間は法律に従って裁かれるし、偽造書類で不正に出国した人間も滞在国に身柄の引き渡しを要求して国に連れ戻すことができる」と述べ、国家安全保障・国防会議のダニロフ書記も「数週間以内に軍事医療委員会のチェックが終わるだろう。本当に動員不適合者なら何も恐れることはなく、入院中だったり、病気にかかっていることが証明されるだけだ。もし不正に関わっている医師が見つかれば必ず名前が公表されるだろう。もちろん不正を持ちかけた側の人間もだ」と述べている。

因みに国境警備隊は「検問所を経由しない不正なルート」で出国を試みて逮捕された動員対象者は1万3,600人、国境検問所で「偽書類による通過」を試みて逮捕された動員対象者は6,100人と明かしており、この人数は5個旅団に相当するものの、不正なルートや偽書類による隣国への出国に成功した人数は把握できておらず、この他にも出国の抜け穴に利用されているのが人道物資の受け入れに携わる慈善団体関係者や輸送会社の従業員に発行される出国許可書(通称:シュリャフ・システム)だ。

出典:Державна прикордонна служба України

この出国許可書は「60日以内の帰国」が条件で、最高議会に提出された予備報告書の中で「2023年1月までに96,422人の動員対象者がシュリャフ・システムを通じて出国許可書を獲得、66,474人が実際に出国したが内9,373人は期限が来ても帰国しなかった」と言及しており、この辺りの問題(不正の撲滅と動員の不公平を取り除くという意味)にもメスを入れる必要があるのかもしれない。

関連記事:ゼレンスキー大統領、動員回避のため偽装書類で海外逃亡した者の処罰を約束
関連記事:ウクライナ議員、男性が個人的な理由で動員を拒否できる法案を提出
関連記事:人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

 

※アイキャッチ画像の出典:Давид Арахамія

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コメント

    •   
    • 2023年 9月 02日

    兵役が国民の義務とされている国ならば当然の処置だろね
    ウクライナはクリミア危機以降、国民の同意を得てそういう制度に切り替えた

    10
      • 古銭
      • 2023年 9月 02日

      ウクライナ内の愛国心を否定する意図ではないのですが、徴兵制再開自体はトゥルチノフ元大統領代行の大統領令によるものなので民意が強く反映されていたかは判別が出来ません。
      それを強化したのは後任のポロシェンコ元大統領ですが、15年の半ばにもなると首相や閣僚級からも職業軍人主体への(再)移行案が度々提言されていましたし、そういった言動がスキャンダルとされる風潮があったようには見えませんでした。

      クリミア危機以前のウクライナは徴兵制の廃止が決定していたこと、基本的に議論の対象となるのは部分動員のみであったこと、再開された徴兵制も対象年齢を狭めたり徴兵猶予条件が追加されていったことなども考慮すると、国民の同意とまでするのは言い方が強過ぎる気もします。

      28
        • PON
        • 2023年 9月 02日

        徴兵制を復活させたポロシェンコ元大統領の息子はイギリスで遊びまくってるんだけどな

        3
        • Active Present
        • 2023年 9月 02日

        ポロシェンコ氏はあまり頭の良くない政治をしていたから理解しやすかったけどトゥルチノフ代行の強権政治は本当に良くわからなかった。欧米に唆されてとかではなく、最初から積極的にロシアとの戦争を望んでいたように思えましたし。元々が裏の人だから当然なんだけれども、ヤヌコヴィッチ氏やポロシェンコ氏と違って、今現在音沙汰ないのも不気味。

        4
        •    
        • 2023年 9月 02日

        民意がノーなら議会がダメだしするし、議会の承認無しに法令が成立してたまるか

        大統領は独裁者じゃないって事を全く理解しとらんね

        1
          • 古銭
          • 2023年 9月 02日

          何故独裁者という単語が出てきたのかはわかりませんが、徴兵制の復活を争点として大統領選を勝ち抜いた訳ではない大統領代行が、被侵略の最中に徴兵制を復活させ数万人規模の部分動員へと繋げたが政権崩壊はしなかったという一点のみで、国民の大半が総動員・総力戦とそれに伴う各種政策や弊害も受け入れたと見做せるという意味でしょうか。

          その場合、2015年という戦闘行為が続いている時期であっても政権中枢を含めた人々が徴兵制への反対や縮小を訴え、徴兵対象年齢が狭められたり徴兵猶予条件が増えるといった総動員へのマイナス要因は、民意が正しく反映されていなかったということでよろしいでしょうか。

          最後に、最高議会において承認された事柄は大半の国民が賛成しているという前提でよろしいのでしょうか。

          9
    • general
    • 2023年 9月 02日

    そうすんなり引き渡されるかねえ
    死にたくない、戦いたくないって感情は否定できないだろうに

    29
      • クル
      • 2023年 9月 02日

      あくまで国は厳格な姿勢を取ったが受け入れ先が引き渡しを拒否したという形にするんじゃないかな
      ぶっちゃけ言う通りに数万人(数十万人?)が戻ってきても扱いに困るだろうし国内荒れに荒れると思う
      名前も割れるだろうから私刑に走るやつも出てきちゃうだろうし

      11
    • 名無し
    • 2023年 9月 02日

    特定性別だけ徴兵というのが性差別で不平等、特定属性の者にのみ苦役を与える人権侵害行為と言える余地があると思いますけど
    特に徴兵制を実施していない国や徴兵制を実施していても男女両方を徴兵する国であれば母国で人権侵害を受けている難民と認めてもらえる可能性があるのではないでしょうか

    12
    • 古銭
    • 2023年 9月 02日

    違法に徴兵を回避した人々を庇う理由が大半の国には(少なくとも理屈の上では)無いはずですが、実際にどうなるかですね。
    放置ならともかく送り返すとなると社会的なものも含めてコストがかかってしまいますし。
    難民、特に職に就いていない人々への支援金を段階的に打ち切っているポーランドなどは、あくまで財政や治安・インフラへの負担という意味では前向きに検討してくれるかもしれません。

    デビッド・アラカミア議員はあくまで議会内における与党派閥のトップだったような。

    10
      • ふむ
      • 2023年 9月 02日

      良心的兵役拒否って現在の西側諸国だと基本的人権扱いされてませんでしたっけ?
      んで現在のウクライナは代替役務を課す事無く有罪判決食らった例出てるので、庇い立てする理屈は通るような

      確か韓国も良心的兵役拒否者を犯罪者として収監するのやめろ代替役務法制化しろと国連人権委員会から勧告受けてましたし、強制的な兵役は国際法上認められるか疑問です

      15
        • 古銭
        • 2023年 9月 02日

        現在どうなっているかはわかりませんが、ウクライナは宗教上の理由での(のみ、とも言えますが)代替兵役は認めていましたし、今回の総動員でも兵役対象外となる条件は一応定められていました。
        EUの基本権利憲章では良心的兵役拒否について、国内法に従って認められる権利だとしていたはずなので、違法出国だと認めること自体は十分可能だ思います。

        ふわっとした意見になってしまいますが、西欧はなあなあで済ませ、東欧あたりは政治的に揺らがない内は前向きに検討するのでないかなあと個人的には。民意政局見つつ胸三寸。

        12
    • panda
    • 2023年 9月 02日

    徴兵制を採用している国に滞在している場合は引き渡しに応じる可能性はありますね

    7
    • 鼻水
    • 2023年 9月 02日

    ウクライナは20万人規模の追加動員を行うと報じられているので不公平感を払拭するためのス抜きかな、難民キャンプ丸ごと強制送還とかならともかく平時で犯罪者1人引き渡すのにも関係国間の多大な調整が必要な以上、実効性は薄いと言わざるを得ない。

    14
    • ふむ
    • 2023年 9月 02日

    不正対策なら不法侵入や暴力を用いた違法な動員の方も厳罰に処するべきですが
    そちら側の不正への対処が無いなら、単に兵が足りないから締め付け強めるよって事ですね

    既に拉致まがいの動員が横行してるようですし、更に激化しそうで心配です

    14
    • たむごん
    • 2023年 9月 02日

    収賄被疑者として、ウクライナへ普通の市民として帰国する事が、閉ざされつつあると言えるのでしょうね。
    汚職を認めると継戦・特に新規徴兵は困難になります、戦わずに戦後帰国した人間の方が特になるからです。

    ウクライナ人の死にたくない気持ちも理解できますが、私自信が対象になった時に戦争継続を支持するのかどうか…
    20%の確率で死傷すると言われると、自分は行きたくないという気持ちが強いです(最前線部隊の死傷率は、さらに高いでしょう)

    ウクライナ国内で、厭戦気分が高まるのか分からないですが、そうでもなければどこまでも戦い続けるのでしょうか。
    戦争は残酷なものですね。

    9
    • 極小粒NATO
    • 2023年 9月 02日

    国民の奉仕者、か
    自由だとか民主だとか幸福だとか平和だとか、そんな抽象的な言葉じゃなくてこういうストレートな言葉を政治家が背負ったら、政治も変わったりするのだろうか

    6
    • XYZ
    • 2023年 9月 02日

    実効性があるとはウクライナ政府も考えていないでしょう。
    今後の不正出国への警告と出国済みの国民がノーリスクで帰国できる道を断つあたりが目的でしょうか。

    これにより動員された&される国民に対して、不平等であるという不満を抑えるのだと思います。

    1
      • 2023年 9月 02日

      このへんの事情はロシアも一緒だろうけど出国した人は外国でも生活していける高技能職種の人達がメイン。
      こういう人達が帰ってこれなくなる制度にしてしまうと将来の国家運営に支障をきたしてしまうのだけどな。
      平等の観点から言うと高度人材であろうがなかろうが命の価値は同じなのだが。

      8
        • たむごん
        • 2023年 9月 02日

        この点は、本当に仰る通りと思います。
        高度なエンジニアは引く手あまたですし、医者などは優秀な方(語学など現地に適応できる)が多いですからね。

        個人としては、国に過度に依存しない生き方ができる事も、大事ですよね。

        2
    • ポンポコ
    • 2023年 9月 03日

    私も同意見です。
    ウクライナ人男性個人にとっては、他人が外国に逃れる問題よりも、道路や広場で拘束されて令状が即時発行されて前線に送られる方が問題だと思います。

    そして、最近のゼレンスキーによる、男性の国外移動の批判や軍事委員の解任と前線送りは、さしものの動員力に陰りが出てきたからではないか。

    ウクライナ軍の強みは強力な動員力と兵士の供給です。しかし、それにほんの少し陰りが出始めた可能性もあります。

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