ロッキード・マーティンとラインメタルはHIMARSと共通性をもつ欧州製の多連装ロケットシステム「GMARS(ロケット弾を装填したポッドを2基搭載)」を開発する予定で、これで市場で競合するPULS、Chunmoo、MBRL、AstrosIIと火力面で対等になる。
参考:Lockheed, Rheinmetall pair up to build Europe-made rocket launcher
HIMARSと共通性をもつGMARSが登場すれば「火力」の面で競合と対等になる
ラインメタルのアーミン・パッパーガー最高経営責任者は今年1月「HIMARSランチャーやGMLRS弾の製造を行うためロッキード・マーティンと協議中で、2月中旬に開催されるミュンヘン安全保障会議での合意を目指す」と語っていたが、両社は今月21日「戦闘実績のあるドイツ製コンポーネントを最大限活用した『独自のロケット砲システム』を共同開発することで合意した」と発表。
ロッキード・マーティンは「当社の経験とノウハウ、ラインメタルの生産基盤を組み合わせることで双方にユニークなチャンスをもたらすだろう」と、ラインメタルは「今回の合意は主要技術の確保だけでなく、バリューチェーンにおけるシェア確保のチャンスだ」と述べており、独自のロケット砲システムは「HIMARSランチャー」と「ドイツ製コンポーネント」を統合したもの=ドイツ版HIMARSだと推定されていたが、このシステムはGMARSと呼ばれ、HX8x8にロケット弾を装填したポッドを2基搭載するらしい。
つまりGMARSはロケット弾を装填したポッドを1基しか搭載できないHIMARSの欧州版ではなく、イスラエルのPULS、韓国のChunmoo、トルコのMBRL、ブラジルのAstrosIIなど同じ「ロケット弾を装填したポッドを最大2基搭載できるMLRSの欧州版になる」という意味で、ドイツはMARS2(MLRSのアップグレードバージョン)後継として採用することが濃厚だ。
ロッキード・マーティンのブロンバーグ副社長は「C-130で輸送可能なHIMARSは非常に軽量なため重量制限のある橋を通行できるが、他国は機動性ではなく火力を優先するかもしれない。フランスやドイツを含む欧州諸国はMLRSを運用しているものの、現在では多くの国が装輪式の砲兵システムに関心を寄せている」と述べ、装輪式のGMARSが欧州諸国のニーズにハマる可能性を示唆している。
実際、デンマークとオランダはHIMARSではなくイスラエルのPULSを、ポーランドはHIMARSと別に韓国のChunmooを、スペインもHIMARSではなくPULS、Chunmoo、AstrosIIを検討中で、ブロンバーグ副社長の指摘通り「機動性」ではなく「火力」を重視する国が登場しており、HIMARSと共通性をもつGMARSが登場すれば「火力」の面で競合と対等になるため潜在的な顧客の奪い合いは激しさを増すだろう。
因みにGMARSのプロトタイプは2025年にテストを行う予定で、ブロンバーグ副社長は「もしドイツ軍がGMARS導入まで暫定的な能力を獲得したいと思えば、システムが共通なHIMARSを購入すればいい」と述べており、GMARSはHIMARSの弾薬パッケージやロジスティクスと約80%の共通性をもつらしい。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Ujian Gosun
アメリカ軍に対するHIMARS最大のウリである「戦略空輸に便利」はほとんどの国には響かないだろうしな
多くの国に響くような商品を作るのは分かるけど、競合相手は実物があるのにこれから開発しますというのはかなり不利ではないかな
>アメリカ軍に対するHIMARS最大のウリである「戦略空輸に便利」はほとんどの国には響かないだろうしな
なるほど、米軍兵器も自衛隊と同様に自軍向けの要求が他国に受け入れられない要素もあるのですね。
勉強になりました。
これから作るって言っても運用する兵器やコンテナと汎用性がある搭載シャーシが有るんだから、開発リスク低いだろうしパッケージングさえしっかりすれば搭載兵器はバトルプルーフ済みなのは大きいと思う。
響かない国が多いってのは疑問で軽量なのは空輸だけに効く話でもないし、当然サイズや重量で問題出てくるケースもあるから国情によると思う。
単純計算でChunmooだと1輪あたり4t支える必要あるがHIMARSだと3t無いだろうし。海上輸送でビーチングとか足場がしっかりしていないところでの運用ならスタックとかのリスク含めて選択肢になり得ると思うが。
個人的には火力は兵站で決まると思ってるのだが各国はそう思ってないらしい
瞬発的な火力を求めてる?
火力は複数の要因の合わせ技で決まります。たくさん有っても位置情報が無かったり射程で投射出来なければ遊兵になる。燃料や撃つ弾がなくてもダメ、威力や命中率や故障率も関係するし連携含め練度も絡む。
MLRSだけでカタが付くなら榴弾砲なんて過去の遺物でしかない、誘導無誘導含め継続射撃や弾頭の多様さ1発の安さを考えれば住み分けが出来ている。
現状ロングレンジのピンポイント攻撃が主となっているMLRSで瞬間的な火力が求められるケースの方が少ないような気はする。GMLRSの戦果とか言われている複数台の戦車撃破も同時対処能力で撃破したかも分からないし、毎日数十発以上撃っているGMLRSも一回の斉射で撃破していると言うソースは無いように思うけれど。
調達と改修の面で考えると海外の都合に振り回されない事が重要なので現地生産が許される韓国が直接のライバルになるのでは。
当面の問題は、”ロケット弾を装填したポッド”の方では。
記事からはよく読み取れないけれども、
ロッキード・マーティンが、”ロケット弾を装填したポッド”の
ライセンス生産を認めたようには読めません。
今のウクライナ戦争(?)でも、”ロケット弾を装填したポッド”
の生産力の少なさが問題になったいたような気がしますが。
ウクライナが十数台のハイマースとMLRSでロシア軍の兵站を壊滅させたことを考えるとそんなに火力いらないのでは、むしろ少数運用のウクライナですら弾不足なことを考えると余計に。
多連装ロケットシステムはウクライナでの戦訓として従来の広範囲な面制圧ではなく遠距離からM31などGPS誘導のロケット弾で敵車両や陣地をピンポイントで攻撃するという運用方法が有効であることが証明されています。
ただしATACMSは長射程の代わりにロケット弾が大型化した影響で一つのランチャーに1発しか装填できません(M31なら一つのランチャーに6発)。発射後の再装填を考慮するとランチャーはMLRSの様に二つあった方が良いということなのでしょう。
アメリカ軍はあちこち行くから機動性を、本土防衛メインの国は火力を優先すると。
戦車を何人で運用するのかとか、近海で使うか外洋で使うかで色々と変わる潜水艦と同じで国情は出るよね。出る時代に戻ってきたとも言えるが。