英国のMBDA UKはCAMMの供給契約をポーランド軍と締結、MBDA UKとの契約は19億ポンド=約3,200億円で「近距離防空システムへの投資規模としては欧州最大だ」と報じられており、低空域での防空能力が飛躍的に強化される。
参考:Poland spends $3.1 billion on short-range air defense upgrades
参考:Brytyjskie rakiety wesprą przeciwlotniczą Pilicę. Wielkie umowy podpisane
ポーランドと英国はCAMM-MRの開発を進めているため、ピリカ+がカバーできる範囲はさらに拡張される見込みだ
ポーランド軍が構築を進めている多層式防空システムは2つのレイヤーに分けれており、上層は米国から導入したパトリオットシステム(PAC-3形態)で、下層は旧ソ連製のZU-23-2とGROM/Piorunを搭載したピリカ(SHORAD)でカバーする予定だが、ピリカに搭載されたMANPADSでカバーできる範囲は約7km程度と狭く、9K33 Осаの更新に合わせてピリカに追加する近距離防空システムの調達=ナレフ・プログラムを開始。

出典:ポーランド国防省
この契約を英国のCAMM、ドイツのIRIS-T/SLM、ノルウェーのNASAMSが争ったが、英国側が「前例のない規模の技術移転」や「ポーランド産業界の製造参加」を約束したためCAMMが勝利、ポーランド軍はCAMMやランチャーといった要素と国産要素(トラック/JELCZ 8X8、レーダー/ZDPSR-Soła、指揮統制システム/ZENITなど)と統合したプロトタイプ「リトル・ナフレ」を2022年10月に取得、これをテストして問題がないことを確認したため本格的な供給契約を28日に締結した。
MBDA UKとの契約は19億ポンド=約3,200億円で「近距離防空システムへの投資規模としては欧州最大だ」と報じられており、CAMMが追加されたピリカは「ピリカ+」にアップグレードされるらしい。

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej リトル・ナフレ
今回の契約で取得するCAMMは射程延長バージョンのCAMM-ER(最大射程45km)だが、ポーランドと英国はCAMM-ERの射程を延長した「CAMM-MR(ポーランド企業が生産予定)」の開発を2022年に始めているため、ピリカ+がカバーできる範囲はさらに拡張される見込みだ。
因みに米陸軍は統合防空ミサイル防衛向けの指揮統制システム「IBCS=Integrated Air and Missile Defense Battle Command System」のフルレート生産を承認を今月11月に承認、ポーランドは同盟国として初めてIBCSの導入が始まっており、ポーランド軍が保有するセンサー(AN/MPQ-65、LTAMDS(導入予定)、ZDPSR-Soła、AN/APG-81など)とシューター(パトリオットランチャー、CAMMランチャー、F-35Aなど)はシステム間の垣根を越えたシームレスな運用が実現する。

出典:Northrop Grumman
開発元のノースロップ・グラマンはオーストラリア軍、英軍、自衛隊がIBCSを採用する可能性があると言及している。
関連記事:訪米中のポーランド首相、JASSM-XRの取得や劣化ウラン弾の国内生産に言及
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※アイキャッチ画像の出典:Mariusz Błaszczak
元のCAMMが射程25kmの中距離SAMなので陸軍のSA-6の置き換えかな?と思ったらCAMM-ER(最大射程45km)のさらに射程延伸型も見据えてるんですね。日本の中SAMもそうですが、中距離SAMの射程を延伸して長距離SAM並の射程にしたり戦域防空用に使うのはトレンドなんですかね。
IBCSというものがあることを今まで知らなかったのですが、米軍の演習だとF-35のセンサーノードまで統合して迎撃をしたという話なので、野戦防空版CECというようなものなのかな…?となると日本が採用する可能性は0ではないけど、陸空の全高射部隊をIBCSで繋げるかというと厳しそうですね。米海軍との共同作戦が念頭にある海自のイージスシステムでさえ完全互換していないのに、陸の高射のシステムを統合しても手間に見合うかどうか厳しいでしょう。まして陸自空自のSAMは国産品が多いし、戦域防空から極超音速ミサイル防衛まで中SAMをベースに機能を広げていこうという話がある中で毎回統合のための手続きと出費をするのは…。
トレンドとと言うか攻撃側の進歩に併せて対応するのは普通でしょ?爆弾レベルですら射程が100km超える時代に攻撃圏内に入らずに一方的に攻撃されるってのは許容出来る訳が無い。当然、相手により遠距離の攻撃を強いると言う事は相応の負担を強いる事にもなるんだから。個人的には陸自にNASAMSレベルの規模とコストで改良ホークの50kmをカバーするミサイルが有っても良いと思う。
単純に射程と言っても公開されている射程がどんな状況下での物なのかも良く分からないしね。一番最悪の条件でもこれ位ですなのか、条件が良ければこれ位ですなのかで話が変わってくる低い位置から発射するミサイルなんて上昇するエネルギーがかなり必要で射程に大きく影響する。
IBCSで繋げる事が出来るかってのはソフトウェアと若干の追加ハードだけの問題だろうからハードル高いかな?既にネットワーク繋げてデータ共有させて射撃機会を増やす総合ミサイル防空の取組みを進めているし、国産SAMが多かろうが11式近SAMだろうが03式だろうが外部からのデータ前提でミサイル発射して最終的にアクティブレーダーだから、そこまで難しいとは思えないけど。
無闇な長射程化は、システムやミサイルの大規模化を招き、最低有効射程増大な死角を誘発しちゃいそう。
中射程の対空ミサイルで最低有効射程が数kmだったかな、Gunでカバー出来るか微妙なラインだった筈だし。
中SAMが演習で、SEAD部隊に高度2km前後で距離1マイル弱まで侵入されGunキルされたケースは、レーダーや最低有効射程の死角を突かれた事例だろうけど、
ステルス戦闘機とかUAVといった攻撃手段の低RCS化は、SEAD部隊のような凄腕でなくてもそれを実現しそうでなのが鬱な印象。
やっぱり技術移転が今の兵器ビジネスの肝だよなー
日本製の兵器が上手く輸出出来ない理由でもある
23mmAAGと中射程SAMをくっつけるのは
無理があるような気がします。
戦術と戦域くらいの差があると思います。
素人考えですが、くっつけるなら、
スターストリークSAMの方が良いような気がします。
ただし、照準用レーザーの連続照射を自動化して。
このCAMMミサイル、海軍用のシーセプターの方がメジャーみたいですが、陸軍バージョンのランドセプターもミサイルは同じで高価なレーダーを使わない誘導方式(アクティブRFシーカー)とVLSの小型化によるコスト削減を狙っていて、近接防空システムとしては良い感じですね。で、船に例えると機関砲は最後の2Kmの迎撃用で、その前にミサイルで迎撃するのですが、ミサイルや小型船舶の攻撃にも使えるので色々と便利です、そこで別々では無くて統合してしまおうという考え方だと思いますよ。軍事に弱い政治家や普通の人に説明するのも大変ですし、多分混同しています。あとポーランドは兵器爆買いで節約族にも叩かれてもいると思います。そして、本当の狙いは電子戦対応なのでは?と予想しています。
参考
船の近接防空システム(イギリス版のC4I担当会社製品)
リンク
AESAレーダーEW
リンク
また、素人考えなのですが。
記事の通りですと、システムとしてはやや大きめで、
車載か拠点防空用になるのでは、と思います。
AESAもあるので、かなり電力も必要ですし。
現在のZU23-2は最前線を行動すると思いますが、
そうした任務にはあまり向かないような気がします。
一方、UAVを始めとして精密誘導の火器など
最前線への経空脅威は増えていると思います。
CAMMは良いとしても、最前線には更に別の物が必要ではと思います。