英国は5月下旬に空母クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群を日本に向けて出港させる予定(23日出港が有力視されている)だが、台湾海峡をスキップする航海ルートについて国内から批判の声が上がっている。
参考:HMS Queen Elizabeth will steer clear of provoking China on first major voyage
台湾海峡を避けて日本へ向かうルートを採用した政府と海軍にルート再考を求める声
空母クイーン・エリザベスは中国が主張を強める南シナ海の公海を航行することで「航海の自由」を主張する予定だが、中国が自国領だと主張して武力統一も辞さないと意気込む台湾問題について触れない=つまり台湾海峡ではなく台湾島を迂回して日本に向かうルートを採用しており、保守党の政治家で党首を務めた経験をもつイアン・ダンカン・スミス氏は政府と海軍に航行ルートの再考を促して注目を集めている。
スミス氏は英空母打撃群の極東派遣自体は喜ばしいが「台湾に対して非常に攻撃的なアプローチを採用している中国にメッセージを伝えるためには台湾海峡を航行する必要があり、政府と海軍は航行ルートを再考して台湾海峡の通過を実行することに期待している」と語り、下院の国防委員会で委員長を務めるトビアス・エルウッド氏は「英空母打撃群の極東展開は中国の権威主義に立ち向かうための重要な意思表示で、多くの人々は今回の派遣で中国の行動に変化をもたらすことが出来るのか疑問視している。なぜなら中国に変化を促す前に私たちの方が航行ルートを変更したからだ」と政府と海軍を批判。
シンクタンクのヘンリー・ジャクソン協会で防衛・安全保障分野の研究員を務めるロバート・クラーク氏も「今回の航海は中国に強力なメッセージを送り国際水域における航行の自由を守るためのもので、2019年にフランス海軍が実施した前例に習い空母クイーン・エリザベスも日本へ向かう際に台湾海峡を通過するべきだ」と航行ルートの再考を促している。
補足:なぜ南シナ海や台湾海峡の国際水域=公海を通行することに意味があるのかと言うと、中国は独自の九段線を設定して南沙群島や西沙群島の領有権を主張、領海や大陸棚・排他的経済水域を設定している。さらに中国は国連海洋法条約の第58条第1項に関する解釈の違いを盾にEEZ内で他国の軍隊が演習や飛行・航行を無許可で行うことを禁止しており、これに反対の意思を示すのが航海の自由作戦だ。
恐らく英国は国際水域における航行の自由を主張しても台湾問題に深く関与するつもりはなく、航行の自由を主張するため台湾海峡の国際水域を通行することで中国側に「台湾に対する中国のアプローチにへの反対」と間違った受け取られ方を懸念して台湾島を迂回して日本に向かうルートを採用を採用したのだろう。
さらにクラーク氏が持ち出した2019年のフランス海軍による前例だが、現在日本に向けて航海中のフランス海軍の艦隊は台湾島を迂回して日本に向かうルートを採用しているので英空母クイーン・エリザベスだけに台湾海峡を通行しろと言うのは酷な話で、そもそも今回の英空母打撃群には米海軍の駆逐艦だけではなくオランダ海軍のフリゲート艦も加わっているので事実上「NATO艦隊」という政治的な意味合いも含まれており、台湾海峡を通過するための合意がNATO内で形成でもされない限り実現は難しい。
要するに英国の意思だけでどうにかなる問題ではないという意味で、仮に台湾海峡の国際水域通行を英米で強行するならオランダ海軍のフリゲート艦を海峡手間で切り離す必要があり、こうなるとNATO内での台湾問題に対する対応に温度差があることを全世界に知らしめるようなものなので政治的には全くのマイナスだ。
以上の理由から国内でどんな批判を浴びても日本へ向かうルートは台湾島を迂回するを堅持するだろうと管理人は思っている。
余談だが空母プリンス・オブ・ウェールズに続き、空母クイーン・エリザベスも度々悩まされてきた配管破裂による漏水問題が無事修正されたらしい。
関連記事:仏海軍の強襲揚陸艦が日本に向けて出港、しかし日米仏合同演習の詳細は未定
関連記事:事実上のNATO艦隊、英海軍がインド太平洋地域に派遣する艦隊の陣容を正式に発表
関連記事:頻繁な水漏れ事故に悩む英空母、修理中のプリンス・オブ・ウェールズが5月までに復帰
関連記事:米海軍がインドのEEZ内で「航行の自由作戦」を実施、インド側は法に違反していると反発
※アイキャッチ画像の出典:Royal Navy / OGL v1.0
予定より早く香港を手放した時点で、英国はもうアジアに深く関与しないって国策を意思表示したと見るべき。
中国共産党からすれば、香港は自由都市というよりも欧米支配の残滓に過ぎないんだろうな。
英国が台湾問題に関与するほどに、中国共産党は国内向けには欧米の干渉と侵略が復活した!といきり立つ燃料になってしまう
根本的に共産党と欧米民主主義は相容れないので関与減らしても別のことで(人権等)対立してその事を国内で権力を維持する源泉にするから関与減らしても意味ない
むしろ弱腰とみられて力の空白埋めに中国はどんどん欧米勢力圏に手突っ込んで力を弱めようとするからアジアに止める為のヘイトコントロール的な意味でも関与するべき
それ正しいと言えば正しい意見なんだけど、英国ってのは紳士に見えて狡いから、どこまで期待できるのかって感じ
ここで東アジアを見捨てても長い目で見れば英国にとってもジリ貧になるだけだろう
遅かれ早かれ英国にも中国の影響が大きくなるのは見えているし
英国と中国は歴史的に因縁があるからこのままだと自分達がどういう目に合うか理解している
叩ける時に叩くという原則は戦勝国側で付き続けた英国の強み
…と思いたいところだが希望的観測が幾分か入っているのは否定できない
お漏らし姉弟はついに克服したか
親子じゃね?
ああ、女王と皇太子か。
単艦ではなく、エリザベス以外も複数の随伴艦艇がまとめて通ることになるし、平時に狭い海峡を通るのはちょっとね。通るとしたら到着後の演習中じゃないかな。
イギリスのジョンソン首相は強硬派のはず。
いつから弱気な腰抜けになったのか。
中国に対してNATOが対決姿勢を示せば、中国の蛮行を少しは止めることができるだろうから、それをやらない手はないはず。
クイーン・エリザベス見に行きたいな。佐世保は遠いが…
いつ頃つくのかな?
東京からでも飛行機でひとっ飛びなんだから行ってきなよー
それに、俺みたいにあの世にいると、歓迎したくても出来ないのだから、後は君たちに託す!
天国から女王に会いに行きたいとかフィリップ殿下かな?
えー?
横須賀にはこないの?
場所がないのでは?横須賀は狭いから。
日本の港に寄港されると政治的に不味いから佐世保や沖縄の米軍基地に寄港してもらう設定、、、
マスコミ以外には船内公開はしないよね・・・
というか欧州全体でここまで中国・台湾の問題に敏感なのは正直驚いている
中国が世界規模で悪さしているせいというのもあるんだろうが、
彼らは対象を敵と認定してしまえば本当にとことんって感じですな
安全保障を全世界レベルで判断する時代なんですよ。トルコや南米の問題は日本には関係ないって感覚がいかに古臭いか、それはヨーロッパにとってのアジア問題と同じだからね
一帯一路構想がうまく行った場合、スエズ運河に至る航路が経済的に支配される可能性があるうえ、
保護目的で中国軍が常駐する可能性がある。それに欧州自体も経済的に逆らえない状況にされかねないからね(貿易路握られるから)。
あとイギリスは弱体化したとはいえ英連邦諸国の親玉だから、オーストラリアのピンチに対して反応せざる負えないんだよ。
台湾問題は中国の国としての正統性に関わる、一番嫌な部分ですからね。
中身の無いやってますアピールは何処かの知事と一緒ですね。
米国から要請でもあったのだろうか? 最近バシー海峡と台湾海峡の交差点付近では、
中共空軍が飛び回っているので、不要に中共軍を刺激したくない思惑があるのかも。
2隻の空母がそろってお漏らししちゃたのはイギリスが極東派遣を決定したから
その嫌がらせとして中国の仕業という陰謀論はさすがにないよね??
その場合はアメリカの強襲揚陸艦の時みたいに燃やすんじゃないかな。損傷具合で言えばそっちが確実ですし。
この経路で必ず通っているとは限らない。
船が多いからさらに分遣して動く可能性もあるし、”通ります”と言って事故とかで通らないと恥さらしになりかねないが、言わないで通って、”さっき通ったよ。(笑顔)”だと中国にはダメージがデカいわな。
実際アメリカ軍だって事後報告か。直前にしかしないことが多い。