EUは3月「今後12ヶ月間で100万発の155mm砲弾をウクライナに供給する」と合意したが、21日時点で2.8万発しかウクライナに到着しておらず、フランスとポーランドは砲弾の購入方法で揉めており、反攻作戦の砲弾供給は米韓に依存している格好だ。
参考:Bisher erst 41.000 Granaten für Kiew
参考:Deutschland will die meisten Granaten für Kiew herstellen
参考:EU nations quarrel over where to buy fresh ammo for Ukraine
ウクライナに供給する155mm砲弾をどこから購入するのかで紛糾するEU加盟国
レズニコフ国防相はEU加盟国に宛てた書簡の中で「利用可能な砲弾の数に制限がなければウクライナ軍の砲兵部隊は1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できる。我々の計算では戦闘任務を成功させるのに最低でも月36.6万発の砲弾を必要としているが、供給不足のため砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分しか使用しておらず、これはロシア軍が使用する量の1/4だ」と訴えて月25万発の砲弾供給を要求。
1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できるという言及は「ウクライナ軍が保有する各種榴弾砲・自走砲の発射可能なキャパシティ(1ヶ月間)」を示唆しており、レズニコフ国防相は「月平均で11万発の155mm砲弾をウクライナ軍は消耗している」とも明かしているため、砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分=11万2,800発分しか使用していないという言及は「155mm砲弾」のことを指し、ロシア軍は月平均45万発もの152mm砲弾を撃っている計算だ。
つまり戦場で優位性を獲得するには「米国が供給する155mm砲弾(累計150万発以上を提供=月平均11万発以上)」とは別に「月25万発の155mm砲弾」が必要で、エストニアはEUに「155mm砲弾を年内に100万発を提供するべきだ」と2月に提案、これを検討していたEU加盟国は「今後12ヶ月間で100万発の155mm砲弾を供給する」という政治的合意を3月20日に発表。
A historic decision.
Following my proposal, Member States agreed to deliver 1 mio rounds of artillery ammunition within the next 12 months.
We have a 3 track approach:
1) €1 bn for immediate delivery
2) €1 bn for joint procurement
3) commission to ramp up production capacity pic.twitter.com/CCNOaxE4bk— Josep Borrell Fontelles (@JosepBorrellF) March 20, 2023
この合意は当初「①砲弾の即時納入、②納入した砲弾を埋め戻すための共同購入、③砲弾生産の増強で構成され、EUは欧州平和ファシリティ(EPF)から計20億ユーロを支出する」と報じられていたが、どうやら①に支出が承認された10億ユーロは155mm砲弾の払い戻しに限定されておらず、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙は「21日時点で6.01億ユーロ分の払い戻しか請求されていない」と報じている。
6.01億ユーロ分の内1.8億ユーロ(計1,080発)は多連装ロケットシステムのロケット弾や防空システムの迎撃弾、残りの4.21億ユーロ(計4.1万発)が中・大口径弾薬に関連しており、FAZ紙は「4.1万発の内2.8万発しかウクライナに到着しておらず、一般的な155mm砲弾の価格は4,000ユーロに過ぎないため加盟国は高価な精密誘導弾薬(1発あたりの砲弾価格が約1万ユーロ)を提供したのだろう」と指摘。
さらにFAZ紙は「②の10億ユーロは9月末までの新規発注分に使用され、この資金は155mm砲弾の払い戻しだけに投入される。この2つの資金で1年以内に100万発の155mm砲弾をウクライナに供給する計画(払い戻し額は加盟国が負担した費用の50%~60%)だ」と主張、これが事実なら「100万発の大部分は新規生産される砲弾」という意味で、EU上級代表のボレル氏も「ウクライナに対する砲弾供給は想定していた規模に達していない」と不満をぶちまけているため「2.8万発しか届いていない」というのは本当なのだろう。
この問題を複雑にしているのは②に配分される10億ユーロの支出規定で、フランスやドイツを含む大半の加盟国は「EPFの資金はEU域内の契約に限定されるべきだ」と主張、しかしポーランドやエストニアは「調達性を優先してEU域外の企業にも契約を解放するべきだ」と主張して対立、そこでフランスは「払い戻しの対象はEU域内で製造された砲弾に限定するべきだが、製造に必要な部品はEU域外から調達しても構わない」という妥協案を提案中だ。
要するに「155mm砲弾を構成する砲弾本体や炸薬をEU域外から調達しても最終組み立てだけはEU域内でなければならない」という意味で、ドイツのラインメタルはオーストラリアで製造している約5万個の砲弾本体や南アフリカの工場で製造している炸薬を欧州に持ってくることが出来るものの、南アフリカ企業のRheinmetall Denel Munitionが製造する155mm砲弾を欧州に持ってきてもEPFの対象外になる。
同問題は内容が確定していない「③砲弾生産の増強」への投資にもリンクし、EU域外の子会社や提携企業の製造能力を活用できないないと「155mm砲弾製造に必要な部品」を全てEU域内で増産する必要があり、EPFの払い戻しに頼らず、生産増強も全て自前で負担して「ウクライナに砲弾を提供する」という国が現れない限り、この問題が劇的に解決することはないだろう。
もうウクライナの反攻作戦に必要な砲弾供給は「米国(年間16.8万発)」と「韓国(推定年間20万発以上)」に依存している格好だが、訪米した尹大統領はウクライナに対する軍事支援の可能性に言及しなかった。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
うーんどっちの理屈もわかるけど
この合意の目的はまずはウクライナ支援のはずなんでは?
グダグダしてる間に本末転倒なことにならなきゃいいのだが
EUのお金なのだから適用範囲はEUの域内に限定したいと言う気持ちは理解できなくもないですが、ドイツ企業が海外の現地法人で製造したものを輸入するのにも適用しないと言うのはあまりに杓子定規ではないでしょうか。
そこまで言うからにはフランスには責任もって約束した分の砲弾を供給していただきたいものです。
有事の際に頼りになる国はアメリカだけというのがよくわかりますね
韓国もロシアに睨まれたくないからアメリカの要請を断れないという形でアメリカ経由で支援することはあっても基本はダンマリでしょうね
ポーランドに売った武器をポーランドがウクライナに持ち込むのはポーランドが勝手にやってるので韓国は関係ないという事にするつもりなんでしょうけど
フランスをあてにする事自体が間違い。
欧州全体の間違いだろ
ギリシャ危機→クリミア危機→ディーゼル危機→ブレグジット→医療崩壊→記録的インフレとここまでずっこけてていまだに権威がある方がおかしい
そして日本の欧州を見習え勢のクソ害悪っぷりもよくわかる
ECで作っても、EC以外で作っても、同じM107砲弾でしょう。
そんなことないと思うけど、もしM107にパテント料が存在したら、
仏はどう言い訳するか聞いてみたいとは思います。
155mm砲弾の供給は、ECとNATO(米国)の二本立てで良いのでは。
後で、生産量の答え合わせをしてみると面白いのでは。
結局何が言いたいの?わざわざ『EC』と書いているのかは分からないし、同じM107砲弾でしょうと書く必要ありますか?今問題になっているのはEUの資金がEU内に大量のお金が落ちるかどうかの話で155mm砲弾の規格を満たしているのは関係無いし、仮にパテントが発生しようがそれを織込んだ価格になるだけでしょ?
供給に関しては西側主要メーカーがEUとNATOに存在するから将来的に域内でいけるかもしれないが、現状だと韓国の豊山金属とRheinmetall Denel Munitionを加えない事には供給に不安しか無い。生産に関して力になれそうなエルビットは米国がイスラエルにあった分吐き出した可能性があるのでその補填で忙しそうだから除外。
野暮な話かもしれんけど、単に聞き馴染んだ単語がECだっただけなんでは?
おじさんがロシアの事を自然とソ連と言う事もあるし。
間違えてしまいました。
正しくはEUですね。
おじさん(笑)なので、昔の癖が(笑)。
これはもう劇的に解決はしないとすると、悲劇的な解決しか待っていないようにしか思えません。
つまりレズ二コフ国防相や、エストニアの要求や提案、EUの政治的合意自体が、もともと無理な、実行不可能な要求、提案、合意ということであり、このままだとウクライナ軍による反攻作戦は、砲兵の支援砲撃や、十分な航空支援もなしに行わざるを得ません。
米国(年間16.8万発)といっても、レズ二コフ国防相が要求しているのは月25万発で、アメリカに依存、頼りにしても反攻作戦などはできない計算になります。
一方でロシア軍の方は、イランから30万発きたとか、エジプトが砲弾送る準備していたとか、北朝鮮が砲弾送っているとか、そういう話がいろいろと出てきています。
やっぱり戦争になると命令がスムーズに行き渡る独裁国家が強いんだよね 西側諸国だとどうしても利権とか利益とかの思惑が拭いきれないから決定に時間がかかって気づいた時には手遅れになるかも
生産強化の投資を域内に限定するのは理解できるが、約束の100万発が保有分からの即時放出ではなく新規購入分も含まれていて、1年以内という早さが求められているにも関わらず調達を域内生産に限定するのは無茶苦茶だ。そして何より20億ユーロから新規購入まで支出すると予算が全く足りない。
ウクライナの牽引砲・自走砲は、155mmが308門と459両、152mmが460門と892両(配備数からoryxの破壊・鹵獲を差引)で、計算上152mmが155mmの2倍です。
もし155mmと152mmを同率で使っているとすればロシアの使用量の3/4になる訳で、レズニコフ国防省の発言はレトリックな気がします。
152mmは足りてるのかな、というのもありますけれど。
他方、ロシアの火砲・自走砲は目減りしても、計算上はウクライナの1.6倍なので、妙なところで数字が整合するものだと感じます。
ただし、それは同時にロシアもウクライナ並みに砲弾が逼迫しているか、もしくは漏洩文書にあった火砲の3/4喪失を裏付けになるんでしょう。
あと、oryxの映像を見てると、砲撃であり得ないような直撃がエクスカリバの仕業なら、所要砲弾数も相応に換算したほうがいいような気がします。
>ロシアもウクライナ並みに砲弾が逼迫しているか、もしくは漏洩文書にあった火砲の3/4喪失を裏付け
他にロシアは戦車や榴弾砲に使用される砲身を作れない(精密加工が必要で加工に必要な西側製工作機械が入手できないことや徴兵・動員などによる技術者の不足など)ことも原因としてあるようです。特に榴弾砲の砲身は砲腔内にライフリングと呼ばれる螺旋状の溝を持つライフル砲でライフリングの刻み方で弾道や砲撃距離などが決まる為に高精度の加工が必要な部分です。
砲身寿命についてはロシアの122mm榴弾砲D-30(派生型が2S1グヴォズジーカに搭載)が約6,000発と言われていますが加工の精度によっては3,000発以下で駄目になってしまう場合もあったようです。ちなみにウクライナの使用するFH70が約3,000発(自衛隊公表値)、チタンを多用し軽量化したM777は約2,000発が砲身寿命と言われています。
米国陸軍ですら155mm砲弾の生産能力を漸進的に向上させ、最終的に2028年までに月間8万5千発にすると言っているのに、一年間で100万発調達という難題に対して、EU内の製造に拘っている場合なんでしょうか。
つい最近韓国が155mm砲弾50万発を米国へ貸与すると言う記事を見ましたが、第三国に便宜を図ってでも調達する柔軟さが無ければ、残り11ヶ月で約97万発も揃えるなんて、到底間に合わないのでは?
EUの主要国からすれば、間に合わなくてもウクライナが困るだけで別に自分達の首が締まる訳でもないし…
それよりEU圏内の金を流出させる方が容認出来ないでしょ?
なーにロシアが勝ったら適当に手打ちしてシャンシャン和睦すりゃ問題ないよ!
EUはヤクザ映画だと日和見して結局、殺されるヤツのポジションやん。
なお、陸軍大国へと豹変したポーランドを中心とする東欧勢(以下略
ヨーロッパはもう1度国土が戦場になって荒廃しないと自分たちの行動がどれだけロシアをアシストしてるのか理解出来ないのでは?
台湾どころか日本まで侵略されてもフランスは平気で知らんぷりしそうだ
そもそもフランスは伝統的に親露の気が強いですから
日清戦争後の三国干渉は言うに及ばず、日露戦争中に露バルチック艦隊の回航に対して停泊地として当時植民地だったマダガスカル島のノシベ湾やベトナムのカムラン湾を提供したのもフランスです
更にWW2中、当時の自由フランスは自軍の戦闘機パイロットをソ連へ送ってソ連製戦闘機を装備する戦闘機部隊ノルマンディ・ニーメンを編成していますし
そんな背景が有るので、恐らく台湾・日本を侵略されるどころか欧州も侵略されてパリにロシア軍がやって来てもフランスは知らんぷりどころかパリを更新するロシア軍に向かって手を振りそうですよ、マジで
何となくフランスの立ち回りは日本のネット内の親中親露派と重なるところがあります。
フランスは西側諸国の旨味は吸いたいが主流派の英米に従いたくないばかりに独自路線と謳って中露に逆張りして悦に入っている印象です。
親中親露の方々も日本国内でぬくぬくと民主主義自由主義を謳歌しながら逆張りして中露に羨望の眼差しを送っている。
そんなに民主主義が嫌いならワグネルにでも入ってウクライナの民主主義と戦った方が近道なのではないかと思います。ワグネルも喜んで穴掘り要因として前線に送り込んでくれるでしょう。
いや日本政府だって、サハリン2での共同開発を、三井物産や三菱商事と続けていますし、トヨタをはじめとする自動車の輸出や、海産物の輸入を続けていて、漁業協定も結んでいます。
日本はウクライナに武器を輸出するわけでもなく、日本維新の会の鈴木宗男や、自由民主党の森喜朗は、ウクライナがロシアに勝てるわけがないと公言し続けているのです。
またそもそもウクライナは民主主義国家、自由主義国家なのか?というのもしばしば意見が分かれる話です。またそもそも英米が主流派なのかも定かではありません。
イギリスはすでにEUから脱退し、アメリカは今もTPPには加盟しないのです。TPPに関してはイギリスとアメリカでも姿勢が異なり、米英と簡単にひとくくりにもできません。またアメリカ国内でもトランプ・前大統領や共和党はウクライナへの軍事支援に懐疑的なのです。
後半の話はよく分かりませんでしたがフランスがロシア寄りの姿勢が比較的強いのは同感です。これは帝政ロシアがフランスを手本にしていたのとドイツという共通の敵がいるからだと推測できます。そもそもヨーロッパなんて戦争の繰り返しですから急にNATOやEUで団結しろといっても無理があると思います。
『尹大統領はウクライナに対する軍事支援の可能性に言及しなかった』
ハンギョレのクォン・ヒョクチョル記者によると韓国も「交戦国に兵器供与は違法」とされているらしいので、名言はできないんだろうな。日本同様に法改正する気はあるのかもしれないが。
貴重な税金が域外に流失しかねないともなれば慎重な対応になるのも仕方ないのでは
ホイホイ米韓に垂れ流してたら納税者への裏切りだろ
今回もめているのは米韓への支払いに充てると言う話ではなくて、海外にあるドイツ企業に対しても支払わないと言う、そこまで限定する必要があるのかと言う話。