欧州関連

英国、ポーランドに前例のない規模での技術移転を認めシーセプター売り込みを後押し

英国はポーランドにシーセプターを売り込むため「前例のない規模での技術移転」や「ポーランド産業界のシーセプター製造参加」を約束した。

参考:Poland Indicated Preference for SHORAD missile

英国産業界とポーランド産業界との協力関係を構築→今後の装備調達プログラムで優位な地位を占めることを狙っているのだろう

ポーランドは陸軍が運用しているロシア製の短距離防空システム「SA-8 ゲッコー/9K33 Оса」を更新することを目的にしたナレフ・プログラムを進めているのだが、ポーランドと英国はナレフ・プログラムで両国が協力することで合意したと18日に発表、ブラスザック国防相は「恐らくナレフ・プログラムは英国製のCAMM(シーセプター)が落札するだろう」と語り注目を集めている。

出典:ポーランド国防省

このナレフ・プログラムはポーランド陸軍のSA-8 ゲッコーを更新するための計画だが、要求されている交戦範囲は当初の25km以内から40kmへと拡張されているため短距離ではなく中距離をカバーする防空システムへと変貌を遂げており、ディール・ディフェンスのIRIS-T/SLM、MBDAのCAMM-ER、コングスバーグのNASAMS(AMRAAM-ER)などが導入候補に挙がっていた。

しかし英国はポーランドに前例のない規模での技術移転を約束、さらに「ポーランド産業界がCAMMの開発・製造に参加して将来的にコレを海外輸出してもよい」とまで認めているため、自国の防衛産業基盤育成や防衛装備品の現地生産を好むポーランドにとって英国の提案は破格の条件提示だと言えるだろう。

出典:MBDA CAMMの陸上運用システム

勿論、英国も何の見返りもなく今回のような提案を行った訳ではない。

規模が小さくても十分に武装した軍隊という概念を否定したポーランドは「平和を望むなら戦争の準備をする」という古の原則こそが重要だと主張して「ポーランド軍の規模を14万人→30万人まで増強する」と今年10月に発表しており、まずはポーランドのナレフ・プログラムに食い込んで英国産業界とポーランド産業界との協力関係を構築→今後の装備調達プログラムで英国が優位な地位を占めることを狙っているのだろう。

恐らく短期的に言えばポーランド海軍が現在進めているフリゲート艦調達(現在入札中で英国がアローヘッド140、ドイツがMEKO型フリゲート、スペインがアルバロ・デ・バサン級フリゲートの派生型を提案)で、英国提案のアローヘッド140採用を後押しするための取り組みだとも言える。

出典:Babcock アローヘッド140

まぁこういう言い方は感じが悪いかもしれないが、安全保障環境の悪化を理由に各国の国防支出が増加の一途を辿っている状況は防衛産業界にとって大きなビジネスチャンスであり、伝統的なプレーヤー(欧米露)間の競争に加え新たに参入してきた新規プレーヤー(中国、トルコ、インド、韓国、UAEなど)との激しい受注競争に勝ち抜くためには「したたかな売り込み戦略」が必要という意味で、見ている分には非常に面白い。

関連記事:平和のため戦争準備を進めるポーランド、米国から中古のクーガー装甲車×300輌を取得
関連記事:戦争を回避するには戦争の準備が必要、ポーランドが軍を14万人→30万人以上に増強すると発表

 

※アイキャッチ画像の出典:MBDA CAMM-ER

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    >しかし英国はポーランドに前例のない規模での技術移転を約束、さらに「ポーランド産業界がCAMMの開発・製造に参加して将来的にコレを海外輸出してもよい」とまで認めているため

    日本も完成品ばかり輸出しようとするんじゃなくて、現地の企業と共同で提案するとか、技術移転するとか、輸出を認めるとか、そういう取り組みをした方がいいんじゃない?
    防衛省はそこを甘くみている気がする。
    完成品を何の見返りもなく買ってくれる国なんてないよ。

    12
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      少なからず自分の利害ってものをちゃんと認識してるからね
      地域の影響力というかなんというかAUKUSとかポーランドとか抱き込むことが自分の利益にもなってる

      んで日本が同じことしようとすると第一候補は韓国、第二候補はインドネシアやフィリピンとなって、逆に地域を不安定化させませんかねみたいなジレンマに陥る

      12
        • 匿名
        • 2021年 11月 20日

        >地域を不安定化させませんかねみたいなジレンマに陥る

        どんなジレンマ?

        1
          • 匿名
          • 2021年 11月 20日

          仮想敵国の軍事技術力強化では
          政治次第ではいつ中国の側になるかわからない国なので

          16
            • 匿名
            • 2021年 11月 20日

            それ言い出したら何もできないと思うけど

            2
          • 匿名
          • 2021年 11月 20日

          ASEANの仲が悪いって言いたいわけじゃないけど、いささかまとまりに欠ける
          個々の国の利害が違うのは当然として、それらの差異を含めて共通利害で手を結ぶNATOみたいな枠組みがあるわけでもなく軍事バランスは下手に変わらないほうがいい

          15
        • 匿名
        • 2021年 11月 20日

        それ言い出したら、もう輸出とか移転とか言ってられなくね?
        サプライチェーンどうやって維持するの?

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 22日

          そこが基本的な仮想敵がロシアで纏まってる欧州と、仮想敵がバラバラな中東含めたアジアとの差なんだろうな。

          1
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      やれるとしても現地企業と共同だろうな、どのみちメンテや補修とか考えれば現地の足がかりは必須だし。技術移転に関しては物に寄るだろう、現地にまともな企業が無いなら環境整えるのに時間が掛かってしまう。

      昨日の記事でもあったけど国産でも外国部品の割合は多いし、構成部品には民生ハイスペックの部品があるからそれを作らせるって事はどうなのかって判断もな。トータルの機体売る為に部品メーカーに泣きを見てくれってのはあかんでしょ。双方にメリットある取引調整は難航しそう。

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    米・英がポーランドにフェイバーを与えるのは、自国内に移民が多いからではなく、
    対露・対EUでの準軍事同盟国だから。米国はポーランドを欧州での橋頭堡とみなしている。
    一番大きな要因は、ポーランドがいまも独・露を脅威と視て、米・英に依存していること。

    6
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    日本には真似出来んやり方だな

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      日本の場合、近場に輸出できるのが台湾しかいないんで
      遠すぎると有事の際の補給が困難なのは目に見えてるわけだし
      立地的にかなり不利なんだよなぁ
      フィリピンじゃ金ないし・・・

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 20日

        だから技術移転と現地生産をセットにして売り込めばいんじゃないの?

        立地が不利と環境のせいにしてるけど韓国は欧州のフィンランドや中東のイラクにK9やT-50を売り込んでるんだから、貴方の主張は詭弁だよね。

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 22日

          どっちかにそこまで入れ込んで売り込めば、反対の国からは当然反感を買う。
          そこら辺の政治を上手く繕えるほど日本は強かじゃないんだから、無理に売ることに執着しないでいいと思う。
          せめて武力を外交での選択肢に入れられるくらいにならないと。

          1
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    対ロシア最前線だからな、信用されている国は違う。

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