欧州関連

ウクライナ空軍、技術的な問題で制御を失ったTB2をキーウ上空で撃墜

ウクライナ空軍はキーウ上空でTB2に似た無人機が撃墜された件について「定期パトロール中のTB2が技術的な問題で制御を失ったため撃墜した」と発表し、ロシア軍の無人機がキーウ上空に侵入したという噂を否定した。

参考:Над Киевом сбили “Байрактар”, над которым потеряли управление
参考:Ukrainian TB2 Shot Down Over Kyiv By Friendly Forces

連日攻撃を受けているキーウ周辺の防空部隊は厳戒態勢だったのでフレンドリーファイアの可能性も否定できない

ウクライナに対する巡航ミサイルやイラン製無人機を使用した攻撃が続く中「キーウ上空を飛行する無人機の撃墜シーン」が4日に登場、クレムリン宮殿に対する無人機攻撃の直後で、Shahed-136と異なりTB2のシルエットに似た無人機だったため「中国製の商用無人機を改造したものではないか?」「ロシアがトルコからTB2を入手したのではないか?」「フレンドリーファイアではないか?」という噂が出ていたたが、ウクライナ空軍は「制御を失ったTB2を撃墜しただけ」と発表した。

撃墜されたTB2は日常的な定期パトロールに出ていた機体で「飛行中に何らかの技術的な理由で制御不能になり、望ましくない結果を避けるため撃墜することを決定した」と説明しており、海外のディフェンスメディアは「制御不能になった友軍のドーロンを意図的に撃墜することは一般的な対処方法で、ウクライナ側の公式説明は納得がいくものだ」と述べているが、連日攻撃を受けているキーウ周辺の防空部隊は厳戒態勢だったのでフレンドリーファイアの可能性も否定できないと指摘している。

因みにオーストラリアは段ボールと輪ゴムで作られた無人機「CORVO PPDS」をウクライナに提供中で、この安価な無人機が「ロシア軍の戦いで役に立っている(少量の物資輸送やISR任務など)」とミロシュニチェンコ駐豪ウクライナ大使が明かし注目を集めていたが、ロシア軍が使用する安価な無人機も戦場で確認(対空火器の発砲を誘う囮らしい)されており、無人機を使用した戦術の試行錯誤は日々続いている格好だ。

とにかく「戦場を視覚的に認識する」という能力や手段の有無が戦術的な優位に直結するため、おもちゃのような無人機でも馬鹿にすることはできない。

関連記事:ウクライナ軍がロシアのクレムリン宮殿をドローン攻撃か、宮殿上空で爆発
関連記事:消耗できる強み、段ボールと輪ゴムで作った豪無人機がウクライナで活躍

 

※アイキャッチ画像の出典:Twitter経由

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コメント

    • 名無しさん
    • 2023年 5月 05日

    仮にこのウクライナの発表が真実ではなかったとしても「納得感」と言うのは大事ですね。
    クレムリンの件を見るとロシアは説明が下手すぎるし、中国も一方的に自分の言い分を主張するだけ。

    おそらくこれは「他人の批判を受け付けない」専制政治により強く表れる傾向なのではないでしょうか。
    ウクライナが100%民主的とは言いませんが、国民や諸外国に対してある程度の説明能力がなければ政権が成り立たない事情から鍛えられてくるものだと思います。

    58
      • 名無し
      • 2023年 5月 05日

      流石にその意見はウクライナ贔屓がすぎる
      多分こういう奴がEUだったりの到底実現できない目標なんかを真に受けるんだろうな

      8
        • hiroさん
        • 2023年 5月 05日

        名無しさんがEU嫌いなのは勝手にすれば良いが、元コメからEU云々は強引過ぎるし、攻撃的コメントは止める様に管理人さんが注意していることも忘れない方が良いと思います。

        56
    • MAT
    • 2023年 5月 05日

    パトロールとして使っていたとの事ですが、何をパトロールするために使われてたんですかね?
    キーウだとミサイルや無人機や徘徊式弾薬の攻撃がメインで対戦車任務のイメージが高いTB-2は特殊部隊の潜入任務の監視だったのでしょうか?

      • hiroさん
      • 2023年 5月 05日

      詳細は不明ですが、例えばベラルーシとの国境付近をパトロール中のTB2が制御不能となり、キーウまで彷徨ってきたので撃墜したとか。
      キーウから国境までは直線で200km足らずなので、TB2でも1~2時間で到達可能ですし。

      13
    • 通りすがりの動物号
    • 2023年 5月 05日

    ロシア側に制御を乗っ取られてキーウの防空体制の調査に使われたんでしょうかね。
    今後は他の戦場でもTB2の制御乗っ取りが頻発するかも。

    2
      • くらうん
      • 2023年 5月 05日

      今回の件が乗っ取りだと推測できる根拠がまったく見当たりませんが。
      今後の乗っ取り頻発の可能性まで言及されているのは何か情報があるんでしょうか?

      20
        • 09
        • 2023年 5月 05日

        tb2のカメラがハッキングを受けた例はあるようですよ

        乗っ取りの可能性もあり得るかと

        1
        • 通りすがりの動物号
        • 2023年 5月 05日

        原因は技術的問題とされているので、そこにはセキュリティ上の問題も含まれていると考えたのです。針小棒大だったかもしれません。

        1
    • paxai
    • 2023年 5月 05日

    やっぱ対空砲は安いが命中率が足りんなあ。
    途中までの炸裂音は対空砲火なんだろうけど結局撃墜してるの地対空ミサイルでしょこれ。
    鈍足&大型&軽装甲のTB2相手に手間取ってるようではね。ゲパルトとかなら違うのかも知れんが。

    9
      • 名無し
      • 2023年 5月 05日

      ゲパルトの射程なんてたかだか3キロほどなんだから、道路制約無視して時速200キロで飛ぶ物体を撃ち落とすには、駐屯地から道路移動があるだけで、もう無理ゲーだよ。自動車より移動はさらに遅いわけだし。
      対空砲は、高付加価値目標の傍で待ち伏せする「対空地雷」としてしか使えない。

      3
        • らっしー
        • 2023年 5月 05日

        ふと思いついたんですけど、ゲパルトなり陸自のガンタンクなりの砲塔部分だけを、
        定番のクアッドコプター型ドローンの巨大版に載せて低空を飛び回る空飛ぶ対空戦車。
        装甲とか無視して射撃に必要な部分だけなら、無人コプターに乗れませんかね。
        動力は既存の戦闘ヘリの流用とかで。

        受け持ちエリアの数十〜百以上の対空監視気球からの索敵データで迎撃現場に急行。
        低速飽和攻撃型ドローンを、地面を走り回るより遥かに自由な射界で自動迎撃。

        例えば日本でなら沿岸部に漁業用のブイを立てる感じで監視気球を並べて、
        出来れば沿岸の海上で迎撃っていうシステムを作れれば需要あるかも?

          • らっく
          • 2023年 5月 06日

          うーん、ドローンの優位性は静粛性と低輻射(小さいのでレーダー波をあまり反射しない。電動なので赤外線をほとんど放射しない)にあるのです。カメラ付きラジコンヘリなら昔からあるし、農地で実用されてたからね。
           なので、無人戦闘ヘリコプター的なのを作っても相当遠方で発見されてしまうでしょうね。
           それでも数百万円程度の費用で月産数百台作れるというのなら役に立ちそうですが。

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