バフムートの最前線を訪問したウクライナ軍のシルスキー陸軍司令官は「ロシア軍はシリアで見せた焦土戦術に切り替え、空爆と砲撃で建物や陣地を破壊している」と明かし、状況は厳しいものの「制御されている」と付け加えた。
参考:Оккупанты в Бахмуте перешли к “сирийской” тактике выжженной земли – Сырский
シルスキー司令官の言及が「以前よりもロシア軍の航空作戦が増加している」という意味なら「前線上空のA2ADに問題が生じている兆候」と言える
ウクライナ軍は10日「シルスキー陸軍司令官は定期的にバフムートを訪問しており、昨日も同地区の最前線を訪問して現地の指揮官達と協議を行った」と発表、シルスキー司令官も「ロシア軍はシリアで見せた焦土戦術に切り替え、空爆と砲撃で建物や陣地を破壊している」と明かし、状況は厳しいものの「制御されている」と付け加えた。
シリアで見せた焦土戦術とは「敵の抵抗拠点になりうる建築物を破壊して更地にする」という意味で、これまでもロシア軍は制圧が困難な防衛拠点を焦土戦術を使用しており、リシチャンシクの包囲を阻止してきたパポスナやトシキフカでの抵抗がロシア軍に押し切られたのは「効果的に抵抗するため建築物が破壊されたため(ウクライナ軍流に言えば街に守るべきものが無くなったため、より防衛に有利な地点まで後退した)」で、バフムートでも同じことをやり始めたのだろう。
バフムートの建築物(コンクリート製のアパートなど)の数はパポスナやトシキフカとは比較にならないほど多いので、直ぐに抵抗拠点が失われる訳では無いが「ロシア軍の空爆」に言及している点が非常に興味深い。
米空軍のマクシミリアン・ブレマー大佐は1月「ミサイルやドローンを使用した世界初の空中消耗戦に挑んいるウクライナにとって『防空システムの維持こそが勝利への鍵』で、限られた支援リソースを戦闘機提供に割くできではない。ロシア軍は航空優勢を獲るため防空システムを直接破壊するのではなく、インフラを攻撃することでウクライナ軍の地対空ミサイルを枯渇させるつもりだ。これは非常に狡猾な策略で、国民を暗くて寒い生活から救うため地対空ミサイルを消耗し続けるか、長期的な成功のため高い代償を支払うかを選択しなければならない」と述べていた。
流出した統合参謀本部作成の資料も「高度6,000mまでの防空を担うBukは2023年3月までに、S300は2023年5月までに迎撃弾が枯渇し、ウクライナ軍から前線空域を保護する能力が失われるだろう。そうなればロシア軍機の作戦範囲や自由度は大きく改善され無誘導爆弾の使用が増加、巡航ミサイルも地形に沿った低空飛行が必要なくなり射程、命中精度、生存性が向上、空挺作戦や航空機を使用した補給が可能になる」と指摘。
さらに「短距離で低高度しかカバーできないスティンガー、アベンジャー、ゲパルト、クロタルといったシステムだけでは『前線』や『重要なインフラ』に対する航空攻撃への抑止効果が低く、保護する対象を選択してBukとS300の使用を節約しなければならない」と言及。
ブレマー大佐も「もっと被害を受け入れる必要がある。ロシア軍の攻撃から市民をを守りたいと考えるのは当然だが、ミサイルやドローンを全て撃ち落とすのは技術的にも不可能で持続可能でもない。西側提供の地対空ミサイルで持続可能なA2ADを維持できなければ無防備になるだけだ」と警告していた。
シルスキー司令官の言及が「以前よりもロシア軍の航空作戦が増加している」という意味なら、前線上空をカバーするウクライナ軍の保護能力は厳しい制約(BukやS300の使用制限)を受けているか、既に使用できる迎撃弾が尽きかけようとしている兆候と言える。
関連記事:ウクライナ軍のA2ADが機能しなくなる?BukとS300の迎撃弾がまもなく枯渇か
関連記事:世界初の空中消耗戦に挑むウクライナ、戦闘機提供は勝利の助けにはならない
※アイキャッチ画像の出典:Military Media Center
はて?
攻める側が焦土作戦?
普通逆じゃね?と思う俺はおかしいのか?
自分もそう思ったけど、管理人さんの説明で得心がいった。
スイスや独ソ戦時の物とは違う、攻撃的な焦土戦もあるんだね。
焦土作戦で撤退するにしても敵がやったことにすれば都合がいいでしょう
それな。
古典的な「焦土戦術」以外に使う人間が増えて本来の意味と逆転する現象。
防御側が実行することが多いけど、南北戦争の北軍、ボーア戦争の英軍、ネイティブアメリカンに対する米軍等攻撃側が相手の防御拠点の排除や補給能力の撃滅を目的に行うこともあるので、拘らなくても良いのでは。
まず工場などはほとんど制圧し、鉄道線路東側の競技場、バフムト駅東口の駅前広場、駅前商店街、貨物駅などもほとんど制圧、コルサンスキー通り周辺の住宅街もだいたい制圧、クロモべ西側の道路は砲撃、爆撃で戦車、装甲車、自動車の残骸が散乱し、まさに死屍累々の状況です。
残る拠点はチャイコフスキー通りの東側にあるバフムト高専、そしてバフムト駅西口のバフムトが丘団地のアパート、それでウクライナ軍には地対空誘導弾の残りがない、Su-25やSu-34、Ka-52戦闘ヘリ、Mi-28などがよってたかって爆撃にきそう、となれば、一体どうすればいいのでしょうか?ロシア軍には燃料気化爆弾などもあります。
できることといえば、トヨタのランドクルーザーの荷台に機関砲を搭載して、ジェット戦闘機や、戦闘ヘリと撃ちあうとか、機関銃に三脚と対空照準器をつけて、目で狙って撃つ、くらいのことしか考えつきませんが、高い高度を飛行されると撃っても弾がとどかず、装甲の厚いSu-25は機関銃の銃弾では撃墜は難しそうです。
となるとやはり最後の希望は
「MiG-29」
でしょうか。MiG-29の操縦経験のある凄腕パイロットを東欧諸国から集めて、特別編成の飛行隊を編成するとかしないとダメかもしれません。昔、清水としみつという人が描いた
「紅(くれない)」
というマンガの中にそういう部隊がありました。
「紅」なら自分も知っていますが、主人公は途中でMiG-29を撃ち落とされてミラージュ5に乗っていた時期が有りましたね
それはともかく、現状ロシア軍はバフムートでの迂回・包囲作戦が取れないので正面からの砲爆撃に切り替えた感が有りますが、個人的な考えとしてはロシア軍がやり過ぎるとそろそろNATO空軍の介入が有ると思っています
要は今更諸外国から凄腕パイロットを集めて「ウクライナ版フライングタイガース」を作る暇が無いからです
後、東欧諸国って冷戦後は経済難の国が多かったから戦闘機パイロットの年間飛行時間なんて100時間前後と言う国がザラでした(米軍だと年200時間程度、NATO諸国だと年150時間前後)から、凄腕戦闘機パイロットなんてまず居ませんよ
ですので、仮にウクライナ軍の防空態勢が本当に危機的状況ならNATO空軍を直接介入させた方が手っ取り早いです
エスカレーション?
状況をエスカレートさせているのはロシア側ですから、むしろNATO諸国はロシアに対してここで思い切った御灸を据えるべきでしょう(どうせ、今までの経緯から考えてロシアは核を使いませんよ)
ミリ猫さんお帰りなさい。
ウクライナはバフムトをうまくコントロールしているようですのでミリ猫さんも余り気をもまずにお過ごし下さい。
ありがとうございます
冬眠中も時々書き込んでいましたが先日から本格的に目覚めました
上にも書きましたが、バフムート方面のウクライナ軍は包囲されない様に状況をコントロールしている為、ロシア軍は正面攻撃に固執するしか無い状況に陥っている事は承知しています
ウクライナ軍の防空態勢も直ちに危機的な状況になるとは思っていませんが、今後SAMの残弾が枯渇すれば反攻作戦への影響も懸念されますからNATOも黙ってはいないでしょう
まあ本当に地対空誘導弾の残りがなくなってるかは保証がないわけですが、ロシア空軍としてはそろそろイチかバチか出撃しないことには存在意義が問われるでしょうからねえ。怒れるプーチン総統から、役にたたぬ戦闘機、爆撃機、戦闘ヘリなど廃棄しろと言われるかもしれない。
「精強ロシア空軍は何処にありや。全世界は知らんと欲す」
例えが上手いですね
そしてロシア空軍はボーデンプラッテ作戦張りの無理な攻勢に出てルフトバッフェみたいに壊滅するんでしょうね
今回の流出がロシア空軍を誘い出すための罠だったら面白いんだけど。
ロシアは兵器の蓄積を認識してますよ
目的はそれ以外ですね
現状ではバフムトの民間人の大半は地下に潜っていると思われますので、迎撃のためにミサイルを消耗する意義は薄れているのでしょうね。多少空爆を食らって建物を失っても、人的損失はそこまで大きくないと判断して、空爆を受け入れてる節はあると思います。
両国の空軍力の差は圧倒的であり、ロシア軍に航空優勢を握らせないソ連式の重層的防空システムがウクライナ軍の健闘を支えてきた。それが枯渇すればロシアによる前線と後方での爆撃が加速度的に効果を上げてウクライナ軍の組織的抵抗力がマヒしかねない。
今後供与が予定されているHAWKは改良を重ねたとはいえ60年代開発の旧式システムで、Bukと組み合わせて運用予定のシースパローは射程に不安がある。パトリオットは優秀だがミサイルが高価で継続した支援が可能な仕組みを作る必要がある。
流失したとされる機密資料の中ではイスラエルの防空システムでの支援を期待する内容があったが、現時点での実現可能性は不透明だ。
焦土作戦かどうか兎も角、ロシアは以前から砲兵を多用して町を耕していたわけだし今更そんな声明出すのも変な話
まぁ対空兵器が足りないからもっとよこせ!!ていう遠回しな何時もの要求だろうな・・・
空爆による被害増加はデータが出てますね。
相当ジリ貧。
早い反抗が必要そう。
三光作戦って丁度良い呼び方があるじゃん
三光作戦って日本軍がとった作戦ってことになっているのになぜ中国語なんだろう?日本語なら三尽作戦あたりだろうに。光に尽すって意味は無いよね。
光にはその字形からわかるように「3方向」の意味があるんですよ。日本語でも訓読みは「みつ」ですね。
三光の三は、「ここでつかう光は、ひかり、ではなく3方向の意味においてですよ」ということを明らかにするために付いてるわけです。
それじゃただの「三作戦」じゃん…
ツッコミで笑ってしまった
凄い不謹慎ではあるが、防空網の無力化の方法があまりにもロシア的で、且つ邪悪すぎて笑ってしまった。
飽和攻撃と言われたらそんな気もするが、何かイメージと違うと言うか……
Oryxで損失の方を見ているとウクライナ側のS-300の発射機が想像よりも撃破されてたのでランチャー自体も追加が必要じゃないかと思うが、対空システムが東側の国で西側思想の国ってそんな無いので防空システムを戦車と並行で足す必要ありそう。
親露派の方々にはこの邪悪なやり口をどう思ってるのか聞いてみたい。
昔からロシアといえば邪悪なやり方ですから、今更じゃないんでしょうか?
ロシア側はウクライナ軍が撤退時に重要な建物を爆破していくと主張してるね。
やっぱウクライナ軍も撤退するにしても使える状態では渡したくないのかな?
ブチャのような開戦初期の混乱こそありましたが、焦土作戦、いくら地形が変わるほどの砲撃、空爆が実行されたとしても戦争に全く無関係の市民が数多く巻き込まれた、というニュースは東側でも西側でも聞こえてきません。イエメン内戦のほうがよっぽど酷い人道危機が発生していると思われます。そういった意味では今回の戦争は文明的、理性的なプロ同士の戦争ですね。
ブチャの市民が巻き込まれたのは、開戦直後、ロシアの奇襲によって民間人が避難する間もなく占領されたからでしょう。
その後はロシア軍の侵攻が鈍化したため、民間人に避難する時間的余裕があったというだけの話だと思います。
それでもウクライナの子供が大量にロシアへ拉致されている、占領地では拷問の後が発見されているなど、人道危機はなくなっているわけではありませんよ。
自国の兵士すらも大切にしないのに
言わんや敵国の兵士や住民の命など露ほどにも思ってないんじゃない
ハルキウなどでも拷問部屋見つかってるし普通に巻き込まれてませんか?
それに都市部へのミサイル攻撃や冬期のインフラ攻撃など、ロシア軍は民間人を巻き込む気満々だと思うのですが
>>今回の戦争は文明的、理性的なプロ同士の戦争
(別のスレッドにも投稿させていただきましたが、埋もれてしまったので再度投稿いたします)
『4万5千の屍体袋』
リンク
3日で終わるはずの侵攻作戦前に、ロシア軍の規模と釣り合わない数の屍体袋が購入された。
それは死んだロシア兵を入れるためではなく、占領地域の住民を虐殺して反抗心を削ぐことが目的であった。
屍体を移動させてしまうか、国境近くに持ち込んだ焼却炉で処分してしまえば
世界の目からこの犯罪を隠せるとプーチンは考えていた。
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この記事を書いたのはウクライナの著名作家Max Kidruk氏で、英訳もわかりやすく、
DeepLなどの機械翻訳で十分読める日本語になります。
これを読むとロシアの倫理は中世止まり、戦術は先の大戦止まりのままということがよくわかります。
ロシア的にはこれが理性的でプロフェッショナルなのだと言われれば、
返す言葉はありませんが。
純粋に虐殺するなら4万5千では少ないし開戦時19万のロシア軍と30万とかでしたか?のウクライナ軍の被害合わせたら死者そんなもんでは
>>被害合わせたら死者そんなもんでは
通常の戦闘だったら確かにそのとおりかもしれませんが、
侵攻前、ロシア軍はパンと花束での歓迎を予想していました。
ロシア軍の残置物の中からパレード用のコスチュームが出てきたり、
上級将校が戦勝パーティのためにキーウのレストランに予約を入れていたり。
有名歌手のコンサート、そしてパレードの予定表。
どこをどう取っても本格的な戦闘は予想していなかったように見えます。
上で紹介した記事の触りの部分です:
3月初め、あるジャーナリストが、2021年9月、ロシアは戦時中の死体の緊急大量埋葬に関する国家基準を策定し、2022年2月1日に発効させたと報じた。
今思えば、もっと早く気づかなかったのが不思議なくらいだ。マリウポルやブチャで見たことを思えば、あの袋はすべて私たちのためのものだったのだ、と陳腐に思える。キエフは3日間で征服した。クレシャティクでのパレード、ガスマノフのコンサート、そして虐殺。政治家や公務員、ボランティアや退役軍人、ジャーナリストやブロガーが処刑され、おそらく、医師、教師、科学者も。45,000個の遺体袋は、活動家だけでは多すぎると思われるかもしれない。
(DeepLから、読みやすさのため一部修正)
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ウクライナ政府関係者だけでは袋が余るから、、一般市民も対象にしていたという憶測がなされています。
ロシアにとって、一番の痛手は衛星による観測で、
先の大戦のような証拠の隠蔽ができないことを理解していなかったか、
たとえ理解していてもプーチンに意見する部下がいなかったことだと思います。
以前の投稿にも書いたのですが、ブチャの虐殺が私の住んでいるフランスも含め欧州の対露制作の一大転換点でした。
インターネット空間のみならず、(一部ぼかしがあるとはいえ)マスメディアで大きく取り上げられたことで、
市民の反発も下火になりウクライナに対する兵器供与が加速しました。
ちなみにプーチンにパンと花束の歓迎を吹き込んだFSBの責任者は
キーウ侵攻失敗後、(スターリンが開設したことで悪名高い)刑務所にブチ込まれました。
リンク
そこにはいまでも拷問施設があるそうです(稼働中かどうかは知りません)。
Wikiには上記情報がデマだとされているエントリもありました。
事実がすべて判明するのは事態が収まってからになるのでしょうね。