ロシアの脅威を実感したポーランドではGDP比に占める国防予算の割合を3.0%→5.0%に引き上げると示唆、他の欧州諸国も国防予算増額の方針を打ち出しており、もはやGDP比2.0%という目標は過去のものになりつつある。
参考:Latvia to expand conscription requirements to include women, diaspora
参考:Latvia president calls for defence spending boost, compulsory military service for all
ロシアの脅威を直接受ける国は2.5%以上、ロシアの脅威を認識する国は2.0%以上、2.0%未満の国も国防予算の増額を前倒し
英国ではジョンソン首相(辞任を発表済み)が「10年後にまでに国防予算を2.0%から2.5%に増額する」と発表したが、労働党だけでなく身内の保守党からも「0.5%の増額なんて少なすぎるし遅すぎる、この臆病までの増額幅は地政学的な状況の変化や脅威の規模を正確に理解していない証拠だ」を批判され、後任候補に立候補していたシャップス運輸相やハント元保健相は「首相に選出されれば国防予算を3.0%に引き上げる」と約束していたほどだ。

出典:NATO
ただシャップス運輸相は支持が思うように集まらず立候補を断念、ハント元保健相も党内の1回目の投票でスナク前財務相やモーダント通商政策担当相に大差をつけられたため首相に選出される可能性はないが、最も首相に近いスナク前財務相は減税を支持しながらも「ジョンソン首相が発表した国防予算2.5%への引き上げを堅持する。NATOの目標(2.0%)は上限ではなく下限であり、国防予算へのアプローチは脅威ベースで考える」と述べているため2.5%以上の増額もあり得る。
ドイツは2023年度の国防予算として約501億ユーロを要求、2022年度と比較すると0.6%減少したがドイツ軍特別基金(1,000億ユーロ)の支出を合わせるとNATOが要求する2.0%をクリアでき、昨年2.0%をクリアしたフランスは2023年度の国防予算として440億ユーロ(前年比30億ユーロ増)を要求したものの「インフレ率の上昇とロシアと戦うウクライナを支えるためには不十分で時代遅れだ」と議員の一部が批判しており、今後の議論の過程でさらなる国防予算の増額が行われるかもしれない。

出典:KancelariaSejmu/RafałZambrzycki CC BY 2.0
ロシアの脅威を最も警戒しているポーランドでは2023年の国防予算を2.4%から3.0%(222億ドル)に引き上げることが法律で義務付けられているが、与党PiSのカチンスキ党首は「最終的に5.0%(大凡370億ドル前後)まで引き上げたい」と述べて注目を集めている。
ロシアと国境を接するエストニアでは2023年~2026年までに支出する国防予算を30.9億ユーロから38.2億ユーロに増額(GDP比2.5%相当)、ラトビアも国防予算を2.5%まで引き上げることが決定したがレヴィッツ大統領は国防予算のさらなる増額(3.0%水準)を示唆、カリーニングラードと国境を接するリトアニアは2022年の国防予算を修正して2.15%から2.5%に増額、来年度の国防予算には3.0%を要求しており、2.0%未満の国も国防予算を引き上げてNATOの目標達成を前倒しする動きが多い。
ただスペインとイタリアはNATOの目標達成するため政府が国防予算の増額を要求しているものの反対勢力の抵抗に直面しており、2.0%未満からの脱却でさえ難しい状況が続いている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. William Chockey
因みに世界的な国防予算の増加傾向とウクライナ侵攻の影響で、米国製のHIMARSには計557輌(ポーランド×520輌、エストニア×6輌、オーストラリア×20輌、台湾×11輌)もの注文が殺到、ラトビアとリトアニアが共同調達・運用を検討中、オランダ、ハンガリー、スウェーデンも調達に動いており、米国もウクライナ提供分を埋め戻すためHIMARSを調達する可能性が高く、もはやロッキード・マーティンの製造能力を奪い合う形に発展している。
しかも台湾は調達予定だったM109A6について「生産上の問題(米陸軍がM109A7の調達数を引き上げたのが影響していると噂されている=自国分の調達を優先したという意味)」を理由に引き渡し開始を2026年に変更すると米国に通知され、M109A6の調達をHIMARSに切り替えることを検討しているらしい。
恐らく名前の挙がっていない潜在的な検討国も合わせるとロッキード・マーティンの製造能力には当面空きが出来ないだろう。

出典:Saeima/CC BY-SA 2.0
追記:ラトビアのレヴィッツ大統領は「安全保障は我々にとって最優先課題だ。もっと予備役を増やすため男性のみを対象にした徴兵を女性や海外に住むラトビア市民まで適用範囲を広げる必要がある」と言及して注目を集めている。
関連記事:軍隊は予算の無駄使いではない、ポーランドは国防予算をGDP比5.0%まで増額か
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関連記事:フランス政府は440億ユーロの国防予算を要求、空母2隻体制にも言及
※アイキャッチ画像の出典:NATO
そこでニュープレイヤーの韓国の出番、ってワケ!
この機に乗じて日本も海外兵器市場に進出できりゃ良いんだけど人気の陸兵器はあんまり出せる物も製造余力も無いんよねぇ
水上艦は駆逐艦等デカすぎるのが多いしなんとか哨戒艦を輸出出来れば良いんだけど
韓国も長距離ロケット砲はMLRSを使っていますよ
K-136は散布核が広く数を用いた面制圧用で射程もMLRSに劣りますし、K9も射程(GGAMを使えば伸びるものの、そればかりを使うのなら連射能力などMLRSに多面的に劣る)などを考慮するとMLRSやHIMARSも代わりにはなりえません
一応天武っていう国産のHIMARSを配備中ですよ。
現状色々不具合あるみたいだけどK-9、K-2、K21の様に海外に売る頃には解決してくるでしょう。
フィリピンで就役した『くにさき型(くにかみ型)巡視船』が稿矢となってくれれば良いんですがね。このクラスはライバル多すぎて前途多難かも
日本はMLRSの自走発射機車両をライセンス生産しているので、交渉次第では増産して輸出できるかも?
日本でMLRSの生産が終了して18年が経つし、生産設備は残っていないのでは?
固定資産税も馬鹿にならないだろうし
20年近く経って遊休資産状態になっている施設だと、ほぼ土地代ぐらいしかのこってなさそう
韓国は旧東側諸国の西側装備入れ替え需要のチャンスをキャッチ出来るかもしれませんね
ウクライナ支援で旧東側諸国は東側規格の弾薬や武器・兵器を放出しているので西側装備を導入しようしていますから
ヨーロッパやアメリカだけで全ての需要に応えられるとは思えませんから韓国のチャンスは大きいと思います。
というか韓国企業も製造能力はそこまで余裕なかったかと
陸でよく名前が上がるやつだと
K9は対抗馬不在で注文積み上がってるし、
K2は国内向けがgdgdなって各企業の製造ライン止まったりしてるのと、開発チームがすでに解散離散してる
K21は韓国向け納入終わったんだっけか、そこ次第
海は前前・前政権からの拡張方針で色々発注されてて、運用造船ドックは埋まってたかと
空はTA-50だけなら余裕有ったような記憶
勝っても負けてもウクライナ戦争で燃え尽きるであろうロシア軍なのに、戦後はロシア絶対許さんスーパーNATO軍と対峙するのか
ロシアは今回の件で、相対的な軍事バランスが崩れたら本当に襲って来る価値観レベルで異質な脅威と見做されましたからね。
経済制裁解除の件は世界的な防衛費増額の流れが落ち着いてから考えよう
あまり来てほしくない類のバブル景気が発生してしまった訳だが、ウクライナ侵攻以後の流れは日本にとっては改憲やレッドパージのチャンス到来だな。
自衛隊を国防軍に名を改めるなんてバカな議論で終わらせずに、核シェアリングや沖縄の米軍を自衛隊に置き換えるなどの議論が進んで『自国を自国民が守る国』への転換機運が高まってほしい。なんたって世界的ですもんね。乗るしかないこのビッグウェーブに(画像略)
都合が悪いと「ドイツを見習えバスに乗り遅れるな」って出ないんですね。次は「ハンガリーを見習え」でしょうか?
私が欧州出羽守になりましょう
「ポーランドに倣って国防費をGDP比5%に!スウェフィンに倣ってNATO加入!ウクライナが要求する様に敵地を攻撃可能な弾道ミサイル導入!そして、ウクライナ支援に砲と弾を送りまくる…!!」
あっという間に要求される国防費が上がって12兆円程度でワクワクしてたのが懐かしいレベル
25兆円かぁ…ニヤニヤ
1億円くらいで何でも無い土地を1平方メートルくらい買い取ってウチも欧州北大西洋地域ですと言い張れないかなw
スイスを見習って、国民投票で戦闘機買え、じゃないですかね。
改憲国民投票のヤブヘビになるから、ないか。
🫴「他所は他所!ウチはウチ!!」
福祉や教育を削るな勢も頑張れ
現時点まで各国が打ち出した軍事費増が現実化すれば、ランキングは大体こういう感じになるでしょう
まあ激動の時代で、近未来の事でも全ては流動性の霧の中だとは思いますが・・
2020 2027
アメリカ アメリカ
中国 中国
インド 日本
ロシア ドイツ
イギリス → インド
サウジ イギリス
ドイツ サウジ
フランス フランス
日本 ロシア
韓国 韓国
イタリア 豪州
豪州 イタリア
いざと言う時は連携を望めるNATO加盟国ですらこれなんで、中露が近くにある我が国はいったいGDP比何%にすりゃあいいんですかね?
給料上げたり手当てを見直したり福利厚生を充実させたり、アメリカの様に学費やら医療費やらなんやらを免除とかしても自衛隊の人手不足がどの程度解消されるか
財政についてはまぁ減税と財政出動で景気が良くなると経団連ですらそう主張してるので実行出来れば問題はないのでしょうが(力関係で言えば経団連〉財務省なので)
減税だけは核が落ちても無理やろ
たとえ経団連であろうと絶対財務省にヤられるわ
経団連より財務省の方が多分相当強い組織ですよ
まず、経団連は一枚岩の組織じゃないですからね。それに比べ、財務省は一糸乱れぬ軍隊組織
だから、各個で懐柔されるだけと思います
各業界や、各企業ごとに利害なんて全く違いますからね
岸田首相について言えば、減税なんか全くする気の無い人でしょう。財務省閥の家系の人ですから。
せめて願う事は「減税しろとは言わんが、増税はするなよ」です
このラインだと可能性はあると思います
F-35といいHIMARSといいLMは嬉しい悲鳴続きですな…
こつこつと開発と営業を続けてきた甲斐あってのこと
この2つ以外も注文殺到して注文残高積み上がりすぎて、
どこも最長5年以内とかを期待してるだろうから、逆に納期が少しでも短い対抗馬にもっていかれたり
そこから対抗馬を育ててしまう可能性もけっこうあるかと
かと言って、一時的な需要集中に合わせて最終製造ラインの大増築とか無茶ですし
(今後の事を考えて部品レベルでは増産体制してるみたいですが)
HIMARSのポーランド発注分が圧倒的すぎる。さすが平地だらけの陸軍国
ここ最近の安倍前首相の暗殺からの世論や国民感情を見ていると日本はノイジーマイノリティな左翼とサイレントマジョリティな右翼or中道右派の構図に見えます。
日本の防衛費増額や改憲をスムーズに行うためには沈黙してる多数の保守側が声を上げて盛り上げていくことが必要なのではないかと思いました。
この戦争がロシア勝利で終わった場合、戦争ムードが払拭されず、間違いなく日本でも憲法改正が行われ中国との軍拡競争に際限なく金を吸い取られることになる。NATOとウクライナが早期にロシアに対して全面的に勝利し軍拡の流れに歯止めをかけてくれることを望む、そのために日本は役割を果たすべきだ。今なら少ない投資で済むのだから