米陸軍の重量級UGV=RCV-Heavyに関するコンセプト資料が登場、120mm滑腔砲、650hpの次世代エンジン、ハイブリッド方式の駆動装置、ハードキル方式のAPSを備えたRCV-HのユニットコストはM1A2/SEPv3の1/6を想定している。
AbramsXは米ジェネラル・ダイナミクスの提案でしかないが、GVSCの提案は米陸軍内部のコンセプトや要件を反映している可能性がある
米陸軍はM1エイブラムス、M2ブラッドレー、M113の後継車輌、歩兵旅団戦闘団向けの火力支援車輌、地上無人車輌を対象にしたプログラム「Next Generation Combat Vehicle=NGCV」を進めており、M113の後継として開発したAMPV(2,900輌前後)、歩兵旅団戦闘団向けの火力支援車輌として開発したMPF(500輌前後)の本格調達を開始、M2ブラッドレーの後継開発も本格化して今年中にプロトタイプ製造に進む企業の絞り込み(5社→3社)を行う予定だ。

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NGCVに含まれるM1エイブラムスの後継構想は度々登場するものの具体的な計画はなく、AbramsXを昨年公開した米ジェネラル・ダイナミクスは「機動性と輸送性を改善するための軽量化(72トン→60トン)、ハイブリッド(従来式+電気式)パワーパックの採用でM1A2と同じ作戦範囲を半分の燃料で実現する」と主張したが、これは陸軍の正式なプログラムではなく「自社資金による次世代主力戦車のデモンストレーターだ」と付け加えている。
米陸軍は後継戦車に対する要求要求が固まっていないためAbramsXをM1A2/SEPv4(今年1月に納品)の後継として採用する可能性は低くM1エイブラムスの後継戦車開発が本格化するのは「2020年代後半になる」というのが大半の見方だ。

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逆にNGCVに含まれる「地上無人車輌」の開発=Robotic Combat Vehicle(RCV)と呼ばれるプログラムは正式に動いており、開発は10トン以下のRCV-Light、20トン以下のRCV-Medium、30トン以下のRCV-Heavyの3つに分かれている。
RCV-L(全長5.68m×全幅2.23m×高さ2.38m以下)は回転翼機での輸送を想定、重量やサイズの関係で致死性や生存性に制限があるため「消耗型システム=戦闘での損耗は許容される」と定義、RCV-M(5.84m×2.71m×2.38m以下)はC-130での輸送を想定、重量やサイズの関係でRCV-Lよりも耐久性が高い「RCV-Mは戦場での生存性がRCV-Lより高い」と定義、RCV-H(8.89m×3.65m×3.6m以下)はC-17で2輌輸送を想定、既存の敵車輌を全て打ち負かすことができる直接射撃兵器が搭載され「有人車輌並な戦場での生存性が必要」と定義されているのが特徴だ。

出典:Photo by Kevin C Mcdevitt RCV-Mのプロトタイプ
2020年にRCV-LとRCV-Mのプロトタイプ取得が始まり、2022年6月から8月にかけてフォートフッドでテストした米陸軍は「2023年にRCV-Lの開発(EMDフェーズ)に進むかどうかを決定する」「RCV-Mの開発は当面延期する」と述べていたが、今年3月にRCV-Lのプロトタイプ提案依頼書(RPP)を正式に発行、これにOshkoshとBAEが関心を示しているらしい。
RCV-Lの開発(2024年8月までに9輌のプロトタイプを納品)は競争試作ではなく「要求要件を満たした企業と最大211輌の製造契約(6億ドル)を締結する可能性がある」と述べているため、米陸軍に戦闘支援タイプのUGVが正式配備されるのは「ほぼ確実」な状況で、このクラスのUGVはロシア軍と戦うウクライナ軍にも提供(THeMIS×14輌以上/下記動画のUGV)されている。
ここからが今回の本題なのだが、米陸軍の戦闘車両を研究開発するGround Vehicle Systems Center=GVSCはRCV-Hのコンセプト案(Robotic Counter Armor/ACT3205)を提示しており、軽量バージョンの120mm滑腔砲「XM360(35発/自動装填装置付)」を搭載することでM1A2と同等の致死性を確保、650hpの次世代エンジン、ハイブリッド方式の駆動装置、ハードキル方式のAPSを備えて「ユニットコストはSEPv3の1/6になる」と主張して注目を集めている。
GVSCが提案するRCV-H(27トン)は随伴するストライカーから制御され、敵のAPS防御を突破するため複数のRCV-Hと無人機による協調射撃を行うことを想定しているのが興味深い。
The ACT3205 RCV-H unmanned tank killer concept proposed by the US Army GVSC. ACT3205 features an automated 120mm cannon, a 650hp hybrid electric drive, hard-kill APS, and costs only one-sixth of M1A2 SEPv3 per unit. A C-17 aircraft can carry two ACT3205s and a control vehicle. pic.twitter.com/UJt843EGcz
— Ronkainen (@ronkainen7k15) April 7, 2023
つまりM1A2/SEPv3を1輌取得するコストでRCV-Hを6輌を取得でき、6輌のM1A2を運用するためには24人の兵士が必要だが、6輌のRCV-Hを運用するに必要なオペレーターの数は6人(+随伴するストライカーの運用要員)に過ぎず、大規模な戦争で要求される機甲旅団戦闘団(ABCT)の量的な不足をRCV-Hでカバーできるという意味だ。
AbramsXは米ジェネラル・ダイナミクスの提案でしかないが、GVSCの提案は米陸軍内部のコンセプトや要件を反映している可能性があるので、決定的ではないにしてもRCV-Hの方向性が垣間見える。
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※アイキャッチ画像の出典:Ronkainen
これショートトンなのかな?もしそうならメトリックトン換算でおよそ24.5トンってところみたいだけど。
>6輌のM1A2を運用するためには24人の兵士が必要だが、6輌のRCV-Hを運用するに必要なオペレーターの数は6人
1人で一両(移動と射撃)を操作するのか。忙しいな。
ドローンや他の機体との情報共有による戦場認識が前提ですかね?
射撃管制なども半自動化されたりしていきそうで、まるでテレビゲームですな
ゲームみたいな操作方法を取り入れれば、むしろ適正者は多い気がする
ストライカーの後ろに6個のUSBポートと6席のゲーミングチェアが並ぶのか‥
AIによるサポートが標準で付いてきて、「やられても予備の車両があればまた戦えるよ、すごいね!」状態の様なゲームの様な現実が‥これだとUGVステーションが必要になってきて、陸上軍艦やら、地下要塞やら、‥妄想が暴走するじゃないですか、で中国の戦車開発案の1つである2両で1両案が出て来て、通常の弾薬、燃料補給とかは無人のサポート車両が担うのと、対空とC-RAMとかはそれ用のサポート車両が担うようになって、豆タン全盛期へと進むと、その時代の格言は「やられてもどうという事は無い」になるのですね。個人的には10式の後継は1人乗りの戦車になって補給、整備とかのサポートは専用無人車両が行うとかの方向に進めて人員配置を変えていくのかなと思っていたので、このやり方も含めて検討していけば良いとおもいますよ。
参考?UGVステーションのヒント
ウクライナのICBM博物館(地下要塞)夫婦で23分36秒ほどの旅行風です。
リンク
アイキャッチ画像の記述によると
2 UGV drivers、2 Gunners、& 2 TCs w/shared SA
となってますので、
2名で6輌の走行を管制、2名で6輌の射撃を管制、2名の戦車指揮官/SA(?)兼務で6輌を指揮、ですね。
運用イメージ図を見ると、2輌のストライカー指揮車がそれぞれ3輌のRCV-Hを指揮管制するようです。
具体的にどうやるのかは分かりませんが、AI補佐や半以上の自律化は必須でしょう。
必然的に空の無人機材より構造・エンジン・モーターが重いだろうから
個人的には消耗を前提とした攻撃用陸上無人機材が作れるのか懐疑的ではある
UGVタイプはストライカーからの操作ってあるけど、装軌車両の統制を装輪車両でやるって少し不整地で追従できるのか気になる
先のことはわからないけれども。
目先のことならば、無人より有人(乗員1人)はどうかと思います。
もう退役してしまったけれど、Strv103C型は一人で動かせたと覚えています。
故障のことを考えると、1人はどうかと思います。
故障の起こる頻度は、有人も無人も大して変わらないと思います。キカイですから。
無人なら、故障の段階で戦線離脱で、戦力は急速に減るものと思いますが、
有人ならば、現地修理・戦線復帰がありえると思いますので。
無人ならAjaxみたいになっても大丈夫だね(大丈夫じゃない)
ソフトウェアの開発コストが凄まじいことになりそうですし、加えて故障に備えて予備が大量に必要になりそうなので、1/6のコストは眉唾な気がしますね。
達成困難な高度な目標をぶち上げて大失敗を繰り返しているので、あまり難しいことをしようとしないほうが良い気がします。
高度にAI制御されてて自動で戦場を走り回って敵を発見したら射撃準備までやって人間はスイッチ押すだけなシステムなら失敗しそうだけど
敵情報共有は有人車両でも必要だろうし、それを除くとある程度のアシストはあれどもデカイラジコンを一人で操縦という感じで結構シンプルなんじゃないかな
後者ならば不便はありつつもなんとかものなりそうですけど、FCSやIFVの開発で目標を高くしすぎて毎回失敗しているのを見るに、前者にチャレンジして爆散する可能性も捨てきれないなと。
あーこれもしやFCS計画の再現なのでは…
ストライカーMGSはダメになったらしいけど、大口径砲の必要性は変わらないんすね
無人機ならではのキモイ超機動してほしい
そしたら有人機とどっちが強いかな
中止になったFCSコンセプトのブラッシュアップって感じがする。
主砲仰角50°って市街戦踏まえて高所の敵狙うのかと思ったけどネットワークで見通し線外の敵も見つけられるから戦車砲をより多目的に使うのを考えている感じだよね。ここらへんウクライナ戦争の教訓とか入ってそうだがM119 105mm榴弾砲や81mm以上の迫撃砲もカバーするような砲弾の使用もあり得そうな気はする。
ポロっと載ってるけど米陸APC用の次期汎用RWSが20mmバルカンの弾使うのやはりという感じ。本邦もHMGでもAGLでもなく20mmを志向してたが対装甲ではなく対UAVでなのだろう。
そして直射曲射両用の無人戦車だけど、某装輪装甲軽量戦闘車のそれもこれにほぼ同じだったはず。これが装軌で120mmなのはAPS普及後はKEの確実性が今より重要って事なんだろうがその頃にはアンチタンクのミサイルもまた確実性が上がってるはず。
MBTを数で押す無人戦車の120mmKEで同時着弾を狙う、つまり半自立戦闘能力を有するUGVを多用する位ならローサットの復活でも良いのではないか?
そもそもLOSATが何故不採用になったかって話をすっ飛ばしてLOSAT復活とかしても意味ないのでは?それに同じ中止になったとは言えCKEMか現代の技術でより高性能化した高速ミサイルの採用ならまだアリだと思うけど。
管理人さんが書いた「軽量バージョンの120mm滑腔砲「XM360(35発/自動装填装置付)」を搭載することでM1A2と同等の致死性を確保」ってのを無視しているか曲解していると思う。実際に重装甲MBTを相手にするのは数ある戦闘の一つでしかなく、そこに極フリした武装にどれ位の価値があるだろうか。戦車砲を積む車両の砲弾が徹甲弾だけではないのは皆が知っている事だし、普通なら任務に合わせて複数の砲弾を載せる。
弾頭が炸薬もない金属の塊で硬化目標だけに特化した数が少ないミサイルを運用するUGVとかかなり任務の幅が狭まって使いづらい。
同じ口径120mmでも威力は同じではないだろね
反動抑えるのには40トン50トン必要だから、発射薬を減らすしかない
初速は大分落ちて貫徹力は下がるだろう
成形炸薬は関係ないけど
その反動抑制はリスクが低い単純な物を作った時の話だから、別種の新型砲弾が必要な選択するかな。元が軽量のXM1202 MCS用のXM360を搭載するからエイブラムスと同じ弾薬を使えるのがウリでしょ、軽量でコンパクトだから徹甲弾捨ててるって書いている人いたけど、エイブラムスXはそのXM360積んだデモンストレーターの筈だし全ての弾薬が使え性能もそこまで落ちないと考えても良いはず、一番効果のあるマズルブレーキとかを削った物をエイブラムスに搭載って話もあったけど、削ってもない。
反動抑制だって車両本体重量と強度に依存する単純な物から、ロングリコイル・デュアルリコイル等の各種リコイル機構、マズルブレーキ、砲自体の重量を重くするとかアクティブサスと様々な物がある。極端な技術が嫌なら発射速度を下げるか走行射撃・横向き射撃の禁止とかの運用制限でも良いわけだし。
運用する側がデメリットを妥協出来るか技術で克服しろというなら砲弾の性能を落とす必要は無いと思う、
利点は明らか
逆に欠点や限界が気になる