ポーランドがNATO加盟国として初めてトルコ製UAV「バイラクタルTB2」導入契約を締結したが、今度はNATO加盟国のラトビアがTB2を導入するかもしれないと報じられている。
参考:Is Latvia the Next NATO Nation to Order Bayraktar TB2 Drones?
20世紀の戦争を変えたカラシニコフのAK-47を彷彿とさせるとまで評価されるトルコのバイラクタルTB2
ポーランドが武装可能な無人航空機「バイラクタルTB2」を24機購入する契約(推定2.6億ドル)をトルコと締結したことで多くの海外メディアが「トルコ製UAVの実力をNATO加盟国が認めた」と報道、米メディアのウォール・ストリート・ジャーナル紙も最近トルコ製UAVに関する特集記事を掲載して「バイラクタルTB2は20世紀の戦争を変えたカラシニコフのAK-47を彷彿とさせる、TB2のカバーできる監視・交戦範囲はMQ-9の1/5に過ぎないが圧倒的に安価で実用性も信頼性も高い」と称賛したが、再び新たなNATO加盟国がTB2の購入国に浮上して注目を集めている。
参考:Armed Low-Cost Drones, Made by Turkey, Reshape Battlefields and Geopolitics
ポーランドに続きTB2購入国に浮上したのはバルト三国を構成するNATO加盟国のラトビアで同国のアルティス・パブリクス国防相(副首相を兼任)は「ラトビアの戦闘力を大幅に向上させることができるドローンに注目しており防衛分野や軍事産業における協力と発展について協議するためトルコのバイカル社(TB2開発企業)を訪問する」と語り、今月7日に同社を実際に訪問して研究・開発施設や製造拠点を見学した。
The Latvian Minister of Defence Artis Pabriks pays a visit to Baykar Defence https://t.co/K5vu5ympzt
— Artis Pabriks (@Pabriks) June 7, 2021
パブリクス国防相は訪問後に「トルコの産業界は研究・開発分野でトップクラスの実力を備えており我々は同盟国としてそのことに注目している」と声明を発表したため、幾つかの海外メディアがポーランドに続きラトビアがTB2を購入するのではないかと報じて注目を集めている。
特にトルコのヴァランク産業技術大臣は「多くの国からトルコ製UAVを販売して欲しいという要請が届いており、近いうちに欧州の空を飛んでいるバイラクタルTB2とアンカを目にすることになる」を述べているのでポーランド以外のNATO加盟国もTB2を含むトルコ製UAVの導入に動いている可能性が高くラトビアはそのうちの1ヶ国に過ぎないのだろう。

出典:baykarsavunma
勿論、TB2は無敵でもなく万能な存在でもないがMQ-9と比較して圧倒的な低価格と積み上げてきた実戦での戦果と評価が現在の人気を形成しており、隣国と陸続きで国境を接する国の間で当分の間は人気と関心を集め続けだろう。
もしロシアやベラルーシと国境を接するNATO加盟国がTB2を導入するとロシア軍は面倒な兵器システムと対峙することになるので頭の痛い問題かもしれないが、米国のDefenseNewsは「無人航空機対策(C-UAS)においてロシアの取り組みは実戦での経験に基づき継続的な改善が常に行なわれているので世界で最も効果的で洗練されている」と報じている。
参考:Russia’s real-world experience is driving counter-drone innovations
ロシアはドローンやUAVの脅威を最も深刻に受け止めていち早く堅牢なC-UASの開発に着手、ロシア陸軍は全兵士は小銃や手持ち式の妨害装置を用いたC-UASプログラムの訓練が義務付けられており、このアイデアについては米陸軍も採用する予定で米中央軍のマッケンジー司令官は「兵士からコックまで兵種に関係なく全ての人員がカウンタードローンに関するスキルを身につける必要がある」と語り、2024年までにカウンタードローンに関するスキルを身に付けるための訓練アカデミー「Joint Counter UAS Center of Excellence」を開設して全兵士に訓練を受講させる計画だ。
関連記事:米軍を最も安価に攻撃する方法を明かす米海兵隊大将、答えはコストコで売っている
ただロシア陸軍のC-UASは米陸軍よりも進んでおり全部隊にC-UASに特化した電子戦部隊の配備が進行中で、固定の拠点に対するC-UASは早期警戒センサー、電子妨害システム、近接防空システムの3層で構成されたエシュロン型防御を構築、シリアのフメイミム空軍基地への商用ドローンを使用した攻撃を効果的に防ぐことが出来たとDefenseNewsは指摘しているが「このシステムが軍用向けのUAVに対しても効果的かは実戦で検証されていないので未知数」と言っている。

出典:United States Army 米陸軍が最近調達を開始した近接防空システムIM-SHORAD
結局、無人機の進化と対策はイタチごっこの関係なので「どちらが優れているのか?」についてはタイミングや状況によって異なるとしか言えないが、現時点で限定すれば対策が追いついていないのでUAVの方が優勢かもしれない。
少し話が脱線したがNATO加盟国が購入可能で武装可能なUAVは1機あたりの導入コストが1億ドル超えのMQ-9か1,000万ドルを下回るTB2しか事実上選択肢がないので、カバーできる監視・交戦範囲が劣っていたとしても圧倒的に安価なTB2導入国は今後も増えいく可能性が高く、いったんトルコ製UAVが普及してしまえばUAV専用の精密誘導兵器MAMシリーズも同時に浸透するため後発の武装可能なUAVが出てきてもトルコの牙城を崩すのは難しくなるだろう。

出典:Karel Šubrt / CC BY-SA 4.0 MAM-L
まぁ英国を含む幾つかのNATO加盟国はTB2の活躍を受けて低コストで武装可能なUAVの国産化を検討していため面子(特にフランスやドイツなど)にかけてもトルコ製UAVを導入しないと思うが、資金や開発基盤が脆弱なNATO加盟国はTB2導入に雪崩を打っても不思議では無くなってきた。
関連記事:ポーランド国防相、実戦で能力が証明された「バイラクタルTB2」24機購入を正式発表
関連記事:英国軍、バイラクタルTB2の成功を受けて安価なUAV調達を検討
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※アイキャッチ画像の出典:Baykar
最近仲悪いといってもトルコはNATO加盟国には違いないし同盟各国が導入したっておかしくないわなあ。
実績といえばイスラエル製のほうも証明されたわけだけど、ハーピーとかは広がりみせてないのかしら。
トルコは再利用、イスラエルは使い捨て用(自爆、突入)とかの住み分けがあるのかも。
そうかイギリスは攻撃型uavは持ってなかったか
監視型uavはあったような
イギリスにもワンチャン
ドローンの話題になると沸いてくる
日本はドローン技術が遅れているという
コメントに期待!
日本ってこれを研究用に買うのかな?
外圧が無いと変化できない国だから、おかげで機が熟していいんじゃないの?
国情に見合うUAV開発に取り組めばいいさ、もう少し時間はあるだろう
個人的には現時点では遅れているとは思ってないが
研究開発を進め実用化→それを元にカウンタードローンシステムを構築→それを昇華しより対策困難なUAVを開発→それに対抗可能なカウンタードローンシステムを構築
というように技術のイタチごっこは主要国で既に始まってるんで日本の場合実用化が遅れれば今後10年で技術的劣勢を強いられるのは避けられんかと。
そもそもUAVを本格運用できてない国がまともなカウンタードローンシステムを構築出来る筈もなく、より高度なUAVやカウンタードローンシステムが登場した時に二段飛ばし、三段飛ばしで対策立てられるはずもない。
実用機の開発について諸外国に比して着手が遅れてるのは事実ですが、現在は独自に要素技術蓄積を進捗させている段階で、三自衛隊も外国製既製品及び国内開発試作品を用いて運用研究を行っている状況です。運用側の要求が無ければ実用機開発はありません。
平成28年度防衛装備庁中長期技術見積りによれば、UAV技術は令和3年度基準で以下の見通しを得ています。
リンク
a.自機の故障・飛行条件の認識、飛行経路変更を伴う回避判断等の自律(概ね0年後≒現時点)
b.見通し外飛行、安全性を確保したシステム・インテグレーション技術(〃)
c.僚機行動認識・自機行動判断で空中給油レベルの自律化、非GPS航法システム(概ね5年後)
d.長時間滞空型無人機のシステム・インテグレーション技術(〃)
e.多量のデータを基に敵の行動を推定、空中戦闘機動を行う自律化(概ね10~15年後)
f.戦闘型無人機のシステム・インテグレーション技術(〃)
攻撃型UAV開発・導入については交戦規定の国際的確立を待っている節があります。
実際に遅れてるんだからしかたなかろう
最先端のものと比べてどの程度遅れてるかは知らんけど
この辺のローエンド系は日本にとっては重要性低いから遅れてるもへったくれもないけどな
戦場でネットワーク構築して有人機や地上部隊と連携して動く、という方面は当然必要だと思うけど
安さが売りのUAVについては、その対策を考える金と手間で大陸から飛んでくるミサイルの対策を優先しろという話にしかならないからねぇ
然り。弾道弾や巡航ミサイルへの効果的防衛装備がUAVだとなりゃ別ですがね。
それに偵察用途はさておき、自衛隊では攻撃型UAVの運用について模索検討中な段階でしょ。
バルト三国くらいの中小国家が、効率のいい国防戦力としてUAVを導入する流れは
もはや必然と思える。
戦闘機や攻撃ヘリ買い揃えてパイロット訓練する余力の無い中小国にとって割の良い装備なのは確か
ハイドラミサイル最初に装着して反撃 陸上スキミングミサイルに改良されている それにより敵のレーダー車 対空装甲車 電波妨害車破壊 その後MAMで戦車に攻撃 アルメニアに大勝の原因。
TB2って「こういうので良いんだよ」にすっぽりはまってるよな。
子供みたいな言い方をすればリーパーのほうが”強い”んだろうけど
普通の国は損耗に耐えられる額超えてるリーパーまでは要らないという
まあV-22で移動する特殊部隊に随伴しようとするのならば、MQ-9くらいの速度や行動範囲が必要なのだが、そんなハイエンドの戦力運用なんてアメリカくらいしか不可能だしね
ましてや国力も国土も小さいバルト三国ともなると、もはやTB-2になるのは必然的とも言える
エクゾゼみたいな感じだな
もちろん実際の性能もコスパもいいんだろうけど
実戦証明されたものは強い
>実戦証明されたものは強い
ロシア製防空システムも同種兵器に対し今後の対応を迫られた、という実績は大ですね。
手を出せる価格帯で敵国にそれ以上の対応出費を強制する効果が望める。
航空兵力の弱い低強度紛争には最適な兵器だが、相手が高性能なレーダーを積んだ戦闘機を持っていたら手も足も出せない機体だ。
AESAのルックダウン能力を利用して50Km先からAAM4Bを撃てば安全確実に落とせる、コスト的にもおつりがくる。
高性能なレーダー…..?
また訳の分からん事を
航空機搭載レーダーにも松竹梅があるのを知らないのか?
特にF-2のような地面を這うように飛行する巡航ミサイルを見つけられる高性能なルックダウン能力を持つものは少ない。
レーダーは反射波が返ってくる時間で距離を測定する、目標の後方が何もない空間なら簡単に敵機を発見できる。
しかし上空から下方をレーダーでスキャンした場合は飛行物体からの反射波は僅かで地面からの反射波の方が遥かに大きい、その微弱な反射波の持つドップラー効果によるわずかな周波数差を検出するフィルター性能やアルゴリズムが必要になってくる。
だから対UAVにはルックダウンモードが必須。
KF-21はイスラエルの技術によるAESAレーダーを装備してるらしいが、それは対空モードだけでルックダウンモードを装備できるのは数年先の予定、つまりイスラエルでさえその能力は未だに持っていないってこと。
ちなみにF-2は艦船とその上空を守る戦闘機を同時対処するモードも持ってます、20年前から。
最初は上手くいくけど非ステルスだと相手が対策すると難しいよね
対策ってなんぞ
そんなもん、敵の戦闘機を黙らせて、対空レーダー黙らせるほか無いと思うが、そこにはなんの新しさもないぞ
なんの新しさもないと言えば、ナゴルノ=カラバフで使われた戦術自体がそうだけど
誰も既存の戦闘機の置き換えとして配備してないので空対空ミサイルで一発だ!とか言われても意味のない話ですね……
そんな話はしていない
シリアでのように有人航空機が出てくるとこのようなUAVはボコボコにされて手も足もでなくなる
UAV運用側は何としても航空優勢を確保しなければならない
大国ロシア相手に航空優勢だの、導入するラトビアは想定してるはずがない
別の論理があるんだろうと察するけどな
偵察用ではないか? 国境を越えて活動するためではないだろうし
そう簡単に航空優勢を確保できないのは他のUAVどころか有人機でも変わらんから
友人機と比べたら安いんで割り切って使えるCAS機って程度なのでは
この手の無人機は既存の爆撃機や攻撃ヘリと同じくまずは有人の戦闘機による制空権ありきよ
真に高強度の紛争なら相手も有人作戦機を飛ばしてきて有人戦闘機はその対処に忙殺されてるんじゃないか
AAM4Bを運用する国の貴重な戦闘機部隊が悠長にドローン狩りできる状況にしてくれるかねぇ
相手側も対抗してuav飛ばしまくるだけな気が
それは周囲を海で囲まれて海上の監視をそれなりのレベルで行えてる日本だから言える話だよ。
元記事にも
>隣国と陸続きで国境を接する国の間で当分の間は人気と関心を集め
とあるだろう。
「陸続きで」ある程度の長さの国境線を有する、あるいは複数の仮想敵と隣接する国にとって、その「全てを常時」エアカバーするのは困難だ。
であれば守るにしろ攻めるにしろこの手の兵器の使い所は出て来るよ。
ロシアに地上侵攻受ける可能性がある国にとってはこういうコスパの良いCAS機は魅力的だろうな
問題はロシアが相手の場合だと圧倒的な空軍力・電子戦・防空網で活用する前に瞬殺されそうなのがな…
つか、ロシアも攻撃ドローンや迎撃ドローンのはじめとした対抗手段の開発進めてるしな
正しくコ・ス・パのいい武器なわけだね
日本は本当に大丈夫か?
経験もないくせに、いきなり次期戦闘機用のハイエンドな無人機ができるとは思えない。
無人「戦闘」機を作ろう、ってならいきなりだけど
まずは「センサー」機を作ろう、って話だから特別ハイエンドでも何でもないでしょ。
もちろん如何にシンプルな指示で的確な行動をできるか、とか脅威度の判定とか上を目指せば切りはないけど、
少なくとも有人機の数十km前方で滞空して電波さえ出してりゃ最低限鳴子と囮の役は果たせる。
いきなりじゃない。
要素単位の技術実証を段階的に積み重ね技術実証機を製作・試験していく計画。
F-Xと連携する高アジリティ・戦闘支援型UAV(センサー・シューター・デコイ兼用)の技術実証機は概ね10~15年後にかけて研究開発を行うスケジュール。同技術実証機は実用型原型となるよう開発を行うとしている。
来年度に予算化されるというセンサー型UAVは、恐らくその前段階の技術実証機。
たっぷりと時間と労力をかけるハイエンド無人機開発計画ですよ。
まだ明確な見通しが立っていないのは、その戦闘支援任務に適応可能な高度AIの研究開発。
それで防衛装備庁も昨年度あたりからAI開発体制の強化を図っています。
いきなりハイエンドな無人機を作るわけじゃないみたいよ
先日のここの記事で見た話ならまずは戦闘機搭載型の小型UAVで随伴無人機に必要な各種制御を獲得する方向になってるっぽいし、それなら岐阜で既に運用してる無人機研究システムと各所で既に試験飛行も終えてるセンサー類や安全飛行のためのシステムの研究が流用出来るだろうし
それを終えてから本格的なハイエンド無人機に行くのならそれは別にいきなりハイエンドな機体を作るわけじゃなくていつも通りの足場を固めてから開発する日本の開発スタイルの範疇でしょう
導入予定の時期から逆算してもその位の余裕はあると思うし
ギリシャから飛ばして黒海まで何千キロも高高度や現地で低高度で徘徊偵察する120億もするMQ9を損耗に耐えつつ運用する国はあまりないよね
バイラクタルのせいぜい100キロ先の偵察や軽めのミサイル積めて歩兵や車両の攻撃ができて落とされてもそれほど痛くない価格はまさに欧州にフィットするし
多くの国境線沿いにある渡河もせず誰も死なない割に相手戦力や位置や攻撃用途は欲しがる国家多いのもうなずける
確かにAKと同等の影響力で低価格で売るトルコによって戦争が変わりつつある
無人機は戦闘機と違って滞空時間が重要でその点で言えばMQ-9とTB2の滞空時間は互角だし、バイラクタルはせいぜい100キロ先と言っているが見通し通信の範囲は200kmを超えているし、地上ベースでも空中ベースでも通信のリレーを行えば当然TB2の行動範囲はもっと広がる。
そもそもTB2は衛星通信に対応したタイプも登場してるのでMQ-9よりも安価でMQ-9に近い運用ができるよ。
今のところは中小国が手に入れた新たな牙な訳だけど、ロシアや欧米はじめとした大国側がそれを真似て更に大規模かつ大量に配備・投入し始めたら、その優位性もあっという間に引っ繰り返りそう。軍事あるあるだけど。
そして今ロシアでもUAVの開発を進めているのが、AK作ってるカラシニコフ社である皮肉。