開発中のステルス爆撃機「B-21レイダー」を欲しがるオーストラリアに対して米国メディアは陸上配備型長距離ミサイルに投資したほうが費用対効果が高いと指摘している。
参考:How Australia Can Defend Itself Against China’s Military
中国からオーストラリアを守るためにはステルス爆撃機「B-21レイダー」が必要か?
オーストラリアはダーウィンから約300km南にあるティンダル空軍基地拡張に約11億豪ドル(約740億円)を投資して、2027年までに滑走路延長や新しいターミナルの建設、燃料備蓄施設や整備施設を増設、基地に駐留する部隊のために住居や水道・電気といったインフラ整備を行うことを決定した。
では、何故ティンダル空軍基地を拡張することになったのか?
この基地は中国本土から4,000km以上離れた場所に位置しているため、中国軍が運用している大陸間弾道ミサイル「DF-31」から逃れる事はできないが、より迎撃が困難な極超音速滑空ミサイル「DF-17」は届かないため、DF-17が届くグアム基地よりも地理的な条件で価値が高いと米軍が見ているためだ。
しかも、この基地に米軍が地上発射型トマホークや開発中の極超音速ミサイルや中距離弾道ミサイルを配備すれば、米中が対立している南シナ海や南太平洋を射程圏内に収める事ができるため中国を牽制するのに都合が良く、基地拡張が完了すればグアム基地に前進配備している米空軍の爆撃機(B-52HやB-2A)はティンダル空軍基地へ移動することになるだろう。
もちろん、2030年頃に運用が開始されるステルス爆撃機「B-21レイダー」も同基地を利用するのは目に見ている。
ただティンダル空軍基地は米空軍だけが利用するのではなく、オーストラリア空軍も対中国に対する抑止の切り札として活用を予定しているが、問題はオーストラリア空軍に長距離攻撃を行う手段がないという点だ。
オーストラリアは過去、最大15トンの兵器搭載し無給油で4,000km以上飛べるF-111を運用していたが同機の退役に伴い長距離攻撃の手段を失ってしまった。F-111の後継機として導入したF/A-18E/Fや最新のステルス戦闘機F-35AではF-111並の長距離攻撃を肩代わりすることは不可能で、どうにか独自の長距離攻撃手段を取り戻すため頭を悩ませている。
オーストラリア海軍がコリンズ級潜水艦の後継艦「アタック級潜水艦」に長距離の哨戒能力と巡航ミサイル搭載を要求したのは、この様な独自の長距離攻撃手段を取り戻すためだが、はやり航空機に比べ潜水艦の移動速度は遅いため火力の継続投射維持という観点から言えば不満が残り、オーストラリアは米空軍が開発中のステルス爆撃機「B-21レイダー」を調達したいと本気で考えている。
オーストラリアの戦略政策研究所は米国のB-21プログラムにオーストラリアが参加すれば、量産数が増えるためB-21の機体単価を引き下げることに繋がるはずだと主張し、オーストラリアメディアは米国のロス商務長官がオーストラリアへのB-21販売を否定しなかったため、米国はオーストラリアにB-21を売る可能性があるかもしれないと報じているが、実際には長距離攻撃手段の確保のため「新しい攻撃機」を購入したいとオーストラリアのレイノルズ国防大臣が話し、米国のロス商務長官は「米国もオーストラリアにもっと多くの航空機を販売したい」と答えただけでB-21に言及したわけではない。
関連記事:F-22再生産を支持した豪州、今度はステルス爆撃機「B-21 レイダー」購入を検討か?
要するにオーストラリアへのB-21売却を否定しなかった=B-21を売る可能性は「0」ではないと言っているに過ぎないので、ほぼ希望的観測と言っていいレベルだ。
一応、オーストラリアは対艦ミサイル「AGM-84 ハープーン」の後継として米海軍が開発した長距離対艦巡航ミサイル「AGM-158C LRASM」を200発導入する予定で、このミサイルは500km以上の射程距離を誇りGPSや外部からの標的情報が得られ無くても本体に備えられたセンサーシステムによって自律的に標的を選択して攻撃を仕掛ける事が可能で、複数のAGM-158Cが自律的にデータを共有し効果的な連携を行うことで標的の防空システムを回避する機能が備わっている。
このAGM-158Cが導入されれば、F-35AやF/A-18E/Fに搭載して空中給油機を併用すれば南シナ海や南太平洋をAGM-158Cの射程圏内に収めることも不可能ではないのだが、中国は南シナ海の南沙諸島海域に造成した基地化を進めており、ここに長距離空対空ミサイルを装備したJ-20等作戦半径の長い戦闘機を配備されるとオーストラリア空軍は空中給油機が直接狙われる問題に直面するだろう。
ロシアや中国は西側航空戦術の土台である「早期警戒管制機」や「空中給油機」など大型で価値の高い航空機を遠方から狙うため、戦闘機が搭載する空対空ミサイルの長射程化と極超音速化を進めており、NATOは既に早期警戒管制機E-3の廃止を発表し、米空軍もE-3の早期退役を検討している。
関連記事:大型の早期警戒管制機は時代遅れ? NATO、2035年までに「E-3 セントリー」廃止
空中給油機に関しては具体的な方針は示されていないが、このままではロシアや中国の長射程化された空対空ミサイルの影響で安全マージンを多く取ることになる=今よりも後方に後退して空中給油を行うことになれば、それだけ作戦半径が縮小してしまうと言う意味だ。
結局、この問題を解決するには空中給油機のステルス化を進めるか、戦闘機が携行できる燃料の量を増やす=基本的な航続距離を伸ばす必要があるのだが、オーストラリアがステルス爆撃機「B-21レイダー」を欲しがるのは無給油で長距離飛行ができ高度なステルス性能のお陰で狙われにくいため、上記のような問題を最もシンプルに解決できる「最適解」だと見ているからだろう。
米国メディアはB-21の推定コストは約5億5,000万ドル(約600億円)になり運用コストも高額になるため、オーストラリアは陸上配備型長距離ミサイルに投資したほうが費用対効果が高いだろうと指摘しているが、果たしてオーストラリアはどのような選択を選ぶのだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman
自国で兵器体系を持ってないから、その長距離ミサイルもどうやって調達すれば良いんだか
そもそもB-21を購入しても維持できるんですかね―。
(経済的にも技術的にも)
あれもこれもやらずにまずは潜水艦の問題解決のほうが優先では?
テスト勉強しなくちゃいけないのに、部屋の掃除をしたくなる心理ってあるじゃない。
あるあるネタ
インドネシアに対する攻撃能力(なんなら侵略する能力)が欲しいって素直言えば良いのに
アタック級潜水艦で要求してる特殊工作員の乗船、特殊艇の搭載ってのもそういうことでは?
それを言っちゃあ、おしめえよ。
地域大国の地位を維持したいのだろうが、キャンベラ級にF-35Bを載せて南太平洋を遊弋させた方が、手早く価値がある。
ICBMがある以上、地球上の何処にでも火力投射出来る。
核弾頭の代わりに巡航ミサイルや対艦ミサイルを積めば良いだけ。
それより、飽和攻撃に対抗してきたように、新しい攻撃手段に対抗していけば、空母機動部隊でもやっていける。
いつの間にオージーがICBMを…
中国がICBMに対艦ミサイルや巡航ミサイルを載せて・・・という話です。
OGがというより、OGにアメリカがICBMを置くかな?
いよいよウリナラ染みてきたけど根本的な生産技術を持たないのに雇用だの輸出だの夢見すぎ
政治介入の恐ろしさですね。良くも悪くも軍人は保守傾向が強いですが、政治家は理想を語ってなんぼですもんね。問題は裏付けの無い理想イコール妄想ってとこですが
夢と現実の線引が曖昧な人は、どこにでもいますから。
植民流刑地オーストコリアなんか誰が攻めて欲しがるんだ?
爆撃機とか必要ないだろ、対インドネシア用に欲しいって正直に言えよw
チャイナを引き合いに言い訳しているが、内部からチャイナに感染している奴に
虎の子B-20を売るわけないだろアホ
ご自慢の潜水艦事業を問題を解決してから言えよゴミ
B-20はどこからきたのか
1940年代のイギリスからではないでしょうか。試作飛行艇を狙うとは、流石周囲を海に囲まれた大陸国です。本邦のUS-2に対抗しようという野望でしょうか。
オーストラリア🇦🇺について詳しいわけじゃないけど、アメリカはB-21を売っても利点がないんだよなぁ
オーストラリアはいつ親中政権が出来るか判らないのに完成したら対中露の切り札になるB-21を売る訳無いだろ。
これですよねー。一度ミソがついてるから最高レベルの信頼は得られるはずもない。
もしかしたら輸出仕様もあるかもしれないがオージーに売るメリットなんか無いだろ