インド太平洋関連

豪空軍がF-35AによるF/A-18F更新を撤回、後継機候補に新たな選択肢を追加

オーストラリア空軍は「F-35Aで更新する」と公言していたF/A-18Fについて「更新時期を10年先延ばしにして後継機候補に新たな選択肢を加える」と明かし、Aviation WeekはCCA、NGAD、GCAP、FCASが選択肢に加わるかもしれないと予想している。

参考:RAAF Eyes Super Hornet Extension, Future Competition
参考:UK official sees ‘unique’ partnership chances for next-gen fighter

現時点で確実なのはF-35Aの受注予定が減るかもしれないという点だけだろう

オーストラリア空軍はF/A-18A/Bを更新するため計72機のF-35Aを発注済みで、F-111の後継機として取得した24機のF/A-18Fも「F-35Aで更新する」と公言していたが、ロバート・チップマン中将は13日「F/A-18Fの能力を次の10年まで維持することに大きな価値があると考えている。そのためF/A-18FはBlockIIIにアップグレードする必要があり、同機の後継機発注は2030年代半ばまで先送りする予定だ。この時点でもF-35Aの生産が続いていると思うが、この頃になると新しい設計の戦闘機や航空戦に対する新しいアプローチが利用可能になっているかもしれない」と述べた。

出典:public domain

さらに「我々はF-35Aの能力に満足しているが、更新時期が繰り下がるF/A-18Fの後継機に『他の利用可能な選択肢』がないか検討しないのは私にとっての怠慢だ」と付け加えており、この発言を受けてAviation Weekは「依然としてF-35AはF/A-18Fの有力な後継候補だが、オーストラリア空軍は後継機候補に他の選択肢を加えようとしている。2030年代半ばにはMQ-28のようなCCA(協調戦闘機)が利用可能になっているはずで、米国、英日伊、仏独西の新型戦闘機も登場しているだろう。つまりF/A-18FがF-35Aで更新される保証はなくなった」と報じている。

まだCCAが将来の航空作戦にどのような変化をもたらすは確定していないものの、CCAが提供できる能力が信頼できるものなら必要とする有人戦闘機を削減することができ、この場合ならF/A-18Fを有人戦闘機で置き換える必要がなくなるだろう。

出典:ロッキード・マーティン NGAD

遅くとも2030年前半までに登場する米空軍の次期戦闘機(NGAD)は「同盟国への提供を考えていない非輸出仕様」と言われている。しかしAUKUS構成国のオーストラリアは通常の同盟国よりもワンランクの上の扱いを米国から受けており、原潜提供の枠組みだったAUKUSは「機密性の高い軍事技術」を共有する枠組へと変化を遂げているため、オーストラリアに限定すれば「NGAD提供」の可能性は0ではないが、英国防省関係者の発言はさらに興味深い可能性を示唆している。

英国防省で次期戦闘機プログラム(テンペストプログラムのこと)を担当する関係者は「GCAPとAUKUSは異なる領域に焦点を当てているが、この枠組みに参加している国はパートナシップの拡大を検討している」と述べたため、米ディフェンスメディアは「独自に米国は次期戦闘機の開発に取り組んでいるため、この発言はGCAPがオーストラリアを将来の潜在的なパートナーとして見ていることを示唆している」と指摘しており、チップマン中将の発言ともリンクしている点が面白い。

F/A-18Fの更新時期と多少噛み合わない仏独西のFCASも可能性がない訳ではなく、アタック級潜水艦のキャンセルで悪化したオーストラリアとフランスの関係は順調に回復しており、今年1月には防衛産業の関係強化で合意、ロッキード・マーティンとタレスの豪法人は共同でオーストラリア軍の長距離攻撃兵器(LRASMの地上発射バージョン)を生産する予定で、他のプログラムにも多くの仏企業が食い込んでいるため防衛分野におけるオーストラリアとフランスの関係性は予想以上に親密だ。

つまりオーストラリアにとってGCAPもFCASもF/A-18Fの後継機候補になり得るという意味で、現時点で確実なのはF-35Aの受注予定が減るかもしれないという点だけだろう。

追記:英国のウォレス国防相が15日に政界引退を発表、予定されている内閣改造までは国防相を務め、次回の選挙に出馬せず政界引退を引退するらしい。本当にお疲れ様でした。

関連記事:オーストラリア空軍、F-35A追加導入をキャンセルする可能性が浮上
関連記事:ウクライナ支援を主導してきた英国のウォレス国防相、政界引退を検討か

 

※アイキャッチ画像の出典:Team Tempest

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コメント

    • DEEPBLUE
    • 2023年 7月 16日

    F-35もエンジンとか調達コストとか雲行き怪しいですからねえ。50年どころかもう一度輸出用の機体を作る羽目になると思います。

    7
      • kitty
      • 2023年 7月 16日

      それが合理的でもコンコルド効果のサプライチェーンのしがらみで何だかんだとF-35は使い続けますよ。

      3
    • hogehoge
    • 2023年 7月 16日

    歓迎したいがうーん24機分か。規模が微妙だな。
    定数増強入らないことには新型戦闘機は選びにくそうだし、仮にF35蹴っても無人機枠になりそうな。

    10
    • ブルーピーコック
    • 2023年 7月 16日

    コッチニオイデヨ、、、

    21
    • 無印
    • 2023年 7月 16日

    アイキャッチのテンペスト、想像以上にゴツイですね
    オーストラリアの新しい物好きは筋金入りだなぁ
    どの候補も開発が順調に行くとは限らないと思うのですが
    最悪の場合、全候補開発が遅れる可能性だってあるのに…

    7
      • 戦略眼
      • 2023年 7月 16日

      テンペストに、F-111並みの長距離攻撃は出来るのだろうか?
      開発中だから、長胴型を作れるかな?

        • あまつ
        • 2023年 7月 17日

        例えばCFTやFASTパック装備前提の設計にしておけばその辺の問題は対応しやすいんじゃないかな。
        既存のCFTって機体の設計時には無かったものを無理矢理後付けしてるものばかりだけど、初めから設計に組み込んで【CFT装備状態でF-3(ないしはテンペスト)】にすればCFT追加によるステルス性云々に悩まなくて済むし将来的な機材や武装の追加にも柔軟に対応できて各ユーザーの要望にも応えやすい。
        ある国では航続力よりも武装を、ある国では長いロイター時間を、こっちは電子戦型を、となってもパック交換で簡単に特性を変更できる。
        実際の設計に落とし込むのは口で言うほど簡単じゃないだろうけど装備を機内に仕舞いつつ任務の変更や能力向上に対応できるようにしようと思ったら余程大型にするかこの方式だろうと思う。

        3
    • 名無し
    • 2023年 7月 16日

    一部だけ別の機体にするとか、整備面とか考えてそっちの方が負担は大きそう。
    正直、オーストラリアの方針転換は行き当たりばったりが多くて、来年は違うことを言ってそう。

    13
      • 匿名希望係
      • 2023年 7月 16日

      24機だとすると1飛行隊程度ってのもありそう。
      あとF-18Fね・・・。
      複座が要求仕様に入りそうだな

      1
    • アイスノン
    • 2023年 7月 16日

    他のプロジェクトの開発も不確実性あるだろうけど、購入可能性/費用対効果的には、F-35もどうなるかわからないよね。
    アップグレードにどれだけお金かかり続けるのか…。米国がというよりLMTが怖いわ。

    とりあえず追加購入の意思決定は先送りし、他のプロジェクトの開発状況を見ながらいよいよまで待つってのは賢明。
    そのときにやっぱりとF-35に戻っても良い訳だし。

    8
    • ca-13a
    • 2023年 7月 16日

    1機種に統一すると維持費は下がるけれどトラブルが起きるとな・・・

    10
    •  
    • 2023年 7月 16日

    豪は、ロイヤルウイングマン計画などの無人僚機の開発に注力していましたね。
    F-18からF-35への単機戦術としての機体更新は、これはこれで豪空軍にとって必要なんでしょうけどね。
    やがて来るであろう、「F-35による単機戦術」から「次世代機と無人僚機による航空戦術」への転換期についてをよく見極めたい、という気持ちなんでしょうかね。

    2
    • elmoelmo
    • 2023年 7月 16日

    結局のところ、オーストラリアには切迫した脅威はないということなんでしょうね
    欧州は我先にとF-35を求める長い列に並んでいるわけで…

    10
      • 名無し
      • 2023年 7月 16日

      ほんこれ。
      アングロサクソンは中国対策でオーストラリアを求めているけど、オーストラリアからしたら中国の優先度は相対的に低いから、「やってるポーズ」で構わないっつーか、出来ればカネは出したくないし、国内政治のほうが遥かに大事。

      という意思が、すごい滲み出まくっている。

      6
      • チョモランマ春巻き
      • 2023年 7月 16日

      潜水艦と一緒で、手遅れになってから更新する計画を立ち上げるのかも。

    • おわふ
    • 2023年 7月 16日

    たぶん2030年代にGCAP、FCASがものになるか微妙な気がしています。
    なってもらわないと困るけどねえ。
    F-2君とFA-18君は、最後までこき使われそう。

    4
      • 通りすがり
      • 2023年 7月 16日

      素人考察お許し下さい。

      豪はスパホ後継はステルス欲しい。 けど現状西側製だとF35一択で競争入札にならない。

      まあ今すぐステルス欲しい訳じゃないので2030年代半ばぐらい迄待ったら競争入札できるかな。

      とはいえ 同時期にNGAD、GCAP、FCAS…間に合うの?間に合ってもお高いんでしょ(笑)

      すると!!!

      韓国 KF21蓋付き とか
      トルコ TFX とか

      どっちもどれ程ステルスか現状分かんないけど 大穴として浮上する可能性ありませんかね?

    • nachteule
    • 2023年 7月 16日

     いきなり降って湧いた話でも無いだろうがインドの艦載機選定でスパホが負けたから、BlockIIIへのアップグレード追加でボーイング救済とか考えてないよな?いきりなり増えて30年の改修ライン閉鎖のスケジュール変更あるんだろうか。

    4
    • 名無し
    • 2023年 7月 16日

    オーストラリアは航続距離長い期待好む
    gcapがどのくらいの航続距離と兵器搭載できるかわからないけどな
    機体次第では好みになる
    後、自国での生産に拘るからgcapのほうがいい条件になる
    gcapは一部生産、本体組立その他ソフトウェアなんかも関与できるだろう
    無人機開発してもF35へのインテグレートはいつになるやら
    F35はインテグレートは遅いから随伴機の無人機インテグレートはいつ頃になるかわからないよな

    2
      • 戦略眼
      • 2023年 7月 16日

      F/A-18FをBlockIIIにして、時間を稼ぐのは良いことだ。
      CFTにより今より航続距離が伸びるから、現状の戦略に合う。
      その間に新型機や新技術を見極めるのも、手だろう。
      キャンベラ級は艦齢も若いので、いずも型の様に大規模修繕でF-35Bを搭載出来るようにして、遊弋させる戦略も有りだろう。

      3
    • 7c
    • 2023年 7月 16日

    ただの購入なら大歓迎だが、オフセット要求されるとGCAS(これが通称になりつつあるね)は難しそう。
    船頭多くされて山登りさせられそう。

    取り敢えず作れよF-3。
    じゃねーと購入国は手を上げないぞ?

    2
    • 58式素人
    • 2023年 7月 17日

    多分ですが。
    F111〜F/A18と続いてきた路線から考えると、
    F35Aの航続距離に不満があるのでは、と思います。
    不満があれば、躊躇なくひっくり返す(?)ような気もします。
    潜水艦の更新問題もそのような過程を辿ったような気もします。
    案外、F35Cに落ち着いたりして(笑)。
    少なくも航続距離はF35Aを上回るでしょうから。
    でも、本当は双発機が欲しいのではないかとも思います。

    1
    • チェンバレン
    • 2023年 7月 17日

    次世代戦闘機かあ…
    航続距離とウエポンベイとステルスのために、みんなB-2の親戚みたいになりそう
    ノースロップお爺ちゃんが存命なら泣いて喜んだだろうなあ

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