航空機分野の技術力で劣る北朝鮮が無人航空機の開発を決定したが、海外メディアは比較的短期間でステルスタイプのUAVを実用化してくる可能性を指摘している。

参考：How North Korea Plans To Revolutionise Its Military Capabilities Over Five Years: Hypersonics, Nuclear Submarines, Stealth Drones and More

弾道ミサイル開発に協力する見返りとしてイラン製UAVを入手すれば北朝鮮の無人航空機開発は比較的短期間で可能

北朝鮮の朝鮮中央通信は15日、平壌で行われた軍事パレードの様子を公開して新型弾道ミサイル（北極星5と書かれた潜水艦発射型と自走式の陸上発射型）の存在を誇示、さらに労働新聞は党大会で決定された新兵器や新技術の開発内容（新型ICBM/SLBM、巡航ミサイル、SLBM搭載の原潜、MIRV、極超音速兵器、偵察衛星、無人航空機など）を掲載して多くの注目を集めているが、北朝鮮の技術力だけで全てを実用化するのは難しいと見られている。

出典：北朝鮮が公開した動画のスクリーンショット　潜水艦発射型弾道ミサイル「北極星5」

しかし海外メディアは無人航空機に関しては数年以内にステルスタイプのUAVを実用化してくるかもしれないと警告している。

北朝鮮が弾道ミサイル開発を支援しているイランはロシアが「自国よりも優れている」と評価するほど無人航空機（UAV）の開発面や運用ノウハウ面で優れた技術力を備えていて、イランから技術移転を受けて北朝鮮がUAVを開発すれば短期間でステルスタイプのUAVを実用化できるかもしれないと言っており、なかなか興味深い指摘だと思う。

イランは2011年12月に鹵獲した米軍のステルス無人偵察機「RQ-170」をリバースエンジニアリングして高度なUAV技術を入手、RQ-170をコピーしたUAV「Shahed 171」を開発して公開したがオリジナルよりも能力が劣るため完全にモノにはならなかったらしい。しかしイランはこの経験を生かして新たに全翼機タイプのUAV「Saegheh」を開発した。

出典：Fars News Agency / CC BY 4.0 全翼機タイプのUAV「Saegheh」

このUAVもRQ-170のデザインを踏襲したタイプで対戦車ミサイルを4発搭載できるとイランは主張していたが、当初公開された初期型にはEO/IRセンサーや目標指示装置が搭載されていなかったため対外的なプロパガンダだと見られていたが、その後に登場した発展型「Saegheh-2（もしくはShahed191）」は格納式の降着装置やEO/IRセンサーを搭載してウェポンベイに対戦車ミサイルを2発搭載することができるようになりシリア内戦で実際に使用されているのが確認されている。

さらにイランは墜落したイスラエル製UAV「ヘルメス450」を回収して開発した「Simorq」というUAVも保有しているが、怪しげなものも多いのでイランのUAVが全て評判通りに機能するとは思わない。しかしイスラエルは戦場で回収したSaegheh-2を分析した結果「RQ-170に基づいた高度な設計が施されておりSaegheh-2の能力は侮れない」と評価しているので軽視することは出来ないだろう。

※最近実施されたイラン軍の軍事演習に登場したイラン製の無人航空機の様子

つまり北朝鮮がイランの弾道ミサイル開発に協力する見返りとしてイラン製UAVを入手すれば、北朝鮮は短期間で実用的なステルスタイプのUAVを実用化するかもしれないという意味だ。

因みに北朝鮮が開発に取り組む無人航空機は作戦半径500km程度の攻撃タイプと偵察･監視タイプなので、北朝鮮から日本に届くものではないが工作船等に搭載して日本海から発射すれば日本海側の原発は十分攻撃可能なので侮ることは出来ない。

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※アイキャッチ画像の出典：北朝鮮が公開した動画のスクリーンショット