インド太平洋関連

世界で4番目、インドがスクラムジェットによる極超音速飛翔に成功

インドは極超音速技術実証機(HSTDV)をマッハ6以上の極超音速域で飛翔させることに成功した。

参考:India joins US, Russia, China hypersonic Missile club

ロシア、中国、米国に次いでインドは4番目に極超音速実験に成功

インドは7日午前11時頃、オリッサ州バーレーシュワルにあるアブドゥル・カラーム試験場から極超音速技術実証機(HSTDV)を搭載したアグニロケットを打ち上げ高度3万メールでHSTDVを分離、搭載された国産のスクラムジェットに点火して正常に20秒間の燃焼が行われHSTDVをマッハ6以上の極超音速域で飛翔させることに成功した。

このデモンストレーションの成功を受けてインドのシン国防相は「国産スクラムジェットエンジンの成功により極超音速兵器開発に必要な技術要素が揃った」と話しており、HSTDV開発を主導した防衛研究開発機構(DRDO)は「あと数年でインドはスクラムジェットエンジンを搭載した極超音速兵器の開発能力を確立することになる」と話している。

現時点で極超音速兵器を実用化しているのはロシアと中国のみで、米国が限りなく実用化に近いところまで開発が進んでいるが初期作戦能力を獲得するにはあと数年かかると見られており、残りの国はまだ研究段階で実際に極超音速域で物体を飛翔させる段階に到達していない。

出典:ロッキード・マーティン 極超音速兵器開発プログラム AGM-183A Air Launched Rapid Response Weapon(空中発射高速応答兵器:ARRW)

さらに言えば中国が実用化した「DF-17」や米国が開発中の「AGM-183 ARRW」は巨大なブースターロケットの推進力で搭載した滑空体(弾頭)を極超音速域まで加速させるため小型化するのが非常に難しく、スクラムジェットエンジンを使用した極超音速兵器を実用化しているのはロシア(3M22ジルコン)のみなので、インドはスクラムジェットエンジンを使用した極超音速兵器開発中で中米日に追いついたと言える。

因みに現地メディアはロシア、中国、米国に次いでインドは4番目に極超音速実験に成功した国となったと報じている。

中々踏み切れないインド、中国との交渉がまとまれば現状維持を選択する可能性が高い

米日豪印4ヶ国によるクアッド(QUAD)同盟成立の鍵を握るインドの決断は「中国軍の撤退交渉の内容次第」だと報道されており、米国が押すクアッド同盟成立が幻に終わる可能性も出てきた。

参考:India yet to formally invite Australia to join Malabar naval exercise along with US & Japan

最近、米国務省副長官のスティーブン・ビーガン氏がクアッド(QUAD)同盟と呼ばれている米日豪印4ヶ国の関係を「北大西洋条約機構(NATO)に準じたものに拡張して公式化することを米国は目指している」と発言して注目を集めており、その第一歩となるのが日米印3ヶ国で実施している国際共同演習「マラバール(Malabar)」へのオーストラリア参加だ。

これまでインドが中国を刺激するという理由でオーストラリアの参加に反対してきたため実現してこなかったが、今年10月に予定されている米日豪印4ヶ国の会合の場でマラバールへのオーストラリア参加が正式に決定されると米日豪は見ている。

出典:海上自衛隊

しかしインドは未だにオーストラリア参加について態度を決めかねており、現地メディアの報道によれば政府の外交・国防関係者は「マラバールへのオーストラリア参加は中国を怒らせるだけで国境未確定地域からの中国軍撤退交渉を難しくさせる」と語っており、11月に予定されている米大統領選挙や日本の安倍首相辞任といった不確定要素のため今年のマラバール開催を見送る可能性も示唆した。

結局、マラバールへのオーストラリア参加に積極的なのはインド海軍のみで、政府関係者や国防省は「中国軍の撤退交渉の成り行き次第でオーストラリアのマラバール参加もあり得る」というスタンスをとっているため、米国が押すクアッド同盟成立自体が幻に終わってしまうかもしれない。

逆を言えば10月までにインド軍と中国軍が再び衝突するなど対立が悪化すればマラバールへのオーストラリア参加=クアッド同盟成立が現実味を帯びてくる。しかし中国も米日豪印4ヶ国が結束するのは困るため米日豪印4ヶ国協議が終了するまでは大人しくしているだろう。

果たしてインドは現状維持を選択するのか、米日豪印4ヶ国によるクアッド同盟に方針を転換するのか注目される。

関連記事:米国、米日豪印によるクアッド同盟を発展させ「太平洋版NATO」設立を希望

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain B-52の翼下に懸架されたX-51

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    この前の太平洋版NATOの話って日本メディア報道してなくね?
    韓国メディア(中央日報等)ですら報道してるというのに

    14
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    映像だけだと何とも言えないが、ステルス機から極超音速兵器の時代へ着々と近づいている。トランプが勝つだろうから来年は第二次冷戦時代の初年度に成りそう。アショア配備が頓挫したのも頷ける。

    6
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    >マラバールへのオーストラリア参加は中国を怒らせるだけで国境未確定地域からの中国軍撤退交渉を難しくさせる

    そういう優柔不断な態度を取ってるから中共から足元見られるんじゃないですかね
    まあ日本も全く他国のこと言えませんけど

    14
      • 匿名
      • 2020年 9月 08日

      対決するだけが能じゃないから当たり前の態度ですよ
      それにインドも中国と同じく核を持ってるし、国力的には中国とガチれる水準でもあるから相互防衛義務に発展しうる軍事連合とは距離を取るのが得策
      第一、インドほどの存在感があればそうい同盟を結ばずとも、それなりの影響力を発揮できるから日本やオーストラリアとは立場が違うとです

      6
        • 匿名
        • 2020年 9月 08日

        凄い早口で言ってそう

        11
        • 匿名
        • 2020年 9月 08日

        最後に急に九州弁になってる

        7
        • 匿名
        • 2020年 9月 09日

        中国が東南アジアの水瓶チベットを占拠するかぎり対決は不可避だと思うんですけどね。

        4
      • 匿名
      • 2020年 9月 08日

      >優柔不断な態度を・・・
      それがインドらしいといえばインドらしいところなんだけれどねー。

      2
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    “対立の悪化”といえば、中国軍によるインド人(兵士?)5人拉致疑惑はどうなったんだろう?

    4
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    しかし今の暴走中国を見るとまともな選択をする可能性はかなり低いと感じます。インドはどのみち腹をくくることになるでしょう。

    7
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    インドさんは豪さんとあまり仲良しでは無いかもしれませんが、
    中共に撤退の2文字は無いので、あきらめてクワッド同盟に参加してくださいな。

    4
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    日本もさっさと実装しろや

    3
      • 匿名
      • 2020年 9月 08日

      島嶼防衛用高速滑空弾は、中国大陸に届く射程にして欲しい。

      10
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    極超音速ってどうやって誘導して命中に至るの?
    いまいちわからん
    とくに標的が動体の場合が

    1
      • 匿名
      • 2020年 9月 08日

      恐らくその辺りは極秘なんだろうね。
      直前でブレーキでもかけるのかな?

        • 匿名
        • 2020年 9月 08日

        極秘というかどこもまだ実証してみせてませんよね。ロシアの発射映像だけ。移動標的に的中する光景を映像で見せれば、周辺国に対して相当なプレッシャーを与えるのは明らかなのにです。だからこれはアメリカができるかどうかで答え合わせになるでしょう。

        2
          • 匿名
          • 2020年 9月 08日

          案外、日本の高速(極超音速)滑空弾が実艦標的試験を公開するのが世界初だったりする可能性が微レ存?

          まあ、米が極超音速兵器を恐れたり開発したり、日本が高速滑空弾での空母撃沈を普通に狙っている時点で、技術的見通しは立っているのでしょう(※露中が極超音速兵器で動目標を狙えるとは言っていない)

          4
            • 匿名
            • 2020年 9月 08日

            「島嶼防衛用高速滑空弾の研究」は2025年までの予定。
            研究目的はスケールモデルによる技術実証で、飛翔速度は「超音速」であって「極超音速」ではありません。
            高速滑空弾の技術基盤獲得が目的の事業なんで、装備化を目指すとしても実用型の研究開発は20年代後半以降になると思われます。

            2
            • 匿名
            • 2020年 9月 09日

            「早期装備型」は2025年度の実用化(配備可能な形)を目指してましたよ?
            ※2026年度に延期したみたいだけど。

            3
            • 匿名
            • 2020年 9月 09日

            >「早期装備型」は2025年度の実用化(配備可能な形)

            そうですね。同研究を拡充する形で「早期装備型」を2026年までに開発するようです。
            「島嶼防衛用高速滑空弾の現状と今後の展望」で

            >ゲームチェンジャ-となりえる技術の実証と、早期装備型との共有化を計画当初から考慮

            となっていました。指摘感謝。

            2
            • 匿名
            • 2020年 9月 10日

            見てきました…が

            >地上から発射された高速滑空弾が、滑空体とロ ケットモータに分離し、滑空体は高高度・極超音速で大気圏内を飛しょうする。

            となってましたよ?
            まあこれは性能向上型のWaveRiderの話でしょうから
            それこそ配備は2030年台コースかもしれませんが…

            1
      • 匿名
      • 2020年 9月 08日

      途中までは既存の電波信号やGPSで自己誘導。最終誘導は他のミサイル同様に飛翔体自体が目標を追尾する。多分この最終誘導に極超音速兵器独自の誘導装置が使用されると思うけど、発射装置から標的まで離れている場合は複数の飛翔体が連携して目標を捜索・追尾する可能性が高い。
      ロシアはGPSに依存しない独自の位置測位システムを試験中だったか導入中だったかしているので、精密爆撃程ではなくても大型目標や移動目標の進路に飛翔体進路を重ねる事は出来ると思うよ。
      インドが試したスクラムジェット程度なら改良次第で空対空ミサイルから地対艦ミサイルまで幅広く応用できる。それだけミサイル能力が向上しているから、金がかかる飛行機を揃えるより極超音速兵器を揃えた方が合理的。

      3
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    9月の日印首脳会談で自衛隊とインド軍のACSAを結ぶという話を、与党議員が8月にしていた。安倍さんは辞めちゃうが、ガースーよろしく。

    4
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    米国の一部高官もそうなんだけどクアッドクアッドって言っているうちは中国に対抗できないし何も理解していない、既に中国を押さえ込めてないので押し返さないといけないのだがクアッドが正式のものになると逆効果になる恐れがある

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    セキュリティーダイヤモンド構想でのインドは
    中国との国境紛争での交渉材料程度にしか考えていないし、
    豪は最近改心したみたいだが信用できない

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    マスコミがクアッド同盟だ~って息巻いてるけどインドの国家戦略考えたら演習は一緒にするけど相互防衛義務がある軍事同盟に加わったりはしないだろうな

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    また突如としてインド時間で開発が遅れ、実戦配備は20年後?
    それでも計画破棄されない。
    そこに痺れる憧れる。

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    本邦は軍事同盟を結んでも相互防衛義務は出来んのでは?
    憲法9条の拡大解釈にも限界がある。
    改憲が必要!

    4
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    広大なインド洋をインドだけで監視することは不可能。
    近い将来、インドは海側からも中国にプレッシャーを受けること請け合い。
    いま豪州を引き入れて、インドには損にならない、と思う。

    5
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    7日にインド東部の中印国境地帯で小競り合いがあったらしい。
    インド軍と中共軍の双方が、牽制の威嚇射撃を行ったと。
    相手に向けて射撃したわけではないらしいが。
    インドの我慢もいつまで保つか。

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    日本とタイ以外の東南・南アジア諸国は白人種国家によって植民地にされている
    インドも長い間植民地だった。
    米豪がいくら望んでもインドの欧米に対する警戒心は簡単には薄まらないかと。
    日本は欧米とは数年の戦争と占領だけで済んだので、数世代の植民地支配について理解できないかもしれないが
    同じ感覚で考えてはいけないと思う

    5
    • 匿名
    • 2020年 9月 08日

    失礼だけど、「オーニクス(ヤーホント)」と「ブラモス」みたいな関係のミサイルなのかなって

    • 匿名
    • 2020年 9月 09日

    さーて、中印国境で相互に禁止していたはずの威嚇射撃があったようで、早速双方で舌戦が繰り広げられていますね。
    ぬるいこと言っている場合じゃないですよ、インドさん…

    3
    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    極超音速飛翔体に関しては、米軍が20世紀末には実験しておきながら中断してたのは、条約との兼ね合いや緊張緩和の流れ以外に、誘導方式の目処が立たなかったからではないかと。
    現代の技術ですでに誘導の見通しはついてるって話はあるけど、中ロシアが本当に成功してるのか西側は確認してないし、
    ましてポッと出のインドがそうすんなり進むとは

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 11日

    将棋で言うところの香車ですか。
    スクラムジェットが稼働するまで加速する(マッハ5?)技術がインドより米国が遅れているとは信じがたい。
    でも確かに、動画ではあっという間に見えなくなった。固体燃料、だよね?
    F15でフルスロットルで発射したら、いけなくない?

    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    日本、誤字のせいですでに極超音速兵器開発で米中と並んでいることにされる

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