豪国防省は28日「統合ミサイル防衛(IAMD)のコアとなる統合空戦管理システム(JABMS)の開発パートナーにロッキード・マーティンを選択した」と発表、欧州8ヶ国が関心を示したノースロップ・グラマンのIBCSは採用に至らなかった。
参考:Albanese Government invests in air and missile defence systems
参考:Lockheed Martin Australia Selected As Australian Defence Force’s Strategic Partner For AIR6500
豪産業界はロッキード・マーティンのサプライチェーンとして特別な立場を獲得する結果に
ウクライナ侵攻の影響で統合防空向けの指揮統制システムに関心が集まっており、その最有力候補は米陸軍が採用する統合防空向けの指揮統制システム「IBCS=Integrated Air and Missile Defense Battle Command System」で、いち早く採用を決めたポーランド軍はIBCSの運用を開始、ノースロップ・グラマンは「IBCSに関心を示したドイツ、ルーマニア、ギリシャ、スイス、オランダ、スペイン、デンマーク、スウェーデンが接触してきた」と明かしていたが、オーストラリア軍での競争入札でロッキード・マーティンに敗れてしまったらしい。
オーストラリアは地政学的条件に起因する理由で地上配備型防空システムへの投資が極端に少なく、陸軍の防空手段はスウェーデン製のMANPADSに限られていたが、中国が通常弾頭を搭載する長距離攻撃兵器、新型の戦略爆撃機、固定翼を運用可能な空母に投資を始めたため2017年にNASAMS導入を決定、これと平行して航空戦力や海上戦力と統合運用するためJoint Air Battle Management System=JABMS開発(AIR6500プログラム)も立ち上げていた。
このJABMSは統合ミサイル防衛(IAMD)のコアとなる予定で、IBCSベースでの開発を提案したノースロップ・グラマンと、豪産業界と共同開発を提案したロッキード・マーティンが競っていたが、豪国防省は28日「AIR6500のパートナーにロッキード・マーティンを選択した」と発表。
これを受けてロッキード・マーティンも「JABMSやIAMD構築に関するワークシェアの大半は現地企業に割り当てられ、このアプローチによって豪中小企業は世界のサプライチェーンの中で確実にボックスシートを獲得できるだろう。豪州で開発された技術は将来的に世界へ輸出され、豪産業界は830億豪ドルと予想される(統合ミサイル防衛の)国際市場にアクセスできるようになる」と述べており、ノースロップ・グラマンのIBCSは出鼻を挫かれた格好だ。
要するにロッキード・マーティンは豪産業界と手を組んで統合防空向けの指揮統制システムを開発、この技術を潜在的な海外の顧客にも提供していくつもりで、豪産業界はロッキード・マーティンのサプライチェーンとして特別な立場を獲得したという意味なのだが、個人的にはノースロップ・グラマンのIBCSが勝利すると思っていたので今回の結果に驚いている。
因みにオーストラリアが導入を決めたNASAMSは最新のNASAMS-3で、このモデルのランチャーはAIM-9X BlockIIやAMRAAM-ERの運用に対応しており、特にAIM-120C-8のシーカー、ナーモが開発したロケットモーター、コングスバーグが開発した制御ソフトを組み合わせたAMRAAM-ERはAIM-120(30km)やAMRAAM(50km)よりも射程が拡張されているため、パトリオットシステムと旧型NASAMSのギャップを埋める存在=近距離防空ではなく中距離防空に相当するらしい。
2年前に「RTXはNASAMS向けに開発したAMRAAM-ERをF-35Aに統合することを検討している」と報じられたが、それ以降何の音沙汰もなく、AIM-120と同等の性能を備えながらサイズを約半分にした「Peregrine/ペレグリン」についても同様だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
フォーマットが整って入れば連接出来るようになっているので、IBCS互換品でも良い訳ですし不思議では無いですね。
ただ、そもそも連接対象の地対空アセット自体が殆ど無く、統合防空指揮装置の導入を急いでもいないのであれば、指揮装置よりもSAM本体どうするかが先でしょう。
導入予定もNASAMSという短~中距離SAM相当だけなので、そもそも今の時点で統合防空の管制能力が必要なのかという疑念が個人としてあります。
個人的には衛星コンステレーションや無人機との連接機能があるか気になる
総合防空には今後不可欠
>AIM-120と同等の性能を備えながらサイズを約半分にした「Peregrine/ペレグリン」についても同様だ。
現代空中戦は数より射程なんですかね
何発持ってても、射程外からでボコられるんじゃ意味ないよと…
地上の戦いだと数こそ重要だけど
空の戦いは数より質
戦闘機は搭載できる本数が決まってるから必要性が薄いのかな
陸上兵器だったらサイズ半分=積載数ほぼ倍とかランチャーのサイズ半減ってメリットでてくるけど戦闘機は形変えられないし
と言うかこれ、豪州はシステムの性能よりも豪産業界がロッキード・マーティンのサプライチェーンに入る事で得られる利益を優先した訳だから、自分は管理人さんとは違って今回の結果には驚きは無いですね
それよりも豪州は過去に潜水艦で同じ事をやろうとしてグダグダな事になった前科が有るから、今回も同じオチにならないのか心配ですが
もしも、ですが。
北半球で大戦争を始めた場合、豪州は後方の軍需工場
となる可能性はあると思います。
目指せ、”南半球のポーランド”でしょうか。意地悪く言うと。
南半球には、兵器生産国としては他にブラジルと南アがありますが、
豪州と同じ立場になるのでしょうね。
豪州と違い、国内での混乱は起きるでしょうが。
以上、妄想でした。
アメリカ軍需企業は、再編が進みすぎてますからね。
余計な資本(生産設備・余力)を、抱えない事を徹底して株主還元しています。
ロッキード・ノースロップ・レイセオンなど、巨大上場企業すべてなのですが。
各種ミサイルは、生産ラインの余力が基本的にないので(効率化の徹底)、本当の納期がいつなのか注意深く見る必要があります。