ウクライナ侵攻の影響で統合防空向けの指揮統制システムに関心が集まっており、ノースロップ・グラマンは「IBCSに関心を示したドイツ、ルーマニア、ギリシャ、スイス、オランダ、スペイン、デンマーク、スウェーデンが接触してきた」と明かした。
参考:International interest growing for Army’s battle command system
ドイツ、ルーマニア、ギリシャ、スイス、オランダ、スペイン、デンマーク、スウェーデンがIBCSに関心
米陸軍は保有するセンサー(AN/MPQ-53、AN/MPQ-65、LTAMDS、AN/MPQ-64、GhostEye、AN /TPY-2など)とシューター(パトリオットPAC-2、PAC-3、NASAMS、THAAD、GMD、Enduring Shieldなど)を統合運用するため、2004年に統合防空向けの指揮統制システム「IBCS=Integrated Air and Missile Defense Battle Command System」の開発を開始。
これが実用化すると米陸軍の保有するセンサーとシューターはシステム間の垣根を越えて統合されるはずだったのだが、2018年に米陸軍は「このシステムを拡張することで戦場に存在する他のセンサー(AN/SPY-1、AN/SPY-6、AN/APG-81など)やシューター(アーレイ・バーク級駆逐艦、F-35など)も統合できる」と判断、新たな拡張要素を組み込むためIBCSの完成は4年も遅れてしまったもののフルレート生産への移行を4月に承認、2024会計年度からIBCSの導入が本格化する予定だ。
但し、ポーランドはシステムの完成を待たずIBCS導入を決定していたため、今年始めにIBCSのフィールド機器を取得、先週に初期運用能力の獲得を宣言した。
Several days ago, Polish Armed Forces announced they participated in 1st-ever exercise using the #IBCS system integrated with #Patriot, to defend a #F16 airbase @Defence24pl cc @AirPowerNEW1 @ketodorov @Poland_MOD @AgencjaUzbr @gepardtatze @PaperMissiles https://t.co/ge6528kNR6
— Jakub Palowski (@JakubPalowski) August 18, 2023
開発元のノースロップ・グラマンは「ウクライナ侵攻で巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイルへの対処能力が重要だと認識されたためIBCSに対する関心が高まっており、ドイツ、ルーマニア、ギリシャ、スイス、オランダ、スペイン、デンマーク、スウェーデンが我々に接触してきた」と明かし、これらの国々に同社はIBCSのデモンストレーションを行ったらしい。
名前の上がった国がIBCSを導入するかは不明だが、オーストラリアは提案されているIBCSについて間もなく決定を下す予定で、英国と日本も統合防空のためのソリューションを探しており、ノースロップ・グラマンは「まもなく日本は統合防空に関する情報提供依頼書(RFI)を発行する可能性が高い」と言及している。
因みにIBCSは米国製以外のセンサーやシュターを接続することができ、ポーランドは低空域をカバーする独自の防空システム(ナレフ・プログラム)とパトリオットシステムをIBCSに統合して運用する予定(米国の承認が必要で交渉が行われている)なので、米国製にしては比較的オープンな指揮統制システムと言えるが、独自の防空システムをIBCSに統合するにはソースコードを開示しなければならない。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman
野戦防空の貧弱さはNATOの致命的な弱点だ。防空の統合運用は極めて重要に違いない。
しかしながらまずは共通規格で低コストで調達が可能な中/短SAMの開発、及び防空部隊の大幅な拡充が必須だろう。
安価な巡航ドローンに対抗するために戦闘機を飛ばしたり、パトリオットを無駄撃ちするハメになれば費用対効果は悪夢である。
ドイツも関心はあるんか
欧州スカイシールド・イニシアチブとは別で動いてるのか、IBCSをスカイシールドの基幹システムにするのか、それとも似たようなシステムだからスペックを見ときたいだけなのか
「まもなく日本は統合防空に関する情報提供依頼書(RFI)を発行する可能性が高い」
日本の統合防空はすでにJADGEという、それなりのものがあると思うのですが
それがテロやゲリコマで機能不全を起こしても対処できる統合防空システムが必要との判断で
JADGEを補完し代替えできるシステムを配備しておくべきとの考えがあるのでしょうか?
導入するかどうかは別として情報を集めるのは当然では?
それにもし将来日本が地対空ミサイルシステムなどを輸出するならIBCSに統合しているもしくは統合できますよと言えるのは良いアピールポイントにもなりますし。
もう配備から14年経つので、レイテンシの短縮や電子戦の統合、米軍との互換性向上をしたいのかもしれないですね。
あとは閉鎖系であっても広域ネットワークなので、セキュリティの見直しなんかも必要なんじゃないかと。
日本では、海上自衛隊が積極的にリンク16を導入していたと思います(今は後継ですかね)
日米艦隊の共同戦闘、弾道ミサイル防衛の前提として、戦術リンクシステムの導入が重要なのでしょう。
陸上自衛隊は、どうなっているのでしょうかね?
陸自だとADCCSがありますね
空自のJADGEシステムとも連接されてます
情報ありがとうございます!
これは戦術レベルのものなのかな。ドローンまで対象にするなら。
日本で考えればBADGEやMOFシステムから戦略レベルの
データをもらい、更に自前のセンサーのデータと統合するのかしら。
であれば、陸自の師団通信システムの更新用なのでしょうか。
今の日本に足りないセンサーに、戦場をフルタイムで俯瞰する
合成開口レーダーやIRセンサーがあると思います。
そうしたものを開発して統合するのかな。であれば、有効でしょうか。
あと、こうしたものを開発したとして、
いちいち上司に伺いを立てる悪い癖がつかないといいですね。
いちいちモスクワに伺いを立てるロシア軍みたいに。
今後レーダー関連は売り手産業なんじゃないの
がんばれ三菱電機
ハイエンドは極超音速ミサイル
ローエンドは商用ドローン
高性能ミサイルからやっすいドローンまで、対処しないといけない脅威が多様化したので、防御側も多種多様な迎撃手段を統合運用したい
海で隔てられてる本邦はまだマシな環境かもしれないが、その分海運を攻められると日上がるという弱点もある