輸出に関する手続きを保留してきた米国はフィリピンに輸出される攻撃ヘリ「T129B/ATAK」に搭載されるエンジンの輸出書類をトルコに発行、フィリピンのロレンザーナ国防相は当初の予定通りT129Bを6機正式に発注したと発表した。
参考:US greenlights Turkey-made attack helicopter sale to Philippines
参考:PH set to acquire 6 Turkish attack helicopters: Lorenzana
バイデン政権によるトルコとの関係改善に関するシグナル?それともドゥテルテ大統領の要求に屈した結果なのか?
フィリピンはヨルダンから無償譲渡されたAH-1Sを2機保有しているが国内のイスラム系反政府勢力と戦うには完全に戦力不足で、ロレンザーナ国防相は2018年末にトルコから本格的な攻撃ヘリ「T129B/ATAK」を6機調達することを発表したが米国はトルコのS-400導入を問題視して同機が搭載するエンジン「LHTEC T800」の輸出に関する手続きを保留、T129Bの入手が不可能になったフィリピンに対して当時のトランプ政権は約4億5,000万ドル/約480億円で8機のAH-1Zを販売する案と約15億ドル/約1,600億円で8機のAH-64Eを販売する案を提案した。

出典:public domain AH-1Z「ヴァイパー」
しかしロレンザーナ国防相は「米国の提案はフィリピン政府が攻撃ヘリ調達プログラムに割ける予算(130億ペソ/約2.6億ドル)からかけ離れすぎている」としてトランプ政権の提案を拒否、フィリピンの攻撃ヘリ調達計画は完全に行き詰まってしまったのだがトルコは先週にフィリピン向けのT129Bに搭載されるエンジン輸出に必要な書類を米国防総省から受け取ったと発表、これを受けてロレンザーナ国防相はT129Bを正式に発注したと明かして注目を集めている。
ロレンザーナ国防相によれば発注した6機のT129Bは今年の第3四半期に引き渡しが始まると説明しており契約総額は138億ペソ/約2.8億ドルらしい。

出典: MilborneOne / CC BY-SA 4.0 T129 ATAK
フィリピンとトルコが締結した契約内容の詳細は不明だがT129Bの導入コストは1機あたり約4,660万ドル/約50億円程度なので、約60億円のAH-1Zや約200億円のAH-64Eよりも割安で本格的な攻撃ヘリを調達することに成功したと言えるが、T129BとAH-1Zの導入コストの差は約10億円程度なので圧倒的にT129Bの方が割安かというと微妙だ。
ただフィリピンの国防予算は約43億ドル/約4,670億円と潤沢ではないので6機で60億円の差は同国にとって見過ごすことができない部分だったのかもしれない。
どちらしても5月に正式発注を行い今年の10月~12月までに引き渡しが行なわれるということはトルコは米国が書類を発行することを見越して機体の製造を進めていた可能性が高く、トランプ政権が意図的(本件の取引額は2,500万ドル以下なので米議会の承認手続きを必要としない=つまり政権側の都合で輸出に関する手続きを保留していた可能性が高い)に書類の発行を止めていたのをバイデン政権が許可すると知らされていたのだろう。

出典:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0
果たしてバイデン政権による輸出に必要な書類の発行は冷え込んでいたトルコとの関係改善に関するシグナルなのだろうか?
それともフィリピン軍との共同演習や人道的任務で同国に派遣される米軍受け入れを定めた「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」の延長を実現させるためドゥテルテ大統領の要求に屈したバイデン政権が「LHTEC T800」輸出に関する手続きに応じざるを得なかっただけなのか?中々興味深い。
関連記事:フィリピン、米国が提案したAH-1ZもAH-64Eも高価すぎて購入拒否
関連記事:フィリピンの要求に屈した米国、ドゥテルテ大統領の要求を満たす対外軍事援助を提案か
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※アイキャッチ画像の出典:Matt Morgan / CC BY-SA 2.0
パイロットももうトルコ送るみたいだし確定なのか
パキスタンのはどうなったんだろ
AH-1Sよりつよそう
バイデンはフィリピンを第一列島線の要衝と考えるなら攻撃ヘリ数機ぐらい無償供与しろよと思いますけどね
だからフィリピンがトルコに頼ったんですね
アメリカさんってイスラエルやイギリスにはいい顔するのに元Commonwealthとかには時と場合によっては塩対応すぎない?
イギリスやフランスと違って旧植民地との間にあった利権のパイプが途切れてんじゃね?
CIAがフィリピンでお薬売ってるなんて話もあったけど、裏を返せばブラックマーケットにしか食い込めてないんで、経済援助や軍事援助名目でアメリカ国民の税金から拠出したドルからアメリカの政治家や官僚がキックバックもらう機構が存在しないのかも試練
端的に言うと植民地支配の後始末が下手だったんじゃねーかと
ナチスドイツとその同盟国が暴れたせいです
???
AH-1Zは高い上にアメリカに色々口出しされるリスクがあるしトルコ製を選ばざるを得ないな
ここは米国が大人の対応か?
西太平洋を死守するためにも、米国はフィリピンを必要としている。
トルコの兵器よく売れるなー。確かに米国製より安くてそれなりの性能だから当たり前といえば当たり前だけど。
まあ、トルコもトルコでトルコリラ安もエルドアンの支持率も暴落しっぱなしだし、欧米ともロシアとも周辺国とも険悪化が止まらないから、兵器売り込みによる外貨獲得に必死。
必死でいいじゃない。
日本もそれぐらいしないと防衛産業総崩れになるよ。
迂闊な相手に軽々しく売るのはどうかと思うが、
売ると決めたら腹決めて腰据えて本気で取り組んで欲しいもんだな。
つい先日も米がエルドアンを「反ユダヤ主義者」と公然と罵りトルコも「米との治安関係部門の協定破棄」を突き付けたばかりなので、イスラエルロビーとアルメニアロビーの手前、バイデン政権でネオコン系になった国務省の反エルドアン姿勢はむしろ強まってるでしょう。国務省はエルドアンを排除したい、ペンタゴンはトルコを取り戻したい、そんな米の腹の中が見えた一件では。
T129の搭載武器はヘルファイア、TOW、スティンガーといった米国製が主のようで、これは米国から直接か、トルコ経由? どちらにしても米国にしてみれば輸出を認めることでトルコにいい顔できるし、搭載武器も売れるからそれほど悪い話ではないと思う。
トルコは対戦車ミサイルも空対空ミサイルも国産化しているからフィリピンはトルコ製の搭載品を選ぶんじゃない?
どうせドゥテルテ大統領は、トルコから賄賂をもらったんじゃないの?
フィリピンがアメリカに握らせたんだよ。逆。
攻撃ヘリは国内のマフィア殺すときにも使われるだろうから、余計な紐が付いてるとフィリピンとしてもやりづらいだろう。だからトルコにしたのかな。
攻撃ヘリは中国向けじゃないからアメリカが援助する道理は無いし仕方ないっちゃ仕方ない。
フランスみたいに中古を売りゃいいのにな
海兵ヴァイパーとか削減対象だろ
AOH-1・・・
あっ、何でも無いっす
ドゥテルテ大統領は独裁的ですが大国のエゴに屈せず且つ取り込まれないよう立ち回る強かな人物に思われます。
T129Bを選定したのはコスト以外にも独自性保持を主張する思惑があったかもしれません。
中国包囲網を形成したい米にとってフィリピンの米離れを招く事態は得策ではなく、トルコに搭載エンジンの輸出許可を与えることは既定方針だったのではと推察します。
また米土の対立はトランプ政権の負の遺産であり関係悪化はロシアやイランを利するだけで米に得はありません。
バイデン政権がトルコとの関係改善の道を模索しているは当然のことではないかと。
トルコと欧州をシリア難民流入で苦しめ、トルコが一番嫌がるクルド問題でクルド民兵を武装化してシリア内戦に使ったのはオバマ民主党のネオコン=リベラルホーク。バイデン政権で国務省に戻ってきた連中。対外ハト派のトランプは中東の泥沼から足を抜くために覇権放棄して、ネオコンとイスラエルがISIS使って滅茶苦茶にしたシリア内戦処理の主導権をプーチンとエルドアンに譲渡、内外に批判されようとクルドを見捨て米軍撤退でトルコによる攻撃を黙認する大技をかました。腹芸の巧いトランプは中東安定にトルコの地域盟主化を後押して、トルコがNATOから自立する道筋をつけてた。好戦的な民主党ネオコンは米覇権の再拡張狙いで、イスラム回帰で脱欧州したエルドアンの敵視で一貫してる。バイデンはアルメニア虐殺ジェノサイド認定で歴史問題も吹っ掛けてトルコと全面対決してる。バイデン政権は米土関係の改善ではなく服従させたいだけ。
T129かっこいいな
元はイタリアのマングスタのトルコライセンス生産バージョン
人権人権うるさくない国の武器って感じだね。
ドイツとかなら人権問題で止める可能性はある
まあ攻撃ヘリなんて中国相手に航空優勢なんて取れるわけないから、国内の勢力相手だろうね。