米海軍とゼネラル・アトミックス(GA-EMS)は空母ジェラルド・R・フォードに搭載された新型の電磁式カタパルトやアレスティングワイヤーが米海軍設定の目標(累計8,000回の艦載機発艦と着艦)をクリアしたと発表して注目を集めている。
参考:EMALS, AAG hit 8,000 aircraft recoveries, launches before completion of Ford Post Delivery Test & Trials
参考:General Atomics EMALS and AAG Systems Aboard CVN 78 Reach Over 8,000 “Cats and Traps” Milestone
あれだけ国防総省がダメ出しした空母フォードの航空機発着艦支援システムが米海軍設定の目標をクリアした?
米海軍が新たに開発したジェラルド・R・フォード級空母はニミッツ級空母と比較してフライトデッキを約11%、発電能力を約3倍に拡張、アナログだった航空機発着艦支援システムの刷新、格納庫や弾薬庫から航空機や武器をフライトデッキに移動させる経路の合理化、本格的な省力化技術導入などが売りなのだが、新たに採用した電磁式航空機発射システム(EMALS)や新型着艦制動装置(AAG)に対する評価が国防総省と海軍で全く異なって物議を醸している。
国防総省内で装備品の運用試験・評価を担当しているロバート・ベラー氏(元空軍少将)は議会への年次報告書の中で「空母フォードの航空機発着艦支援システムは信頼性が低く頻繁に故障しており、同艦への評価は過去数年の評価と変わっていない」と指摘おり、特に空母フォードのEMALSとAAGの平均故障間隔は発着艦4,166回/1回を要求されているにも関わらずEMALSは平均181回に1回、AAGは平均48回に1回の割合で何らかの問題や故障が発生してベラー氏は「EMALSとAAGの信頼性は要件を大幅に下回る」と言っている。
しかし米海軍(4月26日)もGA-EMS(5月24日)も設定目標だった累計8,000回の艦載機発艦と着艦を無事クリアと発表して「我々は貴重な経験を積み重ねた、EMALSとAAGの信頼性を高めフォードの配備に備えてシステムを準備する」とだけ述べており、肝心の航空機発着艦支援システムに関する信頼性については一切触れていない。
米海軍やGA-EMSは2020年1月から2021年4月までに累計8,000回の艦載機発艦と着艦をクリアしたと言っているので、国防総省の評価がカバーしてない2020年10月~2021年4月の間に劇的な状況の改善があった可能性も否定できないが、米海軍は議会や国民に繰り返し約束していた空母フォードの「兵器運搬用エレベーター(AWE)問題(2021年夏までに11基全ての作動を保障していた)」も反故にしているので信憑性に欠けるとしか言いようがない。
仮に航空機発着艦支援システムが所定の性能を実現できてもAWEが11基全て作動しなければ「1日あたり160回(ニミッツ級空母は120回)」に設定されたフォード級空母の出撃能力をフルに発揮させるのは難しく、来年に予定されている実戦配備も本当に実行できるのか謎だ。
果たして2022年に空母フォードは完全に機能する形で海外展開に出港できるのだろうか?
なんとなく管理人は空母フォードの実戦配備が延期になるような気がしてならない。
関連記事:米海軍と国防総省で評価が対立、空母ジェラルド・R・フォードは本当にテストをパスしたのか?
関連記事:フォード級空母の兵器運搬用エレベーター問題、ショックトライアルに間に合わない?
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Indra Beaufort
>EMALSは平均181回に1回、AAGは平均48回に1回の割合で何らかの問題や故障が発生
これ民間空港なら一日10数回(羽田の発着便枠は1日830回)は事故が発生してることになるんだが…
米海軍パイロットにとってフォードへの配属は懲罰配置かな?
「何らかの問題や故障」だから、そのまま「事故」に置換したら話がおかしくなるよ。
もちろん高頻度の軽微なトラブルは重大なトラブル・致命的な事故につながるので
減らすべきなのは間違いないけど。
そこそこでいいから配備させちゃうのかも?
それだけ艦艇不足に陥っているのだろうか。
取り敢えず使えることにしないと、海軍がもたないのだろうな。
トランプ級に改名すれば「問題では」無くなるのでは
不完全でもスキージャンプ空母より能力は高いからなぁ。
48回に1度事故や故障を起こすスキージャンプ空母とかどこにも無いやろ
1日160回の出撃能力なら毎日数回は不具合を起こしてることになるが、お漏らしが話題になったQE級でもそんな話は聞いたことがない
故障率2%とか工業製品としてもあり得ない程の低レベル
スキージャンプ空母で燃料と武装を満載にしたスパホの運用は無理、E-2の運用も無理。
48回どころか1回も出来ない。
燃料兵装満載でもし1回でも重大事故に繋がったらやばいと思うんですが…
不具合や故障=重大事故って考えが極端すぎる。
それをいい始めたら要求値の4166回に1回なら良いのか?って話。
交通事故に遭う確率(軽微な自損事故から重大な死亡事故まで)が約1/5000だから1/4166なら大差ないけど、その確率が100倍になったら怖くて運転どころか道も歩けん罠
車だって警察の認識してない軽微な自損事故や車の故障や不具合は報告された事故の数十倍、数百倍起きてますよ。
だから「何らかの問題や故障」の重大度が分からんと何とも言えん、という指摘でしょう。
その通りだな。着艦に失敗して事故になる可能性もゼロだもんな。事故になるかもしれない大型空母と、事故にならないが運用能力が相対的に制限のあるスキージャンプの空母とどっちがいい?
只の航空機の台に過ぎないスキージャンプ空母に瑕疵がないとしても
運用する艦載機はどうだろうか?STOVL式は垂直着陸しか対応していない。
F-35Bは配備されてから日が浅いから何とも言えないがハリアーは事故率が極めて高かった。
スキージャンプ空母を運用するリスクは決してゼロではない。
F-35Bは自動車でいうところの縦列駐車支援システム
みたいな(もっとすごいw)機能がついてるから、
ハリアー/シーハリアーより着陸/着艦は格段に
簡便になってる。
>ちゃんと動けば
EO-DASや様々なセンサーで死角はほぼ無いんだし、
素人目にはだいぶ楽になっている印象があります。>F-35
QE級では、F-35Bは短距離着艦もできます。
この報告をあげた人は空母全体の担当者じゃなくて航空機発着艦支援システムの部分の担当官っぽいから、
自分の管轄はとりあえず要求を満たしたって言いたいんじゃないかな。
その航空機発着艦支援システムの信頼性が低いと言われてるんですがそれは
イギリスのクイーン・エリザベス級も欠陥あったし日本のいずも型もエレベーターに不具合抱えてるしエアキャリアーは何処もボロボロだな
というより、民主国家はその性質ゆえに欠陥も含めて情報公開がされてるというお話では
なんか中国だけ順調に見えるのも単にあそこは竹のカーテンで隠してるだけで、相応に不具合を抱えてても不思議じゃない
つって実は本当に順調かもしれんけど、真実は当局しか知らない
遼寧も山東に先日出向してからトラブルがあったらしくて丸1日停止したままだったみたいなニュースはあったけどねぇ
それ絡みと思しき理由か、空母推進してた軍の責任者が一人更迭されてるので何かあった可能性はありそうだけど
なんか嘘は言ってないけど全部は言ってない的なノリですな
事前設定項目は満たした(それ以外に問題山積)、みたいな?
もういい加減アホすぎる
問題発生は技術革新のチャンスなんだから。
逆に問題発生で止めたら停滞以外のなんでもない。
コストが高いなら下げる努力、故障が発生するなら故障箇所を特定し再発しないようにする。
それの積み上げだろ
それをガミガミ言って、だから止めろとかいうのは敵国の間者
思うんだけど、1日辺りの発艦能力を大幅に高めても
パイロットや整備士の体力は持つの?
自動化や電気化で艦隊規模の割に艦の運用人数は減らせる、って話だったから
そこが上手くいけばその分航空要員は増やせるんじゃない?
あとEMALSやAAGは機体にも乗員にも負担が少ない様だし。
まあ「上手くいけば」の話だけどね。
バイデン政権は共和党よりもノースロップグラマンにどうしてもお礼をしなきゃいけない事情があるんでしょ。
艦としての乗員育成も必要だとおもうが、フル出撃試験をきちんとしないと
実は炊事場で必要人数分の調理ができないとか、ご飯は用意できてもおかずが足りないとか
洗濯機が追い付かないとか、ごみ箱が足りないとか、隠れた要素を洗い出せないのでは
日本の造船技術は低下しているが
アメリカもか
今の米国の造船の年間建造量はフィリピン以下らしいね
今や世界有数の造船国フィリピンの話を持ち出してそんなこと言われても