タイ海軍のチュンチャイ海軍司令官は「中国海軍がCHD620の品質について保証してくれなければ潜水艦導入の契約を打ち切る」と述べ、S26T型潜水艦を巡る問題は大詰めを迎えている。
参考:Navy prepared to pull out of sub purchase from China
要するにCHD620を搭載したS26T型潜水艦で問題が発生したら中国海軍が責任をもって対応しろという意味だ
タイ海軍は潜水艦部隊を創設するため中国に約10億ドルでS26T型潜水艦(039A型潜水艦の輸出仕様)を3隻発注、1番艦の引き渡しは2024年(当初予定は2023年だったがCOVID-19の影響で1年延期)に予定され建造が進められているのだが、ドイツがディーゼルエンジン(MTU396)の輸出許可を拒否したため行き詰まりを見せている。

出典:Kazec at the English-language
簡単に説明するとEUは1989年の天安門事件を問題視して中国に対する武器の禁輸措置を発表したのだが「対象品目」については加盟国間で解釈が異なり、ドイツは潜水艦に使用されるMTU396の輸出(中国企業によるライセンス生産も許可)を継続、中国側は「タイ向けの潜水艦に搭載されるMTU396についてもドイツ側が輸出を容認するだろう」と判断して事前確認を取らないまま契約を締結してしまったらしい。
しかしドイツはEUの禁輸措置に違反すると指摘(禁輸措置の解釈を歪ませて抜け穴として利用する方法)されたため従来のやり方を改める必要があり、契約後に中国が求めてきたMTU396の輸出許可を拒否、これに慌てた中国はドイツ製MTU396を中国製MWM620(CHD620)に変更させて欲しいと提案したのだが、チャンオチャ首相は「信頼性の劣る中国製MWM620を搭載した潜水艦をタイ海軍は望んでいない、中国が契約に記された仕様の潜水艦を用意できないなら契約を破棄する」と警告。
そのため中国側はMWM620の改良型を再提案、これを受けてタイ海軍は「MWM620を徹底的にテストして問題なければMTU396からの変更を認める」と発表、ただしMTU396と同等の品質を証明できなければ契約を打ち切り「中国側と補償や返金に関する協議を行う」と付け加えたが、チュンチャイ海軍司令官は22日「CHD620(MWM620改良型のこと)がテストの第一段階をパスした」と明かした。
現在、タイ海軍はCHD620のスペアパーツや供給体制について確認をおこなっており、チュンチャイ海軍司令官は「中国海軍がCHD620の品質について保証してくることを要求している。これがなければCHD620の品質を信頼できない」と述べ、もし要求が断られば契約を打ち切ることができるのかという質問に「そうだ」と答えている。
要するにCHD620を搭載したS26T型潜水艦で問題が発生したら中国海軍が責任をもって対応しろ=事実上の政府保証という意味だ。
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※アイキャッチ画像の出典:SteKrueBe / CC BY-SA 3.0
潜水艦用ディーゼルエンジンってそんなにドイツ製じゃないといけないくらい拘るものなの?
最近のものなら中国製のエンジンでも問題ないように見えるけども
まあ中国の通常動力潜水艦はそのドイツのエンジン採用してますからね
自分が採用してないエンジンを他所の潜水艦に載せて実験台にしようとしてるようなもんだし
最大限の補償対応を求めるタイの言い分はなにもおかしくない
マンのディーゼルエンジンは船舶界のデファクトスタンダードで日本も含めこの会社のパテントや設計図各種ロイヤリティーを使わないとほぼ制作不可能となっています。
ここで言う信頼性って実績の事だからさ
トヨタとかの大手自動車ですら新モデルは予期せぬ不具合出まくるもんで軍事品、それも大型兵器の潜水艦ともなれば過敏にもなるさ
いや浮かんでるものならいいけど
潜行するものやからね
現場からも声があがってそう
そりゃねー
潜航時はディーゼルエンジンは使わないですよ。
浮上時であっても潜水艦という秘匿性の高い艦種が、エンジン故障で漂流とかなったら洒落になりませんから。
当然の要求でしょ、なんで買い手が売り手に気を遣って取引するのか、ビジネスは対等なんだから。きちんと交渉を尽くさないで後から愚痴る奴がいちばん見苦しい
タイの潜水艦導入計画、ぱっと調べるだけで結構昔から相当揉めてたんだな
元級に関しても他の提案国の潜水艦と比べて静音性が劣るとか性能面に懸念を表す記事が中国紙でも報じられてたらしく、確実に政治面からの選定ぽい
今回の保証要求は当然といえば当然なんだけど、できなければ白紙を仄めかすでなく明言するほど当たりが強いのは、実は裏でタイ政権の対中派閥の勢力図が変化しているってことはないのかな
仕事で「だろう」は禁物ということですな、自戒しなくては
一方で、「だろう」無しの無リスク仕事以外やらない体制だと、今度は受注競争を勝ち抜けず餓死するので、
一律「だろう」忌避判断ではなく、これは大丈夫な「だろう」、これは譲れん「だろう」を、きちんと見極められる難しい審理眼が必要。
一方、競合他社もこの辺の境界線はだいたい同条件なので、結果、入札とは、譲れん「だろう」を他社にウッカリ引かせて、(単案件ではなく業界競合としての)他社本体を攻撃する「案件ババ抜き」の側面ある。
揉めとるんなら日本製を買うてくれんかのう。