インド太平洋関連

台湾、中国の手先と化した現役軍人、退役軍人、元海軍少将、元国会議員を拘束

軍の現役もしくは退役将校を接待や金でスパイに仕立てる中国側の手口に悩む台湾では、元空軍大佐を含む軍人7人による機密情報の流出、元国会議員と元海軍少将による親中国思考の退役将官のスカウトが発覚して問題になっている。

参考:國軍爆發共諜疑案 7軍官涉案4人收押3交保
参考:前立委羅志明、前海軍少將夏復翔涉共諜案 雄檢聲押

もはや中国側のスパイ網は台湾の社会や軍に相当食い込んでいると見ていいだろう

英文台灣日報は2021年「如何に中国がスパイ網を台湾社会の奥深くまで張り巡らせようとしているか」を赤裸々に報じて注目を集めていたが、台湾では4日に元空軍大佐を含む軍人7人が、5日には元国会議員と元海軍少将が「中国に情報を売り渡すための組織を構築していた」と報じられており、この2つの組織は相当量の情報を中国側に流していたらしい。

出典:總統府 / CC BY 2.0

4日に報じられたスパイ疑惑の首謀者は2013年に空軍を退役した劉元大佐で、台湾と大陸を行き来するビジネスの中で中国の諜報機関に取り込まれ、6人の現役将校を組織に引き込んで軍用機の配備状況や機密資料を金銭と引き換えに受け取り「これを中国側に売り渡していた」と言う内容で、ペーパーカンパニーを通じて中国側から劉元大佐に流れた金の合計は百万元(数千万円~1億円)にもなると報じられている。

さらに5日に報じられたスパイ疑惑の首謀者は2012年に政界を引退した羅志明氏(元立法院の議員)で、劉元大佐と同じように台湾と大陸を行き来する間に共産党関係者から「親中国思考の退役将官を紹介してほしい」と依頼され、元海軍少将の夏復翔氏(海軍陸戦隊司令官)を大陸に連れていき「共産党の発展に協力する」という合意を取り付け、黄復興党本部(退役軍人やその家族で組織された国民党傘下の組織)に顔が利く夏氏の人脈を活かして退役将官を次々と中国旅行に招待。

この旅行で接待を受けた退役将官達は「蔡政権が不正と腐敗にまみれている」と批判を行い民心と政局を混乱させた疑惑が、羅氏と夏氏にはスパイ組織を構築した疑惑が掛けられているが、この件の関係者全員は「無実=旅行の背後に中国が絡んでいたとは知らなかった」と主張しているらしい。

出典:總統府 / CC BY 2.0 国防部副部長だった張哲平

台湾軍の現役もしくは退役将校を接待や金で中国側のスパイに仕立てる手口は英文台灣日報が報じていた通りで、2年前には台湾防衛計画を熟知していた国防部副部長の張哲平(空軍上級大将)氏も中国側の接待を受けていたことが発覚(機密保持の規定を厳格に守り渡航費用を支払っていたため密漏洩自体の嫌疑は晴れてたものの国防大学校長に左遷)しており、もはや中国側のスパイ網は台湾の社会や軍に相当食い込んでいると見ていいだろう。

関連記事:摘発が続く機密漏洩事件、台湾軍の現役・退役将兵に浸透する中国のスパイ網

おまけ

台湾の件とは完全に無関係の話なのだが、ウクライナでは大規模な不正が発覚して国内で大問題になっている。

参考:Таможенников уличили в хищении 5 миллиардов в ходе экспорта зерна
参考:Масштабная схема поборов на Одесской таможне: деньги прятали под плинтусами и туалете

ロシアと戦争中のウクライナで「穀物輸出に関与する税関関係者など10人以上の政府高官が大規模な不正に関与した」と報じられており、このスキームに参加した370以上の企業は2022年8月~9月に100万トン以上の小麦をオデーサ港から輸出、税関当局は販売された小麦にかかる税収を意図的に徴収しなかったため52億フリヴニャ(約187億円)もの税収が未納で、さらにオデーサ州の税関当局は最も必要とされる発電機の輸入手続きでも荒稼ぎしていたことが発覚。

ロシア軍のインフラ攻撃で電力供給が不安定なウクライナ人にとって発電機の需要は非常に高く、政府は企業が個人が海外から輸入する発電機について優遇措置(関税免除や減額・通関手続きの簡略化など)を発表しているのだが、オデーサ州の税関当局は政府の指示を無視して「迅速な通関手続きに不正な代金=賄賂」を徴収して税関管理等の至るところに隠していたらしい。

これを摘発したウクライナ保安庁(SBU)は「オデーサ州の税関当局から15億フリヴニャ以上=54億円以上の隠し財産が発見された」と発表しており、西側諸国が人道支援としてウクライナに送ったトラックや救急車輌も追跡調査を行うと「寄贈された州当局の職員が当該車輌で勝手に有料サービスを運営してた」とか「第三者に転売していた」というケースがちらほら報道されるので、支援物資で人稼ぎしようと企む人間にとって現在の状況は「稼ぎ時」なのだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:總統府 / CC BY 2.0

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コメント

    • 田中
    • 2023年 1月 06日

    これで打ち止めではないでしょうし
    ここまで深く浸食されてると機密情報の共有を躊躇してしまうレベルなのでは

    29
      • HY
      • 2023年 1月 06日

       日本にも深く浸透していますよ

      22
    • hogehoge
    • 2023年 1月 06日

    国防大学校長に左遷ってどういうこと。
    寧ろ仕官学校長ってポストは普通はエリートコースでしょ。なのに反面教師とかえぇぇ・・・。
    そういうところからダメだと思うの

    21
      • shkk
      • 2023年 1月 06日

      甘いと思うけど、人望ある人だと下手に降ろすとそのグループ全体が中国側に近づいていく可能性もあるから飼い殺しする方向なんじゃない?
      実際記事にもあるように退役将校が絡んでたりもする事例もあるし

      12
        • hogehoge
        • 2023年 1月 06日

        いや、左遷先にしても一般編成の師団長(太平洋側)とかの方が穏当だし、徴兵関連の部署とか他にも地位はあるけど機密からは遠い部署は色々あるはずでしょ。
        士官学校長は戦略や戦術研究もするのだから最新の最重要機密やアクセスできるような数少ない立場であって、しかも、人脈の中心地的な場所でもある。
        なぜ機密保持に疑義がある人物を据えたのか甚だ理解に苦しむよ。

        11
          • shkk
          • 2023年 1月 06日

          なるほど
          お仲間の中国派が強硬に反発したからそうなっちゃったパターンなのか…

          1
    • 戦略眼
    • 2023年 1月 06日

    元々酷かったからねえ。

    5
    • バラクラヴァ
    • 2023年 1月 06日

    檢舉匪諜人人有責
    保密防諜人人有責
    防患未然,寧可殺錯絶不放過
    台独是共匪的一体两面
    小心!匪諜就在你身邊

    2
      •  
      • 2023年 1月 07日

      スパイを発見するのは皆の役目
      秘密を守り、スパイを防ぐのはみんなの役目
      殺すが勝ち
      台湾独立は表裏一体
      注意!スパイはあなたの周りにいる

      だそうな

      1
    • 匿名
    • 2023年 1月 06日

    「政権を批判して民心を混乱させた罪」
    やっぱり日本でもスパイ防止法が必要ですわね

    20
      • HY
      • 2023年 1月 06日

       日本にスパイ防止法が必要なのは言うまでもないが、それで魔法のようにスパイが居なくなるわけじゃない。むしろ台湾以上に深く広く浸透している実態を知ることになるだろう。CIAが有名なアメリカでさえ中国の浸透工作には手を焼いている。

       必要なのは「守り」ではなく「攻め」であり、中国をスパイすることだ。スパイ防止法はあくまで入り口に過ぎない。

      14
        • たけやぶやけた
        • 2023年 1月 07日

        スパイが捕まった際は死刑が考えられますが、どうやってスパイを救出しますか?
        救出しなかったら次にスパイしてくれる人材が出てくれなくなりますよ。

        また、スパイするのは他国で犯罪行為を行うことが前提になります。
        そのことについて国民の合意が得られるのでしょうか?私は疑問です。

        4
        • 2023年 1月 07日

        激しく同意します。
        情報を奪う側に回れば、奪った情報を別の国に売ったり、交換できるようになる。

        1
    • 774rr
    • 2023年 1月 06日

    台湾でもウクライナでも 当然日本でもだけど
    個人の利益だけを求めて不正を行う人が居る前提でいなきゃダメなんやね
    性悪説はやっぱり正しいんや

    14
      • HY
      • 2023年 1月 06日

      「性善説」だの「性悪説」だの、言葉の意味を曲解して使う人が後を絶たないね。

       性善説は生まれた時は純粋無垢で善のみだったのが、世俗に触れて悪を知ることを言い、性悪説は生まれた時は獣の如く野蛮で悪だったのが、教育などを通して善を学ぶことを言う。

       今回の例に対して正しい言葉は「疑わしきは罰するべし」だ。

      14
    • ブルーピーコック
    • 2023年 1月 07日

    ウクライナは元々、腐敗指数ランキングでロシアとあんま変わらん順位の国だから驚きは少ないが、台湾は色々と中国と近いからなあ。今後数年でどれだけ赤狩りができるのやら。ゼロコロナで中国が混乱してる今がチャンスだとは思うが・・・

    5
    • TA
    • 2023年 1月 07日

    これがあるんで台湾にF35が供与される事は難しいな

    2
      • HY
      • 2023年 1月 07日

       関係ないね。実際、アメリカは台湾にF-16vを供与してる。ステルスではないとは言え、最新式のF-16vを信頼できない国に渡すわけないだろ。だいたい中国スパイは日本にもウヨウヨいるし、F-35自体何年も前にサイバーアタックで機密を盗まれている。
       むしろスパイが度々取り締まられている台湾の方が防諜が進んでいて、その話が全くない日本の方がヤバいんだよ。

      6
        • npgj
        • 2023年 1月 07日

        そのステルス技術が重要だと思いますよ。
        F-16VはF-16を近代化改修した第4.5世代機ですが、F-35は米軍も運用している新造の第5世代戦闘機(ステルス戦闘機)です。
        アビオニクスもF-16VよりF-35の方が高性能ですし、アメリカはF-35の実機データを中国に渡したくないでしょうね。
        あと、台湾軍は国防部副部長(国防部の序列3位)が中国人スパイと何度も会食を行う軍隊です。
        台湾軍の方が中国との癒着は酷いと思いますよ。

        7
    • ホテルラウンジ
    • 2023年 1月 07日

    あけましておめでとうございます(遅い?)
    日本で台湾と同じ話と言えば、安倍総理暗殺事件から注目されている統一教会になりますよね。
    主にミヤネ屋や報道特集が出す調査報道を見る限りに於いても、統一教会としての日本で活動する目論見の内容がどうであろうと
    外形的に見たレベルだけであっても日本国の運命を担う与党(っていうか当然野党も)が関係性を持っていい団体では当然無いと思います。
    漏れてる情報は台湾の比じゃないのは、戦争せずとも日本が発展途上国入りするレベルで衰退している事を見ても国家戦略の質の悪さに加えて、日本からの膨大な機密・技術情報流出の積み上げの成果として理解できます。
    そもそもこういう団体が日本国内に侵入できない、侵入しても国民に危害を与えだしたら豊臣秀吉徳川家康のように排除する白血球のような組織が諜報機関と思いますが
    それが戦前までの軍部の暴走という過去の経緯で国民の支持を得られず、その結果、こういう結果になっています。
    諜報機関や再軍備の話題になると朝日毎日などのリベラルメディアが、当局に権限を持たせる危険性を煽りますが、過剰に煽ってる一面があるにせよ、過去暴走実績がある故にその煽りに対して「今度はちゃんとするから」という反論に説得力が無いのは事実です。
    説得力が無いのは、暴走した事で国家国民に膨大な損害を齎した結果(全面敗北)に関しての結果責任を日本国として責任追及していないからですね。
    日本に強力な諜報機関を設置するのは自明中の自明で必要な措置です。しかし、設置すれば、特高警察時代の幹部の末裔や学閥などがまた過去のノリを引き摺って入り込んでくるリスクが、これも多分にあると思います。
    よって、日本に必要な事は改めて、全員故人でしょうが過去の大戦で膨大な喪失を齎した結果責任を厳しく追及して、全ての名誉を剥奪の上、官報に名前公表、更に主な名前リストは教科書に明記し、軍や諜報機関の幹部に立候補する末裔に対しては祖先の行った事に対してどのような評価をしているのか思想チェックを課して、「暴走した場合、日本史に汚名で記されるリスク」を、今後軍や諜報機関で強力な権限を付託された人間にきちんと見せる基礎が必要と思います。

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