オーストラリアのダットン国防相は「南シナ海で中国に対する対抗を今止めれば我々は次の10年を棒に振る」と警告して、我々は2038年までに原潜を保有すると改めて表明した。
参考:Australia will ‘lose next decade’ unless it stands up to China: Dutton
最終的に米国をインド太平洋地域に関与させ続けたら政治的にオーストラリアの勝ち
豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH)とのインタビューに応じたしたダットン国防相は「米国や同盟国は南シナ海における中国の行動に声を上げることを躊躇ったため20を超える拠点を中国は手に入れてしまい、我々は多くを失ってしまった」と語り、過ちを繰り返さず次の10年を再び失わないようにするためには「中国の行動について発言することが重要だ」と主張、さらに「私は2038年までに原潜を保有することに大きな自信を持っており、AUKUS協定に基づく米英当局者との協議で多くの専門家が予想するより何年も早く豪州向けの原潜建造が始まることを再確認した」と語り注目を集めている。
オーストラリアはAUKUSの枠組み内で原潜調達に関する協議を行うため昨年11月に「海軍向け原子力推進に関する情報交換協定」に署名、この協定によってオーストラリアは高度な軍事機密に該当する「潜水艦向け原子炉技術」へのアクセスが解禁され協議が開始されたばかりだ。
ダットン国防相は以前にも「オーストラリア海軍が導入する原潜が2038年よりも早く手に入るか?」という質問に「間違いない」と答えたことがあるものの野党や専門家は「あり得ない」と否定的で、果たして何を根拠に「2038年までに原潜を手に入れられる」と主張してのだろうか?
野党の労働党は「過去9年間に政府が進めた防衛プログラムは異常にコストが高騰するか、スケージュールが遅延して引き渡しが大幅に遅れるかのどちらかだ」と主張、もし政府が過去の実績を踏まえた上で国民に「専門家ですらあり得ないと主張する2040年までの原潜調達計画」を信じて欲しいと思っているなら冗談に違いないと語っており、労働党が主張する「過去の実績」とはアタック級潜水艦(中止)や予備設計で問題に直面しているハンター級フリゲートのことを指している。
国防省も海軍も最初に提示したコストとスケージュールを裏切った上、プログラムの途中経過に関する情報公開もまともに行わず、プログラムが行き詰まった原因もきちんと説明してこなかったため、特に海軍の艦艇調達プログラムに対する信頼性は著しく損なわれており、米国や英国の原潜建造能力は自国向けで手一杯なため「オーストラリア向けの原潜を2040年までに建造して引き渡すのは難しい」との見方が支配的だ。
SMH紙は豪シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の話を引用して「ダットン国防相や政府が実現が怪しい大規模な防衛プログラムに執着するのはインド太平洋地域に対する米国の関心を繋ぎ止めるためで、もし米国が同地域から手を引けばオーストラリア単独で中国に対抗するのが不可能だと認識しているからだ。つまり政治的ゲームの側面から見ると米国をインド太平洋地域に関与させ続けることが最も重要」と報じているのが興味深い。
つまりモリソン政権にとって大規模な防衛プログラムの軍事的効果や費用対効果といった問題は副次的な産物に過ぎず、政治的にオーストラリアが対中国を想定した安全保障にどれだけ投資する気があるか=本気で中国の脅威に立ち向かおうとしているのは「米国だけではない」と示し、オーストラリアの生命線ともいえる米軍のプレゼンスを繋ぎ留めようと必死なのだ。
勿論大金をかけて整備する原潜が全く役に立たないという意味ではないが、幾ら豪州が原潜を導入したところで中国に単独で対抗できる訳ではなく「最終的に米国をインド太平洋地域に関与させ続けたら政治的に勝ち」と言われればうーんと唸るしかできない。
まぁ軍事的側面から見れば批判が集中すると思うが、、、
関連記事:豪海軍のハンター級フリゲートは海に浮かんだとたん時代遅れになる
関連記事:オーストラリアの原潜導入手続きがスタート、米英豪が原子炉技術の情報交換協定に署名
※アイキャッチ画像の出典:Defence Images / CC BY-SA 2.0 アスチュート級原潜
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保有するだけなら2038年までに保有できそうだけどね、”保有”するだけなら。
人民解放軍が強大すぎるからね
どこの国も形振り構ってられん、てワケ!
仮に中国との平和共存路線を選んでも、中国共産党は大量の華僑を送り込んで人口密度の低いオーストラリアの土地を買い漁り、やがて中華系移民が白人からの差別に絶えかねて独立運動を始めたから人道的見地から支援しますと軍を出してあちこち占領
あら不思議、オーストラリアの半分が赤旗で埋まりましたよ、になる
不器用そのものだが、アメリカと組んでの生存戦略しか選択肢が無いんだよ
具体的な日程に言及してるのは興味深いですね。アステュート級の同型調達を2ロットに分けて前半を完全輸入にするとか、そういう妥協策でも用意してるんですかね。正直この状況なら国内建造の方を見直せと思いますが…
豪州が真っ先に中国の影響下に入ってしまったらそれこそハワイより西の米同盟国全部がドミノ的に大中華の保護国化しかねない訳で、米国としても豪州を見捨てるなんて考えは最初から持っていないと思うんですが、豪州から見ると南太平洋で孤立する懸念があったりするんですかね。
今回みたいにロシアけしかけてヨーロッパを圧迫させ続けた状態で、ちょっと前の太平洋の日付変更線から西側の中国権益を一定範囲で認めればロシア制裁に協力しますよ~、という毒饅頭みたいな提案をアメリカが絶対受け入れない、という確証がないんだよ。
実際ロシアは清から沿岸州をかっぱらっていった敵国なんだから、アメリカの対露戦略に乗っかる名目もあるんだし。なんならアメリカは、ロシアが片付いた後に中国を叩けば良いと考えても不思議じゃない。
このような疑念を可能な限り減らすために日本もオーストラリアもあれこれしているんじゃないか?
プランはあるが実行能力がない。
言うだけならで済むのなら次の10年を失いだろうな。
絵に描いた餅では食うことはできない。
といっても、日本からしてあげられることはオーストラリアの望むことと噛み合わないんだよね
我々も実行能力がない
日本の中古潜水艦をどうとかって話はどうなったんだろう?
オーストラリアのシンクタンクが勝手に提案していただけで、政府も軍もコメントしていない。
なんかオーストラリアは第2のドイツになりそうで不安
今は対中国同盟の中で一人威勢だけはいいけど全然実力が伴わずで、どうあがいても中国に対抗出来ない
となれば、ドイツの対露慎重姿勢みたいに「経済と安全保障のバランスを取らなければならない」とか
手のひら返しそうで・・・
なんせほんの5年前まで親中派のターンブル首相時代は中国とは蜜月国だったんだから
それが貿易問題でこじれてターンブルが引きずり降ろされてから、いきなり反中国強硬派に転向したりで
変わり身が極端ってのは、つまり逆も有り得るって事なんで。
オーストラリアにしてもアメリカにしても、いずれ人権より経済関係で対中関係修復な政権にならないとは限らない訳で・・・。オーガスからして反核アレルギーに対しちゃんと練った構想じゃないしわざわざ原潜をあげるメリットあるのかと見直されるかも
今から15年後の南シナ海に常時原潜1隻送り出したところで一体なんの意味あるのか真剣に考えて欲しい
ここ20年間の支那さんの軍拡(外務省は近代化と言うが)で日本を圧倒しアメリカには太平洋を折半しようとか言い始めてるのに更に15年後だよ・・・
その頃に南シナ海でテリトリー競合されてる可能性ある?しかも投入可能数はローテで限界超えても精々2艦だろ?
4隻そこらの原潜単独で支那さんに立ち向かえ言うならそれはSLBM+核弾頭でしかありえずつまり報復核戦力だが核心はそれなんだろ豪州さんと
ちゃんと管理人の分析を読んでからな、オーストラリアは単独で中国と対峙を想定してないから
原潜だけでもキツいのに、人口2500万の国で戦略核ミサイルまで抱えろって、北朝鮮じゃないんだから(笑)話を盛るなよ