インド太平洋関連

米軍が撤退したアフガニスタンの軍事基地に取り残されたウクライナ軍兵士、国外脱出の知らせも届かない

米軍が撤退したカーブルの軍事基地にウクライナ軍、ブルガリア軍、ルーマニア軍、ジョージア(旧グルジア)軍の兵士が約40人取り残されており、本国から国外脱出に関する指示も情報も届いていないらしい。

参考:12 Ukrainian troopers stuck at US military base in Kabul
参考:Ukraine evacuates Dutch from Kabul as Taliban takes over
参考:“Про евакуацію навіть не чули”: з Кабулу намагаються виїхати 12 українців

ウクライナのクレバ外相は脱出を希望する外国人を国外に輸送したとアピールするも、自国の兵士は米軍が撤退したカーブルの軍事基地に取り残されたまま放置

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は16日、カーブル国際空港に駐留していたウクライナ空軍の航空機を使用してウクライナ人、オランダ人、クロアチア人、ベラルーシ人、アフガニスタン人の80人を国外に輸送したと明かして「要請さえあればウクライナは可能な限り協力する」と語ったが、肝心のウクライナ軍兵士はカーブルの軍事基地に取り残されたままで救出されるのを待っていると報じられている。

報道の内容を要約するとウクライナは2007年からアフガニスタンに軍の地雷処理チームを派遣しているのだが、彼らは米軍が撤退したカーブルの軍事基地(どこの基地なのかは不明だがカーブルに最も近いのはパーワン州のバグラム空軍基地)に取り残されていてカーブル陥落後にタリバンの戦闘員が基地に来て武器を全て取り上げて行ったらしい。

幸いにもタリバンの戦闘員は暴力を振るうようなことは無く「何もせずじっとしていろ」と命じて基地を去ったが、現地のウクライナ軍兵士12人は明日にもタリバンの対応に変化=米軍に協力した自分たちを攻撃するのではないかと心配しており、16日にクレバ外相が発表したウクライナ空軍機による国外退避について「全く知らされなかった」と言っている。

出典:Public Domain 米軍が駐留していたアフガニスタン最大のバグラム空軍基地

要するに80人を国外に輸送したウクライナ空軍機に搭乗していたウクライナ人はたったの8人で残りの座席は全て外国人に割り当て「要請さえあればウクライナは可能な限り協力する」と言っているクレバ外相に怒っているという意味なのだが、ウクライナ外務省は「アフガニスタンでの大使館業務を兼任しているタジキスタンのウクライナ大使館を通じて現地のウクライナ軍兵士と連絡を取り合っており、次のチャンスがあれば直ぐに知らせる」と言っているらしい。

因みにウクライナ軍兵士が取り残されている基地にはブルガリア軍、ルーマニア軍、ジョージア(旧グルジア)軍の兵士も取り残されており、彼らはタリバンが支配するアフガニスタンから無事脱出することが出来るのだろうか?

せめて米軍と英軍が安全を確保しているカーブル国際空港に身を寄せることが出来れば少なくとも身の安全を確保できるのだが、恐らく唐突なカーブル陥落で最大級に混乱した状況が続いているため移動手段が確保できないのだろう。

関連記事:カーブル空港に殺到する群衆制御に失敗した米軍、離陸中のC-17にしがみついたアフガニスタン人が死亡
関連記事:バイデン大統領、予想より早くカーブルが陥落したのは指導者が抵抗することを諦め逃げ出したせい

 

※アイキャッチ画像の出典:ウクライナ国防省

日本人大使館員はドバイに無事脱出、協力関係にあったアフガニスタン人は現地に置き去り前のページ

米軍の生体認証装置をタリバンが押収、協力関係にあったアフガニスタン人特定に悪用される可能性次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    インド陸軍、山岳地帯での運用テストに合格した韓国製自走砲「K9バジュラ」を追加導入する方針

    インド陸軍は領有権を巡り中国と軍事的な摩擦点になっているラダック地域に…

  2. インド太平洋関連

    タイ海軍が中国製エンジンをテスト、不合格なら潜水艦契約は打ち切り

    中国がタイ海軍向けに建造を進めている潜水艦エンジン問題は最終局面を迎え…

  3. インド太平洋関連

    地震で台湾空軍のF-16が8機損傷、迅速な部品交換で運用体制に復帰

    台湾では25年ぶりの大きな地震が発生、現地メディアは「震源地に近い花蓮…

  4. インド太平洋関連

    大鉈を振るう可能性、豪政府が次期歩兵戦闘車の結果発表を来年に延期

    豪政府は発表が遅れていた次期歩兵戦闘車の最終選定結果について「現在進め…

  5. インド太平洋関連

    インド、総額6,810億円を投じて国産戦闘機「テジャスMK.1」を83機導入

    インドのモディ首相が議長を務める内閣国防委員会(CCS)は13日、国産…

  6. インド太平洋関連

    韓国航空宇宙産業が国産輸送機「KC-X」の詳細を公表、2033年に量産開始予定

    韓国航空宇宙産業(KAI)は噂されていた韓国型輸送機「KC-X」の開発…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    米軍による7月の電撃撤退でバグラム空軍基地の機能の大部分は破棄されてしまったというし、現状では航空機運用も難しいんだろうか。カブール国際空港も備蓄燃料が減りつつあって航空機の受け入れが難しくなっているらしいが、モタモタしていると本当に帰れなくなるかも…

    10
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    兵站部門最強を誇った米軍とは思えない不手際だな。同盟軍置き去りかよ。

    24
    • すえすえ
    • 2021年 8月 18日

    アメリカとタリバンに話し合ってもらってアメリカに空港までヘリで運んでもらえ。
    今となっては
    陸路でもいいけど丸腰ではお勧めできない

    15
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    これは避難されてもしょうがない
    難民助けているんだったら同盟国連れて帰れや

    14
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    カーブルなのかカブールなのかどっちの表記が正しいのだろうか?
    個人的にはずっとカブールって聞いてたからそっちがなじみがあるんだけど

    2
      • 匿名
      • 2021年 8月 18日

      外務省のHPではカブールになってるね。
      でも結局外国語を日本語に合わせてるだけだから、どっちでもいいのかも。

      9
      • 匿名
      • 2021年 8月 18日

      転載防止の為

      • 匿名
      • 2021年 8月 18日

      現地語や英語でのアクセントは「カ」にあるので、カーブルの方が近い

      3
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    タリバンさんが予想より統率とれてるなあ

    10
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    米国がインド太平洋戦略に傾注するために、アフガン撤退を急いだことは分かるのだが、
    誰がどう見ても、あまりにも拙速だったというべきだろう。
    アフガン政府軍内にタリバンへの内通者がいることくらいはお約束なのだから、
    米国(の阿呆大統領)が撤退計画を事前公表したことが、この混乱の主因であることは
    間違いないところだろう。

    12
      • 匿名
      • 2021年 8月 18日

      アフガン政府&政府軍がしっかりしていれば、ここまで急速に瓦解する事はなかったので
      この事態の最大原因は米軍撤退では無く、不甲斐ないアフガン政府自身にある
      大統領が現金を溢れる程カバンに詰め込んで我先にと逃げ出す有様では、彼らがどんな統治
      をしていたかはお里が知れる
      ただ現地で政府軍のトレーニングを請け負ったコンサルタント達はからはアフガン政府軍が
      いかに使え無い連中かは繰り返し警告が出ていたから、現場を見ず、現場からの意見も無視
      して「これだけ武器やって訓練して頭数を揃えれば大丈夫だろう」の楽観論で撤退を進めて
      見直しもしなかったバイデン政権も状況判断が甘いと言わざるえないが

      12
        • 匿名
        • 2021年 8月 18日

        アフガン政府&政府軍がしっかりしていないことを知っていて、タリバンさん我々は撤退しますから、と予定調和を目論んだところを突かれたのは、梅田政権の大失策ですね。わざとやった感さえします。

        21
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    ウクライナは撤退用に100人近く載せられる空軍機送ったみたいだからカーブルの軍事基地に所属していたウクライナ兵と同盟軍の兵をまとめて撤退させるつもりだった(アメリカの撤退を知っていた)んだろうけど、肝心の空港への退避命令が現地の兵に届いていなかったのか

    どこで伝達ミスあったのかね

    8
    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    何で武器の引き渡しに応じてしまったのだろう。
    こういうのって上位の司令部の判断が必要だと思うのだが。

      • 匿名
      • 2021年 8月 18日

      武器引き渡さなきゃ皆殺しにされ、ここには誰もいなかったということにされかねなかったからだろ

      17
      • 匿名
      • 2021年 8月 19日

      合計してもわずか約40名の兵力ではタリバンに対抗できません。
      武器の引き渡しとなっていますが、事実上の降伏だと思います。
      降伏であれば上位の司令部の判断は不要です。

    • 匿名
    • 2021年 8月 18日

    なんか旧ソ連&旧東側の国ばっか😅

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP